軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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今回もみーくんの勘違いは継続中です。

キャラが若干崩れてきてますがお気になさらず!


三十六話『かんちがい』

 

 

翌朝の車内…まだ悠里達は眠っている中、彼はそっと目を開き、静かに立ち上がった。窓の外は少しだけ明るくなり始めている…恐らく、時間は5~6時前後だろう。

 

 

 

 

 

(よし…まだ皆は寝てるな)

 

彼は辺りを見回して皆が眠っている事を確認すると、椅子から立ち上がり…静かに胡桃のベッドの前に移動する。そうした後、彼は眠る胡桃の肩をそっと叩いた。

 

 

 

 

…トントン

 

 

胡桃「……ん、…どした?」

 

「散歩行ってくる、胡桃ちゃんには言っておこうと思って…」

 

胡桃「散歩…?」

 

普段、彼は朝の散歩などには行かない。

そんな彼が何故急に散歩などに出かけるのかと胡桃は不思議に思うが、すぐにそれが深夜の戦いで負った傷の言い訳作りの為だと気付いた。

 

 

 

 

胡桃「あぁ…なるほどね、ほんとに行くんだ」

 

胡桃(そう言えば夜中、どうやってこの傷をごまかそうかという話になった時…『散歩に行って転んだ事にする』…とか言ってたっけ)

 

 

 

「うん、すぐ戻るよ」

 

胡桃「夜中にあれだけ動いたんだから疲れてるだろ?だから、行ったふりで良いんじゃない?あたしが話合わせるからさ…」

 

「ううん…もう眠気も覚めちゃったから、運動ついでに行ってくるよ。」

 

 

 

胡桃「そっか…分かった、あたしもついてこうか?」

 

ベッドから上半身を起こし、彼に同行しようとする。しかし彼はニッコリと微笑み、その首を横へと振る。

 

 

 

 

「大丈夫、胡桃ちゃんは休んでてよ」

 

胡桃「…じゃあそうする、気を付けろよ」

 

彼は胡桃のその言葉に微笑みを返し、静かに車を降りていった。

 

 

 

 

 

 

 

胡桃「……ふぅ」

 

彼が出て行ってのを見届けてから、胡桃は布団をかけ直して寝直そうとする。…しかし、横になって目を閉じたところでちっとも眠くならない…。どうやら、眠気が覚めてしまったらしい。

 

 

 

 

胡桃(ダメだ…あたしも眠気が覚めた)

 

バッ!

 

胡桃はベッドから起き上がり、テーブルについて彼の帰りと皆の目覚めを待つ。実はこの時、既にもう一人起きていたのだが…胡桃も彼も気付いていなかった。

 

 

 

 

 

 

美紀「……」

 

 

 

美紀(__さんと胡桃先輩の事を考えていたら、いつの間にか朝になったみたい…)

 

窓の外が明るくなっている事を布団の中から美紀は確認する、驚く事に彼女はあれからずっと起きていた。

 

 

 

 

美紀(あの二人…さっきも何か喋ってたなぁ、__さんは散歩がどうとか言ってたから、朝の散歩にでも行ったのかな?で…それを胡桃先輩にだけ報告した。)

 

 

美紀(それよりも私が気になるのは胡桃先輩の『夜中にあれだけ動いたんだから』ってセリフ…これで夜中のアレは私の見た夢って可能性は無くなった…。やっぱりあれは現実なんだ)

 

 

 

美紀(『あれだけ動いた』って…つまり……そういう事だよね…うわぁ~!)

 

その様子を想像した美紀は枕に顔を埋めて、一人で顔を赤くさせながらバタバタと足を動かす。無意識に動かしてしまったその足の動きはかなり目立ち、彼女が起きていることはあっさりと胡桃にバレた。

 

 

 

 

胡桃「…美紀、起きてるのか?」

 

美紀「うっ!?……あ……はいっ」

 

胡桃「うなされてたぞ、大丈夫か?」

 

別にうなされていた訳ではないのだが、まぁあれだけ足をばたつかせていたらそうも見えるだろう…。美紀は心配そうな表情をしてこちらへと駆け寄る胡桃の顔を直視出来ず、そっと目を逸らした…。

 

 

 

 

美紀「あの~…大丈夫です…ちょっと悪い夢を見ちゃって」

 

胡桃「…そっか」

 

 

 

美紀「……夢だったら良かったんですが」ボソッ

 

胡桃「なんか言った?」

 

美紀「いえ…何も」

 

何だか気まずいが、起きているとバレたからには仕方ない。美紀はそっとベッドから起き上がり、胡桃と共に席へとつくことにした。

 

 

 

 

 

 

美紀「………」

 

 

胡桃「………」

 

 

美紀「………」

 

謎の沈黙が続く中、胡桃が口を開く。

 

 

 

 

 

胡桃「…そろそろ由紀のヤツも起こすか」

 

美紀「!!…はい!そうですね!起こしてきます!!」

 

由紀ならこの気まずい状況を打破出来ると思った美紀はその提案に食い付く。

 

 

 

胡桃「?…あぁ、じゃあ頼むよ。」

 

美紀「由紀先輩!朝ですよ!起きてください!!」

 

やはり、胡桃と二人だけなのは気まずい。しかし由紀がいれば…由紀がいればこの気まずさも少しはマシになる。一刻も早く彼女が起きるよう、美紀は必要以上に強く由紀の肩を揺さぶった。

 

 

 

 

由紀「…わわっ!!…みーくん何?」

 

美紀「朝ですよ!!」

 

 

由紀「え?…うん、朝だね」

 

やたらと必死な美紀に疑問を抱きつつも、由紀は起きる事にした。

 

 

 

美紀「はぁ…」

 

美紀(とりあえず由紀先輩がいれば会話には困らないはず…)

 

ため息をついてから安堵する美紀。

 

 

 

 

 

由紀「あれ、__くんはトイレ?」

 

美紀「散歩に出掛けましたよ」

 

由紀「へぇ~珍しいね」

 

 

胡桃「ん?あたし、あいつが散歩に行ったこと美紀に言ったっけ?」

 

この瞬間、美紀は自分がミスを犯した事に気が付く…。起きたタイミング的に、美紀は彼が散歩に行った事など知るはずがないのだ。

 

 

 

 

美紀(しまったぁ!!!)

 

 

 

美紀「いや…あの……寝てる時に__さんの声だけ夢の中で聞いてて…それで…」

 

冷や汗をかきながら美紀は答える。

 

 

 

胡桃「ああ、そう。」

 

だが、胡桃はそれで納得してくれたようだ。

 

 

 

美紀(危ない危ない…あの時自分が寝たふりしていた事を忘れてた…)

 

美紀は自分の高まった鼓動を抑える為に、二人に気づかれぬようにそっと深呼吸をした。

 

 

 

由紀「私も散歩行きたかったなぁ~…__くん、声かけてくれれば良かったのに。」

 

テーブルに突っ伏しながらそう言って、由紀は深いため息をつく。

彼が車のドアを開き、散歩から戻ってきたのはその直後だった。

 

 

 

 

「お…皆さん起きてますね。」

 

そう言いながら彼は胡桃の隣に座る、勿論ただ空いていたから座っただけで深い意味は無い

 

…だが美紀だけはそう思ってはいなかった。

 

 

 

 

美紀(隣に!隣にっ!!)

 

目をキョロキョロと泳がせる美紀…そんな彼女を気にせずに、由紀は彼の頭の絆創膏を見て言った。

 

 

 

 

由紀「__くん頭のそれどうしたの?」

 

 

 

「散歩中に転んじゃって…たまたま近くにあった薬局で絆創膏を見付けたので貼りました。しかも………ホラ!!」

 

彼は自慢気にポケットから解熱剤を取り出す、夜中の内に予めしまっておいた物だ。

 

 

 

 

由紀「スゴいスゴい!見付けたんだ~!!」

 

由紀はそれを手に取り、笑顔を見せる。

 

 

 

胡桃「おー…散歩に行って良かったなぁ。」

 

胡桃もそれを見つめながら言う、その発言が僅かに棒読みな事には誰も気付いていない。

 

 

 

 

美紀「良かった!これでりーさんも元気になりますね!!」

 

さすがの美紀も彼の思いもよらぬ土産には喜び、思わず彼の顔を見る。

 

 

 

 

美紀「う!!」

 

だがその顔を見た瞬間、深夜に見たあの光景を思い返ししまい…堪えきれずに目を逸らす。

 

 

 

「どうかしましたか、美紀さん?」

 

違和感を感じた彼が尋ねる。

 

 

 

美紀「いえ…何も…。」

 

美紀はそれに下を向いたまま答えた。

 

 

 

由紀「これ、りーさんに飲ませて良い?」

 

 

 

「食後に飲むタイプなので、朝食を済ませてからにしましょう…まずはそのりーさんを起こしてきてくれますか?」

 

彼が由紀に言う。

 

 

 

由紀「は~い!」

 

元気の良い返事をしてから由紀は悠里の眠るベッドへと駆け寄り、悠里を起こすと彼が薬を見つけてきた事を嬉しそうに話した。

 

 

 

 

悠里「おはよう、みんな」

 

悠里が皆のもとにゆっくりと歩み寄って挨拶をする。

全員が挨拶を返した後、彼が立ち上がって悠里を胡桃の隣に座らせた。

 

 

 

悠里「__君ありがとう…薬も見つけてきてくれたらしいわね、散歩中に見つけたって本当?」

 

 

 

「ええ、運が良かったです。」

 

 

 

由紀「けどね、これ食後なんだって。…だから胡桃ちゃん!早くごはんを!!」

 

キッと強く胡桃を見つめながら由紀は言った。

 

 

 

 

胡桃「偉そうに…って言いたいとこだが、りーさんの為に準備するか!」

 

 

 

美紀「私も手伝います。」

 

胡桃と美紀は手早く朝食の準備を終え、皆でその朝食を食べる…悠里は相変わらず体調は良くないようだが、食事は前日よりもしっかりと食べていた。

 

その朝食を終えた後で由紀が悠里に薬を渡し、飲んだ後…悠里は由紀にベッドまで強引に押されて行って横になった。

 

 

 

 

悠里「起きてばっかなんだから、まだ眠れないわよ。」

 

悠里がそう言うのを気にもせず、由紀は悠里の体に布団をかける。

 

 

 

由紀「ダメだよ、ちゃんと横になってないと!別に無理して寝なくても良いから、とりあえず横になってて!!」

 

由紀はぴったりと悠里に付き添う。

そんな由紀を、悠里はにこやかな表情で眺めていた。

 

 

 

 

美紀「あれ…__さん、いませんね?」

 

食事の片付けを胡桃と二人で終えた後、車内を見回してから美紀は言った。

 

 

 

 

胡桃「ほんとだな…美紀、外にいるか見てきてくれるか?」

 

 

 

美紀「あ………はい。」

 

胡桃にそう言われた美紀は、ドアを開けて外に出る。

 

 

 

「うおっ!どうしました?」

 

外に出た直後、そのドアの真横…車に寄りかかっていた彼を見つけた。

不意に美紀が現れた事に対してやけに慌てており、服をただして何かを隠したようにも見えた。

 

 

 

 

 

 

美紀「中にいなかったから外にいるのかと思って……何してるんですか?」

 

 

 

「何にも?」

 

口ではそう言っている彼だが、美紀はそれを不審に思う…彼が先程服を捲って何かを確認していたような気がしたからだ。

 

 

 

美紀「なんでシャツ捲ってたんですか?」

 

直球でそれを問う美紀。

 

 

 

「え!?…いや~、そんな事してませんよ?」

 

あきらかに彼は動揺している。

そんな彼を見た美紀の中で一つの疑惑が生まれる。

 

 

 

 

美紀(まさか……散歩中に噛まれたんじゃ!?)

 

そう思った美紀は、彼のシャツを捲ろうと手を伸ばす。

 

 

 

 

「っ!!」

 

彼はその手を後ろに飛び退いてかわした。

 

 

 

 

美紀「なんで避けるんですか!?」

 

手を避けられた事でますます怪しいと思う美紀。

 

 

 

 

「いきなり服を捲られそうになったらそりゃ避けるでしょ!美紀さんは僕がいきなり服を捲ろうとしてきても避けないんですか!!」

 

彼が必死な顔で言う。

 

 

 

 

美紀「避けるに決まってるでしょう!?そういう事は胡桃先輩にだけやって下さい!!」

 

感情が高まったせいで、美紀は余計な事を口走る。

 

 

 

 

 

「胡桃ちゃん?出来ないですよ!怖いもん!!」

 

一瞬『やってしまった!』…と美紀は思ったが…もう少しそれを掘り下げてみる事にした。

 

 

 

 

 

美紀「胡桃先輩ですよ?シャツ…捲ってみたいなぁ~とか思いませんか?」

 

 

 

 

「いやいや…思わなくはないけど、出来ませんって!」

 

 

 

 

美紀「思わなくはないんですね!?」

 

「そりゃ男ですからね!!」

 

美紀「胡桃先輩が相手だからでしょう!!?」

 

「あなたは何を言ってるんですか!?」

 

こんなに必死な…かつ、意味不明な言動をする美紀は見たことがない。さすがの彼も普段とはまるで様子の違う美紀にはかなり戸惑ってしまい、額に嫌な汗をかいてしまう…。

 

 

 

美紀「気まずい気持ちを圧し殺してまで聞いたのに…、まだシラを切りますか…!」

 

「因みに言わせてもらうと…シャツも年がら年中、捲りたいな~とか思ってる訳じゃありませんからね!それじゃ完全に危ない人だ」

 

彼は先程の自分の発言のフォローに走る。美紀は気付いていなかった…自分が探っているのがいつの間にか、彼がシャツの下に何を隠しているのか?ではなく…彼と胡桃はそういう関係なのか?に変わっている事に…。

 

 

 

 

美紀「……そういえば__さんはシャツを捲る派ではなく…破る派でしたね。」

 

「あの~…本当にどうしたんですか?訳の分からない事ばかり言って。」

 

訳の分からない言動ばかり…。彼は一周回って美紀の事が心配になっていた。

 

 

 

 

 

バタン!

 

 

胡桃「おいおい…中まで声が聞こえてきたぜ?何話してんだよ?」

 

二人の声を聞きつけ、胡桃が車から降りてくる。彼はすかさず彼女の元へ歩み寄り、再び美紀の方を見つめた。

 

 

 

 

「胡桃ちゃん、美紀さんが意味不明な…」

 

美紀「昨晩…二人の事、見ちゃったんです……二人はその…したんですよね?」

 

 

 

 

胡桃「…したって……何を?」

 

まだ何を見られたのかは分からないが、もしかしたら…。嫌な予感を感じた胡桃は真剣そうな表情を浮かべ、美紀の目を真っ直ぐに見つめる。

 

 

 

 

美紀「言葉にするのもはばかられる行為です……私に言わせる気ですか?」

 

 

(もしかして……あいつらを殺したのを見られてたのか?あの時、美紀さんはいなかったと思っていたのに……胡桃ちゃんを追ってあそこに行ったのは、僕だけじゃなかった、美紀さんも来ていたのか)

 

彼は美紀の言う『行為』を、岡達を殺した事だと勘違いした。

 

 

 

 

 

胡桃(あたし達が車に戻った時は普通に寝ていたはず…だから恐らくこいつの後に美紀も遅れてあたしを助けに来た…だけどちょうどこいつがあいつらを殺すのを見て…それがショックで引き返した……あまり考えたくはないけど、多分そういう事か…)

 

同じく、胡桃も勘違い。

 

 

 

 

 

 

「…見てたんですね」

 

彼が真剣な表情で言う。

 

 

 

 

美紀「…はい」

 

胡桃「美紀、こいつは悪くない…。悪いのは、あたしなんだ…」

 

美紀「別に…悪い事とは思っていません。ただりーさんが苦しんでいるのに、隠れてこそこそとそんな事をしているなんて…少し二人を見損ないました。」

 

そう言って美紀は二人に背を向ける。

 

 

 

 

 

 

胡桃「ごめん…でもあたしだって、りーさんの事が心配で仕方なかったからやったんだ。」

 

美紀「りーさんの事を心配してなんでそれになるんですか!!」

 

二人の方に振り返って、美紀は頬を赤くしながら怒鳴る。それもそうだ。美紀の方からすれば、この二人は夜中に外に出てイチャイチャとしていた…と宣言したようなものなのだから。

 

 

 

胡桃「??…ご、ごめん」

 

会話に違和感を感じながらも、美紀の迫力が凄いのでとりあえず胡桃は謝る。

 

 

 

 

美紀「……いつからですか?」

 

僅かな沈黙の後、美紀が二人に尋ねる。

 

 

__・胡桃「え??」

 

二人共その質問の意味が理解できずに、同時に聞き返した。

 

 

 

 

美紀「っ!…ですから、二人はいつからそういう事をしているのかと聞いているんです!!」

 

 

 

胡桃「そういう事って?」ボソッ

 

小さい声で彼に耳打ちする胡桃。

 

 

「多分、隠れて二人だけで行動した事かな…」ボソッ

 

彼が胡桃にそう言葉を返すと、胡桃はなるほど…というような表情をしてから美紀に言った。

 

 

 

 

 

胡桃「いつからもなにも…夜中にお前が見たあの一回だけだよ」

 

 

美紀「そうですか…」

 

 

美紀「まぁ正確に言えば私も二人のを全て見た訳ではないんですが…。」ボソッ

 

美紀がうつむきながら呟く。

 

 

 

 

 

 

胡桃「さっきも言ったけど…全部あたしが悪いんだ、こいつはあたしのわがままに巻き込まれただけなんだよ。」

 

胡桃はそう言って彼を(かば)う。

 

 

 

 

美紀(つまり…胡桃先輩の方から誘ったんだ。先輩…中々積極的だな)

 

そんな事を頭で考え、美紀はまた頬を赤く染める。

 

 

 

 

 

「すいません…やっぱりショックでしたか?」

 

自分が人殺しをしたところを美紀に見られたと思った彼は尋ねた。

 

 

 

美紀「いや…ある意味ショックでしたけど、もう受け入れましたよ」

 

美紀は深くため息をついてから言った。

 

 

 

 

 

「そうですか…」

 

その言葉を聞いた彼は安心する。

 

 

 

胡桃「ほら…言ったろ、みんな受け入れてくれるって」

 

そんな彼を見て、笑顔になる胡桃。

 

 

 

 

 

 

美紀「……まぁ今はりーさんの体調が悪いですし、それに加えてこんな世界…私達には様々な問題がこれからも降りかかってくるはずです。」

 

場の空気を変えるように美紀は言った。

 

 

 

 

 

胡桃「まぁ…そうだろうな。」

 

 

 

「おっしゃる通りで…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美紀「ですから二人とも仲良くするのは良いですが…その……気を付けて下さいね?」

 

美紀はもじもじと落ち着かない様子で二人に言う。

 

 

 

 

 

 

 

「え?」 

 

胡桃「何を?」

 

 

 

美紀「ですからっ!……その…先輩達二人にそういう事をするな、とまでは言いませんが……んだけは…」ボソッ

 

 

 

 

 

胡桃「なんだよ、ハッキリ言ってくれていいぞ?」

 

小声でボソボソと喋る美紀に胡桃がそう言う。胡桃のその言葉を聞いた美紀は一度深呼吸をすると、より一層顔を真っ赤にして一つの言葉を発する…美紀のその言葉に彼と胡桃は耳を疑った。

 

 

 

美紀「だから!……妊娠だけはしないように注意して下さい!!!」

 

 

 

 

 

「ん?」 

 

胡桃「へ?」

 

またしても同時に聞き返す二人。

 

 

 

美紀「当たり前でしょう!今子供を作られても面倒をみきれませんし、大体私達だけでは出産や子育てに対する知識が…」

 

 

 

胡桃「お前……マジで何言ってんの??」

 

そう言って赤い顔でペラペラと喋る美紀を止める胡桃。

 

 

 

 

 

 

 

 

美紀「何って…妊娠しないようにと注意を…」

 

 

胡桃「ごめん……妊娠って、誰が誰の子供を??」

 

胡桃は嫌な予感がしていたが、一応確認をする為に美紀に問いかけた。

 

 

 

 

 

 

美紀「だから…胡桃先輩が__さんとの子供を妊娠しないようにと!!」

 

美紀は半分怒りながら言った。

 

 

 

 

 

 

胡桃「はぁ!!!!??」

 

とてつもない大声を出す胡桃。

 

 

 

 

バタン!

 

 

由紀「胡桃ちゃん声大きいよ!!これじゃあ、りーさんが眠れないよ!!」

 

車のドアを勢いよく開いて現れた由紀が胡桃に文句を言う。

 

 

 

 

胡桃「………」

 

だが胡桃は顔を真っ赤にしたまま、ピクリとも動かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

由紀「んん~?」

 

由紀はそんな胡桃を不思議そうに見つめる。

 

 

 

 

「ごめんね由紀ちゃん、こっちは大丈夫だからりーさんのとこに戻ってて?」

 

彼がそう言って由紀を車内に戻そうとする。

 

 

 

 

由紀「??う~ん…わかった…、胡桃ちゃん!もう大声出さないでよ!!」

 

由紀は胡桃にそれだけを言って車内に戻っていった。

 

 

 

 

 

「ふぅ…」

 

 

 

 

胡桃「いやいや!!なんでお前はそんなに落ち着いてんだよ!?」

 

胡桃が彼に言った。

 

 

 

 

 

「途中から少しおかしいとは思ってたんだよな……美紀さんなんか勘違いしてません?」

 

 

美紀「え?」

 

 

 

 

 

胡桃「何がどうなってあたしがこいつの子供を妊娠すんだよ!!?」

 

彼を指差しながら言う胡桃。

 

 

 

 

 

美紀「だって…私見ましたよ?夜中外で仲良さそうにしてる二人を!…しかも胡桃先輩は__さんの上着を着てましたし!!」

 

 

 

胡桃「あれは…!!」

 

誤解を解こうとする胡桃を遮るように美紀は喋り続ける。

 

 

 

 

 

美紀「しかもその上着の下はブラでした!!それってシャツは__さんに破かれたからですよね!?それに車の中に戻った時に胡桃先輩も__さんの裸を見たとかなんとか言ってるの聞きましたし!」

 

 

 

 

「あ~~…」

 

美紀の発言を聞き、彼の中で全てが繋がった。

 

 

 

 

胡桃「ううっ!!」

 

胡桃は反論するのも忘れ、顔を真っ赤にしながら黙りこんでいる。

 

 

 

 

 

 

 

「仕方ない…美紀さん、説明します。」

 

落ち着いて喋れなさそうな胡桃に代わり、彼があの夜に起こった全てを説明した。

 

 

 

 

胡桃が一人で奴等の所に忍び込み薬を取ってこようとしたが失敗した事…

 

間一髪の所で彼が胡桃も元へ駆け付け、奴等を殺した事…

 

美紀が見たのは、その際に彼が負った傷を胡桃が手当てしていた光景だったという事…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

美紀「~~~っ!!」

 

事情を説明された美紀の顔がまたしても赤くなっていく…その赤さは過去最高レベルだった。

 

 

 

 

美紀「ちょっと待って下さい!じゃあさっきシャツを捲って見てたのって…」

 

思い付いたように、美紀は彼に尋ねる。

 

 

 

 

 

「はい、夜中に負った傷の調子を確認してただけです。」

 

そう言って彼は自分のシャツを捲り腹部に貼られたガーゼを見せる、夜中に胡桃が手当てをした時の物だろう。

 

 

 

 

美紀「てっきり噛まれたのかと…」

 

それを見ながら美紀は呟く。

 

 

 

 

 

「すいません…この傷見られたら夜中の事がバレてしまうので、こそこそと外で確認していました。」

 

彼が捲った服を正しながら言う。

 

 

 

 

美紀「私……一人で馬鹿みたいな勘違いを…!恥ずかしい……!!」

 

美紀は顔を手で覆ってその場に座り込む。

 

 

 

 

 

 

胡桃「まったく…どんな勘違いだよ。」

 

少し落ち着いた胡桃が美紀に言った。

 

 

 

 

 

「理解してくれました?」

 

 

 

 

 

 

 

美紀「はい……お二人共大変だったんですね…と言いたいところですが、私はさっきまでの自分が恥ずかし過ぎてそれどころではありません………」

 

そっと立ち上がる美紀。

 

 

 

 

 

美紀「あ……りーさんと由紀先輩には黙っておきますね。」

 

 

 

 

 

 

胡桃「うん、ありがとな。」

 

 

 

 

 

美紀「…では、先に戻ってます」

 

 

勘違いした事がよほど恥ずかしかったのか、美紀は足早に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胡桃「………」

 

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

その背中を見送った後、残った二人は黙りこむ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胡桃「…ま!とりあえずは正直に話しても怒られなくてよかったよ。」

 

胸を撫で下ろす胡桃。

 

 

 

 

「そうだね、僕も安心した。」

 

 

 

 

 

 

胡桃「にしても…お前とあたしがそんな関係じゃない事くらい、すぐに気付きそうだけどな?」

 

彼にそう言う胡桃。

 

 

 

 

 

「そうかな?僕達、結構仲良くしてるから…見ようによってはカップルに見えるかもよ」

 

 

 

 

 

 

胡桃「え!?マジか…」

 

彼の発言に胡桃は動揺する。

 

 

 

 

 

 

「まぁ、胡桃ちゃんは僕が彼氏じゃ嫌だよね」

 

笑いながら彼が胡桃に尋ねる。

 

 

 

 

 

 

胡桃「……あぁ、嫌だ。」

 

その問いにキッパリと答える胡桃。

 

 

 

 

 

「そこまでハッキリと言うとは…嘘でも良いから、そんな事ないって言って欲しかったよ。」

 

彼が僅かに落ち込む。

 

 

 

 

胡桃「わかったわかった…そんな事ない、そんな事ない…ほらこれで満足だろ?あたし達も中に戻るぞ。」

 

そう言って彼の背中をポンッと叩き、胡桃は車内に戻る。

 

 

 

 

 

「感情が全然込もってなかったけど…まぁ良いか。」

 

彼も胡桃に続く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胡桃(本当は嫌じゃないけど……そんな事…恥ずかしくて言えないし、言ったら言ったで…コイツ調子に乗るからな…)

 

チラッと彼の顔を覗きながら、胡桃は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回の話は色々な部分に手こずりましたが、みーくんの勘違い問題はとりあえず終結。


楽しんで頂けたなら幸いです(^
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