題材となっているのは本編四章・三十五話『かえりみち』です!
結構前の話なので簡単なあらすじを語らせてもらいますと…。
りーさんが熱を出してしまい、胡桃ちゃんが深夜に一人でとある生存者達の住み家に忍び込んだ際の事ですね。胡桃ちゃんは潜入に失敗して生存者達に捕まってしまうも、彼がやって来てそれを救いました。その後、二人は解熱剤を手にして車へと戻るのですが…。
今回いただいたリクエスト内容はその際…『りーさん達が起きていて、彼や胡桃ちゃんが戻ってきた事に気づいたら』というものです!ゆっくりとお楽しみ下さい(^^)
色々あったが、胡桃、そして彼は悠里の為の解熱剤を確保し、キャンピングカーの停めてある公園へとどうにか戻ってきた。このまますぐにでも眠りたいが、今の彼は少し怪我をしている…。胡桃はそれの手当てをするため、一旦自分だけが車内へと戻るが…。
バタンッ…
悠里「お帰りなさい…。こんな夜遅くに、どこへ行ってたのかしら?」
胡桃「っ!?お、起きてたのか…?」
悠里「ついさっき、ね。さて、ちゃんと説明してくれる?」
こっそり救急箱だけを取りに来たつもりだったのだが、予想外の事が起きた。眠っていたはずの悠里、美紀、そして由紀が起きてしまっていたのだ。
胡桃「え…っと……その」
美紀「先輩…怪我してるんですか?」
目を覚ました悠里と出会し、焦りに顔色を青く染める胡桃…。そんな彼女の髪は微かに乱れており、着ているシャツもボロボロに破けていた。
胡桃「いや、あたしは大丈夫だけど……でも…」
悠里「……彼もここに呼んで」
胡桃「…ああ」
観念したように首を振り、胡桃は外で待たせておいた彼を車内へと呼び戻す。戻ってきた彼はその身にいくらか怪我を負っており、腕や頬についた傷から血を流している…。
悠里「っ…!本当に…何があったの!?」
由紀「だ、大丈夫…?」
「ああ、大丈夫…。心配いらないよ」
負った怪我は大したものではないし、何より"かれら"にやられたものではない。なので感染の心配はないと…彼は微笑むが、悠里達の表情はちっとも明るくならない。
美紀「二人とも、何をしてたんですか…?」
胡桃「いや…こいつは悪くないんだ…。全部、あたしが……」
彼が責められる事のないよう、胡桃は彼女達に説明を始める。どうにか悠里の為の解熱剤を確保するべく、自分の独断であの生存者達の元へ忍び込んだ事。そしてそれは失敗に終わり、自分が襲われそうになった時…彼が駆け付けて自分を助けてくれた事…。全てを説明した。
胡桃「……そういうことだから、本当に全部あたしの――」
悠里「胡桃っ…!あなた、自分が何をしたのか分かってるの…!!」
事情を知った悠里は胡桃のすぐ目の前まで寄り、その目を睨む。しかし、悠里もまだ本調子ではないらしく、立っているだけでもふらふらと揺れ、目にもかなりの疲れが見える。
胡桃「………ごめん」
悠里「そんな言葉で…許せるわけっ…!!」
目を逸らしながら応えた胡桃に対し、悠里の声色が少しずつキツくなっていく。いくら自分の為とはいえ、一人で勝手な行動をしたこと…。そのせいで危険な目に遭い、それに彼を巻き込んだ事が許せなかった…。
悠里「こんなの、ほっとけばすぐに治るっ!!なのになんで、そんな危ないことをしたのっ!?分かってるの!?もし彼が来てくれなかったら、胡桃は今頃――」
胡桃「わかってるよ…。だから……ごめんって…」
悠里「他の生存者と無駄に争って、無駄に危険な目にあって、無駄に彼を傷付けたのよ!?それだけの事をして…ごめんで済むと思ってるの!?」
胡桃「……っ」
何か言い返そうとしたのか、胡桃の目が一瞬だけ鋭くなる。しかしすぐ、自分が言い返せるような言葉などないと気付いたのか、胡桃はまたその顔を伏せた…。
「…りーさん。胡桃ちゃんだって、悪気があったわけじゃ――」
悠里「そんなのは当たり前よ…。もし悪気があってやってたのなら、そんな人とはもう一緒にいたくないわ…」
由紀「り、りーさんっ……」
悠里「…美紀さん、この人の手当てを頼める?」
美紀「あっ…はい…」
深いため息をつき、悠里は彼の事を美紀に任せる。美紀はすぐに救急箱を取り出し、彼を席へと座らせながら手当てをしていった。この際もまだ、胡桃と悠里は立ったまま向かい合っている…。
悠里「…反省して」
胡桃「……ああ」
消え入りそうな声で応え、胡桃は車両の後方へトボトボと歩いていく。その後、彼女は車内に彼がいるのも気にせずに破けた服を脱ぎ、着替えを始めた。誰かが着替える際、いつもなら彼を車外へと出すのだが、今回は誰もそうしようとしない…。しかし彼もまた、今の場の空気が分かっている為…胡桃の着替えが終わるまでは目を背けていた。
悠里「怪我、大丈夫…?」
「あ……はい。大丈夫です」
美紀に手当てしてもらっている彼の向かいにある席へとつき、悠里はまたしてもため息をつく…。胡桃はもう着替えを終え、シーツにくるまり無言のまま寝床に横たわっていた…。
悠里「……ごめんなさいね。胡桃が迷惑をかけちゃって…」
「いや…別に」
悠里「あの娘、前からそうなの…。何かあると一人でムチャして、心配ばかりかけて……。ほんと、頭が痛くなっちゃう…」
それは熱のせいじゃないだろうか…などと言いたくなる彼だったが、グッと堪えて口を塞ぐ。しかし、悠里の言いたいことも理解は出来る。彼女は彼女で本当に胡桃の事が大事だからこそ、あれだけ怒っていたのだろう。
由紀「あの…胡桃ちゃん達が取ってきてくれたお薬、飲む?」
悠里「…いらないわ。せっかくだけど、そんなのを使う気になれないの」
由紀「あ…ぅ……」
「りーさんも意地っ張りですね」
悠里「ええ、そうよ。私は意地っ張りで頑固で性悪で―――」
熱のせいなのか、はたまた機嫌が悪いのか…悠里は自虐的な言葉をペラペラと口に出し続ける。たった一言『意地っ張り』と言っただけでこんなになるとは思わず彼は焦り、美紀と由紀も苦笑いしていた…。
「そこまで言ってないでしょ…」
悠里「……そうね、ごめんなさい。少し、イライラしちゃってて…」
そう答えた直後、悠里は目の前のテーブルにガクッと顔を伏せる。具合が悪い時に色々な事が起きてしまい、まだ落ち着いて状況の整理が出来ていないようだ。
悠里「…あなたは……胡桃にガッカリしなかった?」
「まぁ…少し勝手が過ぎるかなとは思いましたけど、ガッカリとまでは…」
悠里「そう……優しいのね」
彼はテーブルに顔を伏せたままの悠里と会話をしつつ、寝床にいる胡桃の事を見つめる。確かに今回の胡桃は少しばかり自分勝手な行動をしてしまったが、それが悠里の為なのだと思うと怒る気になれない…。
美紀「…はい、終わりましたよ」
「ああ、どうもです…」
彼への手当てが済み、美紀は救急箱を片付ける。夜中に起きたからだろう…彼女と由紀の目はまだ眠たげだ。
悠里「二人とも、もう寝てていいわよ…。ごめんなさいね、付き合わせちゃって。私ももう少ししたら寝るから」
美紀「はい…お休みなさいです」
由紀「…おやすみ」
あくび混じりに返事を返し、二人も寝床へと向かう。そんな中で悠里は彼と向かい合って席についたまま、そっと目を見つめあった…。
悠里「私……胡桃に言い過ぎたと思う?」
「どうでしょう…。なんとも言えないですね」
悠里「…私は、もう少しキツく言っても良かったと思ってるくらいだわ。だって、本当にそれだけの間違いを
「……………」
悠里「でも、
伏せていた顔を静かに動かし、悠里は寝床にいる胡桃の事を見つめる…。その目は説教していた時のように鋭いものではなく、微かに涙ぐんでいるものだった。
悠里「私が体調を崩さなければ、胡桃はこんな嫌な思いをしなかったのに…。ダメね…体調管理はしっかりしないと…」
「いくらしっかりしてようと、崩れるときは崩れますよ」
悠里「ふふっ…そうね…。さて、私たちも寝ましょうか?」
「はい、そうですね」
車内の明かりを消し、二人もそれぞれの寝床へとつく。と言っても、彼の寝床はテーブル前の座席なので移動する必要はなく、そのまま顔を伏せるだけなのだが…。
(はぁ……疲れた)
そばにあったシーツを羽織り、テーブルに顔を伏せて眠りの姿勢に入る。この短時間の間に結構な事をしてきた為、彼も疲れていたのだろう…。伏せて数分の間に、眠りについてしまった。しかしその一方、悠里は中々寝付ける事が出来なかった。恐らく、胸の内がモヤモヤとしているからなのだろう…。
悠里「……はぁ」
このままだと朝まで寝付けないかも知れない。仕方ないと思った悠里はそっと寝床から起き上がると、自分の抱えるモヤモヤとした気持ちを晴らすべく、胡桃の寝床へと寄る…。
悠里「…胡桃、起きてる?」
そっと身を屈め、シーツ越しに彼女の身を揺らす。するとそのシーツの一部が捲れ、胡桃は振り向いてこちらへ目線を向けた。どうやら、胡桃も寝付けずにいたらしい。
胡桃「……起きてるよ」
悠里「そう…よかった」
悠里はニッコリと微笑んだ後、横たわる胡桃と目線を合わせるようにしてその場に座る。胡桃はまださっきの説教を気にしているらしく、悠里の事をチラチラと見つめていた…。
悠里「胡桃があんな事をしたのは…私のせいよね…。ごめんなさい」
胡桃「っ…違うよ…。あたしが勝手にやった事だ…」
悠里「うん。でも、それって私の為にしてくれた事なんでしょ?なら、やっぱり私の責任よ。私が、体調を崩さなければ……」
胡桃「そんな…りーさんは悪くないよ…。全部、あたしのせいだから…」
胡桃は慌てて起き上がり、首を横に振る。全部自分の責任なのに、何も悪くない悠里が責任を感じているのが嫌だった…。
悠里「なら、もう心配かけたりしないで…。今回は彼がいたからどうにかなったけど、もし…胡桃の身に何かあったら…皆が悲しむの。彼も、美紀さんも由紀ちゃんも…もちろん、私もね?」
胡桃「……うん」
悠里「だからもう、こんな事は二度としないで…。私なら大丈夫。こんなのすぐに治るから…。だから……」
優しい笑顔を浮かべ、悠里は胡桃の肩に両手を回す。そうして静かに彼女を引き寄せると、そのままギュッ…と抱き付き、相手の肩に顔を埋めた…。
悠里「心配かけて…ごめんなさいね」
胡桃「そ…んな…。あたしの方こそ……ごめん…」
胡桃の方からも手を回し、悠里を抱き締める。自分はひたすら責められてもおかしくない事をしてしまったのに、こうして自分の事を優しく抱き締めてくれた悠里の気持ちがとても嬉しくて…暖かかった。
悠里「また、彼にも謝っておきなさいね…。彼がいなかったら、本当に危なかったんでしょ?」
胡桃「うん…。また明日、謝っておく…」
悠里「…よろしい。じゃ、今度こそ寝ましょうか。おやすみ、胡桃」
胡桃「…うん。りーさん、ありがとう」
悠里「……ふふっ」
優しく微笑み、悠里は自分の寝床へと戻る。互いに話し合った事で胸のモヤモヤは消えたらしく、悠里も胡桃も、その後すぐに眠る事が出来た。そして翌朝…悠里の体調がいくらか良くなっていたので安心する一同だったが、他に嬉しいことがもう一つ…。悠里と胡桃がまた、仲良く会話するようになっていた事だ…。
りーさんの本気の説教…かなり効いたようですね(汗)
最初はりーさんと胡桃ちゃんがギクシャクしたままの終わり方にしようとも思いましたが、いくらifとは言ってもそれはかわいそうな気がしてしまったので…最後には仲直りしてもらいました(*^^*)
やはり、学園生活部には仲良くしていて欲しいのでね…。
また…書いている途中で『りーさん×胡桃ちゃん』に目覚めそうになったのは内緒です…(笑)