軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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三十四話『そこに迫る影二つ』

 

川崎「じゃあ、再開するかね。」

 

川崎はそう言って胡桃の下着を外そうと胸元に手をかける。

胡桃は顔を真っ赤にして…ただ泣くだけ、もう抵抗すらしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バタン!!

 

 

 

ふと部屋の入り口のドアが大きな音をたてて開く。

驚いた岡達が視線を向けるとそこには一つの影…。三人はもちろん、胡桃のよく知る人物がそこにはいた。

 

 

 

岡「お前は……」

 

 

胡桃「!??」

 

一瞬見間違いかとすら思った…。だが見間違いなどではなく、確かにその人は……彼はそこにいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つけた……!」

 

胡桃「…お前……どうして…!?」

 

押さえつけらたまま胡桃は驚く。彼は今あの車の中で寝ているハズ、こんなところにいる訳はないと思っていたからだ。

 

 

 

 

「目が覚めたら胡桃ちゃんがいなくなってたから探しに来た……。車をあの公園に停めたのはここが近いからだったんだね」

 

「それに気づいた瞬間…胡桃ちゃんがどこかに行くとしたらここしかないだろうって思って走って来た、まさか一人で行くなんて…まったく……」

 

ここまで走って来たのだろう…。僅かに呼吸を乱しながら彼は言った。

 

 

 

 

 

 

岡「おい…俺達は好きでこの子を襲ってる訳じゃないんだ。コイツが俺達の物資を盗もうとしたから、その罰みたいなもんだよ。」

 

彼の横に立って、自分達に落ち度はないと言いたげに岡は言う。

 

 

 

 

 

「…あぁ…そう」

 

岡「そうだ、だから今更お前が来て代わりに謝ったとしても遅いんだよ。大人しく、川崎のヤツが満足するまで待っててくれ。そしたらあの女を薬とセットで返してやるから…」

 

 

岡(こいつは後で隙を見つけて殺せば良い……あの女は川崎のお気に入りのようだし、ゾンビになるまではここに置いておくか…そう長くはないだろうけど。)

 

口で彼にそう言いながら、内面では彼をどうやって、いつ殺そうかと計画を練る岡…。ここまでやってしまったら、彼も胡桃も無事に帰すつもりなどなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

彼は何も言わず、じっとその場に立ち尽くす…。川崎は彼の沈黙を許可と捉え、嬉しそうに笑ってから再び胡桃の顔に視線を向けた。

 

 

 

川崎「ははっ!嬢ちゃんのボーイフレンドの許可も出たし…とっとと済ますか!!」

 

胡桃(そっか……だよな…三人相手に一人じゃキツイだろうし……こんなバカ、わざわざ助けるのも面倒だよな……)

 

こちらを真顔で見つめる彼の目を見て、胡桃はそう思った。

もう仕方ない…悪いのは自分なのだから、助けてくれなどとは言えない…。

 

 

 

 

 

 

川崎「そうだ……おい!お前も嬢ちゃんの体触ってくか?お前、嬢ちゃんの見た事も触った事もないんだろ?俺が許可するから、こっちにこいよ!」

 

突如、川崎がそんな事を提案する。そうすると彼は無言のまま胡桃の上にまたがっている川崎の横に立ち、じっと胡桃を見つめた。

 

 

 

「………」

 

川崎「ノリが良いな…。ほら、お前が嬢ちゃんの服脱がしてやれよ!仲間の男にやられる女とか、めちゃめちゃ興奮するな!!」

 

 

 

 

 

胡桃「………っ…ん…」

 

胡桃は彼が助けてくれない事には驚かず、目を逸らして、ただ静かにすすり泣いた。彼が何をしようと責められない…悪いのは全部自分だ…。そう考えていたから…。

 

 

 

 

「……」

 

胡桃(そうなるよな……まぁ温泉の時も覗きに来たくらいだし…こんな機会があれば…こいつもそういう事するか……)

 

胡桃(肩の傷は………良かった、まだ上手くシャツで隠れてる。でもこのままじゃすぐに見られるよな…。まぁ…もういいか…)

 

 

 

 

胡桃(悪いのはあたしだし……もうどうなってもいいや……凄く恥ずかしいけど……コイツになら……何をされても……別にいい……)

 

覚悟を決めて胡桃はギュッと目を閉じる。

これから彼に裸を見られ、触れられると思うと恥ずかしくて死にそうになるが…それも仕方のない事だ…。

 

 

 

 

 

 

 

胡桃(けど…どうせなら……こいつだけがよかった…。他の男に見られたり触られたりするのは…嫌だなぁ…)

 

 

「………」スッ…

 

 

ピトッ…

 

 

 

胡桃「…んっ」

 

彼が横に屈んで、そっと胡桃の頬に手をあてる…。覚悟を決めたものの、実際彼に触れられると驚いてしまい…胡桃は小さく震えながら、思わず声を漏らす。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………した?」

 

 

胡桃「…え?」

 

彼が何か呟いたような気がして、胡桃は目を開ける。

 

 

 

 

川崎「なんか言ったか?」

 

川崎も彼に尋ねる、やはり聞き間違いではなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

「お前には何も言ってない…」

 

川崎「…は?」

 

彼が胡桃の頬に触れたまま、川崎に冷たく言い放つ。

 

 

 

 

胡桃「……」

 

 

「…反省した?」

 

 

胡桃「……は?」

 

目を丸くして、胡桃が聞き返す。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…聞こえたでしょ、反省したかって言ったの。」

 

胡桃「…反省?」

 

 

「そう、一人でバカな真似して……今はこんな目にあってる。」

 

 

 

 

「…反省した?」

 

胡桃「いや……その…」

 

急に会話をふられて、胡桃は口ごもる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「は・ん・せ・い・し・ま・し・た・かぁ~?」

 

その言葉のリズムに合わせながら、彼は胡桃の頬をペチペチと叩く。

 

 

 

胡桃「イタっ…!イタ!痛いって!!分かったよ!反省したから叩くな!!」

 

 

安田に手を押さえられてる事も…川崎に馬乗りになられている事も忘れて…胡桃はいつも彼と話す時の調子で言った。そんな中、彼は胡桃の目が赤く腫れている事に気が付く。

 

 

 

 

 

 

「…………胡桃ちゃん…泣いた?」

 

胡桃「………」

 

胡桃は恥ずかしくて…情けなくて、答える事が出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

川崎「おい…何言ってんだお前は?やらないなら下がって見てろよ…」

 

そう言って胡桃の胸元に川崎は手を伸ばす。

 

 

 

胡桃「っ!!」

 

 

 

 

 

パシッ!

 

 

川崎「…あ?」

 

その手が胡桃に触れる前に、彼がその手を掴んで止め、川崎を睨んで言った。

 

 

「お前に胡桃ちゃんは触らせない」

 

川崎「てめぇ…」

 

彼の発言で、眉間にシワをよせる川崎。

 

 

 

 

胡桃「………」

 

そんな彼の横顔を、胡桃はじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「触っていいのは僕だけだ」

 

 

川崎「………」

 

 

胡桃「…いや…それも違うと思うけど…」

 

全てを台無しにした彼の発言に、胡桃は小声で言う。

 

 

 

 

 

 

 

「よし!!」

 

そして、彼はさっと立ち上がる。

そうして立ち上がった彼は胡桃の顔を見つめ、ニコッと微笑んだ。

 

 

「……じゃあ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一緒に帰ろう……胡桃ちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一瞬だった……。

彼はその言葉を放った後、その場にいた全員が反応する事も出来ない速さで川崎の首をナイフで切り裂いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

川崎「…がっ!!?」

 

川崎が胡桃の方に倒れそうになるが、その前に彼が横から蹴りを入れ…川崎を奥に倒す。彼はそのまま倒れた川崎の上にまたがるとナイフを振り上げて…

 

 

 

 

 

「…一人目」

 

グザッ!!

 

 

 

そう呟き、容赦なくナイフを川崎の心臓に突き刺す…一連の動きはとても素早く…首を切り裂いてからここまで、まだ5秒と経過していなかった。

 

 

 

 

 

「……あ、…こいつ主犯だったっぽいのに楽に殺し過ぎたな。ミスった……」

 

動かなくなった川崎を見て彼は言う。

今人を殺した事などまるで気にもしていないようなその表情を見て、胡桃やあとの二人は驚いた。

 

 

 

 

 

 

 

胡桃「…!?」

 

安田「なっ!」

 

岡「お前…!?何を…!!」

 

 

 

 

岡「殺したのか!?…ふざけやがって!」

 

岡がそう言って、胡桃から奪ったシャベルで彼に殴りかかる。

だが彼はそれをかわし、岡の腹に蹴りを入れて突き飛ばした。

 

 

 

 

岡「ぐっ…!」

 

安田「逆ギレもいいとこだな…薬を渡さなかっただけで殺すなんてな」

 

胡桃から手を離し…彼と距離をあけながらナイフを構えて安田が言う。

 

 

 

 

 

「…確かに今回はこっちが先に手を出してしまったからね。」

 

胡桃「………」

 

「元々の非はこっちにあるかも知れないけど……」

 

 

 

 

 

岡「かもじゃなくて……その女が悪いんだよ。」

 

シャベルを構え直して岡は言った。

 

 

 

 

 

 

 

「だとしても…お前らの言い分なんか知った事じゃない…」

 

 

 

「僕にとってはこの人達だけが全て…」

 

 

「それに…」

 

彼がじっと胡桃を見つめる。

 

 

 

胡桃「………」

 

「この人は強い人なんだ……誰かの為にならともかく、自分が多少追い込まれたくらいじゃ泣かない………」

 

 

「だけど……お前らは泣かせた……あんなに強い胡桃ちゃんを……!」

 

そう言ってから彼は岡を睨む。

ナイフを握るその彼の手に、力が込もっていくのをその場の全員が感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

「胡桃ちゃんを襲って、泣かせた時点で……お前らは絶対に殺す」

 

鋭く…それでいて冷たい目をして彼が二人に告げる。

岡はその表情にどこか恐怖を感じた気がしたが、気のせいだと決め付けて再び彼に殴りかかった。

 

 

岡「へっ…こんな女を(かば)うなんて…イカれたヤツだな!!」

 

「こんな女…!?」

 

岡は胡桃を感染者だと思っているからそういった発言をしたが、それを知らない彼はそれをただの挑発ととらえる、それが更に強い怒りを引き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダッ!!

 

 

彼は一瞬で岡との距離を詰めると、岡の持つシャベルを左手で掴み、そのまま顔を睨んで言った。

 

 

「胡桃ちゃんはとても良い人…『こんな女』なんてお前のようなクズに言う資格はない………それに…」

 

彼が右手に持ったナイフを振り上げる。

静かに振り上げられたそのナイフは部屋を照らすライトに反射し、ギラッと輝いていた…。

 

 

 

 

「このシャベル……彼女のだ…」

 

ブンッ!!

 

そう言って、ナイフを勢い良く、シャベルを持った岡の右手へと振り下ろす。

 

 

 

 

 

岡「ッ!!?」

 

岡は咄嗟にシャベルから手を離して、彼から離れるが…

 

 

 

ブシャッ!!

 

 

 

 

 

岡「ぐうっ…!くそっ!!」

 

一瞬反応が遅れた岡は、完全にナイフを避けきる事が出来ず、右手に深い切り傷を負う。

 

 

 

 

 

 

「…切り落とそうと思ったのに……シャベルじゃなく、直接手を掴めば良かったな…。」

 

ポタポタと血を流す岡の右手を見て、彼は言った。

 

 

 

 

 

岡(コイツ…本気で手を切り落とそうとしやがった!!)

 

彼の躊躇いの無い攻撃に、岡は恐怖を抱く。

 

 

 

 

安田「くっ……!!」

 

その様子を見ていた安田も同じだった。

目の前の彼は安田には背を向けている、なのに…攻撃出来ない。

下手すれば、反撃を受け、自分が殺されると思っていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胡桃「…__」

 

胡桃は彼の名を小さく呟く。

 

 

 

 

胡桃(あの時の……空彦を殺した時と同じ目だ………)

 

 

胡桃(いつものあいつとは…違う目…)

 

 

 

 

 

胡桃(………あたしのせいだ…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目の前で彼が戦う様子を見た胡桃は、次第に意識が遠退くのを感じた…

 

 

 

なので…その後何があったのか、胡桃は覚えていない…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気がついた時には部屋中が血だらけになっていて、岡達の死体が転がる中、彼が血まみれのナイフを持って胡桃の名を呼んでいた。

 

 

 

 

 

胡桃「…あ。」

 

 

 

 

「大丈夫、胡桃ちゃん?」

 

彼が胡桃の肩を揺さぶって言う。

 

 

 

 

胡桃「……うん。」

 

 

 

 

「先に外で待ってて……薬を見付けたらすぐに行くから。」

 

 

 

 

胡桃「……わかった。」

 

 

 

 

「気を付けてね、ほら…これ持って。」

 

胡桃は彼からシャベルを受け取ると、部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

「さて…どこにあるのか…」

 

彼は岡達の死体を跨ぎながら、一つのダンボールの中を探った。

 

 

 

 

 

 

(ごちゃごちゃしてて分からないな……整頓しておけよ…。)

 

 

 

 

 

 

 

 

?「……何探してるの?」

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

不意に何者かに話しかれられ、彼は振り返る。

 

 

 

 

?「……?」

 

そこにはいつの間にか、黒いチョーカーのような物を首に着けた、彼と同い年くらいと思われる黒髪の少女が立っていた。

 

 

 

 

 

「…コイツらの仲間?」

 

ナイフを構えたまま、彼がその少女に尋ねる。

すると少女はぶんぶんっ!と首を横に振った。

 

 

 

 

「…じゃあ誰?」

 

狭山「えっと……狭山真冬(さやままふゆ)

 

 

「……そうですか」

 

狭山「…で、何探してるの?」

 

狭山が再び彼に尋ねる。

彼女の纏う独特な雰囲気に戸惑いながらも、彼はそっと答えた。

 

 

 

「……解熱剤です」

 

狭山「……」ゴソゴソ

 

彼が答えた後、狭山は置かれていたダンボールの内の一つを開くと、中を漁り始める…。彼は不思議そうな顔をしながらただそれをじっと見つめていた。

 

 

 

 

「……?」

 

狭山「……はい。」

 

そう言って狭山は彼に手渡したもの…それは彼が探していた解熱剤だった。

 

 

 

「…よくある場所が分かったね?」

 

狭山「…勘」

 

 

「勘……?そ、そうですか…」

 

 

 

 

 

狭山「…あ、ちょっと待って」

 

狭山はそう言って背負っていたリュックからビニール袋を取り出すと、辺りにあったいくつかの薬を詰めて、彼に渡した。

 

 

 

 

狭山「…他では手に入れにくい物を詰めておいた」

 

「…ありがとう…ございます」

 

不思議な感情を抱きながら、彼はそのビニール袋を受け取った。

 

 

 

 

 

狭山「…気にしないで、どうせ持ち主は死んだんだから…誰かが使わないと勿体ない。」

 

部屋の死体を見回してからそう言って、狭山も自分のリュックに薬を詰める。

 

 

 

 

 

「………。」

 

彼は無言でそれを眺めていた。

 

 

 

 

 

狭山「……行かなくて良いの?」

 

薬を詰めながら彼と目を合わせて、狭山は言った。

 

 

 

 

 

「あ、うん……あなたはどうします?」

 

狭山「…ボクの事?」

 

「ん…?ボクって…狭山さん男の人ですか?」

 

狭山の一人称に疑問を抱いた彼は尋ねた。

狭山の事を最初は女だと思っていたが…その顔付きは綺麗に整った中性的な物なので、男女どちらともとれる顔だった。

 

 

 

 

(声は女の人っぽいけどな……。それにどことなく美紀さんに似てる……胸はないけど)

 

視線を少し下にずらし、狭山の平らな胸元を見て彼は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狭山「失礼だね…。ボクは女の子だよ」

 

「ああ…そりゃすいません」

 

 

 

 

狭山「ボクっ娘ってやつ……」

 

「……へぇ」

 

狭山「……一部の人に需要がある」

 

どや顔で告げる狭山…。

彼はその不思議な少女を真顔で見つめていた。

 

 

 

 

狭山「……冗談はさておき、ボクは一人で平気だよ…もう少ししたら仲間が迎えに来てくれるから…」

 

そう言って狭山はニコッと笑う。

どうやら、彼女にも仲間がいるらしい。

 

 

 

 

 

「仲間?……分かりました、なら平気ですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狭山「……けどね」

 

「なんです?」

 

狭山「…ボクの仲間が来たら……君と彼女が平気じゃなくなるから…はやく出ていった方が良いよ?」

 

彼にそう言ってから、再びニコッと笑う狭山、だがその笑顔はさっきのとはまるで違い……恐ろしい物を感じさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…彼女?」

 

その笑顔を見て、彼は僅かに怯えたが…狭山の『彼女』という言葉が気になり、聞き返した。

 

 

 

 

 

狭山「…さっきシャベルを持った女の子がこの部屋から出てくのを見た、彼女はボクに気づかなかったみたいだけどね……君の友達でしょ?」

 

不気味な笑顔のまま狭山は答える。

 

 

 

 

 

 

「……はい、そうです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狭山「……じゃあ」

 

狭山の表情がさっきまでの普通の物に戻る。

 

 

 

 

 

狭山「……はやく行ってあげなよ…一人じゃ危ないよ」

 

薬を詰め終えた狭山が、リュックを背負って言った。

 

 

 

 

 

 

 

「そうですね…では。」

 

彼はそう言って部屋から出ようとドアを開ける。

 

 

 

 

 

狭山「……」パタパタ

 

狭山が彼に手を振る。

 

 

 

 

彼も一応手を振り返すと、狭山を部屋に残し、ドアを閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狭山「……またね…__君」

 

 

 

 

 

 

 

 

ドアが閉まる直前に、狭山が彼の名を呼んだ気がしたが、彼は気のせいだと思って無視した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狭山「………」

 

彼が出て行った後、狭山はじっと岡の死体を見つめる。

 

 

 

 

 

ドッ!

 

 

 

岡「ぐっ!!」

 

狭山が蹴りをいれると、岡は呻き声をあげた。

 

 

 

 

狭山「…やっぱ生きてた。」

 

 

 

 

岡「気付いてたのかよ……ッてぇ…!くそが…」

 

彼にやられた腹部の傷を押さえながら、岡は上半身を起こす。

 

 

 

 

 

狭山「……。」

 

 

 

 

岡「どこの誰か知らないが、その辺の医療品を使って俺を手当てしてくれ……そしたら、さっきあんたがそのリュックに詰めてた分の医療品は、黙ってくれてやるよ。」

 

 

 

 

狭山「………」

 

 

 

 

岡「あの野郎…必ず殺してやる!!」

 

 

 

 

狭山「…彼の事?」

 

 

 

 

岡「あんたは…あの野郎の仲間じゃないよな…?」

 

岡が狭山に尋ねた。

 

 

 

狭山「…違うよ」

 

 

 

岡「だったらとっとと俺を手当てしてくれるとありがたいんだけど?」

 

 

 

 

狭山「…はぁ……、彼…詰めが甘いなぁ…」

 

狭山はため息をついて岡に近付き、しゃがんで目線を合わせた。

 

 

 

 

岡「?…おい、何を…」

 

 

ガッ!

 

 

 

 

岡が言いきる前に、狭山はその首を片手で絞めた。

 

 

 

 

 

狭山「…彼の仲間じゃないけど……キミの仲間でもないんだよ?ボクは。」

 

 

 

 

 

岡「うっ!?」

 

岡はその手を剥がそうと、左手を使う。

 

岡の右手は、彼に切られた傷が深く、今は動かせない。

 

そのため、残った左手だけを使うしかない訳だが、目の前の少女も片手しか使っていない…同じ片手という条件ならば、華奢な少女の手一つ…男の岡が振りほどけない訳がない。

 

 

グググッ……

 

 

 

 

 

 

 

その筈なのに……いくら岡が力を込めても少女の手はびくともしない。

 

 

 

 

 

岡(この女…なんつー馬鹿力だよ!!)

 

岡は思った、たとえ今、右手が使えたとしても……それでも彼女の片手一つ、自分の力では振りほどけないのではないか…と。

 

 

 

 

 

 

 

狭山「…キミ…死んだフリしてる時から…心臓の音うるさかったんだよね…」グググッ…

 

徐々に力を強めていく狭山。

 

 

 

 

岡「お前………いっ…たい…!?」

 

首を締められながら、狭山に尋ねる。

 

 

 

 

 

 

 

 

狭山「…ボク?…ふふっ…」

 

一度不気味に笑ってから、狭山は答えた。

 

 

 

 

 

 

狭山「……猟犬だよ………ワンワンッ…」

 

そう言って犬の鳴き真似をした直後、狭山は急激に力を強める。

 

 

 

 

 

 

 

岡「…ぐ……っ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

狭山「……バイバイ…」




当初は彼が岡と安田を倒すまでの描写も書いていましたが……書いているうちに彼を暴走させてしまったのでカット!(笑)



そんなわけで新キャラプロフィールいきます!


狭山真冬(さやままふゆ)

     
不思議な少女、声のトーンは常に小さく、一定で…感情が読めない。

顔だけ見れば美紀に似ているが…髪は黒髪で肩までかかる長さ、胸は全くない…等の違いがある。  

   一人称は「ボク」

…その他にも色々と気になるポイントはありますが、その辺は徐々に明かしていきます。
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