軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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今回、早めに終えるつもりが書いている内にどんどん文を足してしまい、気づけばまた長文に(汗)

途中で分割しようかとも思いましたが、前回のあとがきでラストと言った手前それも出来ず、仕方なくそのまま投稿…


そんなゲーム編も遂にラスト!
少しだけ長くなっていますが、お楽しみいただけたら幸いです(*^^*)


五十七話『ふくしゅう-おわり-』

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時…由紀が罰ゲームと称して彼の復讐を胡桃達にバラし、彼は目の前でシャベルを持って立つ胡桃に震えた。

 

 

物語は…あれから数時間の時が流れた車内…

停まっているその車の助手席に座り、後方を見ないように頭を抱える由紀の心情から始まる。

 

 

 

由紀(こ、こんな事になるなんて…思ってなかったよ~…)

 

 

由紀(ただ…ただちょっと__くんにイジワルしようと思って、それでみんなにバラしただけだったのに…まさか、胡桃ちゃんとみーくんがあんなに怒るなんて…)

 

彼女は目を閉じて、あの時の光景を思い出す。

彼に罰ゲームを与えるとだけ言い残し、車内へと戻ったあの時を…

 

 

 

 

バタンッ!

 

由紀『みんな~!延長戦も終わりを迎えたわけだけど、ここで重大なお知らせだよ!』

 

 

胡桃『なんだよいきなり…、また明日もやるとか言うなよ?もうやんないからな?』

 

 

悠里『そうね、明日はこの付近の探索に行きたいと思っていたから、さすがに今日で終わりよ?』

 

 

由紀『いくら私でも三日続けてこのゲームをやる自信はないよ…。お知らせってのはね~…』

 

車内の全員を見回し、由紀は言う…

胡桃と美紀の心を闇に染め、そして彼を追いつめさせる事になる…あの言葉を

 

 

由紀『私達のゲームの事…昨日の夜から__くんにバレてたみたい。だから__くんはね、今日の延長戦を利用してみんなに復讐してたんだって!』

 

 

胡桃『はぁ!!?』

 

 

美紀『…っ!!』ガバッ!

 

 

由紀『うおっ!みーくん、おはよ~』

 

今までは眠っていたのか、はたまた狸寝入りしていたのか…

美紀はピクリとも動かずにベッドに潜っていた。

 

だが今由紀があの言葉を発した瞬間…彼女は布団を勢いよく捲り上げ、そのまま起き上がって由紀に尋ねる。

 

 

美紀『今の……本当ですか?』

 

 

由紀『うん!ほんとだよ?』

 

 

美紀『……あの人は…あの人は今、どこにいますか?』

 

起き上がってばかりとは思えない鋭い目付きで車内を見回し、そこに彼がいないのを確認してから美紀は呟く。

 

すると直後、最悪のタイミング…いや、美紀にとっては最高のタイミングで彼が車内に滑り込むようにして戻り、そのまま由紀の肩を掴んだ。

 

 

『ゆっ、由紀ちゃん!罰ゲームって…罰ゲームってなんですか!?』

 

焦った様子で由紀に尋ねる彼…。

美紀はそっとその背後に忍び寄り、胡桃と共にその肩に手を伸ばす。

 

ガシッ!  ガシッ!!

 

 

 

『え、えっと…どうしました?』

 

突如二人に肩を掴まれ、彼は驚いたように尋ねる…

美紀は鋭い目付きのまま口元だけをニヤリとさせると、静かに彼に聞き返した。

 

 

美紀『どうしたと…思いますか?』

 

 

『わ、わかりません…』

 

 

美紀『由紀先輩…教えてあげて下さい?』

 

美紀にそう言われ由紀は言う…

 

 

由紀『罰ゲームはね、__くんがしたことを…みんなにバラす事でした~♪』

 

あの時…彼女は明るい声でそう言った…

何故なら、彼女にとってそれはほんの軽い冗談のつもりだったから。

 

自分が彼の復讐の事をみんなに話したとしても、仲の良いみんなの事だ…きっとこんな反応だろう…

由紀は彼が胡桃、美紀と会話を交わす間、脳内でこれからの光景を想像していた。

 

 

美紀『まったく…ゲームの事を知られていたんじゃ、私達がいくら頑張っても意味無いじゃないですか。』

 

 

胡桃『まったくだぜ、盗み聞きなんかしやがって…冗談じゃないっての』

 

 

『えへへ~、マジごめ~ん♪』

 

由紀の脳内では彼が実際よりも少し頭が悪そうに描かれているが、気にするべきはそこではない。

そう…彼女はこの事態が平和におさまるとしか考えていなかったのだ。

 

もし仮に、平和的ではない結果になるとしても、少しだけ口喧嘩する程度だろうと思っていた…

だが現実は由紀が思っていた程優しくは無く…

 

 

胡桃『…あたし言ったよな?もし、あれが冗談だったなら…お前を殺すってさ…』

 

 

由紀『へっ…?』

 

胡桃の発言に驚き、怯えたのは彼だけではない。

由紀もまた…その思いもよらぬ発言に驚き、こっそりと震えていた。

 

 

由紀(あ、あれっ?胡桃ちゃんとみーくん…本気で怒ってる?もしかして私、とんでもない事を…しちゃった?)

 

 

この事態は平和的に収まる…悪くても軽い口喧嘩だろう

そう思っていた由紀の考えは、早くも崩される。

 

目の前で始まろうとしていたのは口喧嘩などではなく…ましてや平和的な物などでは決してない。

 

それは…処刑だった。

 

 

 

胡桃『ほら、外行くぞ…ついてこい?』

 

シャベルを片手に、胡桃は彼の手を無理やりに引く…

彼は胡桃に引かれてない方の手でそばにあったテーブルを掴み、それに抵抗した。

 

 

『ま、待って…!謝るからっ!謝るからっ!!』

 

 

美紀『………』

 

それを見た美紀は彼が掴むテーブルのそばに立ち、彼の手をじっと見つめる…

彼女は自らの右手をギュッと握ると固く拳を作り、それをそっと振り上げた。

 

 

『み、美紀さん…まさか…それ……』

 

 

ブンッ!!

 

彼女はその拳を、少しの躊躇いも無くテーブルを掴む彼の手へと降り下ろす。

 

 

 

『うおっ!!?』

 

ギリギリのところで彼はテーブルから手を離し、どうにかそれをかわす事が出来た。

彼がそれをかわした直後、降り下ろされた美紀の拳は勢いを衰えさせる事なく…そのまま目標の消えたテーブルを力強く叩いた。

 

テーブルを叩いた際に、バンッ!という大きな音が車内に響く…

彼は美紀なら寸止めするのではないかと心のどこかで信じていたが、当たり前のようにテーブルへと降り下ろされた彼女の拳を見て…念のためにかわしといてよかったと心から安堵する。

 

 

(あ、あれ直撃したら…かなり痛かっただろうなぁ…)

 

パシッ!

 

 

『お…?』

 

美紀は彼がテーブルから手を離したのに気づくと、すかさずその手を掴み、胡桃と共に彼を引く。

 

 

悠里『ちょっと二人とも、平和的にね?喧嘩したりしちゃダメよ?』

 

今の悠里に出来る事は、こう言って彼の安全を少しでも確保する事だった

そんな悠里の方へと胡桃は振り向き、ニコッと笑う。

 

 

胡桃『りーさん、大丈夫だよ。抵抗さえされなきゃ…流れる血はコイツの分だけで済むからさ…』

 

 

美紀『ほら…きびきび歩いて下さい。』

 

両手を引かれた彼は先程のように何か重い物を掴んで抵抗する事も出来ず…大人しく車外へと連行されていった。

 

 

……バタン

 

美紀と胡桃が彼を連れて外へと出ていってしまった…

由紀は少しの間、閉まったドアを見つめ、悠里に声をかける。

 

 

由紀『も、もしかして…バラさないであげた方がよかった?』

 

 

悠里『う、う~~ん………かも、しれないわね…』

 

困ったような表情で呟く悠里…

彼女のそんな表情を見て由紀は不安になる。

 

 

由紀『ほんとに殺しちゃったり……しないよね?』

 

 

悠里『それは…さすがにないと思うわよ。…たぶん』

 

 

 

二人は落ちついて席に座り、胡桃達の帰りを待った。

しかし彼女達は中々帰ってこず…ようやく帰ってきたのは、辺りが暗くなり始めてからだった。

 

 

 

バタン…

 

 

胡桃『ただいま~』

 

 

美紀『戻りました』

 

そう言って車内に入る二人の背後を…由紀と悠里はじっと見つめる

三人で出ていった彼女達だが、もしかしたら二人になっているかも知れないと思ったからだ。

 

 

『………』

 

 

由紀『…あっ!』

 

 

悠里『よかった…』

 

二人の背後に彼がいたのを確認して、由紀と悠里は一安心する。

彼はなにやら地獄を見てきたかのような目をしているが、見たところ怪我などはなく無事のようだ…よかったよかった一安心。

 

 

胡桃『いや~長引いたなぁ…もうすぐ夜じゃん!』

 

 

由紀『ね、ねぇ…りーさん。胡桃ちゃん達が__くんを連れて出ていったのって…』

 

 

悠里『えぇ…お昼の少し前よ…』

 

由紀は戦慄を覚える…自分の何気ない発言のせいで、彼は約六時間も二人に何らかの罰を与えられていたのだ。

 

 

胡桃『りーさん、いらない紙とかあったっけ?』

 

 

悠里『えっ?………これでも良い?』

 

悠里はそばの棚から新品のノートを取り出し、それを胡桃に手渡す。

 

 

胡桃『お、サンキュー』

 

それを受け取ると胡桃は一ページだけ破りとり、ノートを悠里に返す

破りとった一ページはテーブルに置き、胡桃はその目の前へと彼を座らせた。

 

 

悠里『あの…何をするの?』

 

不思議に思った悠里は胡桃に尋ねる。

だが胡桃はそれに答えず、代わりに美紀が答えた。

 

 

美紀『誓約書ですよ』

 

 

悠里『誓約書?』

 

 

美紀『はい、今回の件で私達は気づきました。この人は…少し危険です。』

 

美紀『また今回のような悲劇を起こさぬよう、誓約書を書かせようと私と胡桃先輩は決意しました。』

 

 

悠里『そ、そう…』

 

 

由紀『あぅ……』

 

美紀が説明を終えた後、胡桃は彼にペンを渡す

悠里はただそれを同情の目で見守る事しかできなかった。

 

由紀に限っては自分のせいで彼がこんな目に遭っているというのもあり、もう見ている事すら出来ず…助手席へと逃げた。

 

こうして由紀の回想は終わり、物語は今現在の由紀へと繋がる…

 

 

 

 

 

 

 

由紀(__くんにわるい事したなぁ…。二人とも、すごく怒ってるよぉ…)

 

由紀(胡桃ちゃんもみーくんも…そんなにやな事されたのかなぁ)

 

由紀はそっと静かに…後ろの様子を覗き見る。

そこでは未だに彼が席に座りながら誓約書を書かされていて、胡桃と美紀が横で立ちながらそれを見張り…そばでは悠里が気まずそうに座っていた。

 

 

由紀(__くん…ご、ごめんね……)

 

 

胡桃「……よし、書けたか?」

 

 

「書けましたが…誓約書とか書いた経験ないんで、ちゃんと書けてるかどうか…」

 

 

胡桃「経験あったら逆に引くわ!まぁ適当なのでいいから…見せろ」

 

胡桃は彼が書いた誓約書を取り、その内容に目を通す。

 

 

 

 

 

          -誓約書-

 

わたくし__は、今回の件で皆さんを深く傷つけてしまいました。

 

直木美紀さんには冗談で告白をし…

さらに海老巣沢胡桃さんにも冗談で抱きついてしまいました。

 

これらの行為を深く反省し、もう二度としないと誓います。

 

 

 

もしこれらと同じような行為を再びした場合には、いかなる処罰もお受けいたします。

たとえそれが、シャベルを使うどこかのツインテールに数百の殴打を受ける事だとしても…

そしてその結果、私が命を落とす事になろうとも…

抵抗せずに、この身を捧げます。

 

願わくばこの先も…胡桃さんが無抵抗の人間を殴り殺す程の冷徹な人間にはならないと良いのですが…

 

 

Ps.私に告白をされ、本気で照れていた美紀さんは本当に可愛かったです。

心に焼きつけました。あれは二度と忘れません。

 

     __________________

 

 

 

 

 

 

 

胡桃「………なに、これ?」

 

手をプルプルと震わせながら、胡桃はギッと彼を睨む。

美紀もまた彼を睨み、頬を染めながら尋ねた。

 

 

美紀「い、言いたい事はたくさんありますが…。まず、私達の名前…漢字が違うんですけど」

 

 

「あぁ、それですか…あなた達の名前を耳で聞いたことはありますが文字で見たことはなかったのでね…、適当に書きました。」

 

それを聞いた美紀は彼からペンを奪うと、誓約書に書かれた自分の名前の上に線を引いてそれを塗り潰し、その上のスペースに自らの名を書く。

 

 

美紀「名前の方はこれであってます。ただ名字の方は『直木』ではなく『直樹』です。覚えておいて下さいね」

 

彼に自らの名の漢字を丁寧に教える美紀。

彼女の横で胡桃は誓約書に書かれた自らの名前の部分を指さし、不満そうな顔をした。

 

 

胡桃「美紀はまだいいよ…ちょっとした間違いだもん。あたしの名前を見てみろ…なんかめっちゃ海老が生息してる沢の名前みたいになってるぞ?」

 

 

悠里「海老巣沢……ふふっ!」

 

 

胡桃「…………」

 

そっとその誓約書を覗き見て、悠里は思わず吹き出す

それを見た胡桃は自分が笑われてるかのような気分になり、複雑そうな表情をした。

 

 

悠里「良いじゃない…海老巣沢。…改名したら?」

 

 

胡桃「なっ!?しっ、しないよっ!!」

 

 

美紀「まぁまぁ、胡桃先輩。名前の件はこのくらいにしましょう…」

 

胡桃の肩をポンと叩き、美紀は真っ直ぐに彼を見つめる。

その直後に胡桃もまた目付きを鋭いものに変え、彼を睨んだ。

 

 

 

胡桃「そうだな…名前の間違いくらいは笑って許すさ。」

 

 

美紀「えぇ、けれど…この誓約書には他にも気になる文章があります。それこそ…笑って許すことは出来ないような…」

 

 

「………そうですか?一生懸命書いたんですけど…」

 

彼女達にそう言われると彼は鼻で笑い、しらを切る

そんな彼を見た胡桃と美紀は眉間をピクリと動かし…イラッとしたような表情をした。

 

 

悠里(な、なんか…雲行きが……)

 

彼女達の様子をそばでみている悠里は場を取り巻く嫌な雰囲気に一人冷や汗を流す。

一方で由紀はというと、助手席の方からこっそりと彼女達を見つめ、その様子をうかがっていた。

 

 

胡桃「オイ、シャベルを使うどこかのツインテールってのは…いったい誰の事を言ってるんだ?」

 

 

「…さぁ?」

 

 

胡桃「この誓約書によると、随分と恐い人みたいだな?シャベルで人間を数百回も殴るなんて恐ろしい事…あたしは頼まれたって出来ないぜ…」

 

 

「………でしょうね」

 

 

 

 

 

 

胡桃「………」

 

 

「………」

 

 

美紀「………」

 

 

悠里「………」

 

 

由紀「………」

 

車内に沈黙が訪れ…ピリピリとした空気だけが静かに流れる。

由紀と悠里はその空気に押し潰されそうになり、そっと彼を見て思う…

 

 

『もう、おとなしく謝ればいいのに』…と。

 

二人がそんな事を思った直後、突如胡桃は笑いだし…彼の肩を掴んで言った。

 

 

 

胡桃「っふ…あはははっ!よ~しよ~し…わかったわかった。」

 

 

「………」

 

 

胡桃「外出ろ……数百回もいらねぇ、一振りで黙らせてやるよ!」

 

不気味な笑みを浮かべ、胡桃が彼を引っ張る

彼はそれに必死の抵抗をみせ、彼女に言った。

 

「暴力ですか!?また暴力なのですかぁ!!?」

 

 

胡桃「あんだけ口で言っても…まだわかんないんだろ!?ならもう仕方ない!!あたしだって平和的に済ませたかったが…もう限界だっ!」

 

 

「じゃあ、こっちも言わせてもらう!元々の被害者は僕なんだ!良くわからないゲームで…先に人の気持ちをもてあそんだのはそっちじゃないか!」

 

「僕はそれに対してちょっと反撃しただけなのに…長い間説教されて、更には誓約書?それはおかしいでしょう!?」

 

彼が胡桃に対して珍しく強気に反論する。

それは確かに正論であり、胡桃は反論出来ずにいた。

 

そんな胡桃に代わり、美紀が彼の前に立ち…反論する。

 

 

 

美紀「確かに、先に仕掛けたのは私達。…そこは謝ります。でも、その反撃の仕方が酷いです!抱きついたり、告白したり…私、本気で悩んだんですよ!?」

 

 

「そんな事言ったら僕だって悩みました!胡桃ちゃんなんて、いきなり手を握ってきたんですよ!?」

 

胡桃「あ、あの…恥ずかしいからさ…あんま大声で言わないで…」

 

美紀と口論する彼にそっと胡桃が呟く。

 

 

「あんなの…ほとんど告白と同じじゃないですか!!」

 

 

美紀「手を握られたくらいで…勘違いしすぎですよ!」

 

 

胡桃「あぁ…うぅ///」

 

口論する二人…照れる胡桃…そして次第に激しくなる二人の口論を見て、気まずくなる由紀と悠里。

 

このままでは大喧嘩に発展してしまいそうなので、悠里は二人に割り込んでそっとそれを止めようと試みた。

 

 

悠里「まぁまぁ…今回はどっちも悪かったって事で。」

 

 

美紀「どっちも!?悪人はこの人だけじゃないですか!!」

 

 

「はぁ!?そっちでしょうが!!」

 

割り込む悠里を押し退け、二人は口論を続ける。

これには悠里もさすがに困り、そっと胡桃に助けを求めた。

 

 

悠里「ちょっと…止めてよ!喧嘩になっちゃうでしょ!?」

 

 

胡桃「ん?あ、あぁ…わかった。」

 

そう言って胡桃は美紀の隣に立ち、彼に向けて言い放つ

 

 

 

胡桃「いい加減謝れって!全部お前が悪いんだから!!」

 

 

悠里(止めてって頼んだのに…なんでそうなるの…)

 

口論を進んで激しくさせる胡桃を見て、悠里は頭を抱えた。

彼女が頭を抱える今も、三人の口論は続いていく…

 

 

「本当に…付き合いきれませんわ!」

 

 

胡桃「ちっ!…だったら出てけば良いだろ?」

 

 

美紀「えぇ、文句があるなら出て行って下さい。私達も…あなたが嫌ですから。」

 

 

悠里「ちょっ!二人とも…そういう言い方は……」

 

二人の発言に悠里は驚き、慌てて止めに入る。

だが彼女が止めに入った直接、彼は衝撃的な言葉を放った。

 

 

「そうですね…そうさせてもらいます。」

 

 

悠里「…えっ?」

 

由紀「うそ…」

 

悠里と由紀は固まり、耳を疑う。

だが彼が放ったその言葉は…聞き間違いなどではなかった。

 

 

 

「やっぱり一人の方が楽です。前々から思ってましたが…今確信しましたよ。」

 

 

悠里「ちょっと!何言って…!?」

 

そう言いかけたところで、悠里は気づいた。

彼の顔がにやついていること…いや、彼だけではない。

胡桃と美紀もまた…にやにやとした表情を浮かべ、由紀のいる助手席の方を横目でチラチラと見ていた。

 

 

悠里(この人達…もしかして…)

 

 

 

胡桃「あー、出てけ出てけ!こんな狭い空間に男がいられると、あたし達も色々と嫌だったんだよ。」

 

 

美紀「そうですね…女性だけでいた方が気が楽です。あたしも胡桃先輩も…りーさんも由紀先輩もそう思ってます。…そうですよね、由紀先輩?」

 

助手席の由紀に向け、美紀が語りかける。

由紀はすぐにそこから出てきて彼の元に駆け寄り、涙目で言った。

 

 

 

由紀「イヤだ!!出てかないでっ!!!イヤ…イヤだよっ!なんで胡桃ちゃん達はそんな酷い事を言うの!?今まで…ずっと__くんと仲良くしてたのにっ…なんでっ!?」

 

由紀が震えた声で言う。

その瞳はうるうるとしていて、今にも泣き出してしまいそうだった。

 

彼はそんな由紀を見てオロオロと焦り、その頭をそっと撫でてから彼女に告げた。

 

 

 

「出てかない!出ていきませんよ!?ほら…だから僕は嫌だって言ったのに!!」

 

 

由紀「…へっ?」

 

慌てる彼と、その発言を不思議に思い、由紀は顔を上げる。

するとすぐに胡桃が由紀の方を見て、気まずそうに答えた。

 

 

胡桃「ご、ごめん由紀…ドッキリなんだけど…」

 

 

由紀「…ドッキリ?」

 

 

胡桃「うん…コイツを外に連れ出して美紀と二人で説教してる途中で、結局のところ…今回のゲームの発端は由紀だって事に気づいてさ…」

 

 

由紀「ほっ…たん?」

 

 

胡桃「ほら…、お前がこんなゲームをやろうとか言わなきゃ…あたし達もコイツもお互いに騙し合うような事はなかったわけじゃん?だから…ようするに…」

 

 

「全部由紀ちゃんが悪いって言ってるんです。…あ、僕じゃなくて胡桃ちゃんが言ってるんですよ?僕はそんな事思ってませんから」

 

 

胡桃「ち、ちがうよっ!あたしも思ってない、思ってないけど……ただまぁ、少しだけ痛い目を見てもらおうかな?って思ってさ…」

 

 

由紀「それで…__くんが出てくドッキリをしたの?」

 

 

胡桃「う、うん…あたし達三人で考えた…」

 

 

美紀「いえ…ほとんど胡桃先輩が考えた物です!私と__さんは無理やり付き合わされて…」

 

「はい!その通りです!」

 

あっさりと仲間を売る彼と美紀…そんな二人の発言に、胡桃は慌てる。

 

 

胡桃「お前らだってそこそこ乗り気だっただろ!?今さらズルいぞ!自分達だけ良い顔しようとしやがって!!」

 

 

由紀「えっと…じゃあさっきのは私にイジワルしようとした胡桃ちゃんのドッキリで…__くんは…まだ私達と一緒にいてくれるの?」

 

 

「もちろん。これだけ騒がしく、楽しい毎日を覚えたら、もう一人には戻れないのでね…」

 

にっこりと微笑み、彼は答える。

由紀はその顔をみて一安心してから胡桃の方を向き、一言だけ呟いた。

 

 

由紀「…キライっ!!」

 

 

胡桃「んなっ!?」

 

そう言ってそっぽ向く由紀の手を胡桃は掴み、必死に謝る。

 

 

胡桃「ご、ごめんごめんっ!冗談だったの!本気にすんなよ!?悪かったって…怒るなよ~!」

 

 

由紀「………」

 

 

胡桃「ゆ、由紀さ~ん?機嫌…なおしてくれますかね?ほ、ほら!お菓子とか…あげるから…なっ?」

 

 

「由紀ちゃんにあそこまでヘコヘコする胡桃ちゃん…始めて見たんですが」ボソッ

 

 

美紀「…私もです」ボソッ

 

自分用にとっておいたお菓子を差し出してまで由紀の機嫌をとる胡桃を見て、二人はこっそりと笑った。

 

 

由紀「えへへ…うそだよ、胡桃ちゃん。」

 

由紀はくるっと胡桃の方へと振り向きにっこりと笑ってそう告げる。

胡桃はホッとしたような表情をしてから、改めて尋ねた。

 

 

胡桃「ほんとに?怒ってない?」

 

 

由紀「うん。ちょっとイジワルしただけ!私、胡桃ちゃん大好きだもん♪」

 

 

胡桃「て、照れるな…まぁ、とりあえずよかったわ…」

 

 

悠里「でも…ちょっとやり過ぎよ胡桃。私まで本気で信じちゃったじゃない!」

 

 

胡桃「わりぃ…りーさんに伝えるの忘れてたわ。」

 

 

由紀「にしても…今のドッキリはヒドイよ!やっていい事と悪い事の区別くらいつけなきゃ!!」

 

 

胡桃「それ…お前が言うのか。」

 

 

由紀「あのゲームはなんだかんだでみんな楽しんでたもん!胡桃ちゃんだって楽しかったでしょ?」

 

 

胡桃「…どうだろ、もうよくわかんないな。とりあえず、すごく疲れたよ…」

 

 

美紀「それは私も同感です。」

 

 

悠里「そうね…とりあえず夕飯の準備をして、今日は早めに寝ましょうか」

 

 

 

 

その後…

 

彼女達は全員で夕飯の準備をし、席につく。

そして…遂にその時がやって来た。

 

 

 

 

由紀「さて…いよいよだね。__くんが一番ドキドキした人に、この缶詰めを渡します!」

 

そう言って由紀はテーブルの中央に置かれた缶詰めを指差し、彼に尋ねた。

 

 

 

由紀「あなたが一番ドキドキしたのは…誰ですか!?」

 

 

「それって…二日間の中でですか?」

 

 

胡桃「いや、二日目はお前の復讐がメインになっちゃってたんだから無しだろ。初日だけで考えた方がよくないか?」

 

 

美紀「そうですね…私、二日目とかほぼ何も出来てませんでしたし、その方が助かります。」

 

 

悠里「じゃあそういう事で…__君、選んで?」

 

 

由紀「さぁ…どうぞ!」

 

彼は考えた…

昨日、自分を最もドキドキさせたのは誰なのか。

 

じっくり…じっくりと、目を閉じて考える。

 

 

そして、丸々一分ほど経った時…彼は目を開けて答えた、自分を最もドキドキさせた、その女性の名を…

 

 

 

 

 

 

 

「…りーさんで!!」

 

 

由紀「おぉっ!」パチパチパチ!

 

 

悠里「あら、ほんと?嬉しい…がんばって良かったわ!」

 

 

美紀「わたしもがんばったんですが…」

 

 

胡桃「…あたしもだよ」

 

選ばれて喜ぶ悠里とそれを拍手で祝福する由紀。

 

一方で胡桃と美紀は選ばれなかった事に落ち込む、死ぬほど恥ずかしい思いをしたのに…結局勝利を掴めない。

彼女達にとって、それはとても辛い事だった。

 

 

 

由紀「ねぇねぇ、りーさんのどこがポイントだったの?」

 

 

「そうですな…まず、耳掃除…これはヤバいです!忘れがちですが、僕とりーさんは同い年、その同い年の娘が…耳掃除してくれるんですよ?ヤバいですって!!!」

 

 

胡桃「おちつけ…お前のテンション以外、何がヤバいのか全然わかんないから…」

 

立ち上がって熱弁する彼を隣に座る胡桃が冷静に押さえ、席に座らせる。

彼は胡桃によって落ち着きを取り戻し、静かな口調で言った。

 

 

「聞きますが…あなた達は同じクラスの男子に耳掃除をしてあげた事がありますか?」

 

 

由紀「んーん、ない。」

 

 

美紀「あるわけないでしょう…」

 

 

胡桃「お前…なにいってんの?」

 

彼の問いに対して由紀は素直に答え、そして美紀と胡桃はあきれ顔で答えた。

 

 

「つまりはそういうことです…彼女でもない同い年の女子が耳掃除してくれる。このシチュエーションだけで…もう僕は萌え尽きました。」

 

 

胡桃「それがポイントだったなら、あたしのでも良くない?彼女でもない同い年の女子が手を握ってくるんだぞ?めちゃくちゃドキドキするじゃん!」

 

彼の感想を聞いてから、胡桃が不満げに呟く。

 

 

「確かに胡桃ちゃんのもかなりドキドキしました。でも、りーさんの耳掃除はただの耳掃除じゃなかったんです。」

 

 

美紀「なんです?上手だった…とかですか?」

 

 

「……はい。…そんなところですかね」

 

 

胡桃「上手な耳掃除は、手を握るのにも勝るのか…」

 

 

由紀「へぇ…りーさん!また今度私もお願いしていいかな?」

 

 

悠里「ええ、いいわよ。」

 

 

由紀「えへへ~!やったぁ♪」

 

 

美紀「由紀先輩…りーさんの子どもみたいですね」

 

 

「ま、そんなわけですので…この缶詰めはりーさんに渡して良いんですよね?」

 

テーブルに置かれた缶詰めを片手に、彼が由紀に尋ねる。

由紀がそれに笑顔で頷くと、彼はそれを悠里へと手渡した。

 

 

 

「どうぞです…。おめでとさん」

 

 

悠里「ふふっ、ありがと♪」

 

悠里がそれを受け取ってから、一同は手を合わせ…食事を始める。

ゲームに勝った悠里だけが…一品多い食事だった。

 

皆が注目する中で悠里はその缶詰めを開け、そっと一口…それを食べる。

 

 

 

悠里「………」モグモグ

 

 

由紀「どう…?美味しい?」

 

 

胡桃「ただの缶詰めなら珍しくないけど…」

 

 

美紀「高級缶詰めって書いてありますからね…どうなんでしょうか」

 

 

「………」

 

 

 

 

悠里「……うん、美味しいっ!普通の缶詰めとはなんか違う気がするわ。」

 

一口食べてから悠里はにっこりと笑い、その缶詰めを見つめた。

 

 

胡桃「マジか…やっぱり美味いんだ。」

 

 

由紀「高級…だからね!」

 

 

美紀「この缶詰め…高級って書いてありますが、実際はいくらなんですか?」

 

強気に『高級』と書かれたそのラベルを見つめ、美紀はこれを見つけた彼に尋ねた。

 

 

「さぁ?棚の下に転がってたんで、値段までは分からないです。」

 

 

美紀「そうですか…気になるなぁ。」

 

 

 

悠里「本当に美味しいわよ…ほら、みんなも食べて?」

 

悠里はそう言って缶詰めをテーブルの中央に置き、全員の顔を見回した。

 

 

胡桃「いや、ゲームで勝ったのはりーさんだし、一人で食べなよ。だいたい…これ量が少し少ないから、みんなで分けたらなくなっちゃうよ?」

 

 

悠里「いいの!一人で食べてもつまらないし…みんなで分けて食べましょ!」

 

 

美紀「でも、ゲームの意味が…」

 

 

悠里「あれはただ楽しむ為にやった…そう考えましょ?」

 

悠里は箸でその缶詰めの中身を一口分だけ取りだし、由紀の口へと運んだ。

 

 

悠里「由紀ちゃん、あ~んして?」

 

 

由紀「…いいの?ほんとに?」

 

 

悠里「いいの!ほら…、はやく。」

 

 

由紀「…えへ、わかった!あ~~ん」

 

 

美紀(やっぱり由紀先輩…りーさんの子どもみたい)

 

少しだけ躊躇いつつも由紀はその口を開ける。

悠里はそこに箸を運び、由紀に缶詰めの中身を分け与えた。

 

 

 

由紀「お~!ほんとだ!!おいしっ~!」

 

 

悠里「でしょ?ほら…みんなも一口ずつ食べてね?」

 

 

胡桃「……いいの?」

 

 

美紀「なんか、悪い気がしますけど…」

 

 

悠里「あぁもう!遠慮しないの!」

 

面倒そうに言う悠里を見てこれ以上断り続けるのも悪いと思い、胡桃達も渋々それに手をつけた。

 

 

 

胡桃「うわ…うまっ!何これ…」

 

 

美紀「缶詰めですが…缶詰めじゃないみたいです。美味しい…」

 

 

悠里「ふふっ、やっぱりみんなと分けた方が美味しいし…楽しいしわね。ほら、__君も食べてね?」

 

 

「…はい、いただきます。」

 

彼はその缶詰めに箸を伸ばしながら思った。

自分が誰を選ぼうと、きっと彼女達はこうして他の人にも分けていただろうと…

 

この光景を彼は最初から予想していた為、箸を伸ばしながら…予想通りのその光景に思わず笑ってしまう。

 

 

胡桃「ん?なに笑ってんの?」

 

 

「いや、なんでもないよ…」

 

 

(りーさんだったからって訳じゃない。由紀ちゃん、美紀さん、胡桃ちゃん…誰を選ぼうと、きっとこの人達はこの缶詰めを一人では食べず、分け与えたと思う。そういう…優しい人達だからな…)

 

 

カツン…カツン…

 

 

「…ん?」

 

 

カツン…カツンッ!

 

彼は不思議に思った。

悠里が分け与えてくれたその高級缶詰め…その中をいくら箸で探っても、箸が缶に当たる音がするだけで一向にその中身を掴めない。

 

 

(…変だな)

 

彼はそれを手に取り、中身を覗き込む。

 

 

 

「………っ!?」

 

 

 

 

悠里「…どうかした?」

 

缶詰めを持って黙る彼を見て、悠里は声をかける。

彼はそっとその缶詰めをテーブルに置き、残念そうに言った。

 

 

「か、空っぽでしたぁ…」

 

 

悠里「えっ!?」

 

中身を覗き込む悠里、確かにその中にはもう具は入っておらず、わずかに残るのは底にたまった汁のみだった。

 

 

悠里「あ、あら…ご、ごめんね?ちゃんと量を確認すれば良かったわね、悪いことしちゃった…」

 

 

「いえ…大丈夫です…」

 

 

由紀「ほ、ほら!まだ少しだけスープが残ってるよ!?これ飲みなよ!」

 

そう言って由紀は残念そうな顔をする彼に缶詰めを渡した。

彼は少しだけ間を開けてからそれを口につけ、底に残った汁だけを飲む。

 

 

「………」

 

 

美紀「ど…どうですか?」

 

 

由紀「美味しい…よね?」

 

 

 

 

「…………しょっぱい」

 

そう一言呟き、彼はその缶詰めをテーブルに置く。

カランカラン…と、むなしい音が車内に響いた。

 

 

 

悠里「ざ、残念…だったわね」

 

 

「いえ…お気になさらず…」

 

 

由紀「また…見つかるかもよ?ほら、元気だして!」

 

 

美紀「そうですよ!ね、胡桃先輩?」

 

 

胡桃「ん、ん~…そだなぁ」モグモグ

 

先程もらった缶詰めの中身を味わうようにしてじっくりと噛みながら胡桃は答える。

そんな彼女を見た由紀は一つのアイデアを思いつき、立ち上がってそれを彼に伝えた。

 

 

由紀「__くん!!まだ諦めるのは早いよ!胡桃ちゃんがまだ食べてるから…口移しでそれをもらえば…」

 

胡桃はそれに凄まじい速さで反応して立ち上がり、由紀が言い切る前にその頭を叩いた。

 

 

バシッ!!

 

由紀「イタぁっ!」

 

 

胡桃「バカなこと言うな…怒るぞ!」

 

 

由紀「もう怒ってるよぉ~。」

 

 

胡桃「ったく!」

 

由紀に呆れながら再び席に座る胡桃。

直後に胡桃は隣に座る彼に肩を叩かれ、そっとそちらを向いた。

 

 

胡桃「ん~?なに?」

 

 

「もう…飲み込んじゃった?」

 

 

胡桃「~っ///お前…ほんっとにバカだな!!」

 

 

「冗談だよ冗談、やだなぁ…本気にしちゃって~。」

 

顔を赤らめる胡桃を見て彼は小馬鹿にしたようにヘラヘラと笑い、食事を続ける。

 

 

「だいたい、僕が本気で口移しを求めるような人間だと思いま…」

 

胡桃「思う」

 

目の前の食料を食べながら言った彼の言葉に胡桃は即座に答え、その目を睨んだ。

 

 

 

「いや…まぁ確かに口移ししてくれるなら食べますけど。そんな食い気味に答えなくても…」

 

 

胡桃「少なくとも、あたしは一生そんな事しないから…ちゃんと覚えとけよ。」

 

 

悠里「私もね」

 

 

美紀「同じく」

 

 

由紀「私も~」

 

 

「はいはい…まぁ、元からそこまで期待はしてませんよ。」

 

そんな下らない会話をしながら彼女達は食事を終え、その片付けをしてから服を着替える為に彼を外に出す。

 

 

 

胡桃「じゃ…終わったら呼ぶから、それまで大人しくな?」

 

 

「ねぇ、思ったんだけど僕はわざわざ外に出なくても目だけ瞑ってれば…」

 

バタンッ!!

 

彼の意見は最後まで聞かれる事なく、ドアによって阻まれた。

 

 

 

「さすがにもうヤバいって分かってるから…覗いたりしないのになぁ。信頼されてないな~…」

 

夜の外…ライト片手にそう呟きながら、彼は車から少しだけ離れたところで彼女達に呼ばれるのを一人で待つ。

 

一方で彼女達は彼のいない車内で着替えを始めながら、途中で由紀に仕掛けたドッキリの話をしていた。

 

 

 

胡桃「どう?アイツが出てくって言った時…焦った?」

 

 

由紀「焦ったっていうか、悲しかったよ!今まで楽しく過ごしてたように見えてたのに、ほんとは一人の方が楽だったのかな…とか思っちゃったし」

 

 

悠里「私もビックリしたわ…あんな心臓に悪いドッキリ、もうやめてね?」

 

 

胡桃「わるいわるい、もうしないよ。」

 

 

悠里「あれ…三人で外に出てる間に考えたのよね?二人とも最初は__君を説教するために出て行ったのに、いつから標的を由紀ちゃんにしたの?」

 

 

美紀「__さんへの説教自体は一時間くらいで終わりました。本人がそれなりに反省していたのもありますし…何より元々仕掛けたのは私達ですからね。そんなに強くは怒れませんでした。」

 

 

胡桃「まぁ、一時間説教してる時点で中々に効いただろうしな…」

 

 

悠里「あなた達、外に六時間くらいいたけど…じゃあ残りの五時間は何をしていたの?」

 

 

胡桃「由紀にやるドッキリの内容考えてた…」

 

 

悠里「五時間も?」

 

 

胡桃「ず、ずっとそればっか考えてた訳じゃないよ?ちまちま普通にお喋りしたりもしてたけど…まぁ、ほとんどはそれかな?」

 

 

悠里「呆れた…あんまり長いから途中で探しに行こうかと思ったけど、みんな窓の外見たら普通に近くにいたのよね。だから…説教が長引いてるとばかり…」

 

 

美紀「離れると心配かけるでしょうから、ずっと近くにいました。」

 

 

胡桃「夢中になり過ぎて…昼飯食うの忘れたわ。」

 

 

美紀「ですね…おかげで夕食がいつも以上に美味しく感じました。」

 

 

由紀「私達は普通に食べたよ。ね、りーさん!」

 

 

胡桃「呼んでくれれば良かったのに…」

 

 

悠里「__君を外に連れ出す時の二人が怖くて…邪魔しちゃ悪いと思ってたの」

 

 

美紀「まぁ、あの時は…かなり本気で怒ってましたからね」

 

 

胡桃「たぶんあたしよりも美紀の方が怒ってたよな?最初の説教も一時間くらいで終わったって言ったけど、あたしが五分…美紀が五十五分くらいの割合だったし」

 

 

美紀「…前から気になってたんですが、胡桃先輩は__さんに対して少し甘くないですか?」

 

 

胡桃「えっ?そうかな…」

 

 

美紀「そうですよ!あの人が謝ると胡桃先輩はあっさりと許します。」

 

 

胡桃「まぁ…アイツは普段よく頑張ってくれてるし、基本的にはいい奴だろ?だからさ…なんていうのかな、あんまり憎めないんだよね」

 

 

悠里「本当に胡桃は優しいのね…。私、胡桃が彼を外に連れ出した時はさすがに殺しちゃうかと思ったわ」

 

 

由紀「わ、わたしも~…」

 

 

胡桃「失礼だな!?まぁ、美紀は本当にアイツを殺しそうなくらい怒ってたけど…」

 

 

美紀「うっ…だって冗談半分で告白みたいな事をするとか…ひどくないですか?」

 

 

由紀「で…、その返事はどう返す気だったの?もしかして…オッケーしようと思ってた!?」

 

 

美紀「…しません!お断りするつもりでした!!まだそこまで親しくはないですし。」

 

 

由紀「え~?そうかなぁ…仲良いじゃん」

 

 

美紀「友達としてはそうかもですが…恋愛的な意味ではまだ少し、ってところですかね。」

 

 

由紀「ほんとかな~?嘘…ついてない?」

 

 

美紀「…怒りますよ?」

 

 

由紀「ご、ごみん…」

 

 

由紀「ま、まぁでも…結局__くんは私達の事好きだし、みんなも__くんが好きなんだよね?」

 

 

由紀「わたしは大好きだよ!もちろん…りーさんも胡桃ちゃんもみーくんもね!!」

 

 

胡桃「ま…、アイツが好きかどうかはさておき、嫌いなヤツはこの中にはいないだろ。」

 

 

由紀「あ!私それ知ってるよ!『ツンデレ』ってヤツでしょ?さっすが胡桃ちゃん!!」

 

 

胡桃「おい…本気で怒るぞ?」

 

 

由紀「ご、ごめんなさい…。も~!みーくんも胡桃ちゃんもすぐ怒る~!」

 

 

美紀「ふざけた事ばかり言ってるからですよ。」

 

 

悠里「でも…よかった。一時は本気で喧嘩になるかと心配したけど…みんな仲良しみたいね、ひと安心だわ。」

 

悠里が肩を撫で下ろしてひと安心する。

そして彼女達は全員着替えを済ませ、美紀が彼を呼びに向かった。

 

 

 

美紀「お待たせしました。もう良いですよ!」

 

美紀は少し離れたところで座って待機していた彼の元に駆け寄り、優しく声をかける。

彼は美紀に声をかけられるとすぐに立ち上がり、彼女を見つめた。

 

 

「了解です。じゃ、帰りますか」

 

 

美紀「はいっ。」

 

彼は車に近付き、そのドアに手をかける…

 

 

美紀「あのっ…」

 

「はい?」

 

美紀に声をかけられ、その手を止めた。

 

 

美紀「いえ、今日は…お疲れさまでした。楽しかったです!」

 

 

「…はい、楽しかったですね。」

 

 

美紀「ふふっ…それを伝えたかっただけです。…さっ、戻りましょ?」

 

そう言われて彼はドアを開き、彼女達の待つ車内へと入る。

 

また明日からは場所を少しだけ変え、探索を始めねばならない。

彼女達は疲れていたせいかいつもより早めに明かりを消し、そのまま眠りにつく。

 

 

この2日間かなり疲れはしたが、彼女達にとって…それは楽しい思い出になった。

 

 

 

 

 




今回は本編では語られなかった裏設定をこの後書きにて補足いたします。


裏設定その一

彼が書いた誓約書…あれ自体は後に三人が口論して、由紀ちゃんをドッキリにハメるきっかけを作れるようにと胡桃ちゃんが考案した物ですが、その内容は完全に彼のアドリブです。
なので二人の名字を間違えたのは冗談ではなく、本気ですし…
その後に続けて書かれていた文章に胡桃ちゃんとみーくんは本気でイラっとしました。


裏設定その二

彼が今回のゲームの勝者としてりーさんの名をあげた理由…
彼は言いました…『りーさんの耳掃除はただの耳掃除ではなかった』と…
直後に美紀に『上手だったとかですか?』と聞かれて彼はそれに頷きましたが…本当の理由は他にあります。

本当の理由…それは耳掃除の終盤、りーさんが見せたヤンデレオーラに心底ハマってしまったからです!
(少しだけ彼が危ない人に思えますが…相手がりーさんでは仕方ないのかもしれません)
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