彼がヒロインとポッキーゲームをしていく、という話です。
(作中では"ピッキーゲーム"と呼称します)
お相手は真冬ちゃん、りーさん、胡桃ちゃんの三パターン。
彼はそれぞれのヒロインと付き合っている状態にあり、皆同じようなシチュエーションでのスタートとなりますが、ヒロイン毎の反応の違いを楽しんでもらえたら幸いです。
CASE-1 "狭山真冬の場合"
真冬「ねぇ、今日って何の日か知ってる…?」
自宅でのお家デートを楽しんでいた時、不意に真冬がそう尋ねてきた。
彼はすぐに携帯を取り出し、ホーム画面に映る日付を確認してから考える…。最初に考えたのはバレンタインデー・ハロウィン・クリスマス等のメジャーなイベントだが、どれも違う。では彼女の誕生日かとも思ったが、やはりそれも違う。
「……分からない、降参」
真冬「えっとね…"ピッキーの日"なんだって」
そう言って真冬がバッグから取り出したのは、"ピッキー"と呼ばれるチョコレート菓子…。細長いビスケットのような物にチョコレートがコーティングされたこの菓子の存在自体は彼もよく知っていたが、今日が"ピッキーの日"…なんて全く知らなかった。
「へぇ……よく知ってるね」
真冬「駅前でイベントみたいなのやってて、このお菓子をタダで配ってたんだけど…ボクもその時に初めて知った」
そのイベントというのは、今日が"ピッキーの日"だという事をより多くの人に知ってもらう為のキャンペーンか何かだったのだろう。何にせよ、無料でお菓子を配るなんて随分と気前の良いことだ。
彼がそんな事を考えていると、真冬はその菓子のパッケージを開けて中から一本だけ取り出し、チョコレートでコーティングされている先端部分を唇で挟んでから彼の事を横目でジーッと見つめだす…。
「…どうかした?」
彼女は口に咥えたそれを食べるわけでもなく、ただ唇に挟んだままこちらを見ている…。そして膝立ちの状態でゆっくりとこちらへ寄り、無言のまま顔を赤くした。
真冬「………んっ…!」
そばまで寄ってきた真冬は菓子を咥えたまま顔を上げ、自分が咥えているのとは逆の方を彼へと突き出す。まるで、『君はそっちを咥えて』とでも言っているかのようだが……。
「ええっと……真冬…?」
目の前に突き出された菓子の端……これを咥えるという事はつまり、一本の菓子を真冬と共有するという事になる。二人が口を離さぬままそれを食べ進めたら、すぐにでも唇が触れてしまうだろう…。
もしかするとこれは真冬なりにキスをねだっているのかも知れないが、恥ずかしがり屋な彼女がこんな誘い方をしてくるものだろうか?
真冬「っ……いいから……そのまま…っ…」
誘いに乗ってこない事に痺れを切らしたのか、真冬は菓子を咥えたまま小声でそう言ってから顔を動かして菓子の端を彼の口内へと器用に押し込む。彼は戸惑いつつもそれを咥えたが――――
(うっわ………
ほんの10数センチしかないであろう菓子を二人で共有しているのだ…当然、互いの顔が接近する。間近に見る真冬の顔はまた一段と紅潮しており、細めている瞳は涙で潤んでいた。
しかし、どれだけ顔が紅潮しようとも真冬は離れない。
彼が戸惑い、動けずにいる間も彼女は小さく唇を動かしては菓子をかじり、彼との距離を少しずつ詰めていく。
「ま、まふ――――」
10センチ……8センチ……5センチ……
真冬との距離がみるみる近くなり、彼は菓子を咥えながら声をあげる。
だが真冬にはその声が聞こえていないのか、もしくは聞こえているが無視しているのか…。どちらなのかは分からないが、彼女はリンゴのように赤くなった顔で菓子をかじっては彼に顔を寄せていき、そして―――――――
真冬「ん……っ……」
――とうとう、ゼロ距離にまで顔が寄る。
寄るところまで顔を寄せた真冬は彼が咥えていた部分の菓子すらも自分の口内に運んで数回噛み飲み込むと、うっすらと開けていた瞳を完全に閉じて唇を動かし、彼とキスを交わす。
真冬「ん…むっ………ちゅ…っ…」
今さっき、チョコ菓子を食べたからだろうか。
真冬の唇はほんのりと甘く、キスするだけでチョコの味がする。
真冬「んっ…!んん…んんッ……!」
その味や唇の感触をもっとハッキリ感じるべく彼からも唇を動かしていくと、真冬は肩を震わせながら何ともいえぬ声を漏らす。真っ赤な顔をしながら小さく悶える彼女は小動物のように愛らしくて、彼はキスをしたまま彼女の頭を右手で撫でていく。
サラサラとしていて柔らかな髪を手のひらや指先で撫でながら、そっと静かに舌を突き出して真冬の唇を舐めるとまた一段に甘い味がして、目の前の小さな身体がビクンと跳ねた。
真冬「ま…っ………そ、それはダメっ…!!」
「ん?ダメって、何が?」
真冬「だ、だから……舌とか入れるのは、ダメ……」
キスを中断した真冬は両手の人差し指を重ねてバツを作り、
少しだけムッとした顔をする。
彼女とのキスがあまりにも心地よくて暴走しそうになったが、
恥ずかしがり屋な真冬はこれ以上の進展を拒んだ。
まぁ、ここで中断してくれなかったらどこまでも暴走していただろうし、この辺でストップしておくのが正解かも知れない。付き合っていればまた幾らでも機会がやって来るのだから、のんびりと進んでいこう…。
彼は最後にもう一度だけ真冬の頭を撫でると、残っていたチョコ菓子を彼女と二人で食べていく。先程のように一本の菓子を二人で共有するのではなく、一人一本ずつ、普通に食べ進めながら他愛のない雑談をして、その日のお家デートは終了した。
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CASE-2 "若狭悠里の場合"
「りーさん、今日は何の日でしたっけ?」
彼の自宅でお家デートを約束していたこの日、ガールフレンドである悠里を自室へと招いた彼は不意に尋ねる。
悠里「えっ?う~ん…何の日だったかしら…」
「ほら、何日か前に学校でも話題になってたでしょ」
悠里「そう言えば、そうだったかも知れないわねぇ…」
数日前、学校で何人かの女子達が話題にしていた。
コンビニやスーパーでも売られているチョコ菓子、"ピッキー"には"ピッキーの日"という記念日のようなものがあり、最近はその日にこのお菓子で"ピッキーゲーム"という遊びをするのが流行っているとか…そんな内容の話だ。
ピッキーゲームというのはこの菓子の両端を二人で咥え、そのままギリギリまで顔の距離を詰めていくというものらしいが、仲の良いカップルはそのまま唇を触れ合わせてキスをするというのがお決まりのようらしい。
女子達はその話をしながら、いつか素敵な彼氏を見付けてそんな事をしてみたい!と言ってキャーキャー騒いでいた。彼はもちろん、同じクラスに通う悠里もその話を盗み聞きしていたのだが…。
悠里「う~ん、何の話をしてたかしらね?忘れちゃったわ」
悠里はニッコリと微笑み、そう告げる。
しかし彼女の笑みにはどこか白々しいような雰囲気があり、『忘れちゃった』という言葉が嘘である事が容易に見抜けた。
「……りーさん、本当は覚えてるでしょ?」
悠里「ふふっ、どうかしらね~♪」
楽しそうに微笑んで目を反らす悠里が本当の事を言うまで問い詰めてやろうかとも思ったが、結局、彼は観念したようにため息をついてから部屋の隅に置いていた自分のカバンを漁り、その中から例のチョコ菓子を取り出した。
「今日はピッキーの日…らしいですよ」
悠里「あら、それって今日だったの?」
「んん、今日です。…ってわけなんで~――――」
チョコ菓子…ピッキーの箱を開いた彼は中に入っていた包装袋を破るとそれを一本だけを取り出し、ニコリと笑う。その笑顔を前にした悠里もまた、丁寧に膝を並べて座りながらニコニコと微笑みを浮かべていく。
「せっかくだし、ピッキーゲームとやらをやってみますか…?」
彼は一本だけ取り出したそれを指先に摘まんだまま揺らすと、ニコニコとした笑みを崩さない悠里に向けて言い放つ。自宅に二人きりというこの状況でピッキーゲームという遊びをする事により、自然な流れでキスが出来るのではと思っているからだ。
悠里「…あまり気は進まないけど、しょうがないわね…。
一回だけよ?」
悠里は渋々といった感じで菓子を受け取り、その端を唇に挟む。
そして両手を床につけると彼の方に身を突き出し……
悠里「んっ」
もう片方の端を咥えるよう、声で催促して瞳を閉じた。
スティックタイプのチョコ菓子を挟んでいる、ピンクの唇…。
閉じた瞼に伸びている、長くて綺麗な
肩から下がる長い茶髪…。
床につけられた両腕に挟まれ、自然と寄せられている大きな胸…。
紺色のカーディガンの下に着ている白のワンピースは胸元がほんの少しだけ緩く開いており、魅力的な谷間が視界に映る…。
同年代の女子の誰よりも大人っぽくて艶やかで、それでいて年相応な可愛らしさもある悠里がチョコ菓子を突き出して待つ姿はかなり魅力的であり彼は少しの間見惚れてしまうが、彼女が待ちくたびれるよりも先に顔を寄せ、突き出されていたもう片方の端をそっと咥えた。
(さて、このあとは………)
咥えた菓子を少しずつかじり、彼女との距離を詰めてキスをするだけだ…。彼は自身の鼓動が高鳴るのを感じながら心の中でニヤリと笑い、菓子をかじる。
するとすぐ、自分の右頬に温かい物が触れてきた。
頬に触れていたのは悠里の左手…。
彼女は彼の頬に左手を添えながらうっすら瞳を開き、静かに唇を動かして菓子をかじっていく…。
悠里「っ……んっ………」
カリカリッ……カリッ……
音をたててかじられていく菓子と、だんだんと近くなる悠里との距離。
彼女とピッキーゲームをして、そのままキスをするという事が彼の目的。
だからこの状況は嬉しくて興奮出来るものなのだが、頬に手を添えながら寄せられてくる悠里の表情や息遣いは予想以上に艶やかで、つい身体が固くなる。
また、菓子をかじっていく彼女には一切の迷いが無い…。
何の躊躇いもなくどんどん菓子をかじっては彼との距離を縮め、視線を合わせながらニコニコと微笑むくらいに積極的だ。
10数センチあった菓子はあっという間に短くなり、悠里の吐息が肌で感じられる程の距離になる。そしていよいよ、互いの唇が重なるという時―――――
悠里「…ふふっ、はいっ、おしまいっ♡」
悠里は軽く首を捻り、咥えていた菓子を折る。
パキッ!と音をたてて折れた菓子をモグモグと食べた悠里はイタズラな笑みを浮かべると、折れた菓子の端を咥えながら呆然とする彼を見つめた。
悠里「もう、そんな顔しないで?これってキスしちゃうギリギリで止めるゲームなんでしょ?だから私はそのルール通りにやっただけよ。まぁ、私の方から先に逃げちゃったから、ゲーム的には私の負けなのかもしれないわね…残念」
「…………」
正直、このゲームの正しいルールなんて知らない。
悠里が言うようにキスしてしまうギリギリを見極めるのが正しい遊び方なのかも知れないが、少なくとも彼は悠里とキスをするつもりでいた。
なので、こんな終わり方では納得がいかない…。
これではただ、悠里にからかわれただけだ。
「………りーさん……」
悠里「んっ?何?」
まだ終わらない…終われない…。
咥えていた分の菓子を飲み込んだ彼は悠里の肩に両手を乗せると、完全に油断していた彼女の唇を奪い、その身を強く抱き締めた。
悠里「んっ!!?んっ!んん…っ……ん……ぅっ……」
悠里は突然の事に戸惑い、大きく目を見開いて手足をバタつかせる。
しかし、彼は彼女の事を強く抱いたまま離さない。
その豊満な胸がこちらの胸板にギュッと押し付けられて柔らかな感触がハッキリ感じられるくらいに彼女を抱きしめ、望んでいたキスをする。
自然な流れではなく強引な方法となってしまったが、キスはキスだ。
悠里の背中に手を回して身体を抱き、押し付けられる胸の感触を感じながら頭を撫でる。そのままゆっくり唇を動かしてキスをしていくと悠里の顔から余裕が消え去り、遂には耳まで真っ赤に染まった。
(こういう顔も可愛いな…)
笑顔のままこちらをからかってくる余裕たっぷりな悠里も魅力的だが、こうして戸惑い、顔を赤らめている余裕の無い悠里も可愛くて魅力的だ。
彼は悠里の頭を撫でていた手を移動させ、今度は頬を撫でていく。
何時になく真っ赤に染まっている柔らかな頬を指先で撫でながら繰り返しキスをしていくこと数十秒……悠里は首を捻って唇を離すと、乱れかけていた呼吸を必死になって整える。
悠里「っっ!はぁっ…はぁっ…!も、もうっ!!
急にこんなっ…!~~っっ!!もうっ!もうっっ!!」
かなり混乱しているのか、ただひたすらに『もう!』を連呼してジタバタする悠里。彼女は背中に回されていた彼の手から逃れた後も落ち着きなく視線を泳がし、暫くしてから彼の方を向くが、またすぐに視線を逸らしてモゾモゾと身を揺らす。
悠里「…ッ………ぅ……っっ……」
「あ~………その、怒ってます…?」
悠里「…別に、怒ってません!ただ少し、ビックリしただけよ」
そう言ってこちらを向いた悠里の顔はまだ微かに赤みを帯びていて、瞳も潤んでいる。口では怒っていないと言っているが、実際のところはどうなのだろう…。
苦笑する彼を見つめた悠里は膝立ちをして静かにそばへと寄り、両肩に手を添えてから耳元に唇を寄せる。
悠里「今度ああいう事したら、お仕置きだからね…?」
ポツリと囁き、悠里はニコリと笑う。
彼女の言う"お仕置き"がどんなものなのか全く想像がつかないが、
彼女にならお仕置きされても良い…と、心の中でそう思ってしまった彼は少しばかり重症なのかも知れない…。
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CASE-3 "恵飛須沢胡桃の場合"
それは突然始まった…。
この日、彼は胡桃を自宅へと招いてお家デートを楽しんでいたのだが、突如として胡桃がおかしな事を始めた。
二人で一緒ゲームをして楽しんでいたその時、彼女はピッキーというチョコ菓子を片手で摘まんではカリカリと音をたてて美味しそうに食べていたのだが、急にその先端を唇で挟んで咥え、もう片方の端を彼の方へと向けて笑い始めた。
「あの……何やってんの?」
最初は触れない方向でいこうかとも考えたのだが、彼女は口に咥えたその一本を食べる事なくただニヤニヤと笑っていた為、我慢出来ずに尋ねる。
胡桃「何って…分かるだろ。
ほら、一本の菓子を二人で咥えて、両端から食べていくヤツ?
あれを一緒にやってみようぜ」
苦笑気味の彼に尋ねられた胡桃は菓子を咥えたままにも関わらず器用に言葉を放ち、彼がもう片方の先端を咥えるのを待つ。
彼女が突然こんな事を始めたのには、ある理由があった。
きっかけは数日前、校内で女生徒達の会話を盗み聞きしていた際の事…。
一人の女生徒が最近になって新しい彼氏と付き合い始めたらしく、
先日、その女子は新しい彼氏とのデート中にピッキーゲームをしたらしいのだが、結局はそのままキスをして甘々な時を過ごしたらしい…。それを聞いた他の女子はキャーキャー騒いだかと思えば、『―――ちゃん達ほどラブラブなカップルは他にいない』とか『私もそんなドキドキ味わってみたい』とか、そんな事を言い始める。
まるで自分達が世界で一番のベストカップルだとでも思っているかのような女子生徒の話を盗み聞いていた胡桃は、その時からずっと思っていた。
あたしだって、あんたらに負けないくらい
ピッキーゲームをしてそのままキスするくらい、なんて事無い。
そこらのカップルなんかより、あたしらの方がずっと仲良しなんだから…。
胡桃「ほらっ、早くそっち咥えろって」
「…はいはい、分かったよ」
胡桃を奮い立たせているのは、他のカップルに対する対抗心。
自分達くらい仲が良ければ、ピッキーゲームをした流れでキスを交わすくらい朝飯前。
そう信じてやまない胡桃は自信たっぷりな笑みを浮かべながらゲームの開始を待っていたが、突き出していた菓子の先端部分を彼が咥えて顔と顔が向き合った瞬間―――
胡桃(や、やばっ…。これ、思ってたよりハズいかも……)
胸の内で燃えていた他のカップル達への対抗心が少しずつ薄らぎ、麻痺しかけていた羞恥心が顔を出す。落ち着いて考えてみると、自分は今かなり恥ずかしい事をしているのではないだろうか?
大体、これまで彼とキスした数だってほんの数回程度…。
まだ全然慣れておらず、恥ずかしいという気持ちやドキドキが抑えられていないというのに、ピッキーゲームをしてそのままキス…なんて出来る訳がない。
今の今まで余裕を保っていた胡桃だが、その表情から一気に余裕が無くなっていく。微かに浮かべていた笑みは消え去り、大きく見開いた瞳は目の前にある彼の顔を直視しないようにと落ち着きなく視線を泳がす。頬はじわじわと紅潮してすぐに赤く染まるが、どれだけ恥じらったところでゲームを始めてしまったという事実は覆らない。
胡桃「っ…く、ちょ…ちょっと……ストップ…」
菓子から口を離さないようにして言葉を放ち、彼から目を逸らす。
何てゲームを始めてしまったんだ…。どうしよう……。
ここで口を離し、『やっぱりやめよう』と言ったら彼は素直に止めてくれるだろうか?…いや、自分からやってみようと言い始めた手前、ここで中止は提案しづらい。
なら、どうするべきか…。
胡桃(…そうだ、何もキスまでする必要は無いよな?
ギリギリのところまでいったらそのまま菓子を折って、キスするのを避けるのもこのゲームの醍醐味…みたいなもんだよな?)
ピッキーゲーム=キス…。
そんな考え方をしているから混乱するんだ。
確かにタイミングを逃せばそのままキスをしてしまうかも知れないが、上手いタイミングで菓子を折れば逃れる事も可能。それにもしかすると、彼の方から菓子を折ってキスから逃れるという可能性もある。
……と、そんな事を考える胡桃だが、その考えは甘かった。
(なんか……今日の胡桃ちゃんは何時にも増して可愛いような……)
一本の菓子の端と端を咥えた事で至近距離まで接近している胡桃の顔は真っ赤に染まっており、瞳も潤んでいるように見える。菓子の端を挟んでいる唇は綺麗なピンク色をしていて愛らしく、隙間から漏れている吐息はほんのり熱を帯びているようだ…。
彼とのピッキーゲームがスタートした事で困惑している胡桃の表情は意図せず彼の興奮を煽ってしまっていたのだが、胡桃はそれに気付いていない。ただ、どのタイミングで菓子を折ろうか…という事ばかりを考えていた。
胡桃(…よし。あんまりすぐに折ると逃げたみたいになって悔しいから、ギリギリまで粘ってみよう。それでもし、コイツが逃げなかったら仕方ない……あたしの方から菓子を折って、負けを認め――――)
と、考えている時…もうゲームはスタートしていた。
胡桃が目線を右下に落として逃げのタイミングを考えている時、彼は既に口を動かして菓子をかじり、胡桃との距離を詰め始める。
カリカリッ…カリカリッ…
10センチ以上あった菓子はどんどん短くなって二人の距離は5センチ程まで縮まり、その時になって漸く胡桃は気が付いた。
胡桃「っ!?」
少し目を離した間に彼の顔がさっきより近くなっていて、今にもキスしてしまいそうな近さになっている…。ギリギリを見極めるならもう少し粘ってみても良いが、不意を突かれた今の胡桃にそんな余裕は無い。
咥えていた菓子をすぐに折り、そのまま負けを覚悟で逃れようとする胡桃だが、何故か菓子を折った後も首が横に動かない…。
いつの間にか、彼の手が両頬に添えられていたからだ。
胡桃「っっ!?ちょっ、ストップっ…!!!」
咄嗟にそう告げるが、彼は止まらない。
添えた両手で胡桃の顔を押さえたまま残りの菓子を一気に食い尽くし、そのまま顔を寄せていく。彼にとってはもう、こんなピッキーゲームなんてどうでも良かった。今はただ…胡桃とキスがしたい。
その思いで頭がいっぱいになった彼は口内に残っていた菓子をゴクリと飲み込んでから、勢いのままに胡桃の唇を奪った。
胡桃「んっ!!んんっ……!ん……!ん……っ……」
唇が触れ合う柔らかな感触と温もり…。
そして胡桃の吐息を感じた彼は彼女の頭、髪を撫でながら唇を動かし、キスに没頭する。胡桃はこちらの胸板を弱々しく押してキスに抵抗しているようだが、もう少しだけキスを続けていたい…。
この甘い時間をもっと長くて濃いものにしたいと考えた彼はそのまま胡桃を床に押し倒すと再度唇を奪い、続けて舌をねじ込んだ。
胡桃「んんっ!!?んぁ…………ちゅ…っ……ん…んんっ…ッ…」
ねじ込んだ舌はすぐに胡桃の舌を捉え、クネクネと纏わり付く。
熱く潤っている舌と舌を絡ませて唾液を啜るようにしていくと胡桃はビクビクと肩を震わせ、細めていた瞳を潤ませた。
胡桃「ん…っ…!んっ……んん…っ……っ♡」
ゲームの延長で唇を奪われただけでなく、床に押し倒されて、舌まで絡まるくらいの濃厚なキスをしてしまっている…。凄く恥ずかしくて、心臓なんて破裂しそうなくらいに激しく鼓動しているというのに、胡桃はそれを受け入れていた。
彼を押し退けようとして胸元に当てていた手をだらりと床に落とし、脱力させたまま彼と唇を重ねる…。絡んでくる舌からも逃れようとはせず、自分からも率先して絡ませては甘い声を発した。
彼はそんな彼女の声から感触、全てに興奮しながら唇と舌を動かし、唾液を啜ってその甘さを堪能する。口内に運ばれてくる胡桃の唾液がやけに甘いのは、さっきまで食べていたチョコレート菓子のせいだろうか。
仰向けに倒れている胡桃に覆い被さり、キスを続けて数十秒後…。
どちらの物とも分からない唾液の橋を伸ばしながらゆっくり唇を離した彼が乱れかけていた呼吸を整えるようにしていくと、彼以上に呼吸を乱していた胡桃がそっと床から起き上がり………
胡桃「っ…………ぅ~~っっ…!!!」
口元に垂れていた唾液を服の袖で拭って、真っ赤な顔をしながら彼の肩をバシバシと叩き始める。特に何を言うわけでもなく、無言のまま肩を叩き続ける胡桃…。
彼は胡桃の打撃を肩に浴び続けながら、やはり彼女はとても面白い娘だなぁと、そんな事を思ってニコニコと微笑んだ。
ヒロイン毎の違い、楽しんでもらえたでしょうか?
やはり、りーさんは少しだけ余裕のある感じですね。
今回のリクエストは結構前に頂いたものですが、ようやく形にすることが出来ました!しかし、可能ならもっと早く完成させたかったですね…。たった一つのリクエストに応えるのにどれだけ時間をかけているんだ、私は…(汗)
これからも更新の遅れが目立つようになるかも知れませんが、気長にお付き合いしてもらえたら嬉しいです!