最後の一人、由紀も彼と二人きりの間にゲームを終えた。
こうして彼女達は全員ゲームを終え、それぞれが満足気な気分で夜を迎え…そして夕食を済ます。
物語はその夕食の直後、美紀が着替えのために彼を外に出したところから始まる。
美紀「__さん。着替えの時間です。」
「あぁ、はい。了解です。」
バタン
彼が外に出たのを確認して、彼女達は着替えながら会話をした。
胡桃「んで、もう由紀も終わったんだろ?」
由紀「うん!終わったよ~。楽しかった~♪」
美紀「私は疲れましたよ…。もうやりたくありません」
悠里「そうなの?私は楽しかったけど…」
美紀「りーさんまで!?…勘弁して下さい。ねぇ、胡桃先輩?」
胡桃「ん~…そうだなぁ。楽しくもあったけど、まぁ疲れるわな」
美紀「楽しいって感覚はあったんですね…。」
胡桃「少しだけっ!少しだけだぞ!?」
美紀「…そうですね。少しだけ…ですね。」
由紀「よかった~!みんな楽しめたみたいで。」
美紀「着替え終わったら、__さんにネタバラシするんですよね?」
胡桃「そっか、いよいよだな…」
美紀「なんか…一日が長く感じましたよ。」
長かった一日を振り返りながら、美紀はしみじみとした表情で呟く。
だが…直後に由紀が放った一言で、彼女の表情は深く青ざめた。
由紀「あ!あれ、明日もやるよ?」
美紀「………はい?」
由紀「さっき、りーさんと相談してね。もう一日だけ延長しようって事になったの!」
嬉しそうな笑みを浮かべて由紀はそう告げるが…
今日一日で終わりだと思っていた美紀はたまらず反論した。
美紀「ちょっ、待ってくださいよ!私は今日一日だけだって言うから我慢してたんですよ!?それを延長だなんて…」
由紀「えぇ~?………りーさん、どうしよう?」
困った由紀は慌てて悠里に尋ねる。
悠里「ん~…どうしようかしらね?」
胡桃「ってか…りーさんは本当にノリノリだな。」
悠里「ふふっ、だって…今日一日、なんかドキドキして楽しくなかった?」
美紀「改めて楽しかったかと聞かれると…はっきり言って微妙です!」
にっこりと微笑みながらみんなに尋ねる悠里。
美紀はそれに対し、青い顔をしながらハッキリと答える。
悠里「それは残念…。胡桃は?」
胡桃「んん……さっきも言ったけど、少しは楽しめたよ。だから…りーさん達がどうしてもってなら、あたしは明日も付き合おう…かな?」
美紀「本気ですか…」
胡桃「本気だけど…美紀、そんな嫌なの?」
美紀「嫌っていうか…恥ずかしいじゃないですか。またあんな事するの…」
顔を赤くしてそう呟き、美紀は俯いてしまう…
その瞬間に一同は美紀が何をしたのか気になり、彼女を囲んで質問責めにした。
悠里「ずっと気になってたんだけど…美紀さん、何したの?」
美紀「いやっ…あの、その~…」
由紀「その恥ずかしがりよう…みーくん!もしかして口にちゅーでもしたの!?」
美紀「なっ!?」
悠里「うそ!?美紀さん、そんなに大胆な事を…」
胡桃「マジかよ…すげぇな。その行動力、尊敬するわ…」
美紀「してませんしてません!!そんな事出来る訳ないでしょう!?」
首をブンブンと横に振り、美紀は必死に否定する。
彼女のそんな行動を見て、悠里と胡桃は堪えきれずに笑った。
悠里「ふっ…うふふっ!」
胡桃「っ!…あはははっ!!」
由紀「?」
美紀「なっ!なんで笑うんです!?」
急に笑いだした二人を見て美紀は驚く…
すると、悠里が呼吸を整えてから答えた。
悠里「ふふ…ごめんなさいね?美紀さんたら…冗談でからかっただけなのに必死に否定するから、面白くて…」
胡桃「あたしたちだってバカじゃないんだから…お前がアイツにキスなんてしてない事くらい分かってるよ。」
美紀「…まったく。冗談でも、ああいう冷やかしはやめてください!本当に怒りますよ?」
胡桃「わるいわるい…ってかもうちょっと怒ってない?」
微妙に不機嫌そうな美紀の顔を見て、恐る恐る胡桃は尋ねた。
美紀「…怒ってる?私が?今ですか?」
胡桃「うん…今。」
美紀「…よく分かりましたね。少し怒ってます。」
そう答えて、美紀はプイッとそっぽを向いた。
胡桃「わるかったって!そんなに怒んなよ~」
美紀の機嫌をとろうとする胡桃…
そんな中、突然由紀が美紀の肩をちょんと叩いてから言った。
由紀「でさ…結局ちゅーはしたの?してないの?」
胡桃「由紀!さんざん言ってたろ?美紀はアイツにキスなんてしてない……よな?」
美紀「なんで恐る恐る聞くんですか?」
胡桃「いや…もしかして、本当にしちゃったのかなって思って…。」
モジモジしながらそう呟く胡桃に、美紀は冷たい目をする。
美紀「…殴りますよ?ほんとに…」
胡桃「ごっ、ごめん!謝るよ!してないんだよな?」
美紀「してません!ただ名前を呼び捨てで呼んでもらっただけです!」
胡桃「…ん?」
悠里「…んん?」
由紀「おぉ~?」
美紀が不意にもらしたその一言を、彼女達は誰一人として聞き逃さない。
彼女達を見て、美紀は自らが口走ってしまった事に気づき…
そっとその場にしゃがみ込んで、両手で真っ赤に染まったその顔を覆った。
美紀「っ~~////」
悠里「ええっと…それであんなに恥ずかしがってたのね?」
美紀「…………」コクッ
両手で顔を覆ったまま、美紀は悠里の問いにそっと頷く。
悠里「そ、そう……呼び捨て…。」
悠里「美紀さん……意外と乙女なのね。」ボソッ
悠里は小さな声で呟いたつもりだったが…
それは美紀の耳に届いていた。
美紀「っ~~!////」
小さく震えながら、美紀はよく分からない声をあげる。
胡桃「美紀って呼んでもらったの?アイツに?」
美紀「…はい。」
胡桃「そ、それだけ?」
そう言って少し呆れた顔を見せる胡桃…
それを見た美紀は立ち上がり、半分泣き顔で怒りながら言った。
美紀「それだけって言うけど…頼むの凄く緊張したんですよ!!バカにするなら、先輩も明日__さんに頼んでみたらどうですか!?」
胡桃「あ、あたしが?アイツに!?いやだよ!!」
美紀「なにワガママ言ってんですか!?やって下さい!そして、ちゃんと__さんに『胡桃』って呼んでもらって下さい!!」
胡桃「くっ、くるみ!?」
胡桃は一人、脳内でその様子を想像し…顔を真っ赤にする。
美紀「わかりました。私も明日の延長戦に付き合います!胡桃先輩はちゃんと__さんに呼び捨てで呼んでもらって下さいね!」
胡桃「ぐううっ…!…わかった。やってやる…やってやるよ!」
美紀「絶対ですよ?明日、終わってから__さんに確認しますからね?」
胡桃「上等だ…難なくクリアしてやるよ!」
美紀「どうでしょうね…あれ、本当に頼むの恥ずかしいんですから…」
胡桃(そ、そんなに恥ずかしいのか…。なんか…もう緊張してきた…)
胡桃が自らの発言を後悔していると、由紀が胡桃と美紀の間に割り込んで尋ねてきた。
由紀「とりあえず…みんな延長戦には参加してくれるんだよね?」
美紀「はい。」
胡桃「…とりあえずは」
由紀「やったよりーさん!全員参加だよ!」
悠里「ふふ、そうね。」
美紀「…ところで、胡桃先輩は何をしたんですか?」
胡桃「え?」
由紀「あ、そうだね。ついでにみんなの今日の作戦を教え合おうか!」
由紀がにこにこしながら言った。
胡桃「えっ、ちょっ…!あたしは…」
美紀「私はさっき言ったとおり、呼び捨てで呼んでもらいました。で…胡桃先輩は?」
胡桃「その…その…」
顔を真っ赤にして、胡桃は美紀から逃げるように少しずつ後ずさる。
由紀「ほら!胡桃ちゃんは何したの?」
胡桃「あ、明日もやるんだろ!?ならまだ作戦を明かし合うのは早いんじゃ…」
悠里「じゃあ明日はそれぞれの作戦がわかってる上でそれを見届けるっていうのはどうかしら?」
由紀「ああ!おもしろそーだね!」
胡桃「で、でもさ…二人きりでしか効果を発揮しない作戦とかもあるだろ?ほら…由紀も美紀も二人きりの時にやったみたいだし…」
悠里「それならそれで…あぁ今頃あの作戦を実行中なのねって想像するから、構わないわよね?」
美紀「はい。とりあえずお互いの作戦だけ知っときたいですよね。」
胡桃「……うぅ……はぁぁ」
作戦を明かさなくてはいけない雰囲気になり…
胡桃は深くため息をつく。
由紀「で、なにしたの?」
胡桃「………手」
由紀「手?」
胡桃「うん……毛布の下で…ずっと…手を握ってた。」
顔を赤くして作戦を明かす胡桃…
それを聞いたとたん、由紀達は驚きの声をあげた。
由紀「おお~!それ凄くかわい~!!」
悠里「結構本気の作戦ね…」
美紀「それは…確かに凄いです。呼び捨てよりも難易度が高いかも…。握ってって__さんに頼んだんですか?」
胡桃「ううん。あたしから急に握って…それで、そのまま離さなかった。」
悠里「それ…想像したらなんか凄くキュンキュンするわ…」
美紀「先輩…すごいですね」
由紀「__くんドキドキしただろうなぁ…」
全員がその光景を想像し、顔を赤くして呟く。
胡桃「っ~//あたしのはもういいからっ!!次…りーさん!……は想像がつくな。目の前で見てたし」
こうして彼女達はお互いの作戦を明かし合った。
胡桃「んで…アイツはお前を妹扱いしてデレデレしてたの?」
由紀「うん!頭たくさん撫でてもらった。」
自らの作戦を明かしながら、由紀が無邪気に笑う。
悠里「由紀ちゃんの作戦…なんか危険な気がするわ」
胡桃「いや、りーさんの作戦もある意味では危ないぜ?」
美紀「今の話が本当なら…由紀先輩も何気に呼び捨てされてるじゃないですか…」
由紀「私は妹として呼び捨てにされてただけだから、みーくんのとは少し違うよ。」
美紀「…ですかね。」
悠里「とりあえず…由紀ちゃんを妹扱いしてデレデレしたのはいけないわ。明日、私の作戦を利用してお仕置きね…」
そう呟き、悠里は不敵な笑みを浮かべる。
胡桃「こわっ…」
美紀「__さん。明日は今日以上に疲れるでしょうね…」
由紀「__くんへのネタバラシは明日の夜にして…その後で優勝者に缶詰めをあげよう!」
胡桃「そういや、これ缶詰め賭けての勝負だったな…」
美紀「私も忘れてました…」
悠里「じゃあ、はやく着替えて寝ないとね。」
由紀「そうだった!私、お喋りに夢中で全然着替えてなかったよ!」
未だに着替えを終えてなかった由紀は服を脱いでパジャマを手に取り、そして元気に言った。
由紀「明日が楽しみだなぁ~♪」
その言葉に、悠里はもちろん…胡桃と美紀もなんだかんだで共感する。
明日は明日で楽しくなる。
彼女達はそう思っていた……
その会話を…彼に聞かれているとは知らずに。
「……なんてことだ」
彼は彼女達の着替えがあまりに長いので、途中から車の窓の真下に張り付き、会話を盗み聞きしていた。
「今日一日、みんななんかおかしいと思ったら…そういう事だったのか。」
「あれだけドキドキした僕の気持ちは…全部ゲームの為だったと………」
彼はゆっくりと歩き出し、車から離れ…そして笑った。
「ふっ……はははっ!!」
「みんな……やってくれたな」
「これはチャンスだ…彼女達はまだ、僕にゲームの事がバレていないと思っている。」
「僕はそれを逆手にとり……存分に楽しむ。」
夜空の下…拳を握りしめて、彼は微笑む。
バタン!
美紀「すいません!お待たせしました。もう良いですよ~!」
彼女達は着替えを終え、そんな彼を…一人の悪魔を車内に招く。
「ふふっ……」
彼は駆け足で車内に戻り、彼女達を見回した。
胡桃「わるいな、長い間待たせて…由紀がタラタラしてたもんで」
由紀「ごめんね!寒かったでしょ!?」
悠里「なんか温かいもの飲む?」
「あぁ、お構い無く…」
そう言って彼は話しかける彼女等の横を通りすぎ、自分の寝床の席につく。
「僕はもう寝るので…。あ!そういえば…腕相撲は明日に延期できますか?」
彼は気づいていた、腕相撲など…元からやる予定はないのだと。
何故なら、あの缶詰めを賭ける本当のゲームは…この自分をときめかせるという謎のゲームだと知っていたからだ
(そういえば僕が勝つための条件がまだ分かってないけど…まぁ今更缶詰めなんて、もうどうでも良いか)
由紀「腕相撲?」
胡桃「バカ!お前が今朝ごまかす為に言ったやつだよ!」ボソッ
胡桃がそっと由紀に耳打ちして伝える。
由紀「あ、あぁ!うん!明日にしよ~!」
「よかった…明日が楽しみです。」
そう言って彼はニヤリと笑うと、顔を伏せて眠る体制をとった。
胡桃「んじゃ…あたし達も寝るか。」
美紀「そうですね。」
彼女達もまた寝床につき、明かりを消した。
悠里「おやすみなさい」
胡桃「おやすみ」
美紀「おやすみなさい」
由紀「おやすみなさ~い」
こうして長かった一日が終わり、彼の反撃が始まった。
長かった一日も終わり、翌日からは延長戦…
という名の彼の反撃が始まります。
一日目はみーくんや胡桃ちゃんの時に戸惑ってしまった彼ですが…
このゲームの真実を知った今、もう怖いものはありません。
次回からはそんな彼の復習劇が始まるので、是非ともご期待下さい!( ̄ー ̄)