軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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【まふゆアフター】第三話目です!
前回の話で果夏ちゃんから『応援する』との言葉を貰った真冬ちゃんがどう動いていくのか……そこに注目しつつ楽しんで貰えたら幸いです(*^^*)


第三話『しっかり伝わるように…』

 

 

 

 

彼という人間を好きだという事に気が付き、そしてそれを『応援する』と一番の友人に言ってもらえた。となれば、後は行動するのみなのだが……

 

 

 

真冬「…えっと、どうしたら良いと思う?」

 

昼休みの途中、真冬は具体的な行動案が浮かばずに頭を悩ませる。

校庭の片隅で彼女と共に昼食を食べていた果夏は空になった弁当箱を片付けながら眉をしかめて『う~ん』と唸ると、真冬の目をじっと見つめた。

 

 

果夏「普通の告白だとインパクト無いよね。……よし!じゃあこうしよう!とりあえず、今から先輩のところに行って――――」

 

自分一人だと何も思い浮かばない…。

なので真冬は果夏から細かな案を聞き、それに従う事にした。

あの果夏の考えた作戦だというのが少し不安だが、それを告げる果夏の表情は自信に満ちていたので大丈夫だろう。………多分。

 

真冬は果夏から伝えられた作戦を実行すべく三年生の教室へと向かい、彼がそこにいる事を確認する。彼はもう昼食を食べ終えたらしく、午後から始まる授業の準備をしているようだった…。そんな彼を近くへと呼ぶべく、真冬は教室の入り口付近に立っていた一人の女子生徒へ声をかける。

 

 

真冬「あの…ちょっといい?あそこにいる彼、呼んでくれるかな?」

 

恐る恐る頼んでみると、女生徒は真冬の事をじっと見つめてからニコリと笑って頷く。その生徒は軽い足取りで彼のいる方へ向かうとその肩を叩き、真冬の待つ教室の入り口までしっかりと呼んでくれた。

 

 

「お待たせ。一人でこんな所に来るなんて珍しいね」

 

真冬「あ……うん……」

 

実は果夏が廊下の隅から見守っているので、正確に言えば一人ではない。

しかし、そんなのはどうでも良い事だ…。真冬は彼の目をじっと見つめると勇気を奮い起こし、果夏から伝えられた作戦を早速実行に移す。

 

 

 

真冬「キ、キミってさ…由紀達に囲まれていつもニヤニヤしてるよね…」

 

「いや、別にニヤニヤなんて…」

 

真冬「してるよ…ボク、いつも見てるもん…。まったく、可愛い娘に囲まれてニヤニヤニヤニヤしちゃって、本当にいやらしい…」

 

「なっ!?」

 

偶然後ろを通りがかった他のクラスの女子生徒がその会話を聞き、彼の方を見てクスクスと笑う…。他の生徒に笑われた事や急にやって来た後輩に謎の説教をされた事で彼は言い様のない恥を感じてしまい、額に嫌な汗を浮かばせる。

 

 

「え、えっと……そんな事を言う為にわざわざここまで?」

 

これ以上誰かに聞かれぬように辺りを警戒し、声を抑えながら彼が問う…。しかし、真冬はまるで聞こえていないかのようにその問いを無視していく。

 

 

真冬「由紀や胡桃や悠里を見てキョロキョロしてないで、キミはボクだけを見ていればいいの…。そうすれば、ボクもキミだけを見ていてあげるから…」

 

「………うん?」

 

真冬「いや、うん?じゃなくて…その……」

 

ポカンとした表情の彼を見て、真冬は少し慌て出す…。こんな反応は想定外だ。真冬は慌てて廊下の隅へと視線を向け、果夏に助けを求める…。果夏は何かを伝えようと口をパクパクと動かしており、真冬はその唇の動きを見て自分が最後の決め手を彼へ伝え忘れていた事に気が付いた。

 

 

 

真冬「あっ、そうだった…。えっと……か、勘違いしないでね?ボクはキミの事なんて、全然好きじゃないから…」

 

「は、はぁ………」

 

真冬「……………じゃあ、そういう事で」

 

果夏から教えられた事は全て実行したが、これは何かが違う気がする…。

真冬は冷や汗を浮かべながら気まずそうに頭を下げると彼の前から立ち去り、廊下の隅に待っていた果夏のそばへと立つ。

 

 

真冬「カナ、やっぱり今の作戦は間違っていたと思う…。全部伝えても彼は困ったような顔するだけだったし、ボクもなんとなく恥ずかしかった……」

 

果夏「あれっ?成功しなかったの!?」

 

真冬「うん…多分失敗した」

 

果夏「むぅぅ……男の人はツンデレに弱いって聞いたことがあるから、それを元に告白していけば絶対に成功すると思ったんだけど」

 

果夏は納得いかないように眉をしかめていたが、実際に告白は失敗した。というか、恐らく彼は自分が告白された事にすら気付いていないと思う…。真冬がそれを伝えると、果夏はこれまた驚いたように目を丸くした。

 

 

 

果夏「え~!?告白された事にすら気付いてないの!?あの先輩、予想以上に鈍感だなぁ」

 

真冬「たしかに彼はある程度鈍感かも知れないけど、今回はボク達に非があったと思う…。ツンデレ告白は少し回りくどくて分かりにくかった…」

 

果夏「そっか、じゃあ次の作戦っ!!今度はもう少し直接的なヤツ!」

 

今度は失敗しない、絶対に成功する良い案を出さなくては…。

彼はどんな風に告白されたらその心を射止めさせてくれるのか…。台詞だけでなく、告白を行う場所も重要だ。学校ではなくてもっと良い場所で…もっと良いシチュエーションの下で実行に移すべきか…。大好きな親友の為にと必死にあれこれ考える果夏だが、今一つピンとくるのが思い浮かばない。

 

 

果夏「こうして考えてみると、告白って難しいねぇ…」

 

もっと簡単にいくものとばかり思っていたが…現実は厳しい。

無駄な事は何も考えず、ただ相手に"好き"と伝えられたら楽なのだが。

それこそ、果夏自身がいつも真冬にやっているように……。

 

 

果夏「……あっ!」

 

真冬「うん?」

 

そうだ…難しく考える必要など無かった。

"告白"だという事でシチュエーションやら台詞の言い回しやらを少し考え過ぎてしまったが、要は相手に…彼に"好き"という気持ちを伝えられれば良いのだ。

 

 

果夏「真冬ちゃん、次の作戦が思い付いたよ!」

 

これなら絶対に上手くいく…。

果夏はその作戦を真冬へ告げ、真冬はそれに従って彼の携帯にメッセージを送った。ただ、『放課後、校舎裏に来てほしい』と…。

 

そして放課後になり、真冬は人目を避けるように歩きながら校舎裏へと向かう。果夏もそれに付き合ってくれたが、彼女はあと少しで校舎裏にたどり着くというところで足を止めた。

 

 

 

果夏「その…私はここで待ってるけど、一人でも平気?」

 

真冬「た、たぶん大丈夫……だと思う」

 

果夏を待たせて一人歩き出し、待ち合わせを約束した校舎裏に向かう。

放課後のそこは全くと言っていいくらいに人の気配がしなかったが、ただ一人、真冬の事を待っている人物である彼がいた。

 

 

「おお、やっと来た」

 

真冬「…お、お待たせ」

 

ここに来るまでの間に何度か緊張して足を止めてしまったからか、彼を待たせてしまっていたらしい…。ただ一人の人間に会う事が…気持ちを打ち明けに行く事がこんなにも勇気のいる事だとは知らなかった。

 

 

「で、どうした?」

 

真冬「…えっ…と」

 

どうしてこんな所に呼び出したのかを尋ねるが、真冬は顔を俯けてしまい答えない…。彼はそれを見て確信した。昼休みの時もそうだが、今日の真冬は何かがおかしい…。

 

「………真冬?」

 

何だか心配になり、そばへと寄る…。

すると黒髪の隙間から出ていた彼女の耳がみるみる真っ赤になり、肩が小さく震えだした。

 

「大丈夫?具合でも悪いんじゃ…」

 

真冬「っ……」

 

真冬は無言のまま"ブンブンッ!"と首を振り、それを否定する。

具合は悪くない。全く悪くない…。

ただ、緊張が酷くて上手く前を向けないし喋れないだけだ。

 

 

真冬(けど、カナがせっかく応援してくれているんだから…)

 

自分一人だけだったらもう諦めていたが、あの果夏に応援してもらったのならそう簡単には諦められない…。だから真冬は覚悟を決め、精一杯の勇気を出した。

 

 

 

真冬「す……き………」

 

聞こえるかどうか分からないくらい小さな声で告げ、恐る恐る顔を上げる…。すると目の前には不思議そうな顔をしてこちらを見ている彼がいた為、真冬はもう一度声をあげた。

 

 

真冬「キミのことが…好き…。大好きなのっ……。キミはボクの事を可愛いげの無い後輩だとか、無愛想な女の子だって思ってるかも知れないけど…でも、それでもボクはっ………」

 

今度はハッキリとした声で、彼の顔を見ながら言う…。

今度こそ確実に聞こえただろう…。彼は自分の想いを知ってくれただろう…。そう思うと少しだけ気持ちが楽になったが、全てを伝えたら伝えたでとてつもない恥ずかしさに襲われた。

 

 

真冬「あ…ぅ………急にごめんなさいっ…!ボクみたいな娘にこんな事言われても迷惑だって分かってたんだけど…そのっ…」

 

顔がじわじわと熱くなり、鏡で見ずとも真っ赤に染まっているのが分かる。とうとう本人に"好きだ"と言ってしまった…。恥ずかしい…恥ずかしいっ…。真冬は最早彼の顔を直視する事すら出来ずその場を去ろうとしたが、右の手を彼に掴まれて動きを止めた。

 

 

真冬「な、なに…?ボク、もう帰るところで……」

 

「帰るって……告白だけして帰るつもり?」

 

真冬「うん…そのつもり………です」

 

本当はしっかり返事を聴くつもりでいたが、実際に告白してみて分かった。これ以上はここにいられない…。真冬は彼に掴まれた腕を静かに振って抵抗したが…

 

 

「あの、こちらとしては是非とも付き合って欲しいんだけど……」

 

真冬「………えっ?」

 

彼は今、何と言ったのだろう…?

思わず抵抗を止め、少しずつ顔を上げて彼の目を見る…。

 

 

真冬「今、なんて……」

 

「だからその…真冬と付き合いたい…」

 

彼は真剣な眼差しを向けたまま告げ、真冬の腕をそっと離す。

腕も離してもらえたのでこのまま立ち去ろうと思えば立ち去れたのだが、真冬は微動だにせず彼の目を見つめ続けた。

 

 

真冬「ボクで…良いの?だってボクっ、由紀達みたく可愛い女の子じゃないし…愛想も悪いし、雰囲気も暗いし……」

 

考えれば考えるだけ自分の悪いところが出て、口が止まらなくなる。

彼に告白してみて良い返事が貰えたのは嬉しい事だが、いざ良い返事が返ってきたらきたで申し訳ない気がしてしまう…。

 

真冬は自らの悪い点を挙げながらあたふたと慌てるが、彼はそんな彼女の事をまじまじと見て微笑んだ。

 

 

「確かに由紀ちゃん達と比べると少し暗いところもあるけど、僕は真冬の事を可愛い女の子だと思っている…。だから告白してもらえたのは凄く嬉しかったし、真冬さえ良いなら付き合いたいと思っているんだけど…」

 

真冬はやたらと自分の事を卑下するが、そんなに悪いところばかりの女の子じゃない…。彼自身、前から真冬に興味を持っていたのだが、先程…彼女が告白後に見せた真っ赤な顔を見てその興味が膨れ上がる。

 

彼女はどちらかといえば表情の乏しいタイプだと思っていたが、そうでも無いのかも知れない…。なら、彼女のそばにいてもっと色々な表情を…まだ誰も見たことの無い"狭山真冬"を見たいと思った。

 

 

真冬「……後悔、しない?」

 

「ああ、しない」

 

彼は即答し、真冬は顔を赤らめる…。

大好きだった彼が自分のような女の子と付き合ってくれるのだと思うととても嬉しいが、少し恥ずかしくもある。

 

その時、真冬は果夏が考えてくれた今回の作戦内容を思い出した…。

作戦の内容は『普段、私が真冬ちゃんにやっているように"好き"と伝えれば良い』という簡単なものだったが、いざ好きな人の前に立つとそれがどれだけ難しいのかがよく分かる…。が、どうせなら勇気を出して頑張ってみよう。

 

真冬は彼の顔をじっと見つめてからニッコリ微笑むと両手を広げてその胸に飛び込み、背中へ腕を回して彼の身を抱き締める。そして果夏が普段から自分に言ってくれるのと同じように、その言葉を彼へと放った。

 

 

 

真冬「…キミのこと、大好きだよ」

 

少し照れてしまい、果夏のように明るくは言えなかった。

声も思っていたより小さくなってしまい、本人に届いたかどうか微妙なところだ…。だから真冬はその代わりになればと思って更に強く彼の身を抱き、その胸に顔を埋める。この気持ちが…大好きだというこの想いがしっかり伝わるようにと願いながら…。

 

 

 

 

 




少し中途半端な所で終えてしまいましたが、とりあえず告白は完了しました!
これで彼と真冬ちゃんは晴れてカップルとなったので、四話目からは正々堂々とデートが出来ますね(*`▽´*)

四話目からは彼とカップルとなった事で少し変化した真冬ちゃんを書いていきたいと思っているので、楽しみにしてもらえたら嬉しいです!



と、最後にお知らせなのですが、次週の更新は一度お休みさせてもらいます。
本編等の方を少~しだけ進めたいので…(*´-`)
ご了承下さいませm(__)m
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