軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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六話『探索』

 

 

 

「………はぁ。」

 

 

住み家から出発して1時間…彼はデパート「トータル」にたどり着いた。

 

 

 

(遠かった……前に来た時より遠く感じた…走れなかったからだろうな、何にせよ道中奴らに囲まれずに済んだのは幸いだった。)

 

 

 

 

「さて…入るか。」

 

 

 

そう呟くと彼はデパート一階の正面入口へと足を運んだ。

 

 

 

 

「邪魔だなぁ…」

 

正面入口には車が何台も止めてあり道を塞いでいた。

 

(前来た時は無かったのに…しかも大きな車ばかり…ジャンプして登っていくしかないか。)

 

「よっ!」

 

少年は車の屋根に手をかけるとドアの取っ手に足をかけ車の上に登り、入口の方へと飛び降りた。

 

ダンッ! 

 

「うっ!!」

 

(傷に響く~!)

 

少年はその場で軽く悶えると、息を整え店内へと入っていった。

 

スタスタスタスタ

 

(確か薬局は入ってすぐだったよね……あぁ…あったあった。)

 

 

 

 

 

(さてさて……ガーゼと包帯…………あったな。それと…絆創膏か…貰っておこう…お!消毒液もある…頂きますか。)

 

 

 

持ってきたバックに医療品を詰め終えると彼は薬局を後にした。

 

 

 

(さて…次は食品売場でも見ていくか…食品はこの間補充してばかりだけど…あるに越したことないし。)

 

 

スタスタ

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何て事だ……)

 

 

 

 

 

 

(水が一ケース残っていた!…これは是非頂いてこう!)

 

「…よいしょっと」

 

 

 

スタスタスタスタ

 

 

 

(ん~…中々重いな……ふと思ったけど僕はこれを持って来た道戻るんだよね………)

 

 

ピタッ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………やっぱいらないかな)

 

 

(そこのアイスケースに入れておこう…元の場所に戻すのも面倒だし。)

 

「ほいっと」

 

ガコンッ!

 

 

(これでいっか!……さすがに一ケースは重いから仕方ない)

 

少年は熟考に熟考を重ね水を捨てるという暴挙を選んだ。

重いなら箱を開けて数本だけでも持って帰るという選択肢は…彼には無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あ!……そういえばナイフ一本壊したんだよな……住み家に沢山あるけど…少し見てくかな。)

 

 

少年は近くの壁に張り付いていた店内の地図を見つめた。

 

 

 

(どこならあるかな……ん?アウトドアショップ?…ありそうだな…2階か…。)

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2階・アウトドアショップ内

 

 

 

 

 

 

 

「おお!何だこれは!?」

 

 

 

 

少年の目の先にはガラスのケースに保管された大きな刃物があった

 

 

 

(…僕の持っているナイフよりも少し大きいな、刃も凄くキレイだし頑丈そう…こりゃ良く切れるだろうな……)

 

 

「な!?」

 

 

(結構な値段だな…。よし、貰っていこう)

 

少年はガラスケースの隅が割れている事に気付くと、その隙間から手を伸ばしそのナイフを回収した。

 

 

 

(さて帰ってこのナイフをベルトに付けられるようにしないと、古いのを外してそこに付けるか。)

 

 

(そうと決まれば帰るか…見るもの見たし。……バック重いなぁ)

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 

 

 

 

 

 

 

1階

 

 

 

 

 

少年は1階に降り、ある場所をみて立ち止まっていた。

 

(あっちって普通は従業員しか立ち入り禁止の通路だよね……少し興味がある。行ってみようかな?)

 

 

そんな事を考えているとその通路の奥から……

 

 

 

 

 

 

「ウワァーンウワァーン」

 

 

 

 

 

「!?子供の泣き声?」

 

タッタッタッ

 

少年はその声の聞こえる場所へと走った。

 

 

 

 

(……倉庫か。)

 

 

ギイー

 

少年が扉を開け室内を見回すと奥に机が不自然に置かれていて、その上には何やら毛布にくるまれたものが…するとその毛布から泣き声が聞こえ、少年はその泣き声を発する物体に近付いた。

 

スタスタッ

 

 

「ウワァーンウワァーン」

 

「ん?……」

 

……ピタッ

 

 

少年は足を止めた、先程は気が付かなかった違和感に気付いたから。

 

 

(あの子供…いや赤ん坊か?…あんなに泣いている割にはピクリとも動かない…)

 

 

「ウワァーンウワァーン」

 

 

(!?…泣き声も良く聞けばさっきから全部同じだ!!…てことは人形かなんかか?)

 

 

「ウワァーンウワァーン」

 

 

(やっぱり…同じ泣き声だ…一体誰が何の為に…)

 

 

「ウワァーンウワァーン」

 

 

(思えばこのデパート……奴らもいないし死体も無かった…誰かが住んでるのか?)

 

「ウワァーンウワァーン」

 

 

(そういえば入口の車ももしかしたら奴らが入らないようにするためのバリケードだったのかも…だとすれば待っていれば誰か来るかも知れないけど…もう人とは関わりたくないし…とっとと帰るか…)

 

「ウワァーンウワァーン」

 

 

(………うるさい!)

 

少年は人形を黙らそうと手を伸ばした…しかし毛布に何かが付いていることに気付き手を止める。

 

 

(!?……ワイヤー?)

 

 

(毛布から壁に伸びてる……)

 

その糸は少々太めの釣糸のようなもので、良く見ればはっきり分かるが、この薄暗い倉庫では視認するのは難しく、少年が気付いたのは偶然だった。

 

 

少年は持っていたバックからあらかじめ入れておいたライトを取り出すと、その糸に明かりを当て、反射する光を頼りに何処に繋がっているのか確かめた。

 

 

糸は机の横の壁に向かっていきそのまま更に横の壁へと伸びていた。良く見ると糸が壁に沿えるようU字型の釘のような物が定期的に壁に刺してあった。

 

糸はその釘達の間を通っていき、少年が入って来た扉の横にあるカーテンのかけられた大きな四角い箱のような物へと続いていた。

 

(こんなものがあったのか…泣き声に気をとられて気が付かなかった。何だろう?これ…扉を挟んで2つあるな。中見てみるか)

 

 

少年はカーテンに手をかけ、ゆっくりと捲り中を覗く。

 

 

(何だこれ?囲いか?暗くて何を閉まってるかわからないな。)

 

少年は左手でカーテンを捲りながら右手のライトでそれを照らした。

 

 

「…なっ!!!?」

 

 

中を照らすと明かりに反射した無数の目が少年を睨んだ

 

 

バッ!

 

 

少年はカーテンをかけ直すと距離を開け、腰のナイフに手を掛けた。

 

 

(今の……人間じゃなかった!!奴らだ!あの囲いに奴らを閉まっているのか!?)

 

 

ガシャン!ガシャン!

 

カーテン越しにフェンスを叩くような音と唸り声が聞こえる、どうやら何物かがフェンスのような物で囲いを作り奴らを集めて閉じ込めたようだ…

 

ガシャン!ガシャン!

 

室内に鳴り響くフェンスを叩く音…唸り声…そして人形の泣き声…

 

ナイフに手を掛けたまま、じっと動かない少年の額から汗が流れ落ちる。

 

 

 

しばらくすると奴らはフェンスを叩くのを止め、少年がこの部屋に入って来た時のように大人しくなった。

 

 

「……ふぅ」

 

 

(あのワイヤーが繋がっていた先は奴らの閉じ込められている囲いみたいだ……ってことはあのワイヤーの付いた人形を引っ張ると奴らを閉じ込めているあの囲いが何らかの仕組みで開く……そういった罠の可能性がある。)

 

 

(ワイヤーが途中でカーテンに隠れていて詳しい仕組みは分からないけど…あのカーテンの中にワイヤーが入っていってるって事はこのワイヤーはあの囲いに関係しているとみてまず間違いない…試しに人形を引っ張れば答えが分かるけど、そんなことする必要はない。)

 

 

(奴らも大人しくなったし…出てくか。)

 

 

少年は念のため物音をたてないよう静かに歩きながら、先ほど入って来た扉を開け倉庫を後にした。

 

 

パタン

 

(…誰があんな手の込んだ罠を…かなり狂った人間に間違いない。)

 

 

 

 

 

 

(そんな人間ばかりだ……この世界になってから…)

 

「ウワァーンウワァーン」

 

 

(あの人形……まだ泣いてる……そういえば奴らはカーテンで視界を遮れば一度獲物を見付けても少しすれば大人しくなるんだな…人形の泣き声に反応しないのは何故だろう?あまりにもずっと聞こえるからもう環境音として認識しているのかな?)

 

 

 

スタスタ

 

(ん?…あっちは…スタッフルームか何かか?せっかくだから漁らせて貰うか。)

 

ギィー

 

少年が扉を開けると中には沢山のロッカーが並べられていた。

 

 

(スタッフ用のロッカールームかな…何かあるといいけど。)

 

 

 

 

少年はロッカーを一つずつ開けていったがほとんど鍵が掛かっており、運良く開いてもショップの制服らしき物や、汚れたタオルなどが閉まってあるだけだった。

 

 

(もう見てないロッカーも2つだけ…ここまで来たら全部開けてみるけど、まぁ無駄かな…)

 

ガチャガチャ

 

(ん……これも鍵が掛かってるのか…いや…隙間が空いてるから何か引っ掛かっているだけみたいだ…強く引けば開きそうだ。)

 

「ほっ!!」

 

ガチャン!!

 

グラッ…

 

「へ?…」

 

ガタンッ!

 

少年が強く引きすぎたためロッカーは倒れてしまった。

 

(やってしまった……。まぁいいか、最後のロッカーを開けよう)

 

少年が最後のロッカーに手を伸ばした瞬間、入口から物音がする

 

 

ギイー

 

(!?…何か入って来た!…仕方ない…ロッカーに隠れよう!)

 

 

 

少年は最後のロッカーに鍵が掛かっていないことを確認すると中に隠れた

 

 

 

(鍵が掛かってないのは良かったけど、バックが邪魔でかなり狭い!元々このロッカーは空だったみたいだけど、それにしても狭い…。)

 

 

スタッ……スタッ…

 

 

(奴らか?それともここの住人か?…どっちだ!?)

 

 

スタッ…スタッ…

 

 

 

 

 

 

 

(あれは…奴らじゃない…人間の…)

 

 

ロッカーの隙間から外を覗いていた少年の目に入ったのは、制服を着た学生らしき女の人だった。

 

 

 

(学生?…高校生かな?彼女がこのデパートの主か…つまりあの罠を仕掛けた張本人!……綺麗な顔してとんだサイコパスガールだ…!)

 

(…ずいぶん注意深く見ているな……さっきロッカーを倒したのがまずかった!サイコパスが相手じゃ見付かったら話し合いはまず無理だろう………何だか少し怯えているようにも見えるけど……それは本当に怯えている僕の見せる幻!そうであって欲しいと思う心が生んだ幻影ッ!あれだけの奴らを閉じ込めて、しかもそれを罠にするような人間が僕如きに怯える訳がないッ!)

 

 

(……怖い!震えが止まらない!今まで何人かの凶暴な生存者と出会ってきたけど…コイツは桁違いだ!奇襲をかけるか!?)

 

 

 

 

 

 

 

少年はロッカーの中でナイフに手を掛け…ごく普通の女の子に怯え、更にはナイフで奇襲すらかけようか…という考えをわりと本気で考えていた。

 

 

 

 

 

 

端からみれば彼の方がサイコパスだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やるか!?)

 

 

 

ガシャン!

 

 

 

(!?)

 

 

女子学生「!?」

 

 

 

部屋の外…恐らくは先ほどの倉庫から大きな音が聞こえた…そして

 

 

 

 

女の子の声「キャーーーー!」

 

 

 

女子学生「由紀ちゃん!!?」

 

 

 

 

 

(……マズイ!)

 

 

バタン!!

 

 

 

 

少年は少し考えた後ロッカーの扉を開け、そこから飛び出した。

 

 

 

 

女子学生「えっ!?」

 

 

 

 

少年と女子学生の目が合うが少年はさっきとは違い彼女に対して怯えはしなかった。

 

 

 

女子学生「あなたは……?!」

 

 

 

「失礼します!」

 

 

少年は女子学生に一声かけるとロッカールームを飛び出し倉庫へと走った。

 

 

タッタッタッ!

 

 

バタン!!

 

 

 

「っ!!」

 

 

扉を開けると外に放たれた奴らの群れと隅に追いやられている少女の姿があった。

 

 

 

 

女子学生「由紀ちゃん!………なっ…どうしてこんなに奴らが!!?」

 

 

少年に続いて女子学生が倉庫に入りその光景に驚く。

 

 

(やっぱり…この人はここの住人じゃない…あの少女と知り合いって事はこの人がここの住人だった場合あの少女もこの人の仲間…つまりはここの住人だということになる、なら自分達が仕掛けた罠にかかる訳はないし、何よりさっきこの人は奴らがここにこれだけいる事に驚いていた。)

 

 

 

(その時点でここの住人という可能性はほぼ無くなる!恐らくは物資目当てにここにやって来た生存者!…だったらあんな娘に目の前で死なれても気分が悪い!)

 

 

女子学生「由紀ちゃん!!」

 

 

女子学生が少女の元へ向かおうとするが、少年が左手でそれを遮る。

 

 

女子学生「ッ!!」

 

 

女子学生が少年を睨む

 

 

「落ち着いて…下がっていてください。」

 

 

少年は腰のナイフに手を掛け女子学生にそう声をかける。

 

 

 

 

「僕が行きます」

 

少年はそう言い放つとベルトからナイフを抜き、奴らを見据えた。

 

 

 

 

 




やっと彼と由紀・りーさん組が合流しました。長かった…

そして彼は基本単独行動だったので、どうしてもナレーションが多くなってしまいました。

ただ書いているうちにやはりナレーションって大切だな…と思ったのでこれからも少しずつ入れていきます!


最後に彼についてですが、りーさんをサイコパスと勘違いして、本気で怯える天然な部分もありますが…瞬時にりーさんはサイコパスではないと判断したり、人形の罠に気付いたりとそれなりに有能な部分もあるので、暖かい目で見守ってあげて下さい。


気が付いたけどせっかく読書さんがオリ主を命名する仕様なのに、まだ彼が誰ともろくに話してないからその仕様もあまり生きてないんですね……

大丈夫、きっと次回こそは生きるハズ!
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