パパっと書いた話なので少し短めですが、楽しんでもらえたらなと思っています!(一話完結のお話です)
教師「…よし、じゃあ今日はここまで!」
少し体格の良い、パッと見では体育教師にも見える(実際は数学教師なのだが)その男性教師がクラス全員へ授業の終わりを告げる。するとクラスのほぼ全員が教科書やノートを片付け、次の授業が始まるまでの時間潰しを始めた。
教室内で友人と話す者…。
トイレへ向かう者…。
他の場所へ時間を潰しに向かう者…。
時間の潰し方は人それぞれだが、この二年B組の一員である少女…狭山真冬は授業が終わっても席を立つことなく、さっきとったばかりのノートを見直していた。
真冬(うん……肝心な所は全部押さえたかな)
彼女は授業が終わる度、何か書き漏らしはないかと確認をする。たったの一度でもそんな事があった訳ではないのだが、これをやらないと落ち着かなかった。いや…次の授業が始まるまで、これぐらいしかやることが無かったのかもしれない。
女子生徒「ねぇ狭山ちゃん、さっきの授業で分からないところがあってさ…ちょっと教えてくれないかな?」
一人の女子生徒がノートを手にしたまま真冬へと近寄り、ニコニコとした笑みを浮かべる。彼女は真冬がある程度良い成績なのを知っているのだろう。真冬にとっても、他人にそれを教えるのは難しい事ではないのだが……。
真冬「めんどくさい…なんでボクが教えなきゃならないの…?ただでさえ授業が終わったばかりなのに、他人の面倒まで見たくないんだけど…」
女子生徒「なっ…!その言い方、感じ悪くない?」
真冬「知ったことじゃない…。ほら、とっとと席に戻りなよ…」
女子生徒「なにそれ…ムカつくんだけど…!」
真冬は女子生徒と目を合わせる事すらせず、せっせとノートをしまい始める。そんな真冬の一連の行動に腹をたてた女子生徒が彼女の事を睨み付けたその時、一人の少女が割り込んできた。
果夏「うわぁぁっ!!ええっと、ちょっと待ってね!?どこ?どこが分からなかった?」
女子生徒「え?えっと…ここなんだけど…」
茶色のポニーテールを揺らして現れたのは同じくB組の一員である、
真冬(……めんどくさい)
ガタッ…
真冬はこの場を果夏に任せ、あてもなく廊下へ出ることにする。
果夏「ああ!ここねっ!私も分からなかった!!」
女子生徒「はぁっ?役立たずじゃんっ!!」
どうやら果夏の学力では助けになれなかったようだが、女子生徒は特に苛立った様子も見せずに笑っていた。きっと、果夏の性格を知っていたからだろう…。果夏は誰にでも好かれ、場を明るくする力があった…。
真冬(ほんと、ボクとは正反対の人間だな……)
さっきもそうだ…。あの女子生徒とも普通に接してやれば良かったのに、あんな態度をとってしまった。小さい頃から他人と関わるのが苦手で、気づけば嫌われものになっている。
真冬(ま…別にいいけどさ…)
他人と関わるのは疲れる…。だから一人でいるのが楽だ。真冬はそう考えた上で行動していたのだが……。
果夏「真冬たん!!待ちたまえ!」
真冬「………」スタスタ…
果夏「止まりたまえっ!!」
真冬「………」スタスタ…
果夏「…おいっ!そこのペタン
真冬「友達にそんな事を言う最低なヤツ、こっちから友達をやめてやる…」
言いながらも真冬は足を止め、振り向いて後方にいた果夏の方へと歩み寄る。真冬自身、胸があまり無いことを気にしていた為、これ以上果夏に廊下で大声を出させる訳にはいかなかった。
果夏「うわぁぁっ!ごめんごめんっ!もう二度と言わないから!!だからこれからも私とお友達のままでっ…!!」
真冬「二度と言っちゃダメだからね…?次言ったら本気で友達やめるからね?」
果夏「誓いますっ!必要なら誓約書を書きましょうか…!?」
果夏はどこからともなく一枚の紙切れを取り出し、真冬の顔色を窺う。果夏が取り出したその紙切れは誓約書などではなく彼女の答案用紙のようで、救いようの無い点数が記されていた…。
真冬「カナ…もう少し勉強しなよ」
果夏「えぇ~っ!勉強ってツマンナイからな~…」
真冬「…じゃ、そのままでいいんじゃない。カナがそれでいいなら…ね」
恐ろしいほど冷たい目を向けてから、真冬はくるっと身を回して果夏に背を向ける。すると果夏はようやく危機感を抱いたのか、答案用紙を持つその手を震わせ始めた。
果夏「も、もしかして…わたしってかなり馬鹿な娘?いやいや…下には下がいるハズだし、まだ大丈夫…だよね?」
真冬「そうやって
果夏「うぐっ!!?わ、わかった…!これからは少しだけ勉強するっ!!」
彼女がそう答えたのを聞いてから、真冬はどこへ向かう訳でもなく廊下を進む。すると果夏も持っていた答案用紙をポケットヘ雑にしまい、真冬の横をついて歩いた。
果夏「どこいくの?トイレなら一緒にいこっ♡」
真冬「違う…っていうかトイレくらい一人で行ってよ」
果夏「じゃあどこいくの?」
真冬「別に…次の授業が始まるまで時間潰すだけ」
果夏「そう言えば圭ちゃんから聞いたんだけどさ、近所に美味しいケーキ屋さんが出来たんだって!!真冬ちゃん知ってた?」
真冬「知らない…そもそも圭って誰?」
果夏「あっ、真冬ちゃんはまだ会ったことなかったっけ?
嬉しそうに笑いながら、果夏は新しく増えた友達の事を語る。果夏は同じクラスの中にかなりの人数友達がいるのに、他のクラスまでその友好関係を広めているらしい。
真冬(ほんと…ボクとは大違い)
果夏「でねっ、そのケーキ屋さん、また今度一緒に行かない?圭ちゃんも仲の良い娘を連れてくるって言ってたから、わたしも真冬ちゃんと一緒に行きたいなぁ~って思ってて…」
真冬「わざわざボクなんかを誘わなくても、カナなら他にも仲の良い人がたくさんいるでしょ…。それとも、もう何人かに断られたあとなの?」
歩みを止め、果夏の目を見つめながら尋ねる。果夏の友人の多さはかなりのものだ。そんな彼女が、自分のような者を誘うなんて…。真冬がそう考える中、果夏はいつになく真剣な表情で答えた。
果夏「誘ったのは真冬ちゃんが最初だよ。だって、一番の親友だもんっ!!」
真冬「あぁ…そう…」
果夏「これマジだからねっ!わたしは他の誰よりも真冬ちゃんが好きっ♪真冬ちゃんの為なら…全ての友を捨ててもっ…!」
真冬「ダメだよ。友達は大事にしなきゃ…」
果夏の発言は決して冗談ではない。彼女は真冬の事を強く思っていて、誰よりも仲良くしたいと願っていた。真冬も彼女のスキンシップがあまりにしつこい事から、それには気付いていたのだが…。
果夏「もしかして、真冬ちゃんはわたしの事が嫌い…?どうしてっ!?やっぱりしつこくし過ぎた!?」
真冬「そこまでは思ってない…。っていうか、しつこくしてる自覚あったんだ」
果夏「まぁ…多少?ごめん、あまりしつこいのは疲れちゃうよね?」
真冬「…疲れはしないよ。ま、
果夏「みゃっ!?は、反省します……」
真冬の言葉を聞き、果夏はがっくりと肩を落とす。すると果夏は直後にハッと顔を上げ、不安そうな顔を真冬へと向けた。
果夏「も、もしかして真冬ちゃん…そもそもわたしを友達だと思ってなかったり……」
真冬「……どーだろーね」
真冬は歩くペースを上げ、果夏との距離を開く。チラッと振り向くと果夏がやたらと真っ青な顔をしていて、それがとても愉快だった。
果夏「ヤバいって!!真冬ちゃんが友達だって言ってくれないと、わたし淋しくて死んじゃうんだからっ!!」
真冬「あらら…それはそれは……」
果夏「今の意味深な笑顔は何っ!?何を意味してるのっ!?」
果夏は慌てた様子で真冬の元へと駆け寄ろうとする。…が、その途中すれ違った教師に果夏は捕まり、廊下の真ん中で説教が始まってしまった。
慈「
果夏「佐倉先生っ、今はそれどころじゃないんですっ!!その手を離して下さいっ!!」
慈「離しませんっ!!離したらまた走るでしょ!?」
果夏「走りますけど…走りますけどっ…!!でもぉっ…!!」
真冬「……ふふっ」
廊下の真ん中で慈に説教される果夏を見て、真冬は満足そうに笑う。他人と関わるのは苦手だが、こうして彼女をからかうのは中々に面白い。そしてそれとは別にもう一つだけ、真冬の笑顔には理由があった。
果夏『も、もしかして真冬ちゃん…そもそもわたしを友達だと思ってなかったり……』
真冬が笑うもう一つの理由。それは彼女が言ったこの言葉だ…。
真冬(カナ…気付いてないんだね…)
果夏『…おいっ!そこのペタン
真冬(ああ言われた後、ボクはキミに何て答えたかな……?)
あの時の彼女の言葉、そして直後に放った自分の言葉を思いだし、真冬はふふっと笑う。こんな簡単な事にすら、果夏は気付いていないのだから。
真冬『そんな事を言う最低なヤツ、こっちから友達をやめてやる…』
真冬(…ね?元から友達だと思ってないのなら、そもそも『友達やめる』なんて言葉を使わないよ…。カナはうるさくて鬱陶しいけど、それでも…ボクの大切な………)
果夏「佐倉せんせ~っ!!離してっ!お願いだからっ!!」
慈「だからっ!離したらまた走るつもりでしょうっ!?そんなのだめですからねっ!!廊下は走っちゃだめなの!!」
果夏「でもっ、走ってでも掴まなきゃいけない真実がそこにあって…!!」
慈「訳が分からないこと言わないのっ!!」
真冬「…ふふっ、カナは本当にバカだなぁ♪」
どうだったでしょうか?外伝という事で彼は一切出番なしでしたが、これはどうしても今、書きたい話だったのです。今回の話を見て、真冬と果夏…二人の関係がどんなものなのかを知っていただけたらと思います。