「あ~あ…ほんっとに疲れた…」
胡桃「疲れたってお前…まだ午後の授業が残ってんだぞ?大丈夫かよ」
「どうだろう…無理かもしれんね」
悠里「こらこら、弱音吐かないの」
午前の授業が終わり、ようやく迎えた昼休み…彼は由紀、胡桃、悠里の三名と共に学校の中庭へと出て、緑の上に腰を下ろしながら昼食をとっていた。仲のよい四人での昼食…それはもちろん楽しい事なのだが、彼は眠たげな目をしたままため息をつくばかりだ。
「はぁ……午後の授業はサボってしまおうか」
悠里「だ~め!」
「はいはい、冗談ですって……。半分くらいね…」
胡桃「半分は本気だったのか…」
購買で買ったパンを食べ終え、彼は
由紀「あれ?他のは無いの?お腹空いちゃわない?」
「んー…あまり食欲がなくてね」
胡桃「おいおい、体調悪いのか?」
「いや…多分大丈夫だと思う…」
ただ食欲がなく、午後の授業がめんどくさいだけ…。その他、体に異常はない。彼は目の前で弁当を食べていく由紀らをじっと見つめつつ、自分に起きているこの不調…その原因が何なのかを考えた。
「きっと、体がまだ夏休み気分なんだな……」
胡桃「あ~、なるほどな。その気持ちは分からんでもない…」
胡桃に共感され、彼は満足そうに微笑みながら後ろに倒れ込む。自分達がいる場所はわりと大きめな木の下であり、その木陰にある芝の上へと寝転ぶのは気持ちが良い。
由紀「夏休み…楽しかったね」
悠里「ええ、楽しかったわね。でも、だからといって気を抜いてばかりいちゃダメよ。もう学校は始まっているんだから、気持ちをしっかり切り替えていかないと」
「そう…ですねぇ……」
胡桃「こりゃ重症かもな…。ま、もう二~三日すりゃ元気になるだろ」
寝転んだ芝の上で体を動かし、目線を由紀達の方へと向ける…。彼女達の食べている弁当はそれぞれが手作りしてきた物なのだろうか…それとも、家族が作ってくれた物なのだろうか…。そんな事を思う内、彼女達の手元に向けていた目線は徐々に下がり…
(……見えそうだな)
膝を折って座る彼女らの足と足の間…スカートの奥を覗いてみる。三人は会話に夢中で彼がそこを見ている事に気付いていないようだが、ここは木陰の下…どうにも暗い。
(……ダメか)
彼を含めた四人は芝の上、輪になって腰を下ろしている。左前にいる由紀…右前にいる胡桃…真正面にいる悠里…。位置的に一番可能性があるのは悠里だが、そんな彼女のスカートの奥は真っ暗だ。もし今ここにライトがあって、それを点けたとすれば簡単に中を覗けるのだろう。もっとも、そんな事をしたら覗きをしている事がバレてしまうが。
「はぁぁ…何か良いことないかねぇ…」
授業はめんどくさいし、チャンスがあったのに女子のスカートの中は覗けないし…。なんて事を思って彼が愚痴る。今回は本当に重症だ。
悠里「あら、こうして私達と一緒に昼食をとるのは良いことの内に入らない?」
「いや、そんなことは…」
胡桃「なんだ、せっかく一緒にって思って誘ったのに、嫌だったか…。じゃ、明日からは声をかけないでおくよ」
悠里がイタズラに微笑みながら言ったので、胡桃もそれに乗って彼を追い詰める。すると少しばかり焦ったのか、彼は倒していたその体をゆっくりと起こした。
「良いことだよ!こうして皆と一緒にランチタイムを過ごせるなんて、本っ当に最高だ!…というわけで、明日からも引き続きご一緒したいのですが…」
悠里「ふふっ、くるみ、どうする?」
胡桃「さて、どうしよっかなぁ~♪」
由紀「二人とも、あまりイジワルしちゃだめだよ?」
ふざけた会話を交わす内、彼は気付かされる。思えば、こうして由紀達と昼食を共にする事自体かなり幸せな事だ。女子の中でも比較的可愛らしいこの三人を、こうして独り占め出来ているのだから…。
(…ありがたく思わないとな)
そう言えば、近くを通り過ぎる男子がこちらをジロジロ見つめてくる事がたまにある。思えば、あれは彼のこの状況を羨ましく思っての眼差しだったのかも知れない……。今更ながら、それに気が付く彼であった。
~~~~~~~
所変わって、校舎一階の廊下…。
そこでは昼食を終えた美紀、そして圭の二人が空になった弁当箱を抱え、自分らの教室へ戻ろうとしている途中だった。
圭「今日は良い天気だね」
美紀「うん、よく晴れてる」
圭「…せっかくだしさ、帰りにどこか寄ってかない?」
美紀「うん?………そうだね、たまには良いか」
ちょうど買いたい本があったし、今日は帰りに寄り道をしていこう…。美紀は圭と約束を交わし、そのまま廊下を進んでいく。すると廊下の先…そこに見覚えのある人影を捉えた。
圭「果夏達だ。お~い」
果夏「おっ、美紀ちゃんと圭ちゃんじゃないですか。お~い♪」
圭と果夏は互いに小走りで駆け寄り、小さくハイタッチする。前々から思っていたのだが、この二人もわりと気が合うようだ。美紀がそんな事を思いながらそちらへ歩み寄ると、果夏の後ろにいた真冬…そして
歌衣「美紀さん、こんにちは」
美紀「こんにちは。今日は歌衣も一緒だったんだね」
歌衣「はい。夏休みが明けてからはお二人と一緒にお昼を過ごすことが多くなりました。おかげで毎日楽しいです♪」
美紀「そうなんだ。ふふっ、よかったね」
会ってばかりの頃は人見知りしていたのか、歌衣は美紀達に対してあまり表情を変えてくれなかった。しかし夏休み中に山や海へ行ってからだろうか、この頃は彼女もよく笑うようになった。
圭「どうせなら、私と美紀ちゃんも果夏達と一緒にお昼を過ごせばよかったね。明日からそうしてもいい?」
果夏「うん、別にいいよ~♪みんなもいいよね?」
真冬「うん…ボクは平気」
歌衣「私も大丈夫です。美紀さんと圭さんなら大歓迎ですよ」
美紀「ありがとう。じゃあ、明日からは一緒にお昼しようか?」
約束を取りつけ、美紀は彼女らと共に二年生の教室がある二階を目指す。そうして一階から二階への階段を上がろうとしたその時、圭が一階の窓から中庭を見て声をあげた。
圭「あっ、先輩達だ…」
美紀「…ほんとだ」
覗いて見ると、由紀・悠里・胡桃…そして彼の四人が中庭にある木の下で昼食をとっているのが確認できた。といってももう食べ終わったあとらしく、教室に戻る準備を少しずつ始めているようだ。
果夏「仲良しだねぇ~」
圭「だね。っていうか先輩、男一人で気まずくないのかな?」
女子三人に囲まれて昼を過ごす彼を見て圭が不思議そうに言うが、それを聞いた美紀はすぐに思った…。
美紀「今さらなに言ってるの…。あの先輩がそんな事で気まずさを感じるはずないでしょ。この前、私達と旅行した時だってそんな
圭「ああ、それもそっか…。女の子に囲まれて気まずくなるなら、旅行なんて出来ないよね」
真冬「むしろ、女の子に囲まれる事を喜んでいるような気がする……」
真冬がポツリと呟き、一同は彼の事を窓から見つめてみる…。たしかにその表情は気まずさなどに悩んでいるようなものではなく、どちらかと言うと…彼女らと共に過ごせる事を喜んでいるような表情だ。
果夏「ほんとだ。先輩は健全な男の子って事だね!」
圭「りーさんもゆき先輩もくるみ先輩も、みんな可愛いもんね…。そりゃ先輩だってデレデレしちゃうよ」
美紀「デレデレは言い過ぎでしょ」
改めて彼の顔を見つめて見るが、微かに微笑んでいるだけ……デレデレしている、とまでいう程ではないと思う…。
圭「ま、覗きはこのくらいにして、教室に戻りますか。次の授業の準備もしなきゃだし」
歌衣「ですね」
先輩達の観察をやめ、二年生組はそれぞれの教室へと戻る。
歌衣はA組に…美紀と圭はC組に…。そして、B組に戻った真冬と果夏は次の授業の準備を進めている最中、同クラスの女生徒に声をかけられていた。
「あの、狭山ちゃん…?もしよかったらだけど、ここ教えてくれないかな?自分でもいくらか考えたんだけど、どうしてもよく分からなくて…」
果夏(あっ…この娘は……!)
開かれた教科書を手に歩み寄るその少女を見て、果夏は冷や汗を流す。この少女は以前もこうして真冬を頼りに寄ってきた事があったが、あまり人付き合いが得意でない真冬はその際、彼女を冷たく突き放して険悪な雰囲気になってしまったのだ…。
果夏(こ、ここはまた私がフォローをっ…!!)
真冬と彼女がまた険悪な雰囲気になる前に、自分が二人の間へ割って入ろう。彼女の開いている教科書のページに書かれている問いは自分もさっぱり分からないが、それでも仕方ない。果夏がそう考え、咄嗟に身を動かそうとした、その時だった。
真冬「うん、いいよ…。えっと、ここを解くにはね……」
「………あ~、なるほど。やっぱり狭山ちゃんって頭良いね。先生に教えてもらうよりも分かりやすい説明だったよ」
真冬からの手ほどきを受けたその生徒は教科書を胸に抱えてニッコリと微笑み、まるで小動物と触れ合うかのように真冬の頭を撫でる。真冬は少し恥ずかしそうに顔を俯けてはいたものの、特に抵抗したりはしなかった。
果夏「あ、あれっ?二人は…いつからそんなに仲良く…?」
「ついこの前からだよ。夏休み明けてからかな、狭山ちゃんの雰囲気が前と比べて柔らかくなった気がしてね。思いきって声かけてみたら、やっぱり前よりも優しい感じになってて、それからちまちま交流してるってわけ」
真冬「前のボク…そんなに嫌な雰囲気の娘だった…?」
「あんまり言いたくないけど…それなりにね。感じ悪いヤツだなぁ~って思ってたもん」
真冬「っ……ご、ごめん」
ハッキリと言われ、真冬は苦い表情を浮かべる。しかし女子生徒はそんな彼女の頭をもう一度ポンポンと撫で、優しく微笑んだ。
「まぁ前の事だし、気にしないでいいよ。それより、今回は教えてくれてありがとね♪また今度、お礼に何か甘い物でもご馳走するよ」
真冬「うん…ありがと」
果夏「おぉ、私の真冬ちゃんに次から次へと友達が増えていく…」
前までは自分としか付き合わない娘だった…そんな真冬にどんどん友達が増えていく。それは果夏にとって嬉しいことであり、同時に…ほんの少しだけ寂しくもあった。
「友達だけじゃないかもよ?夏休みが明けてからというもの、男子達の間で狭山ちゃん人気が高まってるみたいだって話だから…近い内に彼氏とか――」
果夏「なッ!!?だめだよ!!そんなの絶対にだめっ!!!」
ガシッ!
真冬「わ…っ!」
果夏は大慌てで真冬を抱きしめ、そのまま辺りを見回す…。今この時ですら、真冬の事を狙っている男子がいるのかも知れない。そう思うと気が気ではない。
「あはは、じゃあ果夏がしっかり見張ってなよ。狭山ちゃんに悪い虫が付かないようにね」
果夏「もちろんっ!!変な男子に真冬ちゃんを渡すなんて絶対にヤダ!」
ギュウウッ…!
真冬「カ、カナ…苦しいんだけど……」
「あっ、狭山ちゃんの雰囲気が夏休み明けて変わったのって、もしかして彼氏が出来たから?」
果夏「なっ!?そうなの真冬ちゃんっ!!?」
ギュウウッ!!
真冬を抱く果夏の腕に、自然と力が入る。真冬はそんな彼女の腕をペシペシと叩いて力を弱めるように催促しつつ、苦しそうな声で答えた。
真冬「彼氏なんて出来てないよ…」
果夏「そ、そうか…良かった…。果夏ちゃん、ホッと一安心…」
果夏の腕から少しずつ力が抜かれていき、真冬もホッと一息つく。
「じゃあアレだ、好きな人出来たでしょ?だから雰囲気変わったんじゃない?」
真冬「なっ…!?」
次の瞬間、緩みかけていた果夏の腕がまた強く真冬を抱く。女子生徒が余計な事を言ったせいだ。
ギュウウッ!!!
果夏「そ、そうなの真冬ちゃんっ!?私の知らぬ間に、ついに恋心を抱いてしまったの!?誰っ!?誰が好きなのっ!!?」
真冬「別に…好きな人なんて……!」
そんな人はいない。だから、早いところこの腕をほどいて自由にしてほしい。真冬の脳内はそんな思考でいっぱいだったが、果夏は何やらハッとした表情を浮かべていた…。
果夏「なっ…!もしかして……あの先輩が好きだったり?」
真冬「またバカなことを……!」
彼はあくまでただの先輩であり、ただの友達だ。
そこに恋愛的な感情なんて一切ない。
果夏「でも真冬ちゃん、あの先輩と一緒の時はいつもより楽しそうだよ!それに前山に出掛けた時だって、自分から誘って先輩と釣りに行ったって…!」
真冬「行ったけど…あれはただ何となく誘っただけで…!」
と、言っている時にふと思う…。前の自分なら、あんな人気のない場所に男の人と二人だけでいるなんて絶対に出来なかった。しかし彼が相手だと何故だかあまり人見知りするような事もなく、普通に接する事が出来たのだ…。
真冬(そう言えば、彼が竿を引くの手伝う為に後ろに立って手を握ってきた時…すごくドキドキしたような気が…)
ただ、男の人に触られたからドキドキしたのだと思っていた。しかし、今思うとそれも違う気がする。もし彼以外の男に手を触られた場合はきっと、嫌悪感しか感じられないハズだ。だとするなら…自分は本当に彼の事が……
真冬(いや…そんなわけないか…)
異性を好きになるような事なんて、これまで一度も無かった。だからきっと、この感情だって勘違いに決まっている。真冬は自分にそう言い聞かせてから果夏の腕を振り払い、そっと席についた。
あんな可愛い娘たちと昼食を共にしているというのに、彼はそのありがたさに気付いていなかったようですね(汗)みんな人気のある娘達なんだから、それを独り占め出来る事にしっかりありがたみを感じて感謝くらいしないと…。
今回の話では彼にそのありがたさを気付かさせたり、二年生組を仲良くさせたり、真冬ちゃんとのフラグをひっそり立ててみたり…色々やってみました(*´-`)
そう言えば、真冬ちゃんって本編中盤で初登場した時からわりと人気があったんですよね…。何ででしょうか?今もおかげ様で一定の人気を保っているようですし、やはりボクっ娘は偉大だということですか!(笑)
何はともあれ、私自身も彼女のキャラは気に入っています(*´∀`)
近い内に彼女とのルートも書いていく予定ですので、ご期待下さいませ!
しかし、その前に『みきアフター』『めぐみアフター』を書かないとですね!