軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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みーくんとの散歩から戻った、次の日のお話です。
今回はちょっとした息抜き回なので、ドキドキ成分は特にありません(汗)



第四十七話『おみやげ』(☆)

悠里「さて、今の内に荷物をまとめておきましょうか」

 

圭「あれ?もうですか?」

 

悠里「ええ。午後には帰り始めるんだし、そろそろ支度しないとね」

 

持ってきていたバッグに荷物を詰めていき、悠里は帰り支度を整えていく。今の時刻は午前10時過ぎ…。皆もう布団を片付け追え、服を着替え、朝食も済ませた。あとは午後過ぎに出る電車に乗り、巡ヶ丘へと帰るだけだ。

 

 

 

圭「あ~…まだ遊び足りない気もするなぁ…」

 

由紀「わかる…わかるよその気持ちっ!!わたしもまだ遊び足りないもん!ねぇりーさん、もう一泊してっちゃだめなの?」

 

悠里「だめ。予定していたとおり帰らないと家族の人が心配するでしょうし、それにもう一日泊まっていく分のお金なんて用意してないもの」

 

由紀「う~、それもそっか…残念」

 

由紀はガクッと肩を落とし、その場に寝転ぶ。遊び足りないという彼女らの気持ちは悠里も理解しているが、こればかりは仕方がない。

 

 

 

悠里「また、みんなで旅行しましょ。次は二泊か、三泊にして…ね?」

 

由紀「うんっ!わたしは丸々一週間くらいでもいいよ!」

 

悠里「そんなに長いのは…ちょっとねぇ」

 

由紀はスタッと起き上がり、目を輝かせる。悠里はそんな彼女の発言に苦い笑みを浮かべつつ、その頭を優しく撫でていった。その時、彼女らのいる部屋の戸が開かれ、トイレに行っていた彼と…少し前から一階の方に行っていた美紀が同時に入ってくる。

 

 

パタンッ

 

圭「おかえり~。美紀ちゃん、何してたの?」

 

美紀「えっ?ああ、少し散歩してきただけだよ」

 

圭「散歩?私も行きたかったから、声かけてくれればよかったのに…」

 

美紀「ごめんごめん。じゃ、またあとで一緒に行く?」

 

圭「うん、そうしてくれると嬉しいかな~」

 

美紀が自分の隣に腰を下ろしながら言うと、圭は嬉しそうに微笑んだ。午後にはここを出ていく予定だが、まだ辺りを見て回る時間も少しくらいは残されているだろう。

 

 

 

「あれ?何人かいなくなってるな…」

 

彼は室内を見回し、人数が足らないことに気が付く。今ここにいるのは悠里と由紀、美紀と圭、そして自分の五人だけだ。

 

 

 

悠里「くるみは歌衣さんと、狭山さんは果夏さんと、それぞれお土産を買いに行ったわよ」

 

「あ~、お土産ねぇ…なるほどなるほど」

 

そう言えば昨日は自分達が遊ぶのに夢中で、土産物を買うのを忘れていた。と言っても彼は今一人暮らしで、土産を与えるような人間がいないと思っていたのだが…ふと、思い当たる人物が一人だけ思い浮かぶ。

 

 

 

(…いや、そう言えば佐倉先生に太郎丸の世話をしてもらっていたっけな。なら、あの人にだけは何か買っておくべきかも…)

 

 

 

「僕もちょいと見てきますかね…」

 

悠里「なら私も行くわ。るーちゃん用に良いのがあればいいけど…」

 

由紀「わたしも行く~!」

 

 

圭「じゃあ、美紀ちゃんも私と行こうよ。散歩兼お土産探しの旅だよ」

 

美紀「わかった。じゃあ行こっか」

 

帰りの電車が来るまでの時間はあと三時間ほど…。駅まではそう遠くないので、ギリギリまで出歩いていても大丈夫だろう。彼、由紀、悠里。そして美紀と圭の五人は一緒に宿を出ていくと、町の方へと向かい土産を探し始めた。

 

 

 

悠里「じゃ、また何かあったら連絡してね?」

 

美紀「はい、わかりました。圭、行こう」

 

圭「では、またあとで~!」

 

五人一緒に行動していても良いが、せっかくの旅…気の知れた友達と二人で出歩くのも良いだろう。何かあった際は連絡する事だけを約束し、悠里達は美紀、圭のコンビと別れることにした。圭に手を引かれて連れられていく美紀の顔は少し困っているようにも見えるが、圭自身はとても楽しそうだ。

 

 

 

由紀「仲いいねぇ」

 

悠里「ええ、そうね♪じゃあ、私達もお土産探しましょうか?」

 

「ですな」

 

一行が訪れた町は巡ヶ丘ほど都会ではなく、海沿いの田舎といったような雰囲気だ…。しかしそれでも探せば色々とあるもので、立ち寄った店にはここにしか無さそうな物も売っていた。

 

 

 

由紀「………」

 

「由紀ちゃん、それは…?」

 

由紀「これ?ここのご当地キャラなんだって」

 

由紀の手に握られているキーホルダー…それには全身にフジツボを纏った妙なぬいぐるみが付いていた。人なのか、獣なのか、それともフジツボそのものなのか…。何にしろ、お世辞にも可愛いとは言えない。しかし、由紀はそれを随分と気に入ったようで…。

 

 

 

由紀「…買ってこうかなぁ」

 

「え……本気?」

 

由紀「本気だよ。だって可愛いじゃん」

 

「………どうぞご自由に」

 

目の前にある棚には同じ物体がズラリと並べられていて、見た感じあまり売れているように見えない…。まぁそれもそうだろう。こんなに可愛くないご当地キャラのキーホルダーなど、買う人はそういないハズ。しかし、決めるのは由紀自身だ。彼女は満面の笑みを浮かべながらそれを二つ手に取り、レジへと向かっていく…。

 

 

 

(……あれ、今二つ持っていったか?)

 

見間違いかと思ったが、由紀はやはりそれを二つ持っている。レジに行った彼女はすぐに会計を済ませて戻り、一つの小さな紙袋を悠里へ手渡した。

 

 

 

悠里「ん?何、これ?」

 

由紀「わたしから、るーちゃんへのお土産!わたしとお揃いだよって教えてあげてね♪」

 

悠里「…わかったわ。あ、ありがとね…」

 

とても良い笑顔を浮かべる由紀の右手…そこにはフジツボだらけの奇妙なマスコットキャラがいて、悠里は苦笑する。『お揃い』という言葉から察するに、今受け取った紙袋の中にもアレがいるのだろう…。

 

 

 

「…るーちゃん、泣いたりしないかな」

 

悠里「どうかしら…。あの子、ゆきちゃんと結構気が合うから…意外と喜ぶかもね」

 

由紀に聞こえぬよう、小声で会話していく二人。せっかくのお土産、悪いように言いたくないが、やはりこのキャラだけは可愛いと思えない…。

 

 

 

悠里「あなたは何か買った?」

 

「いや、まだです。佐倉先生に何か良いものを…と思ったんだけど」

 

悠里「たしか、ワンちゃんを預かってもらってるんだっけ?」

 

「ええ、まぁ」

 

立ち寄った店には由紀が買ったようなキーホルダーの他、ご当地感のある菓子や食品なども多く置かれていた。しかし、それらを見れば見るほど悩んでしまう…。慈はいったい、どういうものを喜んでくれるのかと…。

 

 

 

「…………むぅ」

 

悠里「ふふっ、お土産選び、私も手伝いましょうか?」

 

「…頼みます」

 

自分だけではいつまで経っても決められそうにない…。そう考えた彼は悠里の手を借りる事にして、共に辺りを見て回る。その結果、いくつかの良さそうな土産物を購入することが出来た。

 

 

 

 

「とりあえずはこんなところかな。りーさん、ありがとうございます」

 

悠里「いえいえ。めぐねえ、喜んでくれるといいわね」

 

「そうですなぁ…。あ、これ…僕からるーちゃんに」

 

悠里「あら、そんな気をつかわなくていいのに…」

 

土産物の入った紙袋から一つの箱を取りだし、それを悠里へと手渡す。彼女に渡したのはちょっとしたお菓子で、るーに贈るには無難な物だと思われた。

 

 

 

「りーさんには土産選び手伝ってもらったし、そのお礼ってことで」

 

悠里「じゃあ…ありがたくもらっておくわね。ふふっ、るーちゃん、きっと喜ぶわ♪本当にありがとう」

 

「いえいえ」

 

一先ず慈、るーへの土産を買い終え、三人はその店をあとにする。空は今日も綺麗に晴れていて少し暑いが、雨に降られるよりは全然良い。

 

 

 

 

由紀「お母さんとかお父さん用にも、何か良いお土産ないかなぁ~」

 

悠里「そうね。私も買っていかないと…」

 

先ほどの店で、るー用のお土産は買ったが、両親らに渡す物がまだだ。どこかに良い店はないか…。そんな事を思い道を進んでいくと、聞き覚えのある声が三人の耳へと入る。

 

 

 

 

果夏「いや!可愛いよ!!絶対に可愛いっ!!」

 

 

 

由紀「あっ、カナちゃんの声だ」

 

「その店の中か…?」

 

悠里「…行ってみましょうか」

 

声の方へ進んでみると、こじんまりとした一つの店が目に入る。店の扉は開けっ放しになっていた為、三人はその中へ足を踏み入れた。

 

 

 

真冬「こんな変なの、魔除けくらいにしか使えない…」

 

?「まぁ、これ自体が"魔"みたいなモンだけどな……」

 

果夏「え~?そんなことないと思うけどなぁ…」

 

店の奥では真冬と果夏がいて、カウンター前の椅子に腰かける一人の男性と話していた。恐らくこの店の店主だろう。微かに乱れた髪…顎に伸びた無精髭…良く言えばワイルドな雰囲気が漂うその男の手には、由紀が買ったのと同じあのキーホルダーが握られていた。

 

 

 

由紀「やっぱりカナちゃん達だ。どうしたの?」

 

悠里「声が外まで響いてたわよ」

 

果夏「おっ、りーさん達じゃないですか。ちょっとこっちへ!」

 

果夏は目が合うなり悠里の手を掴み、カウンターの方へと引き寄せる。悠里は突然の事に戸惑いつつ、果夏が止まるのを待った。

 

 

 

 

悠里「いったい何事?」

 

果夏「りーさんも見てくださいっ!!」

 

悠里「見てって…なにを?」

 

ワケが分からぬまま、悠里は果夏の目を見つめる。すると果夏は目の前にいた店主であろう男が持っていた例のキーホルダーをサッと奪い取り、悠里の前に突きだした。

 

 

 

果夏「この子!可愛くないですか!?」

 

悠里「…えっ?」

 

真冬「カナ…悠里を巻き込むのは悪いと思う」

 

目の前に突き出されたのは、フジツボだらけの奇妙なマスコットキャラ…。つい先ほど、由紀が買ったのと同じ物だ。

 

 

 

悠里「え、えっと……可愛いんじゃ…ないかしら?」

 

果夏「ほれ見たことか!やっぱり可愛いじゃん!」

 

真冬「いや…悠里は気をつかって嘘をついただけ」

 

悠里「………」

 

確かに真冬の言ったとおり、悠里は今嘘をついた。正直に言わせてもらえばこのマスコットキャラは奇妙以外の何者でもないが、るーへの土産としてこれを買ってくれた由紀の手前、そんなことを言うわけにはいかない……。

 

 

 

果夏「真冬ちゃんにはこの良さが分からないんだね」

 

真冬「ボクだけじゃなく、このおじさんも分かってないけどね…」

 

?「おじさんって呼ぶのはやめてくれ…。そこまで歳じゃない」

 

真冬「じゃあ何て呼べばいい?店員さん?」

 

誠「俺は誠って名前なんで、普通に"マコトさん"…でいいかな。理想的な呼ばれ方は"お兄さん"だが…贅沢は言わないさ」

 

座っていた椅子の背もたれに寄りかかりつつその男…(マコト)は果夏の手からキーホルダーを奪い返す。誠はそのままキーホルダーをじっと見つめると、直後に苦い表情を浮かべた。

 

 

 

 

誠「ほんっとに気持ち悪いキャラだな……」

 

果夏「自分の店にある商品に向かってその言い方は酷いよ!」

 

由紀「そうだよ!この子、すっごく可愛いのに!!」

 

果夏「おお!やっぱりゆき先輩は私の味方だ!」

 

このキャラの可愛さに気付いたのが自分だけじゃないと知り、果夏は満面の笑みを浮かべる。由紀もそれに応えるようにしてニッコリと微笑み、二人は謎のハイタッチを交わした。

 

 

 

誠「こんなキャラ、俺だって置きたくて置いてる訳じゃないんだ。愚痴くらい言わせろ」

 

真冬「ほんとは置きたくないの?」

 

誠「まぁな。けどこれを考えたのがウチの従業員なもんで…置かざるを得ない状況というかなんというか…」

 

?「またそんな事言って……私、本当に落ち込みますよ?」

 

誠がキーホルダーを見ながらブツブツ言っていると、彼等が話していた場所よりも更に奥…店の裏の方から段ボールを抱えた一人の女性が現れる。肩よりも少し先まで伸びた黒髪を揺らす、わりと綺麗な人だ。恐らく、由紀達よりも少しだけ年上だろう。

 

 

 

誠「すまんな宮野。悪気はないんだ」

 

宮野「嘘ですね。もうマコトさんの言葉は信じられません」

 

 

誠「あ~…ありゃかなり怒ってるな……」

 

女性は誠の事を一瞬睨みつけた後にプイッと目を逸らし、持っていた段ボールの中にあった物を店内にある商品棚へと並べていく。どうやら、彼女はここの従業員らしい。

 

 

果夏「彼女さんですか?」

 

誠「いや、アイツは宮野っていって、ここの従業員…。そして、お前がやたらと気に入ってるこのフジツボ怪人を生み出した張本人だ」

 

果夏「へぇ~っ!あの人が!」

 

誠からその事を聞いた果夏、そして由紀はキラキラと目を輝かせて宮野の元へ歩み寄る。どうやら、自分達があのキャラをどれだけ気に入っているのかを語りに行ったらしい。彼女らに話しかけられた宮野の目は先程誠に向けていたような冷たいものではなく、とても温かなものだった。

 

 

 

 

悠里「あの人がこのキャラを生み出したのは分かりましたけど、それってどういった経緯で…?」

 

誠「…今から半年程前の事だ。町おこしの一環(いっかん)として、ご当地キャラを生み出そう…この町に住む誰かがそんな事を言い出した。しかし、その計画はすぐさま壁にぶち当たった。この町にはキャラクターデザインの出来る人間がいなかったんだ」

 

「…………」

 

誠「誰一人としてキャラのデザイン案を出せずにいる中『なら私がやってみたい』と、一人の女が名乗りをあげた。それがウチの従業員…宮野だ」

 

誠は語りながら携帯を手に取り、画面に文字を打ち込んでいく。どうやら何か調べているようだ。

 

 

 

誠「『どんな案だろうと無いよりは良い』…町の人間はそんな風に考え、宮野に全てを任せた。俺的には、こんなキャラクター案なら無い方がマシだったと思っている」

 

などと言いながら鼻で笑い、誠は携帯の画面を彼や悠里、そして真冬へ見せる。その画面にはとある記事が映っていたのだが…。

 

 

 

悠里「……これは」

 

「なになに…『気持ち悪すぎると話題のご当地キャラ…フジツボン』」

 

真冬「フジツボンって…このキャラの名前?」

 

誠「ああ、そうだ」

 

単純な名前…そして気持ち悪い容姿……見れば見るほど、このキャラの魅力が分からなくなる。これを生み出したあの宮野という女性や、これを可愛いと言い張る由紀達の精神状態が心配になるほどだ。

 

 

 

 

誠「不気味なキャラだが、その不気味さがウケたのかもな…。グッズが出てすぐにこんな記事が出来たりして話題にもなり、信じられないことに一部の層にはウケているらしい…。世も末だな」

 

真冬「…だね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




前の話で本編キャラの未奈ちゃん、白雪ちゃん、弦次くん…そして穂村&圭一コンビを登場させたので、せっかくなら、同じく本編キャラである誠さん&宮野さんも登場させたい!と思って書いた今回の話…。少しでも楽しんでもらえたならと思います( ´∀`)

次回でこの海編も終わりなので、それからはまた一人一人とのイベントをちょこちょこ書いていこうかなぁと思っています!ご期待下さいませ(*´∇`)ノ



そして、今回登場したご当地キャラ『フジツボン』を書いてみました!

書いてみたのですが…せっかくの絵が可愛くないゆるキャラだけだとあまりに華がないので、どうせならと本作オリジナルキャラのあの娘も一緒に書くことに…。


いつもニコニコ元気が取り柄。
ちょっとバカでも気にしない。
三度の飯より真冬ちゃんが好き。

そんな少女…紗巴(すずは)果夏(かな)ちゃんとフジツボンの絵です。これで果夏ちゃんの見た目がある程度伝わればと思います(*´-`)
(せっかくなので水着姿にしてみました)






【挿絵表示】





と、これが紗巴果夏…そしてフジツボンの姿です!(笑)
フジツボンの方はパパっと簡単に仕上げたのですが、その不気味さが伝わっているかどうか…。(実物はこの絵の10倍不気味だと思って下さい)果夏ちゃんの見た目については前からイメージしていたのですが、いざ絵にするとなると難しくて時間がかかりました(^_^;)見てお分かりの通り、彼女は真冬ちゃんよりも大きいです(何が…とは言いません)

彼女のイメージの為に改めて申し上げておきますが、果夏ちゃんはアホの娘です!ひたすらに元気で、真冬ちゃんの事がめちゃくちゃ大好きなアホの娘です!(重要)

けど、そんな果夏ちゃんの元気な雰囲気に癒される人がいたら嬉しいです(*´∀`)




因みに彼女が手にしているフジツボンキーホルダー…こちらはお値段950円(税抜き)となっています。全体的にフニフニした感触となっており、お腹の部分をグッと押すと『ムギャァァ…』と不気味に鳴きます。目も口も手足もフジツボです。可愛くないです。しかし果夏ちゃんはこのキーホルダーをえらく気に入っており、今は自分の携帯につけているらしいです。
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