彼と美紀が散歩に出た車内では、由紀が読書をし…胡桃と悠里はそれを見守っている
一方その頃…散歩に出た彼と美紀は広場を抜け、その付近の車道の真ん中を二人で歩いていた。
「よく考えると凄いですよね…車道の真ん中をこんなに堂々と歩いていても、車にひかれる心配がないんですから。」
美紀「そうですね、けどもしかしたら他の生存者が運転してる車が急にそこの曲がり角から猛スピードでこちらに突っ込んでくるかも知れませんよ?一応歩道歩きません?」
目の前の曲がり角を指差して美紀は彼に言った。
もちろん、その曲がり角から車が現れる気配はなかったが…
「心配性ですね。分かりました…歩道を歩きましょう。」
美紀「はい。それが良いと思います。」
彼は念のために、美紀を連れて歩道に戻る。
「歩道って物陰からあいつらが飛び出してきそうで少し落ちつかないけど、ちゃんと警戒しとけば大丈夫か…」
歩道を歩く中、周囲の置き看板や自動販売機…
様々な物の陰に奴等が潜んでいないかと彼は警戒する。
美紀「あ…、だから車道の真ん中歩いてたんですか?」
彼に尋ねる美紀。
「ん?ああ…まぁ、そうですね。」
美紀「確かに、今は車よりもあれが物陰から飛び出してくる事の方が多いですもんね。ちゃんと考えた上での行動だったんだ…」
美紀「…じゃあ」
美紀は少し考えてから彼の手首を掴み、そして車道の真ん中まで引っ張っていった。
彼は急に引っ張られた事に驚き、美紀に尋ねる。
「おおっ…どうしましたか?」
美紀「せっかくのんびりと散歩しているのに、警戒しっぱなしじゃ疲れてしまいます。」
美紀「__さんが少しでも楽にしていられるなら、こっちを歩きましょう」
車道の真ん中まで彼を引っ張り終えると、美紀は手を離して軽く微笑む。
「気をつかってくれたんですか?嬉しいです。ありがとうございます」
彼は嬉しそうにそう言って、またゆっくりと車道の上を歩き出す
美紀もその横に並び、彼と同じペースで歩を進めた。
美紀「気をつかってくれているのは…__さんじゃないですか?」
歩きながら彼に問いかける美紀。
彼はその問いの意味が理解できず、すぐに問い返した。
「えっと…どういう事ですかね?」
美紀「さっき歩道を少しだけ歩いた時、かなり警戒してました。…あれって私がいたからですよね?」
「いや…もし自分一人だけだったとしても、ちゃんと同じくらい警戒しますよ。」
美紀「……本当ですか?」
美紀は歩く彼の先に回り込み、その目をじっと見つめながら尋ねる。
「え~っと……そうですね。自分一人の時より、少しだけ強く警戒していたかも知れません。」
彼は少し間を開けてからそう答えた。
美紀「………」
「………?」
彼の言葉を聞いた直線、美紀は下を向いたまま動かなくなってしまう。
よく見ると下を向いたまま何かをブツブツと呟いていたが…
あまりに小さい声なので、何を言っているのかまでは分からなかった。
彼がその呟きを聞き取ろうと耳をすましていると…
彼女は不意に顔を上げて彼に尋ねる。
美紀「…それは…どうしてですか?」
「え?」
美紀「だから…何故一人でいるときより警戒するのかと聞いているんです!」
彼の目を真っ直ぐに見つめる美紀…
気のせいか、少しだけその顔が赤くなっているような気がした。
「どうしてといわれましても……」
(なんか…様子おかしくないかな?)
彼は混乱し始めていた。
美紀「一人の時よりも、二人の時の方が安心できるハズです。
なのに…何故あなたは私といるとより強く警戒するんですか?」
そう言って美紀は一歩彼に近付く
それにより、元々近い距離にいた二人の間隔が更に縮まる。
「えっと…そうですね…それは……」
美紀「私は……頼りないですか?…足手まといですか?」
更に一歩…美紀は彼に近付く。
「そんな事はないです…ただ…」
20~30cm程の距離まで縮まった彼と美紀の顔の距離…
彼はそれに戸惑ってしまい、軽いパニックに陥っていた。
(美紀さんが変だ!美紀さんがなんか変だ!!助けてみんな!!)
心の中で…彼は由紀達に助けを求める。
もちろん、誰も助けになど来ないが…
美紀「ただ…なんです?ハッキリと言って下さい?」
パニックに陥っている彼に美紀は追い打ちをかける。
彼は窮地の中、必死に言葉を捻り出す。
「ただ…その……心配で」
美紀「心配?」
「はい…美紀さんはちゃんとした人だから、僕が必要以上に警戒しなくても大丈夫だとは思っているんですが…もし万が一なにかあったらと思うと、耐えられないので…」
目前の美紀の顔を見つめる事が出来ず、彼はキョロキョロとしながら答える。
美紀「…耐えられない、というのは……その…」
美紀「…どういう事ですか?」
(なっ…!?)
美紀は再び彼を質問で追い詰める。
そしてやはり、彼女の顔はだんだん赤くなっていっているように見えた。
「え、えっとですね……耐えられないというのは、その~……」
「何かが…美紀さんの身に起こったら、その…悲しいって、そういう事ですかね…。」
一つ一つの言葉を、彼は必死に声に出す。
しかし…美紀の猛攻はまだまだ止まらなかった…
美紀「わ、私に何かあったら……なんで__さんは悲しくなるんですか?」
「なっ…!」
(嘘でしょ!?本当に…今日の美紀さんは何なの!!?)
彼は追い詰められる、思わず一歩後ろに下がり距離を開けるが…
すぐに美紀がそれに合わせて一歩詰め寄る。
離れる事無く、相変わらず彼の至近距離ある美紀の顔…彼は逃げ場をなくした。
(どうなってる!?…どうなってる!?助けてみんな!!)
彼は再び心の中で助けを求める。
もちろん、誰も助けに来ない。
美紀「こ、答えて下さい…なんで悲しくなるんですか?」
赤い顔で尋ねる美紀…
彼はいよいよ耐えきれなくなり、美紀の肩を軽く押して少しだけ距離を開いた。
「なっ、何か変ですよ?美紀さん…どうかしましたか?」
距離が少し開いた事で余裕が出来た彼は、にっこりとわざとらしい笑みを見せて美紀に尋ねた。
美紀「私は変じゃないです…変じゃないですから…ちゃんと答えて下さい」
彼は美紀を押して距離を開いた…
にもかかわらず、彼女は再び彼に近付きその距離を縮める。
(なっ!?なっ!??どうなっている!!いったいどうなっている!?)
彼はまたしてもパニックに陥る。
だが…『質問に答えきればこのピンチを抜け出せるのではないか?』
そんな考えが、不意に彼の脳内によぎった。
(よ、よし!答えよう!…一つ一つ冷静に…的確に!)
「美紀さんに何かあったら悲しくなるのは…その…。…た」
美紀「た?」
「た、大切に思っているから…。美紀さんの事を…僕はとても大切に思っているから…だから…あなたに何かあって、そのまま死んでしまったりなんかしたら…とても悲しいな…って。」
彼はとても照れくさそうに目を逸らし、顔を赤くしながら美紀にそう言った。
美紀「!!?」
美紀「あっ…えっと…その…」
それを聞いた美紀は顔を真っ赤に染め…
大慌おおあわてで三歩下がって彼との距離を開ける。
「…………」
(しまった…なんか告白みたいになった…。)
彼はそんな事を考えて心の中で静かに慌てる。
美紀「…嬉しいです。」
「…え?」
美紀「そんなふうに思ってもらえて、とても嬉しいです。ありがとうございます。」
そう言って美紀は彼に笑顔を見せる。
その顔は、少しだけ赤みがひいていた。
「あの…美紀さん?一応言っておきますが…大切に思っているってのはその…」
美紀「わかってます。友達として…ですよね?」
「え?あ、はい。」
美紀「それをふまえた上で…私は嬉しいんです。」
再び美紀がにっこりと笑う…
彼は彼女のそんな笑顔を見るだけで、さっきまでのパニックが嘘のように安心出来た。
「…そうですか、喜んでもらえて嬉しいです。」
「…じゃ、散歩の続きしましょ!」
そう言って彼は美紀とともに歩き出す。
思えば美紀に話しかけられてからはずっと立ち止まっていたので、まだろくに散歩出来ていなかった。
美紀「…__さん」
彼の横に並んで歩く美紀が、正面を向いて歩いたままで彼の名を呼ぶ。
「なんですか?」
彼はそんな彼女の横顔を歩きながら見つめた。
美紀「えっと…一つだけ、お願いしても良いですか?」
相変わらず正面を向いたままで、彼の顔を見ずに美紀は言う。
「ん?別にかまいませんよ。…何ですか?」
美紀「学校は違いますが…年齢的には、私は__さんの後輩なんです。」
「あ~…まぁそうですね。」
美紀「ええ、…なのに__さんは私の事を…その……さん付けで呼んでます。」
「大人っぽくて…しっかりしてるからですかね?全然後輩っぽくないんです。むしろ先輩って感じで…」
彼が笑いながらそう言う中…
美紀が小さく呟いた。
美紀「……て下さい」
「…はい?」
美紀「だからその……後輩扱い…して下さい」
歩きながら、真っ赤に染まるその顔を隠すように顔を伏せて…
美紀は彼に向け言った。
「え?後輩扱いってのは…」
美紀「……呼び方」
そう一言だけ美紀は呟く。
「……ちゃん付けで…って事ですか?今更それは少し恥ずかしい気が…」
彼が照れながら言うと、美紀はすかさずそれを否定した。
美紀「ちっ、違います!!ちゃん付けじゃなくて……!」
美紀は彼の目を見つめると、歩みを止め…息を深く吸い込む
(まさか…もしかして……!)
美紀「美紀って……そう呼んで下さい。」
目を僅かに潤ませて、美紀は彼にそう言った。
(……なんてことだ)
美紀「ダメ…ですか?」
複雑な表情をしたままたたずむ彼に美紀は尋ねる。
「いえ…その……」
美紀「………」
彼は恥ずかしいのでさすがに断ろうかと思ったが…
真っ赤な顔でこちらを見つめる美紀の顔を見て、覚悟を決めた。
「…わかりました」
美紀「………」
彼が言うと、美紀は少しだけ頭を下げて礼をする。
「じゃあ…その…」
「……み、…み…み、み…」
覚悟を決めたハズなのに、これが全然言い出せない。
(なんだこれは!?全然口が動かない!!)
「みみ…み、……み」
(相手は年下!後輩だぞ!?その子をただ呼び捨てで呼ぶだけ!それだけ!簡単だろ!?)
美紀「………」
(なんでそんな簡単な事が出来ない!?)
今日一番のパニックが彼を襲う。
そしてその直後に美紀が放った言葉が、彼を更に追い詰める。
美紀「みみみ…って、何ですかそれ…セミですか!?ハッキリ言って下さい!」
「くっ…!!」
仮にも後輩の美紀に煽られる…
その事実が、彼の踏み出せなかった最後の一歩の後押しをした。
「…美紀」
彼は静かに、しかししっかりと…
彼女の事を『美紀』と…そう呼び捨てで呼んだ。
美紀「~~っ///」
それを聞いた美紀は顔を更に真っ赤に染め、何やらモジモジとして落ち着かない様子になる。
「あの…恥ずかしいですね…。やっぱ…これからも、さん付けで呼ぶ方向でも良いですかね?」
彼も美紀同様、真っ赤な顔で言った。
美紀「あ、ハイ!そうですね!私もそっちの方が落ち着きます!」
不自然な笑みを浮かべながら、美紀は答える。
その後、二人は十分程散歩したが…
(途中ゾンビ一体と遭遇するも、彼が倒した)
彼が美紀を呼び捨てで呼んでからは変な空気が二人を包み…
ほとんど会話のないまま、気づけば車に戻っていた。
貴重なみーくんとのイベントですが、それに慣れていない彼は慌てる事しかできませんでした。
今回の出来事を始まりに…この日、彼にはどんどん試練が襲いかかってきます。
(落ちつけば試練ではなくラッキーイベントとして楽しめるのですが…この日の彼は心の余裕がないようです)
彼の人生史上、最も心の疲れる日が始まります!(>_<)
そして話は変わりますが…
知り合いから『ご注文はうさぎですか?』と『School days』のdvdを借りたので、のんびりとそれらを楽しむ私なのです(´ω`)
どちらも初見でどんな内容か知りません…とても楽しみです!
しかし、その二つのdvdを時間を見つけて観賞するため…
肝心の更新の方は少しだけ遅れるかもしれませんm(__)m