タイトルには(前編)とありますが、前編・後編の二部構成になるのか、前編・中編・後編の三部構成になるかは未定です。
前回までのあらすじ『少し変わった後輩がたくさんいました』
胡桃「突然だが明日…あたしの用事に付き合ってほしい」
放課後の校内…下駄箱を目指して一人廊下を歩いていた彼は胡桃に捕まり、いきなりこんな事を告げられた。明日は学校も休みで彼自身も用事は特に無いのだが、あまりに急な話だったので彼は目を丸くした。
「付き合ってほしいって……デート?」
胡桃「はぁ、今回は違うって…。ちょっと街のプールに行く用事が出来たんだけどさ、休日で人も多いだろうし、女だけで行くってのはちょっとアレかな~とか思って」
「プール?プールなんか何しに行くのさ?」
胡桃「プールなんだから泳ぎに行くに決まってんだろ。…で、どう?行ける?行けない?無理だってんならいいけど…」
…つまり、胡桃は明日プールに行くわけだが、休日のプールには人が多い。そんな中に女だけでいようものならあまり良くない輩に絡まれたりするかも…といった事を
「ああ、わかった。ついてくよ」
胡桃「マジ?サンキュー!んじゃ、明日の十時に待ち合わせるとして…場所だけど―――」
胡桃は彼に待ち合わせ時間…そして場所の指定をする。二人が待ち合わせる場所は市内にある目的のプール施設…つまり現地集合という事になった。明日そこで会う約束を終えた彼は胡桃と別れ、速やかに帰宅。明日の準備を始めるが…
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ガサゴソ…ガサゴソ…
(プールって…何を持ってけば良いんだ?)
自宅の中、彼はタンスを漁りながら頭を悩ませていた…。プールなんて学校のものくらいしか使った事がなく、そういった施設に何を持ってけば良いのか分からないのだ。胡桃は別れ際に『とりあえず水着だけ持ってこいよ~』とは言っていたが、本当にそれだけで良いのだろうか……。
(…いや、もう少し色々と持っていった方が良いな。ずっとプールにいる訳でもないだろうから、そのあとの事とかも考えて……)
胡桃には『違う』と言われたが、二人でプールなどデート以外の何物でもない。彼はバッグに水着の他、タオルやサンダルを等を詰め、更にそのプール施設周辺にある良さげなスポットを携帯でリサーチした。彼の思う良さげなスポットとは…もちろんデートに使えそうな場所の事だ。
(中々広い公園がそばにあるな…二人でここを散歩するもの悪くない。近くにレストランもあるし、帰りが少し遅くなりそうならここで早めの夕飯をとるのもアリだ…。いや…早く帰さないと胡桃ちゃんの家族が心配するか。……っ、いかがわしいホテルもあるけど…胡桃ちゃんがここに入りたいって言ったら?…入るでしょう!!そりゃもう入るでしょうっ!!!)
携帯の地図を見て妙な妄想をしながら、明日に備えて彼は眠る。
おかしな妄想をしたせいで少し寝付くのが遅くなってしまったものの、翌朝はどうにか起きられた。
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そうして彼は今、胡桃と待ち合わせているプール施設…その前の道路をフラフラ歩き回っていた訳だが、その胡桃が中々現れない…。彼がここにたどり着いたのも約束ギリギリの時間だったが、彼女は完全に遅刻している。
(遅い…。先に中に入ってる、って事もないだろうしな…)
これから彼や胡桃が入るプール施設…ここはつい最近出来たばかりらしく、この辺りでは一番広い屋内プール施設のようだ。休日という事もあって訪れる人も多く、彼が外で待っている間も家族連れや友達同士と見られる女性達…そしてカップルが大勢中に入っていった。
胡桃「…わりい、待たせた」
プールに訪れる人の多さに驚く彼の背後、そこに忍び寄った一人の少女がポツリと呟く。聞きなれたその声の主が胡桃だとすぐに分かった彼はクルリと振り向くが、そこにいたのは彼女だけではなかった…。
「…んん?」
振り向いた彼が最初に見たのは笑顔で立つ胡桃…。今日は比較的暑い日だからだろう、彼女は半袖のシャツに薄手の白いパーカーを羽織っており、下は水色の短パンをといった涼しげな格好だ。そんな彼女の右肩からは少し大きめのバッグが下がっている。恐らく、水着等が入っているのだろう。
「………」
問題はその胡桃の隣、そこにいた少女だ。真っ白く、フリフリとしたワンピースを着たその少女もまた大きなバッグを両手で持ち、彼の事をジッと見つめている…。長い茶髪を風に揺らしながらこちらを見つめる少女の目がどこか迷惑そうなものにも見えた彼は悩ましげに髪をかきあげ、ボソッと呟いた。
「ええっと…お嬢さんはなんのご用で?」
歌衣「なんのご用って、それ私のセリフなんですけど…」
彼の呟きを聞いた少女、
歌衣「…どういうことですか?くるみ先輩、今日は私に泳ぎを教えてくれるって約束したじゃないですか」
胡桃「もちろん教えるって!でもほら、あたしだけだと色々と心配じゃん?もう一人くらいいた方が何かと便利かな~と思って、それでコイツを呼んだわけだけど…」
歌衣「そんなのは初耳です」
「………」
彼と歌衣はどちらも胡桃と二人きりの時間を過ごせると勘違いしていたため、今のこの状況に少々戸惑っていた。歌衣は彼が来るとは聞いてなかったし、彼も歌衣に泳ぎを教えるなんて事は微塵も聞いていない…。
胡桃「ごめん、言いそびれちゃって…。でもさ、お前らも仲悪くはないだろ?せっかくのプールなんだし、三人仲良く楽しもうぜ?」
「まぁ……こっちは構わないけど」
歌衣「…ですね。くるみ先輩がそう言うなら」
胡桃「よしっ!ならさっそく入ろうぜ!ういには今日一日で泳げるようになってもらうからな!!」
彼と歌衣が微笑み合うのを見た胡桃は安心したように微笑み、二人を連れてその施設の中へと入る。かなりの人がここに訪れているようだったが、中が広い事もあって特別混んでいるようには感じなかった。三人は中に入って早々に更衣室へと向かい水着に着替え、ロッカーに荷物を預ける。素早く着替えを済ませた彼はプールの前へと足を運んだが、まだ胡桃と歌衣の姿がなかった…。
(二人はまだ着替えてるのか…。ま、こういうのは女の子の方が時間かかりそうだし仕方ないだろう)
二人を待ちながら辺りを見回し、改めてこの室内プールの広さに驚く。室内プールと知った時はもっとごちゃごちゃした物を想像していたがこの空間は思った以上に広く、プールの種類も普通の物から流れるタイプの物…更には小型のウォータースライダーまであった。彼がそのスライダーを眺めて『まるで遊園地みたいだなぁ』などと考えていると、誰かの手がその背にそっと触れた…。
ピトッ…
「うおっ!?」
胡桃「うわっ!?ごめんっ、そんな驚くと思わなくて…!」
突然の感触に驚き振り向くと、そんな彼に驚いている胡桃の姿がそこにあった。彼女は驚かせてしまった事を彼に謝っていたが、彼は驚きの表情を固めたままボーッとたたずむ。背中を触られた事に対して驚き振り向いたのはいいが、その先にいたのが水着姿の胡桃だったからだ。
(そうだ…ここはプールなんだから、胡桃ちゃんだって水着になる!思えば当たり前の事なのに…!)
プールに誘われたという事実だけで浮かれてしまい『プール=水着』という点を忘れていた。しかし、そうして驚いたのも一瞬だけ。彼の目は直ぐ様胡桃の水着姿を視界に収めることに…。
胡桃「だ、大丈夫か…?」
青をメインとした色合いのビキニには小さなフリルが付いていて、彼女が彼の事を心配そうに見つめる度にそれがフリフリと揺れる…。一見すると可愛い系のビキニにも見えるが布面積はそこまで広い訳でもなく…彼女の胸の谷間や太もも…それらが惜し気もなく晒されていた。
(胡桃ちゃん…やっぱりスタイル良いな…。そりゃりーさんには負けるけど、それでもかなり大きい方なんじゃ……。うわ、足も綺麗で目のやり場に困る)
普段は見ることのない胡桃の水着姿…。恐らく、クラスの男子でこれを見たのは自分が最初なのだろう。彼はそんな優越感に浸りつつ、胡桃の身体を眺め続けた。目のやり場に困るなどと考えてはいるがそんなのは建前だ。美人の部類に入る同級生の水着姿を前にして目を逸らすなど、そんな勿体ない事はしない。
「…………」ジーッ
胡桃「…あ、あんま見んなよ…!照れんじゃん……」
上から下まで舐め回すような彼の目線を感じ、胡桃は頬を赤くする。水着姿とはいえ、同級生の男子である彼に肌を晒す…。プールに誘った以上こうなる事は分かっていたが、いざこうして目線を向けられると恥ずかしくなってしまう。
「……あの」
胡桃「んっ?なに…?」
「…似合っとります」
胡桃「あ……りがと…」
軽く頭を下げ、似合うと言われた事に対しての礼をする。こんな姿を見られるのは少し恥ずかしいが、似合うと言われると嬉しい気持ちがジワジワと湧く…。その後、胡桃は彼を連れて隅の方にあったベンチへと座り、改めて本日の計画を説明することにした。
胡桃「最近、ういの奴とよく遊んだりして仲良くなってさ…。ほら、今度みんなで海に行くじゃん?…どうせだからういも誘ってやろうと思って声をかけたんだけど、アイツ泳げないんだって。せっかく海に行くってのに泳げないとつまらないだろ?だからあたしが泳ぎを教えてやるって話になってさ……」
「なるほど…。僕はその付き添いとして呼ばれた訳だ」
胡桃「そゆこと。…わるいな、昨日しっかり説明しておけばよかった」
「大丈夫。気にしないで」
申し訳なさそうに顔を俯ける胡桃だが、彼はそこまで気にしてなかった。胡桃が歌衣と仲良くしているのは良い事だと思うし、自分が少しでも手助けを出来るなら力を貸したい。そして正直に言うと、彼は胡桃の水着姿が見れただけで満足なのだ。
胡桃「…あはは、サンキューな。また今度、何か埋め合わせすっから」
「そんなそんな…」
『その水着姿が見れただけで十分』…思わずそう言ってしまいそうになるが、ギリギリのところで堪えて口を閉ざす。そうして微かに慌てる彼を胡桃が不思議そうに見つめていると、少し遅れて着替えを終えた歌衣が二人の元へと歩み寄ってきた。
歌衣「お待たせです」
胡桃「おう!…っておい、お前っ……」
「これは……」
現れた水着姿の歌衣…彼女は白いワンピースタイプの水着を着用していた。その水着は下の方がスカートのようになっており、太ももがかなり隠れていて胡桃の水着と比べたら露出は少ない。しかし露出が少ないのは下半身だけであり、胸元は大きくV字に開いている…。歌衣の胸はあの悠里にも劣らない程の物なのに、そんな胸元の開いた水着を着てるのだ…。彼だけでなく、胡桃すらそれを見た瞬間に目を丸くした。
胡桃「ん…んん…」
「………」
歌衣「あの…なにか?」
歌衣が首を傾げて二人に寄る…。その際軽く前屈みになった為、彼女の谷間は更にその存在を強調をした。
胡桃「いや…水着似合ってるなぁって……」
「うん、本当にね…」
歌衣「あっ…そうですか…?ふふっ、嬉しいです♪」
二人にそう言われて歌衣は嬉しそうに笑うが、彼も胡桃も本当は歌衣の胸の谷間ばかりが気になって水着のデザインが頭に入らない…。大丈夫だとは思うが…歌衣が少しでも跳び跳ねようものなら胸が水着からポロっといってしまいそうな気がして心配だった。
胡桃「じゃあ、あっちのあまり人がいないプールで泳ぎの練習するけど……うい、お前もうちょっとゆっくり歩け」
歌衣「えっ?どうしてですか?」
胡桃「いや…心配で……。お前、水着のサイズ合ってるのか?」
歌衣「ええ、この水着は去年買った物ですからそこまでサイズも変わってないと思います。少なくとも身長は去年と大差ないハズですから」
胡桃「ええっと、身長じゃなくてさ……一年の間でもっと別の部分が成長したんじゃないかなって……」
「ああ、立派にスクスクとね……」
胡桃「っ、なに言ってんだよ…!」ガッ!
「いてっ…」
歌衣の水着は胸元だけが少しキツそうに見え、不安で仕方ない胡桃はボソッと呟く。それを聞いていた彼が相づちを打つが、胡桃はその彼の身体を肘で小突き黙らせた。
というわけで、彼は胡桃ちゃんと共に歌衣ちゃんに泳ぎを教えます。(といってもそれを教えるのはほとんど胡桃ちゃんがやってくれると思いますので、彼はわりと暇になるかも…)
まぁ何はともあれ、海へ行く前に思いがけないタイミングで胡桃ちゃんや歌衣ちゃんの水着姿を見れた彼は幸せでしょう…。
次回はいよいよプール本番ですが、彼・胡桃・歌衣の他にもとある人物を登場させる予定です!ご期待下さいm(__)m
そしてそして、今日よりこの『どんな世界でも好きな人』に関するリクエストを受け付ける事にしました!!私の活動報告にてリクエスト板を作っておきますので、見てみたいイベント等があれば是非リクエスト下さい!(私だけではネタ切れ寸前なのです…(泣))