グアァァ…
胡桃「はぁっ!!」ブンッ!
グシャッ!!
「っ!!」グサッ!
激しい雨に打たれながら、必死に門を開けようとする由紀と美紀…
二人が門を開けている間、胡桃はシャベル…彼はナイフで、迫る"かれら"の頭を潰し、刺していく。
そうして一体一体を確実に仕留める二人だったが、倒せど倒せど"かれら"の数は一向に減らず…次々と新手が路地裏から姿を現し、彼女達を襲おうと歩み寄ってくる。
…ァアアッ
「胡桃ちゃんっ!まだ大丈夫かなっ!?」グサッ!
胡桃「平気だっ!今のところはな……」
由紀「うぅ…うぅ~っ!!」
美紀「ぐ…っ!!はやく…はやくっ!」
ギギギ…と鈍い音をたて、少しずつ…少しずつ門は開いていく…
だが、車が通るにはもう少しだけ開く必要がある。
二人はその門に向けて、必死に力を込めた。
グアアァッ!!
「うおっ!!?」
一体に掴まれそうになるのを彼はギリギリのところでかわし、掴み損ねてバランスを崩しているそれの頭を突き刺す。
ザクッ!!
「あぁっ、数が多いなぁ…!!はやく門を開く為に、胡桃ちゃんも由紀ちゃん達を手伝ってあげた方が…」
胡桃「バカ言うなっ!これだけの数、二人で相手しててもギリギリなんだ!!ここであたしが少しの間でも抜けたらお前が危ないだろ!!」ブンッ!!
シャベルで"かれら"をなぎ倒しながら、胡桃はチラッと一瞬だけ彼を見つめて言った。
「確かにね……でも、このままじゃ…」
…ァアア!
胡桃「くっ…!!」ブンッ!
グシャッ!!
胡桃(こいつら、倒しても倒しても全然減らない…!それどころか、奥からどんどん出てきやがる!!それに……)
グアアァァッ!!
「…ぐうっ!!?」
ドンッ!
迫る群れを一体ずつ仕留める中…掴みかかる一体への反応が遅れ、彼は両肩を掴まれる。
雨で足下が悪い事もあって踏ん張りが効かず、彼はそのままそばのキャンピングカーへと押さえつけられた。
胡桃「っ!?待ってろっ!!すぐに――」
彼の元へと駆け寄ろうとする胡桃だが、彼は押さえつけられながらも目の前の敵の顎から脳天へとナイフを突き刺し、危機を脱する…
仕留めたそれを押し退けて地面に転がし、彼は胡桃に告げた。
「大丈夫!!平気っ!」
胡桃「まったく…危なっかしいんだよ!!」
彼が無事な事に安堵しつつ、胡桃は一つの事実に気がつく
"かれら"を間近に見て、戦いながら感じていた一つの違和感…それが確信に変わり始めていた。
胡桃(まただ…!今あいつを押さえつけたヤツ…あたしを無視してまであいつを襲った!)
胡桃(いや、よく見ると…どいつもこいつもあたしを…あたしだけを無視してる!?)
バンッ!バンッ!
悠里「きゃっ!?」
胡桃「チッ!!?」ブンッ!!
グシャッ!
胡桃のそばのキャンピングカー。
その運転席に悠里を見つけた一体が、彼女に襲いかかろうと車の窓を叩く。
悠里の声でそれに気付いた胡桃は慌ててシャベルを振り、それの頭を砕いて仕留めた。
胡桃(コイツもだ…そばのあたしを無視してまで、運転席にいる…りーさんを窓越しに狙いやがった!)
胡桃(あいつも、りーさんも、それに後ろの由紀も美紀も狙われてるのに、あたしだけは狙われてない?)
胡桃(なんだよ……あたしは、お前らと同類って事かよ…!)
胡桃「くそっ…くそっ…くそぉっ!!!」
目の前の"かれら"が自分だけを無視し、他の人物を襲おうとするその光景に胡桃は苛立ち、自ら群れの中へと突っ込もうと駆け出す。
「なっ!?…ちょい!!何してんのっ!!?」パシッ!
それを見た彼は慌てて胡桃の手首を掴み、無理やり動きを止めて声をかけた。
胡桃「奴らの注意を引かないと…このままじゃヤバいだろ!?」
「だからって…!!」
…ァアアッ!
彼が胡桃を止めていてもお構い無しに、"かれら"は背後から襲いかかる。
標的は当然のように…胡桃ではなく、彼だった。
胡桃「くっ!?どけっ!!」
「ッ!!?」
彼のすぐ背後に"かれら"が迫るのを見た胡桃は彼を押し退け、シャベルを振るう。
そうしてそばまで来ていたそれを二体を倒し、それから胡桃は彼に向けて言った。
胡桃「ほらっ!あたしの事はほっといて良いから、自分の身を守れ!!」
「なっ!?ほっとける訳がないでしょ!?バカな事を――」
そこまで言いかけた彼だが、今は彼女と争っている場合ではないと考え…周囲に気を張り巡らせつつ彼女をなだめた。
「……二人でどうにか持ちこたえよう。落ち着いてね?」
胡桃「………」
胡桃「……ああ、わかったよ」
胡桃はシャベルを構え直し、雨に濡れた前髪を手でかきあげてから迫る群れを真っ直ぐに見据える。
彼はそれを見てから由紀達の方に目を向け、自分の警戒をすり抜けて接近する者がいないかを確認する。
そして彼女達の周囲は安全なのをその目で確認してから胡桃同様に群れを見据え、ナイフを構えた。
…ァアア!
「ふっ!!」ズバッ!!
彼は自分に接近する一体の首を目掛けて思いきりナイフを振り、首をはねて仕留める…。
頭を失い、崩れ落ちる体…だが一体だけ倒しても意味は無く、その後も間髪入れずに次々と"かれら"は襲いかかる…
彼と胡桃は門が開くまでの時間、それをしのぐのに必死になり、武器を振るった。
ウァァ…ァア
胡桃「っ!」グシャッ!
グアァァッ!
「くっ!!」グサッ!
二人は慎重に、かつ正確に頭を狙い…"かれら"を一体ずつ、綺麗に一撃で仕留めていく。
だが"かれら"の数は減るどころか増え続け、仕留められた同族の死体を踏みながら、彼女達をジリジリと…確実に追いつめていった。
「はぁ…はぁ……あぁ、まったく…!減りやしない…!!」
胡桃(こいつらやっぱりあたしじゃなく、あいつを狙いやがる!早くしないと、このまま長引けば…ほんとに…)
二人でこの群れを相手にしてから、まだほんの二、三分しか経っていない。
しかし大雨の中で迫る"かれら"を相手に逃げる事も出来ず、連続で戦い続けるのはかなりの体力を使う…
徐々に体力を失い、動きの切れが鈍る彼を見て胡桃は焦った…
だがその直後、悠里の乗ったキャンピングカーが突如動きだし…いつの間にか開かれていた門を通って中へと入っていった。
「おっ!?…よし、開いたみたいだ…!」
胡桃「や、やっとか…」
由紀「胡桃ちゃんっ!__くんっ!!二人もはやく中にっ!!」
美紀「急いで下さいっ!!」
門の内側から、由紀と美紀が二人を大声で呼ぶ。
「…胡桃ちゃん!」
胡桃「ああ!行くぞ!!」
ここで二人は初めて"かれら"の群れに背を向け、門の中へと逃げ込む。
門までは10mと離れていなかったのですぐに逃げ込めたが、問題はその後…"かれら"が入らぬように今開いたばかりの門を閉じる事だった。
美紀「二人とも怪我は!?」
胡桃「大丈夫だ!それより早く門を閉めるぞ!!」
彼女達は慌てて門を横に押し、閉じようとする…
悠里もすぐに車から降りてきてそれを手伝い、"かれら"がすぐそばまで迫る中…全員で門を押した。
ギギギ…ギギッ…ガシャンッ!!
開くのは遅かった門だが、全員で押したのが効いたのか閉じる時はあっさりと閉まり、彼女達はそこから数歩離れる。
閉めた直後、すぐに"かれら"が門を掴み、ガシャンガシャンと揺らし始めた
閉めるのが後ほんの数秒でも遅かったら、侵入されていたかもしれない。
美紀「はぁっ…はぁっ…ギリギリ、でしたね?」
胡桃「…だな」
悠里「はぁ……。この門…ロックとか掛けなくても大丈夫かしら?」
「奴らは門の開け方分かってないみたいだし、とりあえずは大丈夫でしょう。ロック掛けようと近づいた時に隙間から手でも掴まれて噛まれたら大変ですし…」
悠里「そうね…かなり丈夫そうだから、ああして揺らされてるだけなら簡単に壊れる事も無さそうだし」
由紀「うぅっ、疲れたぁ~っ!」
豪邸の庭、雨でぐしゃぐしゃになっているその芝生の上に由紀は寝転ぶ。
悠里「あっ!由紀ちゃん、服汚れちゃうわよ!?」
由紀「だって疲れたんだもん…それにもうビショビショになっちゃってたし…」
悠里「それは…そうだけど」
美紀「あっ、傘…門の外に置きっぱなしにしちゃいました。」
雨に打たれ、ビショビショに濡れるそれぞれの姿を見て…美紀がボソッと呟く。
その直後、全員が同じ答えを返した。
「ああ…そういえば僕もだ」
胡桃「あたしも…」
悠里「……私も」
由紀「当然、わたしもっ!」
全員が雨に打たれながら"かれら"がいる門の外を見つめ、深くため息をつく。
悠里「まぁ、傘くらいはすぐに見つかるだろうから気にしないようにしましょう…」
美紀「ええ、命が助かったなら傘くらいは仕方ないです。」
胡桃「あの門開くの、かなりギリギリだったな。後少しでも遅れたらヤバかった」
美紀「中々開いてくれなくて大変でした。途中、りーさんが車から降りて手伝ってくれたので良かったです。」
胡桃「りーさんも手伝ってたんだ、全然気づかなかった…」
悠里「と言っても…途中からだけどね。胡桃達は大変だったから、気づく余裕が無かったのよ。お疲れさま。」
「あぁ…、本当に疲れた…」
胡桃「こんなにしんどいなら、無理やり車で轢いて突破した方が良かったかもな…」
美紀「ま、良いじゃないですか。無事逃げ込めた訳ですし、後はこの群れがどこかにいなくなるまでここで過ごしましょう。」
「こいつら…どんどん増えてる。いったいどこからわいてくるんだ?」
こちらを見つめ、門の隙間から必死に手を伸ばす"かれら"を見て彼が呟く。
その数は少しずつ増していき、今や30体近くが門に迫っていた。
美紀「私達が視界に入っていると興奮させてしまうかも知れません。とりあえず、車の中にでも隠れましょうか?」
胡桃「いや、せっかく門をこじ開けてまで中に入ったんだし、この家の中を見てみても良いんじゃないかな?」
悠里「うーん…、それもそうね。鍵とか掛かってないといいけど…」
胡桃「そしたら仕方ない。窓を割ってでも入る…」
そばにある豪邸を見ながら、中に入る事を決めた三人。
ふと目線をそこの玄関に向けると、すでに彼と由紀がそこに立っていた。
美紀「あの二人は…元から入る気満々だったみたいですね…」
胡桃「ったく…いつの間に」
由紀「どうかな?開いてる?」
由紀に尋ねられ、彼はその大きな扉の取手を引く…
ガチャガチャ…ガチャガチャ
「…ダメですね。鍵掛かってます。」
由紀「ぬ~、残念だね…」
がっかりする由紀の背を背後から胡桃がバンッと叩き、声をかけた。
胡桃「どうした?鍵でも掛かってたか?」
由紀「…うん。これじゃ入れないね、どうする?」
胡桃「仕方ないか…。どっかの窓割って、そこから入ろうぜ」
由紀「ひ、人の家の窓を割るのっ!?胡桃ちゃん
胡桃「なっ!?だから仕方ないって言ってるだろ!このままあいつらがいなくなるまで雨の降る外で待つ訳にもいかないし、かといってそばにこんな家があるのにわざわざその庭に停めた車の中で過ごすのも馬鹿馬鹿しい。それに…もうここには誰もいないだろ?」
由紀「わかんないよ?ちょっとノックしてみよっか!」
由紀はそう言ってドアの前に立ち、右手でドアをノックした。
コンコンコンッ!
由紀「………」
胡桃「………」
由紀「反応なし…かな?」
胡桃「いや、そもそもお前のノックがダメなんだよ。こんなデカイ家にあんな気の抜けたノックしても気づかれる訳がない。よし、見てろ…」
由紀を押し退け、今度は胡桃がドアの前に立ち、右手で固く拳を作ってからそのドアを叩いた。
バンバンバンッ!!!
由紀「おぉ!豪快だね!?ドアを壊そうとしてるの?」
胡桃「ノックしてるんだよっ!!」
ドアの前で騒ぐ二人を見て、ある事に気づいた美紀が彼と悠里に囁く。
美紀「あの…二人に教えてあげた方が良いですかね?ドアの横に呼び鈴があるの…」
「いえ、面白いからいつになったら気付くか見てましょう。」
悠里「はぁ、まったく…」
由紀「胡桃ちゃんがあそこまで叩いたのに反応がないって事は…やっぱり留守かな?」
胡桃「ほら、だから言ったろ。どうせ誰も…」
ガチャ…ッ…
由紀と胡桃が諦め、ドアから目を離したその瞬間に中で鍵を開けるような音が鳴り、そっとドアが開き始めた。
ギィッ…
胡桃「なっ!?」
由紀「あっ…」
??「えっと、どうか…しましたか?」
驚く彼女達の視線の先、開かれたドアの向こうから現れたのは…綺麗で長い黒髪の、彼女達と同い年くらいであろう少女だった。
彼と胡桃ちゃんの活躍のおかげでどうにか"かれら"の群れをしのぎ、全員で門の中へと入る事が出来ました。
そして門を越えた先の大きな家…その中から現れた少女、彼女についてはまた次回にでもプロフィールを出します(^^)
Ps.『がいでんぐらし!』へのリクエストを下さった皆さん、本当にありがとうございます!
イメージが固まった物から書いていくので、いくつかのリクエスト作品は多少遅れるかもですが、どうか気長にお待ち下さいm(__)m
リクエストの方は活動報告の方で随時受け付けてますので、気楽に書き込み下さいませ( ☆∀☆)