軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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第六十三話『しんちょうに』

美紀、圭とクレーンゲームを楽しんだ後、彼は引き続き二人と行動をともにしていく。まだまだ色々なゲームがあるようだが、何を楽しもう…。いくらか悩んだ結果、今度はメダルゲームをプレイする事に決めた。

 

 

圭「先輩、メダルゲームの経験はあります?」

 

「まぁ、少しくらいは…」

 

メダルゲームとは専用のメダルを用いて遊ぶゲームの事だが、このゲームセンター内には結構な種類のゲーム機があるようだ。とりあえず、五百円分くらい交換すれば良いだろう…。彼は専用の交換機に硬貨を入れ、取り出し口からジャラジャラと出てきたメダルをカップへと入れる。

 

 

美紀「で、何をやるんですか?」

 

「ん~、そうだな……」

 

圭「ま、こういうのは気楽にやっていきましょうよ!ほら、目に入ったヤツを手当たり次第にやっちゃえば良いんです!」

 

美紀「えっ、そんな適当で大丈夫?すぐにメダル無くなっちゃいそうだけど…」

 

美紀と圭も彼と同様、五百円分のメダルを交換した。

しかし、五百円分のメダルというのはそれほど多くも無い…。慎重にやればある程度遊べはするだろうが、油断したらあっという間に無くなる枚数だ。

 

 

圭「美紀ちゃん、ゲームというのは思い切りが肝心なの!じっくりあれこれ考えながらやってても上手くいかないよ。ね、先輩っ!」

 

「確かにそうかも…。こういうゲームは直感に任せて立ち回れば意外と上手くいったりするもんだ」

 

美紀「……何か不安だなぁ」

 

圭と彼はやる気に満ち溢れており、言葉通り視界に入ったゲームを手当たり次第にプレイし始める。美紀は二人の雰囲気にそれとない不安を感じたものの、仕方なくそれに付き合っていった…。

 

投入したメダルでフィールド内のメダルを押し出す、"メダル落とし"と呼ばれるオーソドックスなゲームから、ルーレットのようなゲーム。じゃんけんに勝てばメダルが貰えるゲーム等、色々な物をプレイしていった結果……彼と圭のメダルはものの十数分でほとんど無くなってしまった。

 

 

「くそっ、何で勝てないっ…」

 

圭「運が無かったんですかね……」

 

数枚だけ残ったメダルをカップの中でコロコロと転がしながら、二人は暗い表情を浮かべる。ついさっきまでは"負ける気しない!"とでも言いたげなくらい自信に満ちた表情をしていたのに…。

 

 

美紀「二人とも雑にプレイしすぎなんだよ。いくら直感に任せるっていっても限度があるでしょ…」

 

「むぅ…」

 

圭「そうだね…反省してるよ」

 

美紀は二人と比べると慎重にプレイしていたので、そこまでメダルは減っていない…。いや…むしろ交換した当初よりも1.5倍くらい増えているようだ。彼女は圭と彼からカップを取り上げると全てのメダルを一つのカップに纏め、それを圭へと手渡す。

 

 

美紀「はい、今度はもっと慎重にね?」

 

圭「えっ?くれるの?」

 

美紀「というより、三人で共有した方が良いと思って…。圭も先輩も、無茶な遊び方ばかりするから…」

 

「申し訳ない…」

 

ということで今度は三人で一つのカップを共有し、美紀の助言を受けつつゲームを楽しんでいく事にした。無茶な賭け方はせず、じっくりと慎重に…。圭と彼は時折暴走しかけたが、その都度美紀が止めに入る。そのおかげで今度はかなり長い間ゲームを楽しむことが出来たが、とうとう運が尽きてしまったのか、全てのメダルが無くなってしまった…。

 

 

美紀「今ので最後ですね」

 

「ん~、全然ダメだったな」

 

圭「ですね…。一度で良いから、沢山のメダルを並べたかったなぁ」

 

美紀「まぁ、長く遊べたから良いでしょ。あまり増えすぎちゃっても処理に困るし…」

 

プレイしながら確認したが、このゲームセンターはメダルを預けておけない…つまりその日に使いきる必要があるようだ。なのでもし仮に沢山のメダルを獲得したとしても、それらを全て使いきるのは大変だろう。

 

 

圭「確かにそうだけどさ、たまにはドカーンと勝ってみたいなぁ…。ほら、あそこにいる人とかもうカップに収まらないくらいのメダルを持ってるじゃない?ゲームセンターで遊んでいるとああいうのに憧れちゃうよ」

 

圭が指差した方角にはルーレットゲームをプレイしている人がいて、その人物のそばに置かれているカップには溢れんばかりのメダルが見える…。余程運が良いのか知らないが、確かにああいうのは羨ましい…。

 

 

美紀「…あれ、ちょっと待って……あの人って…」

 

大量のメダルが入っているカップの持ち主…その背中はどこかで見覚えがある。腰まで伸びた、微かにカールのかかっている薄茶色の髪…。そして、いかにもお嬢様風といった感じのフリフリとした白いワンピース…。よく見ると、その隣には可愛らしいミニスカートとシャツに身を包み、猫耳を模した帽子を被る桃色の髪の少女もいた。

 

 

「由紀ちゃんと…歌衣(うい)ちゃん?」

 

恐る恐る近付いてみると、気配に気付いたその二人は同時に振り向く。

そこにいたのはやはり、那珂(なか)歌衣と丈槍由紀だった。

二人は仲良くメダルゲームで遊んでいたようだが…一つ気になる事がある。由紀は彼等と会った瞬間にキラキラと輝くような笑みを浮かべていたのに、歌衣の方はどこか引きつったような笑みを浮かべているのだ。

 

 

圭「おっ、歌衣ちゃんとゆき先輩もメダルゲームやってたんだ」

 

歌衣「え、ええ……けどこれ、どうやってもメダルが減らないんです…。そろそろ切り上げようかと思ってたのに、賭ければ賭けるだけ増えるんですぅ…」

 

歌衣が困ったように言った瞬間、隣にいた由紀が複数のカップを彼等の前へと置いて得意気に微笑む。それらのカップは全て、溢れんばかりのメダルで満ちていた。

 

 

由紀「ふっふっふ、すごいでしょ~♪これ、全部歌衣ちゃんがやってくれたんだよ~♪」

 

圭「なっ!?嘘でしょっ!?」

 

「メダルの詰まったカップが…全部で四つも…」

 

美紀「これ、何枚あるんだろ…」

 

カップはそこまで小さな物でもないので、数百枚はメダルが入るはず…。それが四つとなると、恐らく千枚は軽く超えているだろう。このメダルの全てを歌衣が一人で獲得したというのだから驚きだ。

 

 

歌衣「ま、また当たった…。うぅ…全然減らないっ…どうしよう…」

 

プレイしていたルーレットゲームから大きなファンファーレが鳴り響き、大量のメダルが吐き出される…。ジャラジャラと音を立てながら出てくるメダルはかなりの量であり、五つ目のカップを満たそうとしていた。由紀はそれを見て子供のようにはしゃいでいるが、歌衣はもう苦笑いしか出来ない…。

 

 

圭「もしかして歌衣ちゃん、必勝法でも知ってるの?」

 

歌衣「いえ、すっごく適当にやってるだけです…。軽い気持ちでやってるだけなのに、何故か毎回当たってしまって……最初の方は嬉しかったですけど、これだけ増えてきちゃうと逆に焦りが…」

 

美紀「…圭と先輩で使ってあげたら?」

 

そうすればこのメダルを全て処理出来るかも…と美紀が言う。

しかし彼と圭はその言葉を聞くなり、同じ様に鼻で笑った。

 

 

圭「いくら私達でもこれだけのメダルを使いきるなんて無理だよ。ねっ、先輩」

 

「ああ、流石に無理だ」

 

美紀「そうかな?けど、ゆき先輩も入れて三人で遊び回ればすぐに…」

 

由紀「おおっ!!じゃあ歌衣ちゃん、このメダル借りてもいい?」

 

歌衣「貸すどころか差し上げますよ。残さず全て使ってくれるのなら、その方が良いですから」

 

それに、自分が得たメダルでみんなが楽しく遊べるのならこれ以上の喜びはない。歌衣はニッコリと微笑むと持っていたメダルの全てを彼と圭、そして由紀へと分け与え、美紀と共にそばのベンチで一息つく事にした。

 

 

由紀「えへへ~、今度は何して遊ぼうかな~」

 

圭「もしかしたら更にメダルを増やしちゃうかもね」

 

「ふふっ、そうなったら面倒だな」

 

圭と彼はそんな未来を想像してニヤニヤと笑い合っていたが、美紀はそんな二人を冷ややかな目で見送る…。歌衣が稼いだメダルはかなりの量であり、余程のヘマをしない限りは失えないだろうが……

 

 

美紀(あの二人の事だから、調子にのった遊び方ばかりするだろうな。ゆき先輩もあまりこういうの得意じゃなさそうだし…)

 

きっと、すぐにメダルを無くして戻ってくるだろう…。

美紀は意気揚々と旅立った三人を見送ると、クレーンゲームで手に入れたイヌのぬいぐるみを手に持ってそのつぶらな瞳と見つめ合う。

 

 

歌衣「可愛いワンちゃんですね~♪」

 

美紀「うん、可愛いっ」

 

同じベンチに腰掛けながら、歌衣は隣に座る美紀の顔を覗き込む。イヌのぬいぐるみと見つめ合う彼女は微かに頬を緩めており、とても優しい表情をしていた。

 

 

歌衣「ワンちゃん好きなんですか?」

 

美紀「えっ?あ、ああ…そうだね、わりと好きかな…」

 

そう、犬はもちろん、可愛らしい生き物は好きな方なのだが…彼の家に暮らしている犬、太郎丸との距離感が今一つ縮まらないのが密かな悩みだ。時折遊びに行くことによって少しずつ(なつ)いてきてくれているような気はするものの、まだまだ物足りない…。

 

 

歌衣「私の家にはワンちゃんが三匹と、ネコちゃんとウサギちゃんが二匹ずつ暮らしているんです。みんな可愛くていい子ですから、もし良かったら遊びに来てくださいね♪」

 

美紀「へぇ、そんなにいっぱいいるんだ?…じゃあ、また今度遊びに行かせてもらおうかな」

 

それだけ沢山いるのなら、一匹くらいは懐いてくれるだろう。

歌衣の話を聞いた美紀はいつ彼女の家に遊びにいこうかと悩みつつ、その動物達との交流に胸を踊らせる。歌衣の飼っている犬はどんな子だろうか…。猫はこちらへ寄ってきてくれるだろうか…。ウサギはもふもふとしているのだろうか…。

 

色々な事を思いながら歌衣との会話を楽しみ、気付けば数十分の時が経つ。その頃には彼と圭、そして由紀も戻ってきたのだが……やはりと言うべきか、三人の持つカップの中にはもうメダルなど残っていなかった。

 

 

 

 







歌衣ちゃんの幸運っぷりが凄いですね…。
その運を少しだけで良いから彼や圭ちゃんに分けてあげて欲しいものです!
次回は胡桃ちゃんやりーさん達も交え、全員が合流するところまで進めればと思っています(´- `*)

では、また次回っ!!
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