軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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『みきアフター』第一話目ですっ!!

今回の話ですが、時系列的には『どんな世界でも好きな人』の第四十八話(海編)後のifストーリーとなっています。彼とみーくんの物語…楽しんでもらえれば幸いですm(__)m


みきアフター
第一話『ただ…伝えたかっただけです』


 

 

ある日曜日の事…。

彼は午前の内に太郎丸の散歩を済ませ、少し早めの昼食をとり、そしてそのままゴロゴロとだらけていたのだが……

 

 

 

ピンポーン

 

と、いきなり鳴り響いたチャイム音に仕方なく起き上がる。

いったいどこの誰がやって来たのだろう?そんな事を思いつつドアを開けると、外には見慣れた後輩の姿があった。

 

 

 

美紀「先輩、こんにちは」

 

玄関先にてペコリとお辞儀する美紀を見て、彼は少しの間黙りこむ。今日、彼女と会う約束をしていただろうか?そんな事を考えたが、やはり身に覚えはない。

 

 

 

「こんにちは。急にどうしたの?」

 

美紀「ちょっと暇だったんで、つい遊びに来ちゃいました。太郎丸にも会いたかったし、それに出来るなら、また小説の方の手伝いを頼みたくて…」

 

美紀は肩にかけていたカバンから一冊のノートを取り出し、彼の顔色を窺う。このノートには確か、彼女が最近見る夢を話のベースとした小説が書かれていたハズだ。

 

 

 

「まぁ、こっちも暇だったし…。オッケー、じゃあ上がって」

 

美紀「ありがとうございます。じゃ、お邪魔します」

 

彼に招かれた美紀はどこか嬉しそうにも思える声を出し、靴を脱いで中へと上がる。そうして彼の部屋へ入るとさっそく太郎丸と目が合い、美紀はピタッと立ち止まる。

 

 

 

美紀「こ、こんにちは…」

 

右手を小さく振って挨拶するが、太郎丸は床に敷いてあった座布団の上で寝転んだまま起き上がらない。ただ、それでも目線だけしっかりと美紀の方に向いている。

 

 

 

「おいおい、もうちょっと愛想よく出来ないのかね、こいつは…」

 

美紀「あはは、大丈夫です。私は…別に気にしてませんから」

 

この部屋には数回訪れているが、太郎丸はいつまでも(なつ)いてくれない…。言葉では強がる美紀だが、内心では少しだけガッカリしていた。

 

 

 

美紀「で、さっそくですが手伝ってもらっていいですか?」

 

「もちろん。ま、僕じゃ大して役に立たんと思うがね」

 

美紀「そんな事ないです。手伝いといっても、読んでみておかしなところが無いかチェックして欲しいだけですから。どうぞ気軽にやって下さい」

 

部屋にあるテーブルを彼と挟むようにして座り、美紀はそのノートを手渡す。前にここを訪れた時から数週間…彼女はあれからも似たような世界の夢を見ており、それをベースに話を書いていた。

 

 

 

「じゃあま、見させてもらおうかな…」

 

彼はペラリとページを捲り、以前見た続きからそれを読み進めていく…。新たに書き足されていたページはほんの数ページ。文字数はそこまで多くないのだが、5分…10分と時間が過ぎても彼はまだノートから目を離さない。

 

 

 

「…………」

 

美紀「……あ、あの、どこか変なところがありました?」

 

「えっ?いや、今のところは特に……」

 

美紀「なんか、時間かかってますね?」

 

「あぁ、ちょっと読むスピード遅くて。時間とらせて悪いね」

 

美紀「いえ、全然大丈夫ですよ。私こそ、付き合わせちゃってすいません」

 

時間がかかっている理由は、ただ単に文字を読む速度が遅いからのようだ。美紀はホッと胸をなでおろし、彼がそれを読み終えるのを待つ。どれだけ時間がかかろうと、しっかり読んでくれさえすれば良い。

 

 

 

 

……パタン

 

「んん、特におかしなところは無かったよ」

 

更に数分経過し、彼がとうとうそれを読み終える。美紀は彼からノートを返してもらうと、不安そうな顔を見せながら尋ねる。

 

 

 

美紀「つまらなかった…ですか?」

 

「面白かったよ。ただ、胡桃ちゃんがこれからどうなるのかが心配だな」

 

ここで彼が言った胡桃とは、美紀の書いている小説の中での登場人物の事であり、現実世界の彼女の事ではない。この小説の中での胡桃は肩に傷を負っており、それによって謎のウイルスに感染してしまっていた…。

 

 

 

「あくまでも小説の中の話、胡桃ちゃん本人じゃなく彼女をモデルにしただけの娘だっていうのは分かっているんだけど、だとしてもこれからが心配だ…」

 

美紀「…先輩は優しいですね」

 

「ふふっ、どうかな」

 

いくら胡桃をモデルにしたキャラとはいえ、これはあくまでも小説…。にも関わらず彼女の事を心配をする彼を見つめ、美紀は微笑む。そうしている内、ふとあることが気になった…。

 

 

 

 

 

美紀「先輩は、くるみ先輩の事が好きなんですか…?」

 

何故こんな事を聞いてしまったのか、自分でも分からない。

ただ彼が小説の中の人物…胡桃の身を案じているのを見ていたら、自然と口が動いていた。

 

 

 

「えっ?い、いや…別にそんなことは…」

 

美紀「…冗談です。そんなに慌てないで下さいよ」

 

慌て出した彼にそう告げ、美紀は微笑む。

この発言は慌て出した彼を落ち着けるために…そして、咄嗟に出てしまった自分の発言をただの冗談にするために出したものだ。

 

 

 

美紀(私、なんでこんなこと聞いちゃったんだろ…)

 

さっきの言葉が冗談だと知って安心する彼の向かい、テーブルを挟んだ先に座る美紀は顔を俯け、一人顔を真っ赤に染める。彼と一緒にいるといつもそうだ。不意にドキドキと胸が高鳴り、どうにも落ち着かなくなってしまう。

 

 

 

 

美紀(やっぱり、自分の気持ちに素直になった方がいいのかな……)

 

この落ち着かなくなる気持ちが何なのか、正直言えば気付いていた…。けど、もしこの気持ちを彼に打ち明けたらどうなるだろう?彼が受け入れてくれたら、きっと嬉しいと思う。だが、もしも拒絶されてしまったら…?そう思うと、怖くて素直になれない…。

 

 

 

「美紀、どうした?」

 

美紀「あ…っ…。何でもないです…」

 

声に反応して顔を上げると、彼が不安そうにこちらを見ていた。美紀は直ぐ様笑顔を作り、彼を安心させようとする。

 

 

「…何か悩み事?」

 

美紀「……いえ、大丈夫ですよ」

 

「ふむ…ならいいけど」

 

この場はどうにかごまかせたらしく、彼が安心したように微笑む。するとその直後、彼は美紀の目を見つめたままニヤリと笑った。

 

 

 

 

「そう言えば美紀はどうなの?」

 

美紀「??……何がです?」

 

「好きな人。美紀にはそういう人がいたりするのか気になってね」

 

美紀「あ、ああ…そういう事ですか」

 

話の内容を理解し、美紀は考える…。

ハッキリ言って良いのなら、好きな人はいる。しかし、それを本人へ伝えるのは恥ずかしくもあり、怖くもある。どう答えれば良いのかと(しば)し考えた結果、美紀は一つの答えを思い付いた。

 

 

 

 

美紀「…まぁ、こういう人が良いなぁってタイプはあります」

 

「へぇ、どんな人?」

 

美紀「えっと、その…普段から明るくて、それでいてちょっと抜けていて、一緒にいると呆れる事ばかりだけど、優しくてかっこいい…。付き合うなら、そんな先輩がいいです」

 

と答えた後、美紀は慌てた様子で顔を俯ける。彼の特徴を口に出すことで自分の気持ちを間接的に伝えようとしたのだが、いざ口を開いたら思いの外ストレートな物言いになってしまった。

 

 

 

美紀(これじゃ、さすがに気付かれ―――)

 

 

 

「先輩ってことは、年上が良いの?」

 

美紀「えっ…?あ、はい……」

 

「ふぅん…。明るくて、ちょっと抜けていて、それでいて優しい先輩ね…」

 

美紀「………」

 

彼はボーっとした様子で天井を見上げ、そのまま黙りこむ。彼は少しの間そうした後に美紀の方へと顔を向け、優しい笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「…見つかるといいね」

 

美紀「は、はい……」

 

先程美紀が言った好みのタイプ…それは彼を指すものだったのだが、様子から察するに彼はそれに気付いていないらしい。美紀は安堵すると同時に、ほんの少しだけガッカリする。

 

 

 

 

美紀「はぁ……難しいものですね…」

 

「何が?」

 

美紀「いえ、こっちの話です。私、ちょっと飲み物買ってきますね。先輩も何かいりますか?」

 

「いや、いらないよ。一緒に行こうか?」

 

美紀「大丈夫です。すぐ戻りますから待ってて下さい」

 

この家に来る途中、自動販売機を見掛けた。そう遠くなかったはずだし、外の空気を吸いながら気持ちを落ち着けよう…。美紀はそんな事を思い、一人外へと出ていった。

 

 

 

 

 

「…今の美紀、ちょっと不機嫌だったか?」

 

太郎丸「クゥン?」

 

「ああ、お前にも分からないか…。女心っていうのは難しいな」

 

座布団の上に寝転ぶ太郎丸と会話を交わしつつ、ベッドの上へ腰を下ろす。ベッド横にある窓からは日が差し込んでおり、心地よい暖かさだ。

 

 

 

 

「これは、眠くなるな……」

 

目蓋(まぶた)があっという間に重たくなり、気付けば横になっていた。ふかふかしたベッドの上で横になりつつ、窓から差し込む日を浴びるのはとても気持ちが良い。ほんの少しだけ休むつもりが、彼はいつしか深い眠りについていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~

 

 

美紀「……何で寝てるんですか、この人は」

 

約10分後、部屋に戻ってきた美紀はジュースを片手にため息をつく。彼がいつの間にかベッドの上に寝そべっており、そのまま眠っていたからだ。

 

 

 

美紀「はぁ……私はどうすればいいんですか」

 

カーペットの上に腰を下ろし、もう一度ため息をつく。起こすのも悪い気がするし、このまま帰ってしまおうか…。そんな事を思った時、美紀はすぐ隣で寝転んでいた太郎丸と目が合う。

 

 

 

美紀「……ねぇ、どうしよっか?」

 

ペタリと座り込んだまま、太郎丸に尋ねる。ただ、こんな事を尋ねたって太郎丸は返事をしてくれないに決まっている。自分はただでさえ嫌われているようだし、きっとそっぽ向かれて終わりだろう…。そう思う美紀だったが…

 

 

 

トットットッ……

 

美紀「あ…っ」

 

太郎丸は寝転んでいた座布団から起き上がり、そのままこちらへ歩み寄る。美紀はこれだけでもかなり驚いたのだが、直後、太郎丸は彼女の膝の上へと乗って尻尾を振り始めた。

 

 

 

太郎丸「わんっ!」

 

美紀「あ、あれ…どうしたの?」

 

初めての事に戸惑い、美紀は静かに慌てる。ようやく懐いてくれたのだろうか?それとも寝ぼけているだけだろうか?色々な事を思ってしまうが、とりあえず、美紀は太郎丸の頭を撫でてみようと手を伸ばした。

 

 

 

美紀「………嫌…じゃないの?」

 

小さな頭に手を置き、静かに撫でる…。太郎丸の毛は思っていたよりもサラサラとしていて触り心地が良く、思わず頬が緩む。調子にのって頭なんか撫でたら逃げられてしまうと思ったが、太郎丸は逃げることなくそれを受け入れてくれていた。

 

 

 

美紀「もしかして、慰めてくれてる?ふふっ、お前は優しいね…」

 

彼が眠ってしまったから、太郎丸が代わりに相手をしてくれるつもりなのかも知れない。実際どうなのかは分からないが、こうして太郎丸が来てくれたおかげで美紀の気持ちもいくらか明るくなった。

 

 

 

美紀「ねぇ、ちょっとだけ…抱っこしていいかな?」

 

太郎丸は尻尾を振ったまま、彼女の事を見つめる。それを返事と解釈した美紀は太郎丸の脇に手を潜らせ、その身をそっと持ち上げた。

 

 

 

美紀「…なんか、懐かしい気がするなぁ」

 

太郎丸「わんっ!」

 

相変わらず尻尾を振ったまま、返事のように声を出す。その声を聞いた瞬間…何故かは分からないが、瞳の奥がジリジリと熱くなっていった…。太郎丸の声を聞くと、その小さな身を抱えていると、何故か涙が溢れ出す…。

 

 

 

 

美紀「あ…っ……私、どうしたんだろ…」

 

優しく抱きしめるように胸へ寄せ、その存在を確かめる。これまで自分にだけ懐いてくれなかったから、こうして来てくれた事が嬉しかったというのもある。だが、溢れ出す涙の理由はそれとは別にある気がした…。

 

 

 

美紀「ごめんね……ありがとう…」

 

何に対して謝っているのかも、何に対しての礼なのかも分からない…。ただ、太郎丸を抱いている内に自然と言葉が出てしまう。美紀はそうして太郎丸を抱いたまま、数分間涙を流し続けた…。

 

 

 

 

 

美紀「ふぅっ…やっと落ち着いた…。付き合ってくれてありがとね」

 

太郎丸「わんっ」

 

応える太郎丸を見てニッコリと微笑み、その身を元いた位置、座布団の上へと戻していく。再びそこへと置かれた太郎丸は美紀の事をじっと見つめたまま、そっと静かに寝転んだ。

 

 

 

 

美紀「…にしても、お前のご主人様は困った人だね。ちょっと留守にした間に寝ちゃうなんて」

 

こちらに向いている彼の寝顔を見つめつつ、太郎丸に愚痴を溢す。太郎丸は吠えたりする事もなく無言だったが、彼と美紀の事を交互に見つめていた。

 

 

 

美紀「ねぇ、もし私が思いきった事をしたいって言ったら、応援してくれる?」

 

太郎丸「わんっ!」

 

と、これには太郎丸も返事を返す。それを聞いた美紀は『ふふっ』と笑い、そのまま彼の眠るベッドの横へとついた。

 

 

 

 

美紀「じゃ、がんばってみるね…」

 

カーペットの上に腰を下ろしつつ、彼の寝顔を見つめる。彼の眠るベッドはわりと高く、床に座り込んでいる美紀のほぼ正面に寝顔があった。美紀はベッドの上にほんの少しだけ身を乗り出し……

 

 

 

 

美紀「先輩…ちょっとだけ、失礼します…」

 

と、一人呟いてから彼の寝顔へ顔を寄せ、その唇に自分の唇を重ねた…。

 

 

 

 

美紀「ん…っ……」

 

あまり声を出すと彼が起きてしまう…。いや、そもそもこうしてキスしてしまった事で起きてしまってもおかしくない。分かってはいるのだが、重なった唇を離せない…。寝ているとはいえ、一方的なものとはいえ、好きな人とのキスだ。もう少しだけ…もう少しだけこうしていたい…。

 

 

 

美紀「っ…ん…先輩…先輩っ…」

 

何度も何度も繰り返しキスしてしまい、顔が熱くなっていく。こんな事をしたら起きてしまうと分かっているのに、美紀はキスをしながら彼の事を呼び続けた。

 

 

 

美紀(私、こんなに先輩のことが…大好きだったんだ)

 

改めて気付いたその気持ちと向き合い、美紀はキスを続ける…。寝ている彼としているだけでも全身が熱くなっていくのに、起きている彼としたら…彼にしてもらったら、どうなってしまうだろう。最早眠りについている彼とのキスでは物足りないような、そんな気持ちを美紀が抱きかけた時だった…

 

 

 

 

 

 

 

「美紀、何してるの…?」

 

美紀「っ…!?」

 

彼の瞳がパチリと開き、美紀は驚きに目を丸くする。長くキスし過ぎたせいでさすがに起きてしまったようだ。彼は横になったまま美紀の手を掴み、彼女の事をじっと見つめている…。

 

 

 

美紀「そ、そのっ…!ご、ごめんなさい……」

 

「…なんでこんな事を?」

 

掴んでいた手を離し、彼は上半身を起こす。寝てる間にあんな事をして、嫌われてしまったかも知れない…。おかしな女だと思われたかも知れない…。思わず泣きそうになる美紀だが、彼女はそれでも彼の目を見つめ返した。

 

 

 

 

美紀「先輩のこと…好きなんです…。大好きなんですっ!だから…その気持ちが抑えられなくて……ごめんなさい…」

 

「…………」

 

彼は返事を返さない…。

やはり、嫌われてしまったのだろうか。こうなるかも知れないと分かっていたのに、何故あんな事をしてしまったんだろう…。後悔した美紀の目に涙が溢れ出す。

 

 

 

 

美紀「嫌いに…なりましたよね…。ごめんなさいっ……私、なんでこんなことをっ―――」

 

と、半泣きしそうになった瞬間だった…。

彼が美紀の頭に手をポンと置き、そこを優しく撫でていく…。

 

 

 

美紀「…先輩っ?」

 

「嫌いになんてならない。可愛い可愛い後輩が、自分の事を想ってくれている…むしろ嬉しいくらいだ。それにその…僕も美紀の事が………」

 

美紀「な…なんです…?」

 

頭を優しく撫でたまま、彼は照れたように目を逸らす。

美紀はそんな彼を真っ直ぐ見つめ、決して目を離さない。彼が自分の事をどう思ってくれているのか、それを聞きたくて仕方がなかった。

 

 

 

 

 

「ええっとだね…僕も美紀の事……好きだから…」

 

彼は照れつつ、しっかりとそう言った。こちらを見つめる美紀の目をチラリと見つめ返し、確かにそう言った…。その言葉を聞いた美紀は一瞬ハッとしたような表情を浮かべるとすぐに顔を真っ赤に染め、ベッド上にいる彼へと抱きつく。

 

 

 

ガバッ!

 

「うおっ!?」

 

美紀「本当……なんですよね…?嘘じゃない…ですよね?」

 

自らも完全にベッドの上へ乗り、そのまま彼を抱きしめる…。

彼の言った言葉が嬉し過ぎて、我慢なんて出来なかった。

 

 

 

「…ああ、嘘じゃない。好きだよ」

 

美紀「っっ……!先輩っ…」

 

彼は改めて答えつつ、自分からも彼女を抱きしめる。

しかし次の瞬間、美紀が思っていたよりも強い力で身を寄せてきたため、彼は再びベッド上に横たわってしまう。

 

 

 

「うわっ…と」

 

バフッ!!

 

 

 

 

「あ、あの……美紀…?」

 

美紀「……」

 

彼が倒れても尚、美紀はその身を離さず胸元に顔を埋めている。まるで甘えん坊の猫のように自分の上にいる美紀…。彼はそんな美紀の頭を優しく撫でていった。

 

 

 

美紀「私のどこが…どこが好きですか…?」

 

「可愛いところとか、後輩なのにしっかりしてるところとか…」

 

胸に顔を埋めてくる彼女の頭を撫でつつ、その問いに答えていく。

その答えを聞いた直後、美紀は更に強く顔を埋めていった。

 

 

 

 

美紀「なら先輩…きっとガッカリします…」

 

「…どうして?」

 

 

 

美紀「私、もし先輩と付き合う事になったら……いっぱい甘えます…。先輩にずっとベタベタして、たくさん甘えちゃいます…。きっと、これまでみたくしっかりしている余裕なんて無いです…それでも、そんな私でもいいんですか?」

 

「うん…それはそれで良いね。ギャップにやられそうだ」

 

甘えてくる美紀を想像し、満足そうに笑う。すると美紀は埋めていた顔を上げ、また改めて彼に抱きつく。

 

 

 

 

美紀「先輩っ…大好きですっ…!大好きですっ!!」

 

「んん、僕もだよ」

 

今にも泣き出しそうな顔を肩へ埋める美紀を抱きしめ、その背中を撫でる。美紀は横たわる彼の上に覆い被さるようにしてその顔を真正面…至近距離から見つめた。

 

 

 

美紀「愛して…ますか?私のこと、愛してますか?」

 

「ああ…愛してる」

 

美紀「っ……よかった……嬉しいです」

 

一筋の涙を溢し、美紀は彼を抱きしめる。彼も彼でそんな彼女をギュッと抱きしめ、二人はしばらくの間その場所で…ベッドの上で身を寄せ合った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

美紀「あっ…もうこんな時間なんですね」

 

部屋にある時計を見つめ、美紀は驚く。時計の針は午後5時を少し過ぎた辺りを指していた。ふと窓の外を見てみれば、空もすっかり夕焼け色に染まっている。気付かぬ間に結構な時間が経っていたらしい。

 

 

 

「家の人が心配するだろ。そろそろ帰るといい」

 

美紀「はい…。にしても、先輩と二人だと時間過ぎるのもあっという間ですね。もう少し一緒にいたかったな……」

 

「そうだね。僕ももう少しだけ、美紀が甘える様を見ていたかったよ」

 

互いの気持ちを伝え合った後に過ごした彼女との時間を思い返し、彼は満足そうに微笑む。そんな表情を見た美紀は赤く染まった頬を膨らませ、彼の額にペシッと手を当てた。

 

 

 

美紀「あまり恥ずかしいこと、言わないで下さい…」

 

「わるいわるい。色々と新鮮だったもので」

 

美紀「もう…先輩ったら…」

 

呆れたようにため息をつきつつ、美紀はニッコリと微笑む。

この数時間、彼には恥ずかしいところばかり見せてしまったが、それでも確かに幸せな時を過ごせた。これから先もこんな時間を共に過ごせると思うだけで、思わずニヤケてしまう程だ。

 

 

 

 

美紀「じゃあ、私は帰りますね。太郎丸も今日はありがとう。なんか…色々ごめんね?」

 

「いやいや、謝るのはむしろこいつの方だ。今まで散々、美紀に冷たくしてきたんだから。そういえば、いつの間にか仲良くなったみたいだね?」

 

美紀「ええ、先輩が寝ている間に色々あったんですよ。ねっ」

 

太郎丸「わんっ!」

 

別れる前にもう一度その頭を撫で、美紀は笑う。太郎丸も彼女にすっかり懐いたらしく、逃げるような素振りは見せない。

 

 

 

美紀「さて、私はもう帰りますが…先輩、何か言うことは?」

 

「ああ、気を付けて帰るんだよ」

 

美紀「もう……違います、ハズレです。こういう時、ちゃんとした彼氏なら『送っていこうか?』って言うんですよ。…たぶん」

 

プイッと目線を横に逸らし、少し不満げな顔をする美紀…。いじけたようなその顔を見た彼はおかしそうに笑いつつ、一枚の上着を羽織った。

 

 

 

「わかってる、冗談だよ。しっかり送っていく」

 

美紀「…本当ですか?」

 

「ああ。美紀みたいな可愛い娘がこんな時間に一人でいたら、悪い奴らに襲われかねないからね」

 

彼女と共に外へと出て、夕焼け色に染まる空を見上げる。真っ赤に染まっている空は少しずつ暗くなってきており、あと数十分もすれば夜になってしまいそうだ。

 

 

 

美紀「自分で送ってほしいと言っておいてアレですが、私みたいな娘を襲おうとする人なんていますかね…」

 

「そりゃいるでしょ。美紀、可愛いし。少なくとも僕は襲いたいね」

 

美紀「はいはい。もう遅いですから我慢して下さいね。次の休みまで良い子にしてたら、また襲わせてあげてもいいですよ?」

 

その言葉は冗談なのか本気なのか…。美紀はイタズラな笑みを浮かべ、自分から彼の手を握る。外は少し肌寒かったが、こうやって手を繋ぐだけで結構温かくなった気がした。

 

 

 

 

美紀「せーんぱい」

 

「はいはい、何でしょう」

 

美紀「いいえ、特に用はありません。ただ、大好きですって伝えたかっただけです。それだけですよ」

 

そう言って、美紀は彼と繋いだ手をご機嫌そうに振る。彼女と付き合う事になってまだ数時間しか経っていないが、それでもいくらか分かった事がある。彼女は好きな人の前だとよく笑い、そして甘えてくるタイプのようだ。

 

 

 

 

美紀「浮気とかしたら怒りますからね?」

 

「しないよ…。美紀の方こそ――」

 

美紀「私は絶対に大丈夫です。先輩の事が大好きで大好きで仕方ないですから。あなた以外の男の人に夢中になるなんて、絶対にありえません。だから安心して下さいね」

 

「分かった。いや…本当に嬉しいな」

 

あの美紀がそれ程に自分を愛してくれているのだと思うと、何だか異様に照れくさくなる。どちらかといえばクールでしっかりした娘だと思っていたあの美紀が、今や自分の彼女…。彼はその存在を確かめるようにしてより強く手を握り、その温かさに安心した。

 

 

 

 

 

 

 




と、こんな感じになりました!
みーくんが甘えんぼう属性を出してきているのは、完全に私の趣味ですっ!(苦笑)付き合う事になった瞬間、少しだけキャラが変わる娘って良くないですか?(うん…そう思っているのは私だけかもですね…)

今回の話がこんな感じで終わりましたので、次回以降はみーくんのクールな部分だけじゃなく、貴重な"デレ"の部分も書いていきたいと思っています!

では、また次回!( ´ ▽ ` )ノ
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