軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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二十三話『いぬ』

「………じゃあ、ちょっと見てきます。」

 

 

彼はそう言って部屋のドアノブに手を掛ける。

 

 

 

 

美紀「__さん!私達、そばにいますから…!!」

 

 

胡桃「ああ!もし中に奴らがいたりしたら呼べよ?すぐに行く!」

 

扉を開けようとする彼に二人が声を掛ける。

 

 

 

 

「…はい。」

 

 

 

胡桃「それから…キツい事があった時も呼べよ。力になるからさ…。」

 

 

「……ありがとう。」

 

 

ガチャ……。

 

 

彼はそう言って静かに扉を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

三十分前

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠里「動物病院?」

 

 

胡桃の運転で移動する車内で、悠里が彼に聞き返す。

 

 

 

「はい。……この近くに僕の飼っていた犬が入院していた動物病院があるんです。もし良ければ寄ってもらえますか?勿論着いてからは一人で行くので。」

 

彼が悠里と向かい合って座って言う。

 

 

 

 

悠里「…どの辺り?」

 

悠里が地図をテーブルに開いて尋ねる。

 

 

彼はその地図を少し眺めてから、一つの場所を指差す。

 

 

「…この辺りです。」

 

 

 

悠里「ちょっと待ってね。」

 

悠里はそう言って席を立つと運転中の胡桃に近付いていき、地図の一ヵ所を指差しながら胡桃と少し会話をした後、助手席の由紀に地図を渡して再び彼の前に戻る。

 

 

 

悠里「寄ってもらうように言ってきたわ。」

 

そう言ってにっこりと微笑む悠里。

 

 

 

「ありがとうございます!」

 

彼が席に座りながら頭を下げる。

 

 

 

悠里「いいのよ、急ぎの用事も無いしね?」

 

 

悠里「……ただ奴らが現れてかなり経ってるし…その子がまだそこにいるとは限らないわよ?仮にいたとしても……。」

 

そこまで言って悠里は口を閉じる。

 

 

 

 

「…分かっています。いなかったらそれで諦めます。ただもしもまだいた場合…しっかりと終わらせてあげたいんです。」

 

 

 

悠里「……そう。」

 

 

 

 

二人の会話に、横にいた美紀が入る。

 

 

美紀「あの…私もついていきましょうか?」

 

 

 

 

「…いや、危険なんで僕一人で行きます。」

 

彼が答える。

 

 

 

美紀「…でも、昨日私が犬を見掛けたって言った事がきっかけでその子の事思い出したんですよね?」

 

 

 

 

 

「…まぁ。」

 

実際その通りだった。彼は昨日美紀が犬を見掛けたと言う話を聞き、更にその犬を目の当たりにするまで自分が犬を飼っていた事を忘れていた。…いや、思い出さないようにしていた。

 

 

 

 

美紀「だったら思い出させた張本人としてご一緒します!」

 

美紀が彼の前にヌッ…と顔を突き出して言った。

 

 

 

 

 

「り~~さ~ん!!美紀さんがしつこ~い!」

 

彼は悠里に助けを求める。

 

 

美紀はそれを見て顔をしかめた。

 

 

 

 

悠里「…そうね、美紀さんを守りながら進むのは大変よね。」

 

悠里が手に顎を乗せながら言う。

 

 

 

 

「そういう事です!」

 

 

美紀「…ん~。」

 

 

悠里の言葉を聞いてどや顔をする彼とますます顔をしかめる美紀。

 

 

 

 

悠里「…なら美紀さんを守る人がもう一人いれば良いのよね?…胡桃!頼める?」

 

そう言って運転中の胡桃に尋ねる悠里。

 

 

 

胡桃「オッケー!任せとけ。」

 

 

ハンドルから左手だけ離し、グッ!と親指を立てて悠里に返事をする胡桃。

 

 

 

 

「…はい?」

 

 

 

悠里「…って訳だから、ついていっていいわよ美紀さん。」

 

 

美紀「!…ありがとうございます!」

 

 

悠里「胡桃もついていくなら構わないでしょ?それに美紀さんだって__君が思っている程足手まといでは無いハズよ?」

 

 

悠里がそう言って彼を見る。

 

 

 

 

「……分かりました。」

 

彼は渋々了承した。

 

 

 

 

悠里「よろしい。」

 

 

悠里(一人で行くつもりだったみたいだけど、それも危険だからね。胡桃が一緒に行ってくれれば私も安心出来るわ。)

 

 

悠里(……にしても美紀さんがここまでついて行きたがるなんて…何か理由があるのかしら?まぁおかげで胡桃を連れていかせる口実が出来たけど。)

 

 

悠里が考えていると助手席の由紀が座りながら振り返って美紀に言った。

 

 

 

 

由紀「みーくんばかりずるーい!!私も行く!」

 

 

 

 

悠里「だーめ!由紀ちゃんは私とお留守番よ。」

 

 

 

由紀「う~!…さてはみーくん…__くんのワンちゃんといち早く仲良しになるつもりだな!」

 

 

 

(…んなバカな…。)

 

彼は美紀の方を見る。

 

 

 

 

美紀「………。」

 

由紀からそっと目を逸らす美紀。

 

 

 

(マジか!)

 

 

 

 

由紀「ずるーい!……まぁ良いよ。その代わりその子が車に来たら私が独り占めするからね!」

 

由紀はそう言って再び前を向く。

車はほんの二十分程で目的の動物病院に着いた。

 

 

 

 

 

「んじゃあ…行きましょうか。美紀さん、胡桃ちゃん。」

 

 

 

胡桃「おう。」

 

 

 

美紀「はい!」

 

 

 

準備を整え席を立つ三人。

 

 

 

 

悠里「気を付けて行ってきてね?」

 

悠里が声を掛ける。

 

 

 

 

胡桃「へいへい。」

 

 

胡桃が返事を返し、車のドアを開けて美紀と共に外に出る。

 

 

バタン。

 

 

 

 

「…狭い病院なので、すぐに済むと思います。」

 

 

悠里「ええ、分かったわ。」

 

 

彼は悠里にそう言ってから車を降り、ドアを閉めた。

 

 

 

 

バタン。

 

 

 

 

 

 

「…さて、動物病院って事でもしかしたら中に感染した犬がいるかも知れません。奴らは素早い分感染した人間よりも危険なので、一体だけでも十分に注意をして下さい。」

 

 

 

病院を前に彼が二人に警告する。

 

 

 

胡桃「ああ、分かった。」

 

 

美紀「注意します。」

 

 

 

 

 

「…それじゃあ、入りますかね。」

 

 

そう言って彼はその動物病院の扉を開き、二人と共に中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




みーくんがかなり犬好きな感じになっていますが、太郎丸きっかけで犬への愛に目覚めた事にして下さい。

私事ですがアニメ最終回の太郎丸の(くだり)は本気で泣きました。
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