夕陽に照らされる校舎…一日の授業が終わり、部活のあるものはそれぞれの活動場所へ。帰宅部のものはそのまま家へ帰る準備を進める。三年の教室にいる彼もまた帰宅部であり、今まさに教室を出ようとしているところだ。
「…さて」
由紀「支度終わった?じゃあ一緒に帰ろ♪」
「あぁ、お待たせ」
彼がカバンを手にしたのを見計らい、由紀は笑顔で歩み寄る。付き合いだしてからというもの、こうして二人だけで帰る事も多くなってきた。とはいえ、人目につくので校舎からある程度離れるまでは多少お互いの距離を空けているが…。
「…………」
由紀「…ねぇ、もういい…よね?」
校舎を出てある程度歩き、辺りに他の生徒が見えなくなってきた頃、由紀が目を泳がせる。照れたようにチラリと目線を向ける由紀を見て彼は微笑み、そっと手を差し出した。
「はい、どうぞ」
由紀「えへへ…ありがと」
ギュッ…
由紀は少しだけ恥ずかしそうな…それでいて嬉しそうな微笑みを浮かべ、隣に立つ彼の手を握りしめる。彼女の手は微かに熱をもっていて、緊張しているようだ。
「手繋ぐの、恥ずかしい?」
由紀「す、少しだけ…。でも、うれしいって気持ちもあるから…平気だよ」
「そっか…ならよかった」
ギュッ……
由紀「あ…ぅ……」
道を進みながら手に力を込め、由紀の手をより強く、しっかりと握る。すると由紀は恥ずかしそうに顔を俯け、普段とは別人のように大人しくなってしまった…。
由紀「……ん…………」
(……ああ、可愛いな)
付き合う前の由紀なら、手を握ったくらいではこうも動じなかっただろう…。しかし今の由紀は彼に強く手を握られ、顔を真っ赤に染めながら黙り込んでいる。彼の事をそれだけ意識しているのだろう。いつになくしおらしい彼女はやたらと可愛らしく見えてしまい、彼は手に一層の力を込めた。
ギュ…ッ…
由紀「あのっ…手…ちょっと痛いかな…?」
「えっ?あ、あぁ…ごめん」
つい込めすぎてしまった力を緩め、今度は優しく彼女の手を握る。由紀も今度の力加減には満足したようで、ニッコリと嬉しそうに微笑む。
由紀「も~、女の子は大事にしなきゃだめだよ?わたしはキミの彼女なんだから、特に大事にしてね!」
「…わかったよ」
由紀「えへへ、よろしいっ!」
握っている手を揺らし、由紀は鼻歌を歌いだす。どうやら、今のがきっかけでさっきまでの照れがある程度は消えたらしい。
由紀「ふんふんふ~ん♪」
「……………」
ご機嫌な由紀に手を揺られながら歩くのも良いが、どちらかというとさっきまでのしおらしい彼女と歩いている方がよりカップルらしい雰囲気でドキドキする事が出来た。鼻歌混じりに歩く彼女を見ているとまるで妹と手を繋ぎながら歩く兄のような心境になってしまい、なんとも複雑な気持ちになる…。
(これはこれで良いんだけども、何か違うような…)
やはり、これは違う気がする。カップル揃っての帰路というのはもっと…もっとドキドキするはずだ。
「…そこの公園、ちょっと寄っていい?」
由紀「ん?別にいいよ」
通り道にあった公園が視界に入り、彼は何となく歩を進める。夕方の園内には人がおらず、滑り台やブランコなどの遊具も夕陽に照らされて影を伸ばすだけだった。
由紀「で、何するの?遊ぶの?」
「いや…ちょっと休憩に来ただけだよ」
遊具を見つめる由紀の腕を引き、彼はそのまま園内の隅にあるベンチへ腰かける。由紀もまた彼の隣に腰かけ、二人で夕焼け空を見上げた…。
由紀「空、真っ赤だね」
「…そうだね」
今日はいつもより日が暮れるのが早く、空は真っ赤に染まっている。まだそれほど遅い時間でもないのに、もう少しで夜になってしまいそうだ。
由紀「……ねぇ、ちょっと聞いていいかな?」
「なに?」
由紀「えっとね…キミは、わたしみたいな娘が彼女でよかったの…?」
ベンチの上にあった彼の手に自分の手のひらをそっと重ね、由紀は呟くような声で尋ねる。付き合ってから数週間…デートは何度か経験したが、それでもまだ少し不安があるらしい…。
「…ああ、よかったと思ってるよ」
由紀「う、嘘ついてない…?」
「ついてない…。急にどうした?」
さっきまで楽しげに微笑んでいた顔が暗いものになっていたため、彼も不安になる。しおらしい雰囲気の由紀は好きだが、今の由紀はただ元気がないだけ…しおらしいとは違う。
由紀「わたし子供っぽいから、デートしててもつまらないんじゃないかなって不安で…。キミだって、ほんとはりーさんみたいな大人っぽい女の子がよかったりするでしょ…?」
「そんな事ないって。たしかに、りーさんは大人っぽくて魅力的だけど、由紀ちゃんだって負けてない」
由紀「ま、負けてるよっ!わたしとりーさんじゃ、全然違うもん…」
「違くても良いんだよ。大人っぽさが魅力のりーさん…明るくて元気なところが魅力の由紀ちゃん…。僕は明るい娘が好きだから、由紀ちゃんと付き合うことにした。由紀ちゃんみたいな娘と付き合えて、本当によかったと思ってる」
由紀「ん、んん……」
出来るだけ分かりやすいように気持ちを伝えたつもりだが、由紀はまだ、自分では彼に釣り合わないと悩んでいるようだ。彼女は顔を俯けたまま、彼の手を弱々しく握っている…。
(難しいもんだな、気持ちを伝えるっていうのは…)
ため息をつき、どうするべきか頭を悩ませる。彼女は何故こんなにも悩んでいるのだろう…。どうすれば、しっかり気持ちが伝えられるのだろう…。そうこう悩む内、由紀が初デートの時に言った言葉を思い出した…。
由紀『わたし…キミにお子さまだって思われてるかも知れない…。でもね、わたしも一応、ちょっとは大人の女の子だから…。だから…ほんとはね…キミともっと手を繋いだり、他にもいろいろ……したいんだよ…?』
初めてのデートがあと少しで終わるという時、彼女は顔を真っ赤にしながらそう言った…。思えば、この言葉がヒントだったのかも知れない。由紀が子供っぽいから中々手を出せずにいたが、その気遣いがかえって彼女を不安にしていたのかも知れない…。
(そうか、もう少し積極的になってやるべきだったな…)
あれからも何度かデートをしたが、手を繋ぐ以上の進展は無かった。恐らく、由紀はもう少しだけ彼に踏み込んできて欲しかったのだろう。自分からは恥ずかしくて、動けそうにないから…。
「…由紀、こっち向いて」
由紀「えっ?」
不意に呼び捨てで呼ばれ、由紀は思わずそちらへと顔を向ける。次の瞬間、彼は由紀の顎に手を添えて一気に顔を寄せると…そのまま静かに唇を重ねた。
由紀「んっ…!!?んん~っ…!!」
突然の事に驚いた由紀は目を見開き、ベンチに座ったまま手足をバタつかせる。が、彼はそれでも唇を離さない。柔らかく、温かな由紀の唇の感触…それを一秒でも長く味わっていたかった…。
由紀「ん…っ…んん…っ……」
キスをして十数秒経っただろうか…。最初は手足をバタつかせていた由紀も次第に落ち着きだし、今は瞳も閉じて大人しくしていた。
(一か八かだったけど、これでよかったみたいだ…。にしても、由紀の唇が柔らかくて、離すに離せない…!)
うっすらピンク色の唇はぷるりと柔らかく、こちらの唇に吸い付くような感触だ。彼はそんな感触に夢中になってしまい、中々唇を離せない。そんな時、由紀が息継ぎをするべく唇を離しかけたが……
由紀「っ…ぷは…っ!…ぅん…!?ん…んっ……!」
彼は由紀の後頭部に手を添え、離れかけた唇を再び重ねた。由紀はそんな状況でも息継ぎをしようと唇を動かしており、その度に彼女の甘い吐息が彼の口へとかかる。
由紀「ん…ぁっ…!う…ん…ぅぅ…!」
パクパクと動く彼女の唇を追うようにして唇を動かす内、キスが自然と激しくなる…。口内では互いの唾液が混じり合うが、由紀のが含まれていると思うとその唾液すらも甘いような気がして、彼は夢中でキスを続けた…。
由紀「うぅ…んっ…!く、苦しい…っ!!」
「っ…は……ごめん」
息に限界がきた由紀は堪らず彼を押し退け、キスを無理矢理に中断する。彼女は乱れた息を『はぁはぁ』と整えつつ、口元に垂れていたヨダレを手の甲で拭った。
由紀「はぁっ…はぁっ…」
「……大丈夫?」
由紀「大丈夫じゃないよ!キミがいつまで経ってもチューを終わらせてくれないから、すっごく苦しかったんだよ!?」
そう言って怒る由紀はやはり子供のようで、迫力がまるでない。しかし、こういう子供っぽいところも由紀の良いところだ。
「悪かったよ…。でも息くらい鼻ですればよかったんじゃ……」
由紀「鼻…?あっ、そっか!!」
「…気づいてなかったのか」
驚いたように目を丸くする由紀を見て、彼は苦い笑みを浮かべる。そう言えば、キスをしている時の彼女は確かに口だけで呼吸をしようとしていた。突然の事だったので鼻呼吸というものを忘れていたらしい。
由紀「で、でも…ほんとに驚いちゃった…」
「急にごめん…。由紀の事を愛してるって伝える方法が他になくて…」
由紀「…ゆき……ゆき…かぁ…えへへっ♡」
彼が先程のキスを謝る中、由紀はデレデレと微笑む。どうやら名前を呼び捨てにされた事が嬉しいようだ。
由紀「あの…これからはずっと…そう呼んでくれる?」
「えっ?」
由紀「わたしのこと、由紀って…呼び捨てで呼んでくれる?」
「……わかったよ、由紀」
彼が目を見つめながら言うと、由紀がまた微笑む。そのデレデレとした表情はやはり幼く、子供っぽい。だが、彼は由紀のそんな笑顔が大好きだった。
由紀「えへへ…。ゆき、ゆき、ゆきっ!う~ん、いよいよカップルらしくなってきたね!!」
「まぁ、カップルですし…」
由紀「うふふ~♪ねぇねぇ、わたしのこと、ほんとに好き?」
ずいっと顔を寄せ、瞳をキラキラと輝かせる由紀…。こう改めて聞かれると少し照れくさいが、ここで答えをはぐらかせたら彼女はまた不安になってしまうかも知れない。
「……好きだよ。愛してる」
由紀「………そっか……そっ…か………」
「…由紀?」
キラキラと輝いていたその瞳が徐々に光を失い、代わりに涙が溢れだす。由紀が喜ぶと思って気持ちを伝えたつもりだが、困惑させてしまったのだろうか…。彼は不安になり、由紀の肩に手をあてる。
由紀「あ…っ…!ご、ごめんっ!違うよ!?別に嫌だったわけじゃないの。ただ、ずっと不安だったから……」
「…………」
由紀「もしかして嫌われたんじゃないんじゃないかなぁって…ずっと不安だったの…。でもキミは今、わたしのことを好きって言ってくれた…。愛してるって言ってくれた…。それが嬉しくて、ついつい泣きそうになっちゃった…」
零れかけていた涙を拭い、由紀はまた『えへへ』と笑う。こんなにも可愛い顔で笑う、この由紀という少女を彼が嫌いになるはずなどなかった。
「僕は…由紀が思っている以上に由紀のことが好きだ。どれだけ愛しているのかを語ったら、きっと由紀も引くと思うよ」
由紀「引かないよ。だって、わたしもキミが思っている以上にキミのことが好きだもん!ほんとに、ほんとに大好きで…他のことなんか考えられないよ」
由紀はそう告げてから頬を赤く染め、目を細める。彼女はそのまま、隣に座っている彼へすがるように身を寄せると、その細い腕を彼の肩へ回した。
「どうした…?」
由紀「わ、わたしから…キミにチューしたい………しても、いい?」
肩に回した腕に力を込め、由紀は彼の顔を自分の方へと寄せる。間近に見つめる由紀の目は恥ずかしさから溢れる涙に潤んでいたが、それでもしっかり彼の目を見つめている。そんな彼女の問いに対して彼が無言のまま頷くと、彼女は静かに呟いてから瞳を閉じた…。
由紀「わたし、もう子供じゃないからね…。ん…っ…」
「…っ……」
自分に言い聞かせるようにして呟いた後、由紀は彼の唇に自分の唇を重ねていく。あの由紀が、自分から進んでキスをした…。彼はその事実に胸をときめかせ、ただじっと、彼女のキスを受け入れていく。
由紀「んん…っ……ちゅっ……ちゅ…っ…」
「ん…んっ……」
由紀「っ…ん………ちゅっ……」
きっとすぐに終わると思っていた…。しかし由紀のキスは意外にも長く、終わる気配を見せない。由紀は今も瞳をギュッと閉じたまま、彼の唇に自分の唇を重ねていた。ただ触れるように重ねたり、かと思えば、まるで小鳥が餌をつつくようにして唇を重ねてきたり…
由紀「っ…ん……ぅ…」
由紀はきっと、自分なりにキスのやり方を試行錯誤しているのだろう。ぎこちなく、何度も唇を重ねてくる由紀がたまらなく愛しい。彼はもう我慢できず、自分からも唇を動かしていくことにした。
由紀「ぅ…んっ…!ん…んっ…」
すぼめていた唇を微かに開き、由紀の唇を味わう。彼の唇が動いた瞬間こそ驚いていた由紀だが、彼女はすぐにそれを受け入れ、甘い声を漏らした…。人に聞かせた事どころか、自分でも聞いた事のないような声を…。
由紀「ん…ぁっ…ぁ…んっ……ん…♡」
彼のキスに押され、ほんの少しだけ口が開く。するとその僅かな隙間から彼の舌が侵入し、それが由紀の舌先に触れた。彼の舌が自分の口に入り、そのまま自分の舌へ触れている…。由紀は頬どころか耳の先までも真っ赤に染め、小さな身を震わせる。
由紀(はずかし…いっ…!はずかしいっ……!!)
頭でそう思う由紀だが、それでも彼を押し退ける気にはなれない。それどころか彼とキスを続ける事によって体は熱く…そして頭はぼんやり心地よくなってきた。由紀は彼の舌から逃れるように引っ込めていた舌をそっと動かし、それを自分の方から彼の舌に重ねていく……
…ガサッ!!
由紀「ん……ぷはっ…!?」
「あっ…?」
キスが更に激しくなりかけた時、二人が腰かけているベンチ横…数メートル先にあった茂みが音を鳴らす。ある程度人影には注意していたつもりだが、キスに夢中で警戒心がなくなっていたようだ。
由紀「だ、だれかいるの…?」
茂みの方にそっと声を放ち、返事を待つ。そこにある茂みはわりと深く、その気になれば数人くらいは身を潜める事が可能だろう。だとすれば、誰かがそこからこちらを見ていた可能性がある…。が、返ってきた返事は人間のものではなかった。
『……ニャ…ニ"ャ~……』
由紀「ふぅ…なんだ、ネコだったんだね」
安心したように呟き、由紀は笑う。
「ならよかった。…にしても、変な声で鳴くネコだ」
聞こえた鳴き声は普通のネコと比べるといくらか低く、どこかおかしい。一体どんなネコがこんな声を出すのかと気になる彼だったが、ネコはいくら待っても姿を現さない。
由紀「中を覗いたら出てきてくれるかな?」
「さぁ、どうだろうね」
と答えつつ、彼は辺りを見回す。すると公園の隅に立てられていた時計が視界に入り、思っていた以上に長居してしまった事を知る。
「由紀、そろそろ帰ろう」
由紀「あっ、もうこんな時間だったんだ」
彼がベンチから立ち上がると、由紀も腰を上げて彼の横に並ぶ。二人はそのまま手を繋ぎ、互いの家へと戻っていく…。付き合いだして数週間…ようやく、カップルらしさが出てきた。
~~~~~~~~~~~~~~
由紀「おっはよ~!」
「んん、おはよう、由紀」
由紀「ねへへ~♪」
翌朝、登校した由紀は教室の中でニヤニヤと笑う。日を跨いでも、彼が自分の事を呼び捨てにしてくれた事が嬉しいらしい。すると、そんな由紀と彼のそばへ悠里が歩み寄った。
悠里「あらあら、今日の二人は何時にも増して仲良しね」
由紀「ふふ~♪そう見える?そう見えるっ?」
ハシャグ由紀を見て大体の事を察したのか、悠里は優しく微笑む。彼女は由紀の頭を静かに撫で、席についている彼のことを見つめた。
悠里「彼氏らしいこと、ちゃんとしてあげてる?」
「ええ、バッチリと」
悠里「そう。ならいいわ♪ゆきちゃんは私にとっても大切な娘だから、大事にしてあげてね?」
「もちろん」
微笑みながら答えると、悠里は満足そうに微笑む。彼女は既に彼と由紀の仲を知っているため、友達として二人のことを見守るつもりなのだろう。
ガラガラッ…
胡桃「お、おはよ~………」
由紀「おはよ~っ!」
「おはようさん」
悠里「おはよう、くるみ。今日は遅かったわね?」
授業が始まる数分前…胡桃がようやく教室に現れる。彼女は普段からわりと早めに登校していた気がするが、今日は由紀よりも遅かった。
胡桃「その…ちょっと寝不足で……」
「また、徹夜でゲームでもやってたのか?」
胡桃「い、いや…そうじゃないけど………」
胡桃は彼と由紀を交互に見つめ、顔を真っ赤に染める。今日の彼女はどうにも様子がおかしい…。
悠里「顔が真っ赤よ。どうかしたの?」
胡桃「えっと…その……そのっ……!」
悠里に尋ねられると胡桃は目を泳がせ、また彼と由紀の事を交互に見つめる。その反応を見た彼が嫌な予感を感じた瞬間、胡桃は決心したかのように口を開いた。
胡桃「お前ら…付き合ってるの…?」
「……一応聞くけど、なんでそう思う?」
周りの生徒に聞こえぬよう、胡桃は声を抑えてくれていた。彼はそんな胡桃の目をじっと見つめつつ、なぜそう思ったのかを問う。そう言えば胡桃にはまだ由紀との関係を打ち明けていなかった…。今ここで素直に答えても良いのだが、彼女はどうして二人の関係に気付いたのか…そのきっかけを知っておきたかった。
胡桃「昨日、いつもより早く部活が終わってさ…。で、帰り道を歩いてたらその…お前らが公園でしてるの…見ちゃって……」
と、恥ずかしそうに言う胡桃を見て、彼は後悔する…。やっぱり、聞かなきゃよかったと……。そばにいた由紀も似たような事を思ったのか、顔が赤くなり始めていた。
由紀「えっと、ど、どこで見てたの…?」
胡桃「…茂みの陰。途中バレそうになったけど、ネコのふりしてごまかした…」
「あれがそうだったのか……」
ネコにしては変な声だと思ったが、まさか胡桃だなんて思わなかった…。由紀とのキスを見られた彼は少しだけ恥ずかしそうに顔を俯け、由紀も似たような反応を示す。その一方、悠里が冷めた目で彼の事を見つめだした。
悠里「あなた、公園で何をしたの?公園で…公園なんかで、ゆきちゃんに変な事をしたわけじゃ……」
「いやっ、変な事なんて…!!」
由紀「そ、そうだよりーさんっ!わたしはただ、この人と………」
言い出した由紀が口ごもり、昨日の事を思い出しながら顔を真っ赤にする。それがまた余計な誤解を生み、悠里の目がみるみる冷たくなっていく。
悠里「あ、あなたっ…!まさか、ゆきちゃんと…っ…!!?」
この様子から察するに、悠里は彼が由紀とキス以上の事をしたのだと誤解している。しかもその場所が公園…人目につくような場所とあっては、由紀の親友である彼女が怒るのも無理はない。
「りーさん、たぶんあなたは誤解を…」
慈「はい、授業始めますよ~。みんな席について下さいね~」
肝心な所で慈の声が響き、悠里達はそれぞれの席へと戻る。彼はその後の授業中、誤解をし続けている悠里の冷たい目線に耐え続ける事となったわけだが…その誤解も次の休憩時間中に胡桃、由紀の証言のおかげで無事に解くことが出来たのだった。
むぅ……彼は由紀ちゃんとキスしてよく冷静でいられるなぁ…。
私なら由紀ちゃんの可愛さにやられて気絶するか、その場で襲うとおも…………はい、少し暴走してしまいましたね(-ω-;)
由紀ちゃんが相手だからほのぼのした話にしようかなぁと思いましたが、せっかくの恋愛ストーリーですからね、こういうのもありかと思って…ついキスシーンを入れてしまいました(汗)いつもとは違う、少し大人な由紀ちゃんを書きたかったのです…。
次回はほのぼの系の話にしていこうかな…と思ったり(;´-`)