『胡桃ちゃんが足を挫いてしまったので、彼に背負ってもらいました』
果夏「二人とも、遅いですよ~!!…って、くるみ先輩、なんで背負ってもらってるの?」
胡桃「いや…足
二人が川辺に戻って早々、彼の背に乗る胡桃をじっと見つめる果夏。胡桃は何故こうなったかの
果夏「あら~。平気ですか?」
胡桃「ん~…まだちょっと痛むけど、大丈夫」
ニコリと微笑み答えると、果夏以外の面々もそこへ集まりだす。彼の背に乗っているのを皆に見られるのが少しだけ恥ずかしくて、胡桃はそっと顔を俯けた。
慈「とりあえずここに座って。捻ったところ、しっかり冷やさないと…」
悠里「私、タオルを濡らしてきますね」
慈はそばに置かれていた折り畳み式の椅子を胡桃の前へと運び、そこへ座るようにと指示をだす。すると、彼はその場に屈んで背中から降りやすいようにしてくれた。
胡桃「…ありがとな」
「どういたしまして。お姫さま」
彼の両肩に回していた手をそっと離し、その背中から降りる。用意されていた椅子の座り心地は悪くないが、ほんの少しだけ…彼の背中を離れてしまったのが残念に思えた。
由紀「くるみちゃん、ちょっとガッカリしてるでしょ?」
胡桃「なっ!?」
そこまで
胡桃「してねーよっ!ワケわかんないこと言うなっての…」
由紀「ほうほう…ほうほう……!ふ~ん、そうだよね~♪」
胡桃(な、なんかムカつく……!)
慈が胡桃の足首に冷えた濡れタオルを当てる中、由紀はニタニタとした笑みを浮かべてその周りをグルグル回る。出来るなら今すぐに取っ捕まえ、それを止めさせたい…。そう思う胡桃だが、足を怪我しているせいでそれは叶わない。
由紀「えへへ~。くるみちゃんは乙女だな~♪」
胡桃「…ゆき。あたしが動けるようになったら…その時は覚悟しろよ」
足は無理に動かせないが、そちらに顔を向けることは出来る。胡桃がギロリと鋭い目付きで睨みを利かせると、由紀はビクッと肩を震わせて笑みを引っ込めた。
由紀「ほ、ほんの冗談だよ~……。お、怒ってないよね…?」
胡桃「さぁ…どうだろうな~…」
由紀「うぐっ!?ご、ごめんなさいっ!!」
胡桃は笑顔を見せてくれたが、目だけが笑っていない…。それに底知れぬ恐怖を感じた由紀は彼女の横でペコペコと頭を下げ続け、どうにか許してもらうことに成功した。
その後、圭と果夏が皆の為にと考えてきたデザート…フルーツポンチを作り出す。美紀や悠里達もそれに手を貸そうとしたのだが、二人は何故かそれを拒み、自分達だけでそれを作っていった。圭と果夏は二人だけで作ったそれをコソコソとテーブルに運び、人数分用意したプラスチックの容器へと移していく。
圭「お待たせ~!テーブルに並べておいたから、好きなのを取ってね♪」
美紀「
圭「いやいや、美紀ちゃん達の手をわずらわせるまでもないよ!わたしと果夏だけで十分っ!ほら、早く好きなのを取って!」
圭はニッコリと微笑み、テーブルに並べられた内のどれかを選ぶようにと美紀を急かす。なんだか様子がおかしいような気もするが、気のせいだろうか…。
由紀「わたしは…少しでも量の多いやつがいいなぁ…」
胡桃「じゃあ、これだろ。ま、あたしは適当に…」
少し量の多かったものを由紀に教え、胡桃自身は椅子に座ったまま適当なものを手に取る。圭と果夏が作ったデザートは白玉やフルーツなどにサイダーをかけただけの簡単な物だが、十分な出来に仕上がっていた。
果夏「るーちゃんには、いっぱいフルーツが入ってるやつをあげるね♪」
るー「いいの?ありがとうっ」
果夏「いやいや、良いってことよ~」
るーがテーブルに並べられていたフルーツポンチを選び出すと、果夏は別に用意していた物を彼女へと渡す。他のと比べて少しカラフルなその容器には、フルーツも白玉も他のより多く入っていた。沢山のフルーツを見て嬉しそうに目を輝かせる妹を見た悠里は果夏に笑顔を見せ、その礼を告げる。
悠里「果夏さん、ありがとうね」
果夏「いえいえ!お気になさらずっ!」
るーはテーブルに置いてあったスプーンを使い、一足先にそのデザートを食べ始めた。満足そうなその笑顔を見た感じだと、どうやら味に問題はないようだ。
果夏「まぁ…るーちゃんを巻き込んじゃかわいそうだもんね」
悠里「んっ?なにか言った?」
果夏「あっ…い、いえっ!なんでもございませんよ~」
と、口ではそう言ってはいるものの、果夏の様子はどこかおかしい…。みんなにデザートが行き渡った事を目でじっくりと確認しているかと思えば、自分はそのデザートを恐る恐る口へと運んでいるのだ…。
果夏「ん~…みんな、今のところは大丈夫っぽいね。圭ちゃんは?」
圭「私も、今のところはセーフっぽい…」
果夏と圭…二人はそれぞれ、手に持っている容器の中の白玉だけをじっと見つめる。他の皆には言っていないが、この白玉にはちょっとした物が仕込まれているのだ。
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時間を少しだけ巻き戻し、果夏と圭が買い出しに行っていた時へと移る…。
二人は飲み物などを買う為、地元のスーパーを訪れていたのだが、そこであるものを見付けてしまった…。
果夏「…っ!?圭ちゃん圭ちゃんっ!見てこれっ!!」
圭「うん?それ…白玉?」
果夏が嬉しそうに持ってきたパックには完成済みの白玉がいくつも入っており、更に値引き対象というシールも貼られている。せっかく来たのだし、これを使ってデザート作りも良いかも知れない。そんな事を思う圭だったが…。
圭「あれ、何これ…『ロシアン白玉』?」
よく見ると、パッケージにそんな文字が記されている。その名前だけで大体の察しはついたが、果夏がそれを嬉しそうに説明を始めた。
果夏「これね、中に一個だけ激辛白玉が入ってるんだって!スゴくない!?めちゃくちゃ面白そうじゃないっ!?」
圭「う~ん……どうだろう?」
果夏「絶対に楽しいって!!やろ?ねぇやろっ!?ほら、フルーツポンチ的な感じにして混ぜちゃえば良いじゃんっ!」
圭「じゃあ……やる?」
正直に言うと、圭もそれに面白そうな気配を感じていた。彼女がニヤリと微笑むと果夏もニヤリと笑い、二人はそのロシアン白玉やカットフルーツ…そして、るーだけには普通の白玉を別に買って用意する事にしたのだ。
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そして現在、個別に普通の白玉を入れてあげた、るー以外の人間にはいつその激辛白玉が当たってもおかしくないのだが、それを食べた感じのリアクションを見せる者は現れていない…。
果夏(こ、これでわたしのヤツが当たりだったらヤダな……)
自分の持つ容器の中には、あと一つだけ白玉が残っている。果夏はそれを恐る恐る口へと運ぶが、最後のこれも普通に美味しいものだった…。では圭はどうだろう?果夏は隣にいる彼女を見てこっそりと確認するが、彼女の持つ容器にはもう白玉が無かった…。
果夏「…全部セーフだった?」
圭「うん。果夏も…?」
果夏「うん…。ということは、わたしら以外の誰かに当たりが…」
見たところ、既に由紀、美紀、慈は白玉を食べ終え、残ったフルーツに手をつけている。つまり、彼女達には当たらなかったのだろう…。残るは胡桃、悠里、真冬、そして歌衣だが……。
胡桃「ごちそうさん」
歌衣「ごちそうさまでした」
胡桃と歌衣はそれを全て食べ終え、空の容器をテーブルに置く。見た感じ、激辛白玉には当たっていない。
悠里「ふぅ、ごちそうさまっ」
胡桃と歌衣に続き、悠里もまた空の容器をテーブルに置く。その表情は涼しげなものだったので、彼女も当たり…激辛白玉は引いていないだろう。ということは…
圭「これ、真冬に当たりがいってるよね?」
果夏「う…うん…。そうっぽいね…」
満腹だと言っていた真冬は他の皆がそれを食べ終えた今も未だのんびりとしており、残った最後の白玉をスプーンでつついていた…。察するに、その白玉こそが激辛白玉なのだろう。
果夏(すまんな真冬ちゃん…。恨まないでね…)
満腹だからいらないと言っていた彼女へ無理にデザートを振舞った上、激辛白玉なんてふざけた物を食べさせてしまう事に…さすがの果夏も少しだけ申し訳なさを感じた。誰にも気付かれぬよう、果夏がその頭を真冬に向けこっそりと下げた時…真冬は驚くべき行動に出る。
真冬「……由紀、残ったやつ食べる?ボク、もう限界…」
果夏(なっ…!?)
圭(最後の最後でっ…!!?)
最後の白玉が入っているその容器を、スプーンごと差し出す真冬…。それを差し出された由紀は満面の笑みを浮かべ、両手を伸ばした。
由紀「いいの?わ~い♪ありがと~!!」
由紀はそれを受け取った直後、すぐにスプーンで白玉をすくい上げ、口へと運ぶ。口内に転がった白玉をモグモグと噛みしめる彼女の幸せそうな表情を見ていたら今さら罪悪感を感じてしまい、果夏と圭はそっと目を逸らした…。
圭「ゆき先輩、すいません…」
果夏「先輩にだけは、当たってほしくなかった…」
二人は目を逸らしたままボソッと呟き、来るであろう由紀の悲鳴に備える…。彼女の事だ、激辛白玉なんぞ食べたら泣きながら叫ぶに違いない。そう思い、覚悟を決めた二人だが…
由紀「おいしかった~♪真冬ちゃん、ありがとね!」
真冬「ううん。気にしないで…」
由紀は空になった容器をテーブルに置き、満足そうにお腹を擦りだす。今のは最後の白玉だったハズなのに、辛くなかったのだろうか…。果夏と圭はお互いに顔を見合わせ、戸惑い始める。
圭「ど、どういうことっ?」
果夏「わかんない…。もしかしたら言うほど激辛じゃなくて、当たりを引いた人が気づかなかったのかも…」
圭「あぁ…なるほど。それはありそうだね…。じゃ、失敗?」
果夏「失敗だね。さっ、片付けしよ」
つまらない結果になってしまったが、仕方ない。二人は気持ちを切り替え、容器やスプーンの片付けを始めることにした。
悠里「二人とも、私も手伝うわ」
果夏「あっ、大丈夫ですよ。わたしと圭だけでやれますから」
片付けを始めてすぐ、悠里が二人を手伝おうと歩み寄ってくる。片付けといっても容器やスプーンを回収し、そばの川でさっと洗うだけだった為、悠里の手を借りる程では無かったのだが。
悠里「だーめ。二人はあのデザートを作るのも自分達だけでやってくれたんですもの。片付けくらい手伝わせて?」
果夏「…じゃあ、お願いしちゃおっかな♪」
圭「じゃ、スプーンの方を任せて良いですか?私と果夏は容器を洗っちゃうんで」
悠里「ええ、任せてちょうだい」
果夏と圭で空になった容器を、悠里はスプーンを運んで、川へと向かう。緩やかに流れているその川の水は綺麗に透き通っており、手を入れてみるとその冷たさをハッキリと体感できた。
圭「うぉ~、冷たいな~。ちょっと果夏、飛び込んでみなよ」
果夏「う~ん。飛び込むにはちょっと冷たすぎるかな?凍えちゃうよ」
圭「あはは、それもそっか」
他愛ない会話を交わしながら川に容器をつけ、汚れをさっと落とす。果夏と圭のすぐ隣には悠里がいて、彼女はスプーンを一本ずつ丁寧に洗っていた。
悠里「デザート、本当にありがとうね。るーちゃんも喜んでたわ」
圭「いえいえ、気にしないで下さいっ」
果夏「適当にパパっと作ったヤツですけど、美味しかったですか?」
容器をジャブジャブと洗いつつ、悠里に感想を尋ねる。るーには気に入ってもらえたようだが、姉である彼女の口にあったかどうかも気になった。
悠里「ええ、美味しかったわよ。少しだけ…ピリッとしてて……ね?」
果夏「………みゃっ?」
圭「………えっ?」
悠里がポツリと放ったその言葉に戸惑い、洗っていた容器を川へと落としそうになる…。二人がそっと目線を横へ向けると、そこにはこちらを見つめながらニコニコと、どこか影のあるような笑みを浮かべる悠里がいた。
悠里「あれ、やったのはどっち?」
圭「あ、あれ…というのは…?」
悠里「一個だけ、すっごく辛い白玉があったの。さすがの私も少しだけビックリしちゃった…♪」
悠里は自分の頬に手を当てながらニコニコと微笑み、スッ…スッ…と二人のそばへにじり寄る。笑っているのに、何故か怖い…。これまで生きてきた中でこんな表情に出会ったことが無い圭は横にいた果夏の肩をガシッと掴み、悠里の前へと突き出す。
圭「か、果夏が言い出したんです!私は反対しましたよっ!!?」
果夏「わわっ!?ウソだよっ!反対なんかしてなかったじゃんっ!?」
圭「心の中でしてたんだよ!!」
果夏「なにそれっ!?反則でしょっ!!」
悠里「いいから、二人ともそこに座りなさい?」
圭「で、でもっ…!」
果夏「りーさんっ!わたしの言い分も聞いて――」
悠里「座りなさい?」
特別大きな声量ではないが、とてつもない圧が込められている声だった。さすがの二人もこれには従わないとダメな気がして、その場に渋々正座する。足元にはたくさんの小石がゴロゴロしていて、正座すると足が痛かった…。
~~~~~~~~~
それから十数分経ち、容器等を洗い終えた悠里達は皆の元へと戻る。戻ってきた三人の様子はどこかおかしく、全員が違和感を感じた。
慈「ごくろうさま。あれっ…?何かあったの?」
悠里「ふふっ。大丈夫ですよ♪」
悠里はそう言って慈の横を通りすぎ、待っていた妹の元へ戻る。彼女はこう言っているが、あとの二人はとても大丈夫なように見えない。
真冬「カナ、泣いてるの?」
果夏「ひぐっ…!こわ…かった……こわかったよぉ…!」
圭「そんなに泣かないでよ…。私だって怖かったんだから…」
美紀「な、何があったの?」
果夏は何かに怯えているかのように身体を震わせており、圭もまた虚ろな目をしている。彼女達と悠里の間に何があったのか…細かな事までは分からないが、何かがあったのは明白だ。
圭「いや、元はと言えば私達のせいだからね…。何も言い返せないんだけどさ…。ただ、りーさんがいる時に変な悪ふざけはしちゃダメだって知ったよ…」
果夏「笑ってるのに、すっごく怖かった……」
悠里のあの笑顔を思い出す度、果夏の背筋がゾクッとする。二人が悠里の怖さを知った所でバーベキューは終わり、使った道具類を皆で片付けていった。それぞれが自分の運ぶ物を決めてコテージに戻ろうとする中、胡桃は苦い表情を浮かべる。
胡桃「…くそっ。まだ痛いな…」
捻った足はまだ痛み、歩くのがやっとだ。しかし皆が荷物を運ぶ中、自分だけ何もしない訳にはいかない。胡桃はそばにあった折り畳み式の椅子を運ぼうとするが、由紀がそれを奪い取った。
由紀「くるみちゃんは休んでて!足、いたいでしょ?」
胡桃「こんくらい平気だって。ほら、それ貸せよ」
由紀「だーめ!どうしても欲しいならわたしに追いついてね~!」
由紀は椅子を持ったまま駆けていってしまい、胡桃との距離を一気に開く。悔しいが、今の足では追いかけられない。胡桃は『はぁっ』とため息をつき、離れていく由紀を見つめた。
胡桃「じゃあ、あたしは何を運べばいいんだよ…」
圭「とりあえず、これでも持ってて下さい♪」
不意に現れた圭は彼女にビニール袋を手渡し、ニッコリと微笑む。その袋の中には使い終えた割り箸や紙皿など、軽めのゴミが入れられていた。こんな軽い物で良いのか…。胡桃がそんな事を思っていると、いつの間にか目の前に彼がいて、また腰を屈めていた。
胡桃「なっ!?帰りはいいって!!自分で歩くっ!」
「まぁまぁ。こっちも仕事がなくてね。運ぶ物が胡桃ちゃんくらいしか…」
胡桃「ったく…あたしは物かよ」
圭「良いんじゃないですか?甘えちゃいましょうっ!」
圭は胡桃の背中をトンと押し、無理矢理に彼の背中へ寄せる。よろめいた胡桃はそこにポスッと身体を寄せ、仕方なく、そのまま彼の肩へと腕を回した。
胡桃「…ごめんな。また頼めるか?」
「ああ。任せといて」
彼は再び胡桃を背負い、コテージに続く道を歩く。先程とは違い辺りには皆がいた為、胡桃は少し恥ずかしそうだ。
果夏「いいですね~♪」
胡桃「…何がだよ」
彼に背負われる胡桃を見た果夏は多くを語らず、ただニヤニヤと微笑む。しかし、それは彼女だけではない。よく見れば、真冬や美紀…歌衣を除くほとんどの人間がこちらを見てニヤニヤと微笑んでいる。胡桃はその目線に耐えながら彼の背中へと顔を埋め、コテージにたどり着くまでの時間を過ごした…。
そうしてコテージにたどり着き、皆は一~二時間、ダラダラと休んだ身体を休ませる。夕暮れが近づき、いよいよ家に帰るという時にはもう、胡桃の足もいくらかまともに動かせるようになっていた。色々と大変な事はあったものの、全体的に見れば、とても楽しい一日となった。
そんなこんなで色々ありましたが、楽しい一日になったようでよかったです(*´-`)
今回でキャンプ編は終わり、次回は海編となります!!
ご期待下さいませ!(о´∀`о)