じゃあスマホアプリで代用しよう!と思い安心したのも束の間、どのアプリも最大四人までしか対応してないという悲劇。
…という訳で結局、脳内で五人のババ抜きを想像しながら書く事に……なのでもしかしたら作中で枚数などの細かい所に矛盾があったりするかも知れませんが、ご了承下さい。
時刻…午後8時45分。
丈槍由紀発案の大ババ抜き対決が始まる。
参加者 丈槍由紀
恵飛須沢胡桃
若狭悠里
直樹美紀
そして彼の五名。
ルール 通常のババ抜きと同じ。
優勝報酬 最も早くあがった人物は優勝者となり、その後決まる最下位の人物に一つだけ命令が出来る。
最下位の人物は優勝者が出したのがいかなる命令であろうと拒んではいけない……絶対に…!!
悠里「……ちょっと待って……あんまり度が過ぎた命令はダメよ。」
「あ……ハイ…。」
悠里に注意され、彼は手書きの誓約書を書き直す。
最下位の人物は優勝者が出したのがいかなる命令であろうと拒んではいけない……絶対に…!!(あんまり度が過ぎたのはダメ!)
「……なんか文面矛盾してません?」
美紀「いかなる命令であろうと…って言ってるのに、(度が過ぎたのはダメ!)ですからね。」
胡桃「拒んではいけない…の後に絶対に!!って念押ししてそれだからな…ははっ!もう笑えてきたわ。」
誓約書を手に持って胡桃が笑う。
「やっぱりこれじゃ締まりませんよ……何でもありにしません?」
彼が悠里に言う。
悠里「…じゃあ参考までに聞くけど、__君は優勝したら最下位の人に何を命令するの?」
「……そこまで酷い事は頼みませんよ…。」
悠里「うん、だから何を頼むの?」
まっすぐに彼を見つめて悠里が問う。
「………。」
「……うん!やっぱり度が過ぎたのはナシにしましょう!!自分が負けた時怖いですしね~。」
彼は冷や汗をかきながら悠里から目を逸らした。
悠里「そうね!それが良いわ。」
笑顔で悠里が言った。
由紀「もう良いでしょ?はじめよ!!」
カードを手に持った由紀が彼を急かす。
「ああ、分かりました。…さて、最下位が言い訳して逃げない為の誓約書も書いたし、始めますかね。」
美紀「誰からですか?」
胡桃「ジャンケンして勝ったやつから時計回りで良いだろ。」
由紀「よぉ~し、最初はグー!ジャ~ンケ~ン……」
全員「ぽん!」
胡桃と悠里はパー。由紀と美紀はチョキ。そして彼はグー。
悠里「…あいこね。」
由紀「じゃあもう一回…。あ~いこ~で……」
全員「しょ!!」
由紀、胡桃、悠里はグー。そして彼と美紀がパー。
由紀「まけちゃった。」
胡桃「__と美紀で勝負だな。」
美紀「いきますよ。じゃーんけーん……」
__、美紀「ぽん!!」
美紀はパー。
彼はグー。
「美紀さんからですね。」
美紀「分かりました。」
ジャンケンに勝った美紀が一番最初にカードを引かれる事になり、その後は美紀から時計回り。
つまり順番は美紀→由紀→彼→胡桃→悠里→一週してまた美紀、となった。
ゲームを始める前にまずは各自、自分の手札から既にペアになっているカードを捨てていく。
(ジョーカーは無し…けど6枚も残った……少し多いな。)
彼の手札は他の皆より僅かに多い6枚…微妙に不利な状況。
辺りにライト幾つかを置いて明るくした部屋で、全員がペアを捨て終えたのを確認してから美紀が動く。
美紀「じゃあ、どうぞ先輩。」
美紀はそう言って由紀に自分のカードを突き出す。
由紀は美紀カードの中から1枚を選んで抜き取り、自分の手札に入れる。
由紀「………。」
特に動きを見せない、どうやらペアは成立しなかったらしい。
由紀「引いて~。」
由紀が彼にカードを突き出す。
「……ほっ…と。」
彼は由紀の手札から1枚のカードを引くが、ペアは不成立…そのまま胡桃に手札を突き出す。
胡桃「ほいっ。」
胡桃はカードを1枚取ると、手札の1枚と合わせて重ねると、中央のペアカードの山に捨てた。
(くそッ…!ペアが成立してしまったか!)
胡桃のカードが減るのを目の当たりにして、彼は僅かに焦る。
胡桃「ほい。」
悠里「……。」スッ
「……。」
彼は悠里がカードを引くのを固唾を飲んで見守る。
悠里「…はい。」
悠里はカードを捨てずにそのまま美紀に引くように促す、とりあえずペアは成立しなかったようだ。
その後、美紀、由紀と順番を終える、二人共ペアが成立してしまい残りカードはどちらも3枚に。
(まずい…!まずい…!)
半分自棄になりながら彼は由紀のカードを引く。
「……。」スッ
彼が胡桃から引いたカードは7…手札にも7がある、ペア成立だ。
彼はその7のカード2枚を捨てる。これで残りは4枚になった。
(よし、まずは一安心だな。)
しかし、彼が安心出来たのはほんの一瞬だった。
その後順番は更に二週回っていき、そして彼の引く番になった時、それぞれの残りカードは…
彼は4枚、由紀は3枚、美紀と胡桃と悠里は2枚だった。
(……厳しいな。)
彼はそんな事を考えながらそっと由紀のカードを引く。
その時由紀の顔が僅かににやけた事に彼は気付けなかった。
「………!?」
彼が由紀から引いたカードはジョーカー…ババ抜きにおいて最も不要な魔のカードを彼は引き当ててしまった。
(落ち着け…!まだ大丈夫だ…!まだゲームは続く……このジョーカーが最後まで僕の所にいるわけがない!きっとすぐに胡桃ちゃんが引くさ…!!)
彼は冷や汗をかきながらジョーカーの入った自分の手札をシャッフルし始める……それもかなり念入りに。
だがその行動のせいで胡桃は気付く「ジョーカーを持っているのはこいつだ!」…と。
「………」バッ!
彼はシャッフルし終えたカードを胡桃に突き出す。
胡桃「………。」スッ
胡桃は彼のカードを引く、それはジョーカーではないカードだった。
「ちっ!!」
思わず声が漏れる、ただジョーカーは引かれなかったものの、胡桃はそのカードではペア不成立だったようなのでまだマシだった。
(……まずいな)
彼は手元のジョーカーを見て焦る、優勝したらどんな命令を下そうか…当初思い描いていたそんなポジティブな妄想は彼の頭には既に残っていなかった。
今の彼の頭にあるのは、どうやったら最下位を避けられるか…そんなネガティブな考え、最初とは真逆だった。
その後、悠里が胡桃のカードを引くが動きは無し。
その次、美紀が悠里のカードを引いた時…その瞬間はやって来た。
美紀「………」スッ
美紀「……あ。」
美紀は悠里のカードを引いた直後、そのカードでペアが成立したらしく、2枚のカードを捨てた。
この時点で美紀のカードは残り1枚……しかも次は由紀が美紀のカードを引く番だから……
美紀「はい由紀先輩。」
そう言って美紀は由紀に残りの1枚を引かせる。
美紀「あがりです。私の勝ち。」
美紀、わりとあっさり優勝。
(しまった!……こうなればただ最下位だけを避けなくては!)
そんな祈りも空しく、その後順番が回っていくと悠里、そして由紀もあがる。
残ったのはカード2枚を持つ彼と1枚の胡桃……勿論、ジョーカーは依然として彼が持っている。
胡桃「………。」スッ
彼と真っ正面に向き合った胡桃が、真剣な表情で彼のカードに手を伸ばす……だがまだどちらを引くか決めかねているのか、その手が空中で止まる。
胡桃「む~~。」
「………!」
悩む胡桃の表情……その後ろを見て彼は気付く。
胡桃の背後の窓、外にはただただ真っ暗な旅館街が広がっている、だが彼が見ているのは窓の外ではなく窓自身!
そう…彼は反射した窓に胡桃の手札が映っている事に気がついた!
(良し!ここで胡桃ちゃんがジョーカーを引きさえすれば、僕は窓の反射を見て胡桃ちゃんの手札からジョーカーを避ける事が出来る!!)
(つまりここでジョーカーを引かせられなかったら僕の負けだが……引かせる事が出来れば必ず勝ちだ!!)
胡桃「ほいっ!」
「あっ…。」
そんな汚い真似を彼が思い浮かべていると、不意に胡桃がカードを引いた。
「………。」
彼は自分の残った1枚の手札を見る…………残っていたのはジョーカーだった。
胡桃「イェーイ!勝ちぃ~!!」
そう言って胡桃は自分の最後のカード2枚を捨てた。
「くそっ……!くそっ…!」
自身の最下位が決まって、彼はその場に倒れ込む。
由紀「さぁ、みーくん!最下位の__くんに好きな命令をしていいよ!!」
由紀が美紀の横に並んで言った。
美紀「え?……うーん……命令っていっても……。」
悩む美紀。
「…負けた以上、逃げはしません…いかなる命令でも従います、お嬢様。」
彼が美紀の前で頭を下げて言う。
美紀「お嬢様って…」
美紀が少し照れる。
由紀「おお~…前にテレビで見た執事喫茶みたい!!」
はしゃぐ由紀。
美紀「うーん……じゃあその執事さんに命令しますね。」
彼の目を見て美紀が言う。
「どうぞ。」
美紀「…とりあえず寝ましょうか。」
「…はい?」
彼が聞き返す。
美紀「いや……もう眠いので、大人しく寝ましょう。」
目を擦りながら言う美紀。
「大人しく寝る…ってのが命令ですか?」
美紀「はい。命令です……ただ大人しく寝てください。」
美紀はそう言って布団に潜った。
「………。」
唖然とする彼。
胡桃「だってさ、楽な命令で良かったじゃん。」
由紀「私も寝よ~。」
悠里「お休み、皆。」
胡桃、由紀も布団に潜る、悠里は部屋のライトを全て消してから布団に潜った。
一同(彼以外)「お休みなさ~い。」
悠里「Zzz…」
美紀「Zzz…」
由紀「Zzz…」
胡桃「……。」
「……( ; ゜Д゜)」
暗い部屋に一人立ち尽くす彼。
胡桃「ほら、早く寝ろよ。」
胡桃が声を掛ける。
「…どんな命令でもOKなのに……その命令がただ大人しく寝ろってのは、負けた僕があまりにも惨めじゃないですか?」
胡桃「………まぁな。」
「………。」
彼は大人しく布団に入る。
胡桃「…結局寝るんだ?」
「…これが命令だから………お休みなさい…」
消えそうな声で彼が言う。
胡桃「うん、お休み。」
彼は布団に潜りながら少し泣きそうになったが、グッと我慢してそのまま眠りについた。
只今の時刻は午後9時。
ババ抜き対決 優勝者は直木美紀
最下位は彼
最下位に下された命令 『ただ大人しく眠れ』
結局ババ抜き対決は彼が負けるという結果に。
ただ、負けた事よりもみーくんが与えた罰ゲームの命令がクール過ぎた事の方がダメージが大きそうです。
数話続いたほのぼの日常パートは今回で終わり……次回からはまた大変な毎日に戻るとか戻らないとか…。
ご期待頂ければ幸いですm(__)m