軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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由紀ちゃん回です!


最初に言っておきます!

少し暴走しました!!


五十一話『妹と兄』

 

 

 

 

 

 

トントン…

 

胡桃に握られていた左手の余韻に浸り…

半ば放心状態で席に座る彼の肩を由紀が叩く。

 

 

 

由紀「__くん。ちょっと外で遊ぼ~!」

 

 

 

「今から…ですか?」

 

 

 

由紀「うん!はやくしないと、外暗くなっちゃうもん!」

 

 

 

「ん~、分かりました。…で、他には誰がいます?」

 

 

 

由紀「私と__くん…二人っきりだよ。たまには良いでしょ?」

 

彼にそう言って由紀は微笑む。

こういった場所で車を停めた時、由紀はかなりの確率で外で遊びたがったが…

今回のように彼と二人きりで、というのは珍しかった。

 

 

 

 

(いつもだと胡桃ちゃん辺りを誘ってるのにな…まぁ、ちょうど暇だったからいいんですけど。)

 

そんな事を思いながら、彼は一応悠里に遊びに行くと伝えておき…由紀と共に外に出る。

 

 

 

 

 

バタン

 

 

 

 

 

 

「…で、何して遊びますか?」

 

 

 

由紀「ん~、とりあえずついてきて。」

 

車を停めている広場…

由紀はキョロキョロと辺りを見回し、15m程先にあるベンチを見つけるとそこへ向け歩き出した。

 

 

そのベンチに由紀はドサッと腰を下ろすと、その隣のスペースを叩いて彼を呼ぶ。

 

 

 

 

 

由紀「ほら!こっち座って!」

 

 

「あれ?遊ばないんですか?」

 

座りながらペシペシとベンチを叩く由紀を見て、彼は尋ねる。

 

 

 

 

 

由紀「座りながら出来る遊びだってあるんだよ。」

 

 

 

「へぇ…それをやるって事ですか?」

 

 

 

由紀「ううん。やんない。」

 

 

 

「………」

 

きっぱりと断言する由紀…

彼は思わず、彼女を真顔で見つめていた。

 

 

 

 

 

 

由紀「ううっ!?怖い顔しないでよ~!」

 

 

 

「…ただ真顔でいるだけです。怖い顔などしていません。」

 

 

 

由紀「ごめんごめん!あのね、車の中だとみんながいるから遊びにいこって誘ったけど…ほんとは違う用事があって__くんを誘ったんだ。」

 

 

 

「違う用事…、何ですかそれ?」

 

彼が隣に座ってから尋ねると、由紀は顔を赤らめて恥ずかしそうに口を開く

 

 

 

 

由紀「あのね…私、ずっとね……」

 

 

 

「………」

 

俯いて地面を見つめながら、由紀はゆっくりと一言ずつ言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

 

由紀「夢っていうか…憧れっていうか…」

 

 

 

 

由紀「そういうのがあってね…つまり…その…」

 

モジモジとして呟く由紀…次の瞬間

彼女は覚悟を決め、彼の顔をまっすぐに見つめた。

 

 

 

 

 

由紀「だから…!その……ちゃんが…て…」

 

 

 

「??…なんです?」

 

後半が聞き取れず、彼は聞き返す…

すると由紀は、強く彼の目を見つめて尋ねた。

 

 

 

由紀「…子供っぽいって笑わない?」

 

 

 

「え?笑いませんよ。…多分」

 

 

 

由紀「多分じゃダメだよ~!絶対笑わないって約束して!!」

 

 

 

「じゃあ…絶対に笑いません。」

 

 

 

 

 

由紀「ほんと?…じゃあ言うね、私…」

 

 

 

 

 

 

 

由紀「ずっと…お兄ちゃんが欲しかったんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

赤い顔で恥ずかしそうに…由紀は彼を見つめて言った。

 

「…そうだったんですか。」

 

 

 

 

由紀「…うん。それでね、もしよかったら…」

 

 

 

由紀「…少しの間だけ__くんの事をお兄ちゃんだと思っても…良い…かな?」

 

 

 

 

「僕ですか?」

 

 

 

由紀「うん。…良いでしょ?」

 

頼み込む由紀。

 

 

これを承諾したらまたしても新たな扉を開いてしまう…

そう思って彼は返事を躊躇っていた。

 

 

……だが

 

 

 

 

 

 

由紀「ダメ…かな?」

 

 

 

 

 

 

由紀「…お兄ちゃん?」

 

 

 

「…ッ!!?」

 

隣に座るその少女の上目使いで発したその一言が…

 

その破壊力が…

 

彼の新たな扉を…音速で開かせた。

 

 

 

 

 

 

「分かりました。いや…」

 

 

 

 

 

 

「分かった。妹よ…」

 

謎の兄キャラで由紀と接する彼…

由紀はそんな彼を見ると、笑顔を浮かべて喜んだ。

 

 

 

 

 

由紀「ほんとに!?わ~い!頼んでみてよかった~!」

 

 

 

「この程度ならばお安いご用。代わりにしっかり僕の事を『お兄ちゃん』って呼んでね。」

 

 

 

 

 

 

 

由紀「断られるかと思ってヒヤヒヤしてたんだ~」

 

 

 

「断らない断らない。だから代わりに『お兄ちゃん』って呼んでね?」

 

 

 

 

 

 

 

由紀「こんな事…胡桃ちゃん達に聞かれたら、また子供みたいって笑われちゃう…。だから二人だけの秘密だよ?」

 

 

 

「僕もこんな事…胡桃ちゃん達に知られたら、また変態みたいって(さげす)まれちゃう…。だからもちろん秘密にするよ、代わりに『お兄ちゃん』って…」

 

 

 

 

 

由紀「えへへ、そんなに催促しなくても大丈夫だよ?おに~ちゃん!」

 

隙あらば『お兄ちゃん』を催促する彼に、由紀は満面の笑みで答えた。

 

 

 

 

 

(あれ…?そう言えば前に……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼は思い出す…世界がこうなる前にテレビで見ていたその光景を。

 

 

 

 

 

『今回は…街で人気の妹カフェに来ています!さっそく、お客様の声を聞いてみますね~』

 

 

 

『どうですか?このカフェは?』

 

その男性リポーターは、店内に入ると客とみられる一人の中年男性にインタビューをした。

 

 

 

 

『最高ですね!仕事でたまった疲れを、可愛い妹達に癒してもらってます!』

 

 

 

『そうですか~!因みに、ここにはよく来られるんですか?』

 

 

 

『ええ!週に三回は来てますね!』

 

笑顔でそう答えたその男をモニター越しに見て、彼は呟く。

 

 

 

 

「週に三回…。こんな下らない店に通いつめるなんて、どうかしてるな…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……現在。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

由紀「おにぃちゃ~ん♪」

 

 

 

 

 

(八回だ……)

 

 

 

 

(これが店なら、僕は週に八回は通う…)

 

以前見下していたあの男を遥かに越える勢いで…

 

彼は『妹』という物に魅了されていた。

 

 

 

 

由紀「えへへ~♪」

 

 

 

 

「それでその…お兄ちゃんってのは何をしたら良いのかな?」

 

いざ兄になったらなったで何をしたら良いのか分からず、彼は由紀に尋ねる。

 

 

 

 

由紀「えっと…じゃあ、頭を撫でて?」

 

そう言って由紀は猫耳のような形をしたその帽子をした頭を彼に向け、そのまま目を閉じた。

 

 

 

 

「……こ、こうですか?」ナデナデ

 

彼は恐る恐るその頭を撫でる。

 

 

 

由紀「ですか?とかはダメ!お兄ちゃんは妹に敬語を使わないの!!」

 

頬を膨らませて怒る由紀…

世の中には妹に敬語を使う兄もいるかも知れないが、それは彼女の好みではないらしい。

 

 

 

 

「す、すいま…じゃない!…ごめん……」ナデナデ

 

 

 

由紀「んふふ~♪」

 

彼に頭を撫でられ、満足そうに由紀は笑う。

 

 

 

 

 

「由紀ちゃん…いつまで撫でれば良い?」ナデナデ

 

そう彼が尋ねると由紀は再び頬を膨らませて怒り、言った。

 

 

 

 

由紀「それもダメ!ちゃんと由紀って呼んでね!」

 

 

 

 

 

 

「!!……由紀」ナデナデ

 

 

 

由紀「ん?ごみん、聞こえなかった…。もういっかい呼んで?」

 

 

 

 

 

「…由紀」ナデナデ

 

 

 

由紀「…えへへ♪頭…好きなだけ撫でてて良いよ~」

 

 

 

 

「好きなだけっ!?」ナデナデッ!

 

(そんな事言ったら…このまま5時間は撫でてているぞ!?)

 

 

 

 

由紀「ん~♪」

 

 

 

(ダメだ…あまり長引かせると戻れなくなる。)

 

 

 

 

「と、とりあえず一旦中断ね?」

 

彼は由紀の頭からそっと手を離し、心を落ち着ける。

 

 

 

 

(…あれ以上撫でていたら、僕は何らかの化け物になってしまう。人間でいる内に止めておこう…)

 

 

彼は気づいていないが、既にこの時点で由紀の頭を5分以上撫でていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

由紀「いや~、よかった~。__くんに頭をこんなに撫でられたのって私が初めてだよね?」

 

笑顔で尋ねる由紀…

 

だが彼には一人だけ心当たりがあり、焦りを顔に浮かべる。

 

 

 

 

(あの人の…胡桃ちゃんの頭を撫でた事は何度かある。…でもどれも一瞬しか撫でてないし、ノーカンでも構わないかな…)

 

 

 

 

 

由紀「むっ!?怪しい…正直に答えてねお兄ちゃん!!」

 

 

 

 

「あの…胡桃ちゃんの頭を少しだけ…。…ほんの少しね?」

 

 

 

 

由紀「~!!お兄ちゃんのバカッ!浮気者!!」

 

由紀は怒りながら彼の肩を小突く。

 

彼はそれを受けて少しよろめくと必死に弁明をした。

 

 

 

 

「少しだけ!本当に少し撫でただけだから!!」

 

 

 

 

由紀「そんな事言って…他の女の子も撫でてるんでしょ!?」

 

 

 

 

 

「撫でてない!そしてその言い方止めて!?なんかいかがわしく聞こえるから!」

 

 

 

 

 

由紀「もういいよ!なら私はこれから…」

 

ベンチから立ち上がり、そばにあった少し大きめの石を取ると…

由紀は重そうに手をプルプルと震わせ、彼に言った。

 

 

 

 

由紀「…純粋なお兄ちゃんを惑わすその胡桃って女を…こっ、この岩で!」プルプル

 

 

 

 

「止めなさいって!」

 

彼は由紀から石を取り上げ、離れた場所に投げ捨てた。

 

 

 

 

 

由紀「あ~ん!私の武器が~~」

 

 

 

由紀「………」

 

 

 

由紀「…まぁ冗談だったんだけどね?」

 

彼を見て、由紀はえへへと笑う。

 

 

 

(あれって、こんななのかな?りーさんに聞いたら『デレデレした後で怖い事を言えば良いのよ』って言ってたけど…)

 

(結局私にはよく分かんなかったなぁ…。やっぱ私はこの『妹作戦』だけでやっていこう)

 

彼女も密かにヤンデレ系女子に目をつけていたが、結局やり方が今一つ分からずに終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…本気で胡桃ちゃんを殺しに行ったらドン引きだからね?」

 

 

 

由紀「そんな事しないよ~。だいたい、私じゃ胡桃ちゃんに返り討ちにされちゃうもん」

 

 

 

「まぁ…そうだね。」

 

そんな会話をしながら、彼と由紀は再びベンチに座る…

 

すると由紀は腕を組みながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

由紀「でも…胡桃ちゃんに先を越されてたのは少しくやしいなぁ」

 

 

 

「………」

 

 

 

 

 

 

由紀「よし!じゃあ…胡桃ちゃんともまだしてない事をしよう!」

 

 

 

「はい?」

 

 

 

由紀「ねぇ、何があるかな?」

 

ぐっと彼との距離をつめて、由紀は尋ねた。

 

 

 

 

 

「何って…、少なくとも妹になったのは由紀ちゃんが初めてだけど…」

 

 

 

由紀「それはダメ!もっと他の事で!」

 

 

 

「他の事ね……、ん~」

 

彼は手に顎を乗せ、必死に考える。

 

 

 

 

 

 

由紀「なんかないの?なんでもするよ~!」

 

 

 

「由紀ちゃん…なんでもするとか、あまり言わない方が良いよ。それは魔法の言葉だからね。」

 

 

 

由紀「由紀ちゃんじゃなくて、由紀だよお兄ちゃん!」

 

 

 

 

「あぁ…ごめんね由紀。」

 

 

 

由紀「…で、なんで言わない方が良いの?魔法の言葉ならどんどん使っても良さそうだけど…」

 

 

 

「正確には…言った人にとって魔法の言葉なんじゃなくて、言われた人にとって魔法の言葉なんだよ」

 

 

 

 

由紀「う…ん??……どういう事かな?ちょっとむつかしいね。」

 

 

 

 

「だから…たとえば、たとえばだよ?なんでもするって言った由紀に対して、僕が『じゃあ、いやらしい事させて』って言ったら…由紀はどう思う?」

 

 

 

 

由紀「変態さんだと思う!!」

 

元気よく挙手しながら由紀は答えた。

 

 

 

 

「でしょ?でもね、どれだけ嫌な事を頼まれても由紀は断れないの。何故なら『なんでもする』って言っちゃったから」

 

 

 

 

由紀「あぁ~、そういう事か。すごく分かりやすかった!また一つ賢くなったね!」

 

 

 

 

「…そうだね」

 

 

 

由紀「じゃあ…なんでもとはいかないけど、大抵の事はする。なにしたら良い?」

 

 

 

「別に…何もしなくていいよ」

 

 

 

由紀「それだと私が胡桃ちゃんに負けちゃうから嫌なの!胡桃ちゃんもみーくんもりーさんもした事ないような事をするくらいじゃないと、この勝負に…」

 

 

 

 

「勝負?」

 

思わず口を滑らせた由紀…

彼はすかさずそれを聞き返した。

 

 

 

 

由紀「あっ!?…いや、なんでもないよ??」

 

冷や汗をかきながら手を振り回して由紀はごまかそうとするが、彼は違和感を感じ、疑いの目を向けていた。

 

 

 

 

「なんか…隠してます?」

 

 

 

 

由紀「えへへへ……その……」

 

 

 

 

 

 

 

 

由紀「えっと…ね…」

 

 

 

 

 

 

 

由紀「…ちゅー…した事ある?」

 

 

 

 

 

 

 

「……なに?」

 

由紀のその突然の問い。

 

彼は聞き間違いかと思い…もう一度聞き返した。

 

 

 

 

 

由紀「ちゅーだよ。した事ないなら…私がしてあげる。」

 

ほんの少し頬を赤くして、由紀は答える。

彼はそんな彼女を見て戸惑った。

 

 

 

「えっ!?いや、それは…」

 

 

 

 

由紀「私じゃイヤ?やっぱ、りーさんとかの方が良いのかな?」

 

 

 

 

「そうじゃなくて…ほら、今は妹として由紀ちゃんを見てるからね?」

 

戸惑う彼はここで由紀を『妹』として扱う事でこの場をきり抜けようとするが…その程度のごまかしで由紀を退ける事はできなかった。

 

 

 

 

由紀「それはやめたの!今はもう妹とかじゃなくて…いつもの__くんと、いつもの私だよ。」

 

 

 

 

「うっ!?…そ、そうですか…。」

 

彼は何時にもなく真剣な表情の由紀に焦り、目を逸らす。

すると由紀はすかさず彼の手を握り、顔を近付けて呟く。

 

 

 

 

 

 

由紀「これは私がしたいからするの。もし__くんが私じゃ嫌なら…私を突き飛ばしてね、じゃなきゃ私…やめないから…」

 

 

 

 

「…本気ですか?」

 

彼の問いを無視して、彼女は自分に言い聞かせるようにブツブツと呟いていた。

 

 

 

 

由紀「私だってもう子供じゃないもん……このくらい、平気で…」

 

 

 

 

「………」

 

彼はただその様子に圧倒され、大人しく彼女を見つめる。

 

 

 

 

由紀「ふぅ……。目…つむって?」

 

由紀にそう言われ、彼はそっと目を閉じた。

 

 

 

 

由紀「あ、開けちゃヤダよ?ちゃんと閉じててね?」

 

 

 

「…はい。」

 

 

 

 

由紀「……すぐに済むから。」

 

そう言った直後、由紀は彼の顔に自らの顔を寄せ…

 

10秒程動きを止めてから…そっと彼の耳元で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

由紀「…お兄ちゃんのえっち」ボソッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「のわっ!?」

 

予想外の一言に彼は飛び退き、由紀を見る…

すると彼女はケラケラと笑いながら、彼を指差していた。

 

 

 

 

 

 

由紀「あははっ!ダメだよ__くん。さっきまで妹だった私に変な事期待しちゃ~。」

 

 

 

「え?だって妹とかはやめたって言って……」

 

 

 

由紀「ああ言ったらドキドキするかなって。前にそういう漫画読んだことがあって、__くんにそのセリフを試してみたかったんだ~♪」

 

 

 

 

「そ、そういう漫画?」

 

半分放心状態になっている彼が笑顔の由紀に尋ねる。

 

 

 

 

由紀「うん!妹がお兄ちゃんに恋するやつでね、読んでて凄くドキドキしたからそのドキドキを__くんにも分けてあげようと…」

 

 

 

 

「へぇ~…。じゃあ急に妹キャラになったりしたのは…」

 

 

 

 

 

由紀「役づくりだね!!」

 

グッ!と立てた親指を彼に向けて、由紀は嬉しそうに笑った。

 

 

 

 

「……そう」

 

 

 

 

由紀「ドキドキした?ねぇドキドキした?」

 

 

 

 

「まぁ……そうですね。」

 

見るからにテンションの下がった彼に由紀は目を輝かせながら尋ねる。

 

 

 

 

 

由紀「そっかぁ!よかったぁ~♪」

 

由紀(きっと私が優勝だ~!)

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

由紀「あれ?元気ないね…どしたの?」

 

 

 

「あの…僕に言ってきたセリフとか行動とかは、その漫画のですか?」

 

 

 

 

由紀「う~ん。途中でアレンジしたりしちゃったけど…ほとんどそうだよ」

 

 

 

 

(そ、そんなものに…僕は一人でドキドキしてたって訳か…情けない。)

 

 

 

 

 

由紀「でも__くんの妹になるのは面白かったな~♪他のみんなともやってみようよ!きっと楽しいよ。」

 

 

 

 

「止めて!絶対にみんなにはこの事言わないでね!?」

 

彼が妹と化した由紀に兄として接し、デレデレしていた事が知られれば、きっと悠里達は彼をゴミを見るような目で見るだろう…

 

彼はそれを心の底から恐れた。

 

 

 

 

 

由紀「ん?ん~、わかった。私もみんなに知られたら少し恥ずかしいし。…えへへ」

 

 

 

「ふぅ…」

 

 

 

 

由紀「えっと…じゃあ帰ろっか?」

 

やるだけの事を終え、由紀は車に戻ろうとする。

 

 

 

 

(なんていうか……由紀ちゃんに遊ばれただけだったな。)スタスタ

 

彼は死んだ目をしながらゆっくりと歩き出し、由紀はその背中についていった。

 

  

 

 

 

 

 

「……」スタスタ

 

 

 

 

由紀「……」スタスタ

 

 

 

 

 

 

 

 

由紀「……」トントン

 

車まであと5m程の距離になってから、由紀は彼の肩を叩く。

 

 

 

 

 

「なんです?」

 

彼が振り向いて尋ねると、由紀は照れくさそうに言った。

 

 

 

 

由紀「あのね…ちょっとだけ目をつむって?」

 

 

 

 

「…またですか」

 

 

 

 

由紀「あぅ……。いいから、はやく!」

 

 

 

 

「分かりましたよ」

 

また由紀の悪ふざけだろうと思いつつ、彼は目を閉じる。

 

 

由紀はそっと顔を寄せ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

由紀「………」チュッ…

 

 

彼の頬にキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 

由紀「あ、ごめん!イヤだった!?」

 

慌てた様子で由紀は彼と距離を開き、そして謝る。

 

 

 

 

「いや!全然大丈夫ですけど…ちょいと驚きました。」

 

 

 

 

由紀「えへへ…変なのに付き合わせたりしちゃったからね。お詫びだよ」

 

 

 

 

「お詫び…お詫びですか。」

 

 

 

 

由紀「うん!」

 

彼に笑顔で答えると、直後に由紀は小さく呟く。  

 

 

 

 

由紀「知らない間にゲームに巻き込んじゃってるしね…」ボソッ

 

 

 

 

「なにか言いました?」

 

 

 

 

由紀「ううん。さぁ戻ろ~!」

 

 

 

バタン!

 

 

 

 

 

由紀「たっだいま~♪」

 

元気よくドアを開き車内へと帰る由紀…

 

彼はそんな由紀を見ながら、頬に残る唇の感覚の余韻に浸っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(さっきまで妹として見てたのに…あぁいう事されると一人の女の人として意識してしまう。)

 

 

 

 

 

(……可愛かったな)

 

彼女の笑顔や頬へのキスに心をときめかせながら…

 

彼もそっと車内に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時は妹萌えの扉すら開きかけた彼だったが、それが由紀の作戦と知り落ち込む。

 

 

だが由紀が最後の最後でした頬へのキス…

これは彼女の作戦ではなくただの思いつきだったのだが、その思いつきの行動が彼の心を大きく揺さぶる。

 

 

 

結局のところ、由紀は必死に考えた作戦ではなく…

自然体で彼にとったあの行動が一番評価された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




由紀ちゃんを完璧に妹として見て、頭を撫で続けていた彼…

もう彼はダメですね(笑)
順調に変態としての扉を開いています。


いや…相手があの由紀ちゃんじゃ、皆ああなりますかね?




それはそうと…今回は外伝の方も同時に投稿しました!
お見逃しのないようお気をつけ下さいm(__)m


本編は次回…全員終わったのでようやく彼にネタバラシ?
いやいや、まだわかりません…
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