一話目・二話目と同様、みーくんのキャラがこれで良いのか悩んでいます(苦笑)
美紀「…静かですね」
「んん、そうだねぇ…」
校舎裏にある木陰の下…。彼は美紀と並んで芝の上へと腰を下ろし、空になった弁当箱の片付けをしていく。少し大きなこの箱は美紀が持ってきてくれた物であり、中には彼女の手作り弁当が入っていたのだが、それらはもう彼の胃に収まっていた。美紀と付き合う事になって数週間…。こうして昼休みに彼女の手作り弁当を、彼女とともに食べる事はすっかり恒例行事のようになっていた。
美紀「あっ、そうだ。今の内に伝えておきますが、明日のお昼は圭達と過ごす約束をしているのでよろしくです」
「ああ、はいはい」
美紀「なんならお弁当だけ作ってきましょうか?」
「あ~……いいよ、余分に作るのも大変でしょ」
美紀「…そうですか、わかりました」
共に昼休みを過ごす事が恒例になったとはいえ、彼女はこうして週に二~三回は友達との昼休みを優先する事がある。彼自身それを気にしてはいないし、むしろ良い事だと思っていた。彼女がもし、付き合い始めた途端に友達の事を
「じゃあ明日はゆきちゃん達とお昼にするかね…」
美紀「はい、そうしてください。けど、あまりデ―――」
「ああ、デレデレしない。ゆきちゃん達はあくまでも友達だからね」
放たれた言葉に被せるようにして答えると、美紀は『ならばよろしい』と言わんばかりにニッコリと笑って頷く。こうして昼を一緒に過ごしてくれたり、手作り弁当を作ってきてくれるのはとてもありがたいし幸せだ。ただ、美紀は彼が他の女子と親しげにしているのを見たりすると少しだけムッとした表情になる…。
『もしも先輩がゆき先輩達に…というより、他の女の子にベタベタしてるところを見掛けたら、お仕置きですからね?』
…前に彼女が言った発言を思い出し、彼は悩ましげに眉を寄せる。
美紀は全体的に見ると良い彼女なのだが、何となく不穏な雰囲気を漂わせる時があるような気もしなくもない…。
「…美紀はさ、僕が浮気したらどうする?」
美紀「…………したんですか…?」
彼が試しにと思い尋ねた途端、これまで楽しげだった場の空気が一変していく…。美紀は微かに俯けていた顔を彼の方へ向け、冷たく、鋭い眼差しを浴びせた。
「い、いや…してないよ?」
美紀「…本当ですか?嘘ついてませんか?」
「ついてないって…。ただ、美紀って意外と甘えんぼうな所があるから、浮気とかしたらそれに対するお仕置きが怖いなぁと…」
美紀「お仕置きが怖いのなら、浮気しなきゃいいんですよ」
「まぁ、それはごもっとも……」
美紀は呆れたような顔で言いながら水筒を傾け、一杯のお茶を彼へ手渡す。彼はペコリと頭を下げてからそれを受け取り、喉を潤していった。
美紀「先輩は、私がお仕置きとしてどんな事をすると思ってるんです?」
「ん、ん~…そうだな……監禁とか?」
美紀「は?誰をです…?」
「…僕を?」
美紀「先輩を監禁してどうするんですか?」
「いや、細かい事は分かんないけど…。もしも浮気したら薄暗い地下室とかに閉じ込められて、鎖とかに繋がれそうな気がする……」
彼は目線をそっと上へ向け、静かにその光景を想像する…。
本当の事を言うとこれは冗談半分で言ったつもりだったのだが、薄暗い地下室の中…浮気した自分を監禁する美紀というのは思っていたよりもしっくりきた。
「『先輩が…先輩が悪いんですからね…』とか言って
美紀「せ、先輩の中での私のイメージって何なんですか…。もし先輩が誰かと浮気したとしても私は先輩の事を監禁なんてしませんし、鞭で打ったりもしません!監禁しようにも、地下室とかありませんし……」
「…あったらやるの?」
美紀「やりませんよ。……たぶん」
ボソッと呟かれた言葉に彼は肩を震わせたが、美紀がニコニコと愛らしい笑みを浮かべていたのでそれは冗談なのだと気付く。美紀は彼のキョトンとした顔を見ながらクスクス笑うと、互いの肩が触れる程の距離まで身を寄せた…。
美紀「もし本当に浮気されたら…私はきっと何も出来ません…。先輩に裏切られた事がただただショックで、家でずっと泣いてると思いますよ…」
「むぅ…美紀をそんな目に遭わせるのはかわいそうだな。浮気はしないようにするよ」
美紀「はい…。出来るだけ長く…可能ならずっと…私の事を好きでいて下さい…。私も、先輩の事をずっと好きでいますから…」
優しい声でそう言って、美紀は彼の肩に頭を寄せる…。
自らの肩に頭を預けてくる彼女の幸せそうな顔を見ていたらつい胸の鼓動が高鳴り、彼は彼女の顎に手を添えた…。
美紀「っ……」
彼の手によって顎をクイッと引かれ、美紀は声を漏らす…。校舎裏は比較的
「……美紀」
自分達以外、辺りに誰もいない事を確認した彼は静かに美紀の名前を呼び、そっと唇を寄せる…。付き合い始めて数週間経ったが、彼とこういう事をするのは何度目だろう…。美紀は瞳を閉じたままそんな事を考え、心の中で『ふふっ』と笑った。自分と彼がこんな間柄になるなんて考えていなかったからだ…。
美紀「…先輩」
「ん…?」
唇と唇が重なる寸前、美紀は彼の唇に人差し指を当てて動きを止める。あと一歩のところでお預けをくらった彼は驚いたような目をしており、美紀はそれを見てニヤリと笑った。
美紀「まったく…。誰がいつ、キスしていいって言いました?」
「…ダメなの?」
美紀「はい、今は気が乗らないのでダメです。彼女の許可なくキスしようとした悪い先輩には罰として、私にジュースを買うことを命じます」
「いや、飲み物なら水筒に…」
美紀「さっき先輩にあげた分で終わっちゃいました」
美紀は持ってきていた水筒を下に傾け、中身が無いことを告げる。芝の上に腰を下ろしたまま、小さく水筒を振る彼女を目の当たりにした彼はそっと立ち上がり、美紀を連れてそばにあった自動販売機へ向かった。
「…はい、好きなの買いな」
美紀「ふふっ、ありがとうございます」
飲み物が一つ買えるだけの硬貨を手渡された美紀はニッコリと微笑み、飲み物を一つ購入する。彼女は自動販売機の取り出し口から今買ったばかりのペットボトル飲料を取り出すとすぐにキャップを開き、ゴクゴクと美味しそうにそれを飲み始めた。
美紀「……ぷはっ。あの、そう言えば先輩に言いたい事があって…」
「ん?なに?」
美紀はボトルのキャップを閉め直しながら彼の事を見つめると、今度はどこか恥ずかしがっているかのように…緊張しているかのように目を逸らす…。何か言いたい事があるようだが、中々口に出せないようだ。
美紀「あの…その……」
「……どうした?」
彼は美紀のすぐそばまで寄り、安心させるかのように頭を撫でる。さらっとした髪の毛を何度か撫でていくと美紀の緊張もだんだんと解れていき、後に互いの目線が合った。
美紀「今度の土曜日、私ヒマなんです…。だからそのっ、先輩とデート……してみたいです…。ダメ…ですか?」
頬をほんのり赤く染め、美紀は上目遣いの状態で彼に問う…。
付き合いだして数週間…。カップルらしくデートの一つでもしたかったのだが二人揃って中々予定が合わず、未だ一度のデートも経験していなかった。しかし次の土曜日、美紀はこれといった予定が無い。あとは彼の予定さえ合えばデートが出来るのだが………
「土曜ね…。うん、その日なら大丈夫。では、初デートといきますか」
彼もまた土曜日は暇だった為、ニッコリと微笑みを返す。
彼の返事を聞いた美紀は微かに顔を俯け照れたように微笑んでいたが、とても嬉しそうにしていた。
美紀「よかった…凄く楽しみですっ!」
「ええっと、どっか行きたいところとかある?」
美紀「そうですね………えっと、その……特に無い…かな」
「そ、そっか……」
苦笑いしながら答える美紀を見て、彼も同じように苦笑いする…。
せっかくの初デート、美紀の行きたいところに行こうと思ったのだが…彼女はただ、デートが出来ればそれだけで良いらしい。
美紀「私は先輩と一緒ならどこでも良いんです…。それこそ、お家デートとかでも良いくらいで…」
「お家デートって言っても…家で出来る事なんてそう多くないしな…。ちょっとゲームでもして、あとはちょっとエッチな事して……」
美紀「私は…それでも良いですけどね」
「っ…!?よしっ!お家デートにしようか!」
本当は軽い冗談のつもりだったのだが、意外にも美紀の反応は悪くない…。彼女の返事を聞いた彼は初デート先を家に決めようとしたが、そんな彼の制服の裾を美紀がクイッと引いた。
美紀「先輩、冗談ですよ…」
「…冗談ですか。まぁそうでしょうね」
彼も薄々ながら美紀の冗談に気付いていた為、そこまでのショックはない。彼はその後も頭を悩ませたが、やはり初デートの場所が家というのは味気ない気がした…。
「じゃ、適当に
美紀「はいっ、それで良いですっ!楽しみにしてますね♪」
大好きな彼との初デート…その予定を立てられた事が嬉しくて、美紀は自分でも無意識の内に彼の手を握る。後輩とは思えぬくらいしっかり者だが、どこか甘えん坊な女の子…。彼はそんな美紀の手を強く握り返し、ニッコリと微笑んだ…。
校舎裏付近…。
偶然そこへとやって来ていた圭に、それを見られていたとも知らずに…。
見ようによっては少しホラーな終わり方にも見えますね…(苦笑)
先に言っておきますが、次回の話はホラーじゃないです。
いつも通りの感じで進めます!
愛する友達を取られた圭ちゃんが暴走したりはしませんし、みーくんが彼のことを地下室に監禁したりもしません!因みに言っておくと、みーくんの家に怪しげな地下室なんて(たぶん)ありません!(苦笑)
では、また次回(* ´ ▽ ` *)ノ