最初の頃は三~四話で終わる予定だったこの遊園地編ですが、後になって色々と書きたい話が出てきてしまいまして…少し長くなるかもです(^_^;)
お化け屋敷から出た一行はその後も遊園地内をのんびりと歩き回り、次はどのアトラクションに乗ろうかと頭を悩ませていく。そんな中、悠里と手を繋ぎながら歩いていたるーがある事に気が付いた。
るー「まふゆ、なに見てるの?」
真冬「ああ、これ?さっきのお化け屋敷で撮ってもらった写真…」
るーのすぐそば、そこを歩いていた真冬の手には数枚の写真があった。どうやら先程のお化け屋敷の中には幾つかのカメラが仕掛けてあったらしく、そこで撮影された写真の数々は記念として購入する事が出来るらしい。
果夏「へぇ、そんなのあったんだ~」
真冬「あった…。だから全部一枚ずつ買っておいた……けど…」
圭「けど?」
悠里とるー、そして果夏と圭が真冬のそばへ寄り、その手に握られていた写真の数々を眺めていく…。屋敷内へ最初に入った悠里&るーのペアから、最後に入った圭&歌衣のペアまで、真冬が言っていた通り全ペアの写真があるようなのだが……
真冬「これ、見て良いやつだったのかな…」
写真の中でも彼&胡桃のペアが写っている物をじっと眺め、真冬は冷や汗を浮かべた。写真は各ペア三枚ずつ撮影されていたのだが、このペアの写真はどれを見ても胡桃が真っ青な顔をしたまま彼の腕に抱き付いている物ばかりだ…。
圭「うわ~、胡桃先輩って意外と積極的なんだねぇ」
悠里「う~ん、ただ怖がっているだけのようにも見えるけど…」
二人きりになると積極的になるタイプなのか…それともただの怖がりで彼に抱き付いていたのか…。胡桃という人物がどちらのタイプなのかという事を悠里と圭が話し合っていると、その写真を眺めていた果夏が呟く。
果夏「ていうか先輩…腕でめっちゃおっぱい触ってない?」
真冬「あ、ほんとだ……最悪だね」
悠里「ええ、最悪ね……」
その青ざめた表情から察するに胡桃はただの怖がり屋であり、恐怖心を紛らわす為に彼へ抱き付いていたのだろう。そんな胡桃にばかり目がいって気付いていなかったが、よく見ると彼はどの写真でも微かにニヤケている…。また、その右腕は抱き付く胡桃の胸元へしっかりと、必要以上に押し当てられているように見えた。
るー「わたしも見たい」
圭「るーちゃんにはちょっと見せられないなぁ…。ほら、代わりに果夏とゆき先輩ペアの写真を見せてあげようね~」
圭は真冬の手にあった写真から数枚を抜き取り、果夏&由紀ペアの写真をるーへ手渡す。それらの写真にはこちらまで叫び声が聞こえてきそうなくらいに良い絶叫顔をしている果夏と、目をまん丸にしながら真っ青な顔をする由紀が写っていた。
るー「えへへ、二人とも面白い顔してる。りーねーも見てみて」
お手本のような驚きを見せている二人の写真を見たるーは楽しげに笑い、その写真を姉にも見せていく。るーからその写真を手渡された悠里もまた楽しげに微笑み、笑い声を漏らす。
悠里「あらほんと。二人とも面白いっ」
果夏「そ、そういうるーちゃんだってかなり怯えてたって聞いたよ!!なら、私に負けず劣らず良い顔をしてるハズっ…!!」
果夏は子供相手にムキになり、真冬の手に収められていた写真から悠里&るーペアの写真を取る。るーもかなり怖がっていたようだから、自分や由紀に引けを取らない絶叫顔をしているハズだ。…と、思ったのだが
果夏「…う、うぅ……可愛い…」
眺めた写真に写るのは如何なる時でもニコニコ微笑んでいる悠里と、その腕に抱き付いて小さくなっているるーの姿だった。ギュッと閉じているその瞳からは微かに涙が溢れているようであり、その状態のまま姉の腕にしがみつく彼女は明らかに怯えてはいるものの果夏達とはまた違うタイプ……アイドル的な可愛いらしい怯え方だった。
圭「ほんとだ、凄く可愛いっ」
小さくて幼いながらも整った顔立ちをした少女の怯え顔…。
果夏と圭はそれに見惚れだらしない笑みを浮かべており、悠里は誇らしげな表情を見せていく。
悠里「ねっ、るーちゃんって凄く可愛いでしょうっ!?私はこの二枚目の写真が特にお気に入りでっ…!」
胡桃「さっきから何見てんだ?…あっ、さっきのお化け屋敷での写真か」
興奮のあまり悠里の声が大きくなり、少し先を進んでいた胡桃達が寄ってくる。彼女らの注目は真冬達が持っていた写真へと向けられ、そこに写っていたるーの怯え顔が主な話題となった。
由紀「るーちゃん可愛い~♡りーさんにべったりだねぇ♪」
るー「だ、だって…あの中怖くて…」
歌衣「ふふっ、るーちゃんは本当にお姉ちゃんが好きなんだね」
るー「…うん、大好きっ」
るーは照れる様も見せず『当たり前だ』と言わんばかりにあっさりそれを告げる。すると悠里はまた嬉しそうにニコニコと微笑みながら彼女の頭を撫でていき、姉妹の愛を辺りへと見せつけていく。
由紀「みーくんと真冬ちゃんは…どの写真でも真顔だね」
美紀「ゆき先輩、よく見て下さい。ほら、この写真の私は少しだけビックリしてます。ずっと真顔なのは真冬だけです」
胡桃「ビックリしてるか?あたしにはどの写真でも大した反応をしてないように見えるんだけど…」
美紀が指差した写真を、そこに写る美紀の表情を見てみるが、さほど驚いているようには見えなかった…。強いて言うなら、他の写真と比べるとほんの少し目が大きく開かれているだけ……由紀や果夏の絶叫顔には遠く及ばない。
真冬「思ったより怖くなかったから、どんなリアクションをすれば良いのか分からなかった…。写真を見た感じ、歌衣さんと圭もそこまで怖がってないよね?」
圭「ん~、まぁ、それなりに怖かったけど…確かに期待していた程では無かったかな?」
歌衣「すっごく面白かったですけどね♪」
『面白かった』という言葉はお化け屋敷の感想として適切なものなのだろうか…。両手を合わせながらニッコリと微笑む歌衣の言葉を聞き、胡桃は首を傾げていく。
美紀「これは…くるみ先輩達の写真ですね」
胡桃「っ!?」
「あ………」
真冬の手に収められていたその写真を何気なく手に取る美紀を見た瞬間、彼と胡桃は小さな声を漏らす。胡桃は怯えている自分の姿を人に見られたくなかったから…。彼は胡桃の胸に腕を押し付けていた事を本人に知られたくなかったから…。声を漏らした理由は各自違うものだ。
由紀「どれどれ~。おぉっ、くるみちゃんってばやっぱり怖がりさんだね~♪こんなにギュッと抱き付いちゃって」
胡桃「だ、抱きっ…!?」
胡桃は慌てたように写真を奪い取り、その隅々まで視線を這わせていく…。あまりの恐怖に中での記憶はほとんど無くしていた胡桃だが、それらの写真を見て初めて、自分が彼の腕に抱き付いていた事を知った。
胡桃「なっ…!?なぁっ…!!?」
歌衣「く、くるみ先輩って…先輩とはそういう仲で…」
彼の腕に身を寄せている自分を見た胡桃は顔を真っ赤に染め、瞳をウルウルとさせていく。彼女のそんな表情と写真とを交互に見つめた歌衣は信じられない物を見てしまったというような苦い表情を浮かべ、今にも泣き出しそうだ…。
胡桃「そ、そんな顔をするなっ!あたしとコイツは何でもないっ!!ただの友達ってだけで、別に付き合ったりしてる訳じゃっ…!!」
美紀「と言うわりには随分と密着してますよね?」
胡桃「ちがっ……違うっ…!」
美紀はわざと意地悪に微笑み、胡桃の事をからかっていく。そうやってからかえばからかうだけ胡桃の顔は赤くなり、歌衣の顔は青ざめていった……。
真冬「ねぇ、あれもみんなに教えて良い?」
真冬はこっそりと彼の横へ移動していき、ニッコリと…しかし意味深にも見える笑みを浮かべる。一体何の事を言っているのかと疑問に思い彼が首を傾げていくと、真冬は彼にだけ聞こえるよう小声で囁く。
真冬「胡桃のおっぱい触ってニヤニヤしてたでしょ…?」
「へっ…?な、何をバカな…。真冬の勘違いだろ」
真冬「……うん、そうかもね」
彼がそっぽ向いて答えると、真冬はあっさりその場を去っていった。
少し慌ててしまったが、どうにか誤魔化せたらしい…。
彼はホッと一息つき、そのまま空を見上げた…。
真冬「ねぇ、気付いてないみたいだから教えてあげるけど、胡桃…彼におっぱい触られちゃってるよ。ほら、この写真も…それからこの写真も。全部おっぱいに腕を押し当ててる」
胡桃「なっ!?お…おいっ!!!!」
「…………」
それを暴露する真冬の声が聞こえ、次に胡桃の怒声が聞こえる…。
彼は空を見上げたままなので彼女がどんな表情をしているのかは分からなかったが、とてつもなく怒っている事くらいは声で分かった…。
そしてそんな彼女の足音は一歩、また一歩と近付いてきており、彼は空を見上げたまま『ふふっ』と笑う…。この空に羽ばたく事が出来れば彼女の怒りから逃げる事も容易いだろう。しかし彼は人間であり、空を飛ぶための羽など持っていない…。よって、接近する彼女から逃げる術も無い…。
彼はそっと静かに目を瞑り、抗う事なく全てを受け入れた……。
~~~~~~~~~~
「…で、真冬は何がしたかったんだ?」
真冬「別に……君が胡桃に怒られるところを見たくなっただけ」
「……意外と意地悪なんだな」
あれから一時間と少しが経過し、彼は遊園地内にある屋外フードコーナーの席に真冬と向かい合うようにして腰掛ける。他の者達は軽食を買いに行っており、今は真冬と二人きり…。彼は真冬に対して『何故、あの時胡桃に全てを暴露したのか』と尋ねてみたのだが、特に深い意味は無いようだった。
真冬「にしても、凄く痛そうだね…」
「痛そう…じゃなくて痛いんだよ。まだヒリヒリする…」
彼の頬には胡桃の手形が未だ綺麗に残っており、あの時食らわされたビンタの威力がどれだけ凄まじいものだったかを物語っている。あの時、彼は凄まじい勢いで振り払われた胡桃のビンタを受け、一瞬首が吹っ飛んだと錯覚したらしい。
真冬「胡桃を怒らせちゃダメって事だね…」
「ああ、そういう事」
真冬「…おっぱいの触り心地はどうだった?」
「それに関しては文句なし…最高に柔らかかった。真冬もあのくらいの大きさを目指してがんば――――」
と、そこまで言ったところで彼は口を閉ざす…。
胸の大きさに関する話をした瞬間、真冬の目が一気に冷たくなっていくのを感じたからだ…。
真冬「…うん、それでいい。それ以上言ったら今度はボクが君にビンタするところだった…」
「…すいません」
真冬は深いため息をつき、彼に冷ややかな眼差しを向けていく…。そうしてどことなく気まずい時間を過ごしていると軽食を買いに行っていた由紀達が戻り、一同は小休憩を終えていった。
その後、彼は皆と共に幾つかのアトラクションを回った…。
のんびり走るトロッコのような乗り物に乗って園内を眺めて回る物、園内に流れている川をこれまたのんびりと進む小舟のような物…。比較的低刺激のアトラクションが続いているのは由紀の要望に合わせているからなのだが、結局の所みんな楽しんでいた。
胡桃「よしっ!じゃあゆき、今度は一緒にアレに乗るか?」
園内を歩いていた胡桃が一つのアトラクションを指差してニヤリと笑う。その指の先にあったのはこの遊園地が目玉アトラクションとしているジェットコースターであり、遠目に見てもレールがえげつない高低差を作っているのが分かる。
由紀「わ、わたしはいいよ…!あんなの乗れないもんっ」
胡桃「なんだ、つまらないヤツだな…。りーさんはどうだ?」
悠里「私はるーちゃんを見てないとだから…」
由紀に誘いを断られ今度は悠里を誘う胡桃だが、悠里もまたそれを断った。悠里自身はジェットコースターだろうと別に問題なく乗れるのだが、るーの方は身長制限などに引っ掛かってしまうかも知れない。…いや、るーの怯えた表情を見るに身長制限に引っ掛かっていようがいまいがジェットコースターには乗れなさそうだ。ならばと今度は歌衣に声をかける胡桃だったが、彼女もまたジェットコースターは苦手らしい…。
るー「りーねー、行きたいなら行ってきていいよ…。せっかく来たんだし、色々乗らないともったいないから…」
悠里「うーん…でも……」
歌衣「もしよければ、るーちゃんは私が見てます。だから先輩達は心配せず楽しんできて下さい」
悠里「あら、本当に?じゃあ…そうさせてもらおうかな♪」
るー「うん、いってらっしゃい」
るーは悠里の腕から離れるとトコトコと歩き出し、今度は歌衣の腕へと抱き付く。その際、歌衣の顔がパァッと明るくなったのが分かった。
圭「私も行きますっ!美紀ちゃんも一緒に行こ!」
美紀「え~…私もこういうのはあまり得意じゃ……」
圭「大丈夫だよ。一度乗っちゃえば楽しいもんだから!」
美紀「…はぁ、しょうがないなぁ」
美紀もまたジェットコースターはあまり得意ではないようだったが、圭の誘いを受けて渋々ながら同行を決める。そんな二人のやり取りを横目で見ていた果夏はニヤリと微笑み、真冬のそばへ歩み寄っていく…。
果夏「真冬ちゃ~ん♪私達も一緒に行こ~♡」
真冬「え…やだ……行きたければ美紀達と一緒に行ってきなよ」
果夏「も~っ!ノリが悪いなぁ」
どうやら真冬もジェットコースターは苦手らしく、果夏の誘いを適当に流す。結果、ジェットコースターに向かったのは悠里と胡桃、そして美紀と圭の四人だったのだが、彼は自分が胡桃から誘われなかった事に嫌な予感を感じていた。
「胡桃ちゃん、まださっきの事を怒っているのだろうか…」
由紀「ん~、そんな事ないと思うよ?くるみちゃん、何だかんだでキミには甘いから、きっとすぐに機嫌直してくれるよ♪」
「だといいけどな…」
だが、彼女の胸にあれだけ腕を密着させたのは少しやり過ぎだったかも知れない…。ほんの少し反省の色を見せる彼だったが、あの時腕に感じた感触を思い返していくとついつい頬が緩む…。
由紀「それよりっ!くるみちゃん達を待ってる間にわたし達も遊ぼうよ!わたし、アレに乗ってみたいっ♪」
歌衣「アレ…というと…」
果夏「おっ、コーヒーカップですかっ!」
由紀の指差す方にはクルクルと回転する大きなカップが幾つも並んでいるアトラクション…コーヒーカップがあり、由紀はそれを見つめながら瞳をキラキラと輝かせていた。いや、よく見ると由紀だけではない……
るー「わぁぁっ…!わ、わたしも乗りたいっ!」
由紀「よぉし!じゃあみんなで行こ~♪」
るーの瞳もまた由紀のようにキラキラとしており、期待に満ちた目をしていた。胡桃達が戻るまでの間、ただ立ち尽くしているのも退屈だ…。彼と由紀、歌衣とるー、そして果夏と真冬はそのコーヒーカップの列へと並び、自分達の順番が来るのを待っていく事とした…。
真冬ちゃんがそれを暴露した事により、彼は胡桃ちゃんの鉄拳制裁(?)を受けました…。しかし、彼女の胸の感触を味わってこの程度の罰で済んだのならまだ良いのかも知れません(笑)
次回からは由紀ちゃんがメインの話となっていきそうです(*´-`)
こちらも楽しんでもらえればと思います(〃´ω`〃)