軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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今回はまた新たなアフタールートとして、本作オリジナルキャラである狭山真冬をメインヒロインとした【まふゆアフター】を書いてみました!

他のヒロイン達とはまたちょっとタイプの違う彼女がこの物語でどう動いていくのか、楽しんでもらえたら幸いです!


まふゆアフター
第一話『気付いた気持ちと一つの不安…』


 

 

 

一日の授業が全て終わり、生徒達は教室をあとにしていく…。

部活のある者はそれぞれが部室等に向かい、部活をやっていない者はそのまま帰路につくのだが、"彼女"は後者だった。

 

なので彼女は教室を出てから廊下に立ち窓辺から外を眺めながら、帰り支度に手間取っている一人の友達を待っていたのだが……外へと向けていた視線の先にとある人物を見つけ出して目を丸くする。彼女は二階の廊下にある窓から外を……ちょうど校門の辺りを見ていたのだが、そこを歩く生徒達の中に見慣れた四人の先輩がいた。

 

一人は赤いリボンで結んだツインテールが印象的な少女…。

一人は猫耳…のような帽子を被った子供っぽい少女…。

一人は長い茶髪と…大きな胸が特徴的な、どこか大人っぽい少女…。

そして最後の一人は……

 

 

 

 

真冬「…また…みんなと一緒に歩いてる…」

 

いつもの四人が楽しそうに歩いているのをそこから見つめ、彼女は……狭山真冬はニコリと微笑む。四人の内の二人…悠里と胡桃はそれぞれが園芸部と陸上部に所属していたハズだが、ああして帰っているのを見るに今日は休みなのだろうか…。

 

 

真冬「ほんと、楽しそうでいいね……」

 

由紀、胡桃、悠里ではなく、彼女らと歩いているもう一人の人物を見ながら呟く。"彼"はいつもあの三人と仲良くしており、皆が一緒に帰っているのを見るのだって今日が初めてではない。こうやって毎日仲良くしている様を見せ付けられると、もしかしてあの三人の内の誰かは……いや、ひょっとしたら三人とも彼の事が好きであり、彼も三人の内の誰かに恋をしているのかも…なんて事を考えてしまう時もあるが…

 

 

真冬「まぁ、どうでもいいか……」

 

くるりと振り返り、窓に背を向ける。

他人の色恋なんて興味無い……というか色恋そのものに興味が無い。

真冬はこれまで誰かを好きになった事も、なりかけた事も無かった。

そもそも人付き合いが苦手だったので恋人どころか友人だってまともに出来なかったのだが、恐ろしいくらいに明るくて騒がしい果夏という少女と出会い、彼女と接していく内に人との接し方を学んでいったのか、友人は少しずつ増えていった…。

 

同学年だと美紀や圭、歌衣…。

あとは…先ほどまで見ていたあの四人の先輩達が主な友人だが、最近はその他にも少しずつ友人が増えている。同じクラスに通うある少女(いわ)く『最近の真冬ちゃんは前よりも優しい雰囲気になってきたから付き合いやすい』との事だが、真冬にはその実感が無かった。

 

 

真冬(優しい雰囲気……か)

 

もう一度くるりと振り返り、窓の前に立つ。

その窓に反射してうっすらと映る自分の顔はいつも通りの仏頂面(ぶっちょうづら)にしか見えないが……

 

 

真冬(優しく…なれたのかな?)

 

指をピンと揃えた両手を頬に当て、無理やりに口角を上げてみる…。

こうすれば自分の笑顔を…優しい雰囲気のある顔を見られると思ったが、いくら口角を上げたところで目の方が笑っておらず、真冬の試みは失敗に終わった。

 

 

 

果夏「お待たせ~!!…って、何してるの?」

 

真冬「あっ…いや、何でもない…」

 

帰り支度を終えた果夏がそばへと現れ、真冬は頬に添えていた両手を下ろす。果夏は何やら不思議そうに彼女の事を見つめていたが、すぐにコロッと笑顔になった。

 

 

果夏「か~えろっ♪」

 

真冬「うん…」

 

果夏は満面の笑みを浮かべると、手に持っているカバンを大きく揺らしながら歩き出す。一緒に帰るのなんてもう数えきれないくらい経験してきたのに、果夏は毎回毎回嬉しそうに笑っていた…。

 

 

 

果夏「ふんふんふ~ん♪」

 

楽しげな様子で鼻歌を歌い出す果夏を真横から見つめている内、真冬は不思議に思う…。果夏はとても明るくて元から友人も多く、自分とは正反対の人間だ。なのに彼女はその友人達を差し置いてでも毎回自分のような人間と帰る事を選び、こうして楽しそうにしている…。

 

真冬からすると、それが不思議で仕方なかった。

 

 

 

真冬「ねぇ、カナは…何で毎日毎日ボクと帰りたがるの?」

 

果夏「そりゃもちろん、真冬ちゃんの事が大好きだからだよ~♡」

 

真冬「……そう…」

 

何の恥じらいも無く告げてくる果夏を見ているとこちらの方が恥ずかしくなってしまい、真冬は赤くなりかけた顔を横へと逸らす…。よくよく考えてみれば、真冬の方にも不思議な事があった。

 

真冬は元々人付き合いが苦手であり、中でも騒がしいタイプの人間は大嫌いだった…。それから考えると"騒がしさの化身"のような果夏という少女なんかは天敵同然であり、近寄るだけでアレルギー反応が起こりそうなものなのだが……不思議な事に、果夏とだけは最初から普通に接する事が出来た。

 

 

真冬(すごく騒がしくて、うるさいのに変わりは無いんだけど…)

 

しかし、果夏の騒がしさは何故か心が落ち着く…。

彼女が騒げば眉をしかめるし、耳を塞ぎたくなる時も多々あるが、それでもそばに置いておきたいと思う何かが果夏にはあった。

 

 

 

果夏「そう言えば、真冬ちゃんの方からわたしの事を好きって言ってくれた事ってあまり無いよね?」

 

真冬「あまり…じゃない。一回も無いよ」

 

果夏「むぅぅっ…!これは少~し不公平じゃないかな?」

 

何かを催促するかのようにニヤニヤと微笑み、果夏はズイッと顔を寄せる。そのニヤケ顔が何を催促しているのかは分かっているが、ここでその催促に応えてやるのは何となく負けた気分になるので……

 

 

真冬「ボクなんかに好きって言ってもらわなくても、カナは色んな人から言ってもらってるでしょ。"自称"人気者…なんだから」

 

果夏「自称じゃないよっ!普通に……それなりに…?そこそこ…?まずまず人気者だよっ!けど、真冬ちゃんからの"好き"が欲しいの!!」

 

果夏が大声で叫ぶと、廊下を歩いていた数人の生徒が驚いたような視線を二人の方へと向ける…。しかし騒ぎの元が果夏、そして真冬のコンビだと分かるとその生徒達は『ああ、またコイツらか……』と言わんばかりの表情で笑い、そのまま歩を進めていった。

 

 

 

真冬「は、はずかしい……」

 

果夏「真冬ちゃんがわたしの事を好き~って言ってくれないからだよ!!ほら、恥ずかしがらずに言ってみよっか?『カナちゃん好き~っ♡』って!!その言葉さえ聞けるのなら、わたしはそのまま死んだって良いっ!!」

 

ニタニタとだらしない笑みを浮かべる果夏を見て少しだけ引いた後、真冬は手近な所にいた男子生徒の肩をツンツンと叩く。

 

 

真冬「あの…いきなりごめんね?カナが愛に飢えてるみたいだから、出来るなら付き合ってあげてくれないかな?」

 

「は、はぁ?」

 

男子生徒は驚いたような視線を果夏へと向けるが、当の本人…果夏は頬をぷく~っと膨らませていた。

 

 

果夏「アンタみたいな男の子は嫌っ!!ほらっ、シッシッ!!」

 

「ぐっ!なんだよ急にっ!!」

 

果夏は男子生徒の事を突き飛ばしてから右手を払い、その生徒の事を追っ払う。初対面の人間ならかなり驚いただろうが、あの生徒はこの二人と同じクラスに通う者だ。なら、果夏がこういう生き物だという事もキチンと理解しているだろう。

 

 

 

真冬「あ~あ…かわいそうに…」

 

果夏「他人事(ひとごと)みたく言ってるけど、今のは真冬ちゃんがあいつを巻き込んだんだからね!わたしは悪くないもん!!」

 

プイッとそっぽ向き、果夏は再び歩き出す。

真冬もそれに続いてスタスタと歩き出し、二人はそのまま校舎を出て町の中を歩いていった…。

 

 

 

果夏「そう言えば、真冬ちゃんの方こそ最近は人気者になってきてるよね。この前だって、変な男子に………」

 

真冬「ああ、うん……」

 

果夏に言われ、真冬はそれを思い出す…。

あれは数日前の昼休みに起きた事だった。果夏や美紀達と共に昼食を食べ終えた後、真冬はある男子生徒に呼び出されて校舎裏へと向かった。因みに言っておくと、果夏はその人物の事を"変な男子"と言ったがその生徒は至って普通の人だ。

 

とにもかくにも真冬はその生徒に呼び出されて校舎裏へと向かい、そして告白をされた…。初めての事だったので少し戸惑いはしたが、真冬はそれをキッパリと断った。相手の男子には悪いが、やはり色恋には興味が無かったから…。

 

 

真冬「…あれ?けど、なんでカナがそれを知って―――」

 

果夏「わたしはね……真冬ちゃんの事なら何だって知ってるんだよ」

 

呼び出された事はもちろん、告白された事だって誰にも言ってなかったのだが、果夏はそれに気付いていたらしい…。ニヤリと微笑む果夏の表情が少し怖く見えたが、あまり深く考えないようにする…。

 

 

果夏「真冬ちゃんが誰かと付き合う事になったら、わたしはかなりパニックになっちゃう…」

 

真冬「…うん、何となく想像がつく」

 

 

果夏「相手の人を殺しちゃうかも…」

 

真冬「………そこまでは想像してなかった」

 

果夏の言葉が冗談なのか本気なのか分からず、真冬の額に冷や汗が浮かぶ…。いや、いくら果夏でもそこまではしないだろう。今のは冗談に決まっている……と、思いたい。

 

 

 

果夏「私はとことん真冬ちゃんしか見えてないんだけど、真冬ちゃんの方はどうなの?クラスの男子とか見て、気になるな~ってヤツいる?」

 

真冬「いや…特には……」

 

というか、ここでもし『いる』なんて答えようものならその生徒が謎の失踪…もしくは転校しそうな気がする…。果夏の目が笑っていないのを見て、真冬は苦い笑みを浮かべた。

 

 

 

果夏「あっ!あの先輩とかどうなの?真冬ちゃん、あの人とは積極的に接してる気がするけど」

 

果夏の言う"あの先輩"というのは、由紀達のクラスメートである"彼"の事だろう。確かに真冬自身、彼が相手だと何の遠慮もなく接する事が出来ているという実感があった。彼はどことなく果夏に似た柔らかな雰囲気を持っているので、それが原因なのかも知れないが…

 

 

 

真冬「別に…彼の事だってどうとも思ってないよ」

 

果夏「ふ~ん…そっか」

 

そう…どうとも思ってない…。

由紀達と共に帰っている彼を見つけるとつい目で追ってしまうし、たまに廊下で擦れ違ったりすると何となくラッキーだったなと思ったりもするが………

 

 

 

真冬「………ん!?」

 

果夏「ふぇっ?どしたの?」

 

真冬「い、いや………何でもない……」

 

少しだけ嫌な予感がしてしまい、真冬は自分がどんな目で彼を見てきたのかを振り返っていく…。

 

バレンタインの前日、これまで一度たりとも作った事のない手作りチョコを彼に渡した。普段からお世話になっているお礼だというのなら市販のチョコを渡すだけで良かったのに、お菓子作りの本を何冊も買ってまで…。しかもそれを彼に渡す際、さも適当に作った物を手渡すかのような素振(そぶ)りを見せてはいたが、あのチョコだって何回も何回も失敗を重ねてようやく完成させる事が出来た奇跡の一品だ。あんなにも簡単なチョコ一つ作るまでの間に何回もつまらない失敗をしてしまい、途中で挫けそうになって泣いてしまった事は今も覚えている…。

 

 

それにこの前、歌衣に誘われて皆と行った遊園地…。

この日だって本当なら予定があったのだが、参加メンバーの中に彼がいるという事を知ってその予定をキャンセルしたし、コーヒーカップに酔って二人だけで休憩した時間はどんなアトラクションに乗るよりも楽しかったような…そんな気がした。

 

 

 

 

真冬(これは……少しマズイかも……)

 

思い返せば思い返すだけ、自分が彼に対して普通とは少し違う好意を抱いているように思えてくる…。彼の事をただの友人や先輩としてではなく、一人の男の人として見てしまっているような、そんな気が…。

 

 

果夏「真冬ちゃん?顔色悪いよ?」

 

そう言えばこの前、珍しく一人で服を買いに行ってしまった…。

しかも服を選ぶ際、頭の奥底で『彼はどういうのが好きなんだろう…』なんてどうしようも無い事を考えていた気がする…。

 

様々な事を思い返した結果、真冬は一つの可能性を見出だす。

もしかすると、あれだけ色恋には興味無いと思っていた自分が……彼に恋をしてしまっているかも知れないという可能性だ。

 

 

 

真冬(けど、それだとっ……)

 

かなり恥ずかしいが、ここは仮にその恋心を素直に認めるとしよう。

認めたとして、かなりマズイ事がある…。

真冬は青い顔をしたまま横を向き、隣にいる果夏の事を見つめた。

 

 

真冬(彼の事が好きって言ったら…カナ、彼の事を殺しちゃう…?)

 

真冬が苦笑いしたまま不安そうな眼差しを向ける一方、果夏は相変わらずニコニコと微笑んでいた…。

 

 

 

 




もしかしたら彼の事が好きなのかも…。
自分の気持ちに気付き始めた真冬ちゃんですが、そこに果夏ちゃんという大きな壁が立ちはだかりました(苦笑)

真冬ちゃんはこれからどうするのか…。
彼は果夏ちゃんの手によって葬られてしまうのか…。
次回も楽しんでもらえたら嬉しいです(*^^*)
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