軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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今更ながら今現在、未奈の好意で彼女達が住まわせてもらっている家のスペックを大雑把に解説します。

高い塀と固い門により"かれら"の侵入を防ぐ水無月未奈の家…水無月邸ですが、この家には発電機がありません。
その為昼間はカーテン等を開けて外から光を取り込み…雨天時や夜間は電池式の明かりを使う事で室内を照らしています。

しかし、雨水を蓄える設備があるため、トイレはしっかりと流すことが可能です!(トイレ内は暗いので明かりが必要ですが…)

少しでも暮らしを改善する為にゲンジ君が家庭用の発電機を求めて度々探索に出ますが…発電機は未だに見つかっていません。
因みに彼は外に出るときは門を使わず、裏庭の方に置かれたハシゴを使って塀を乗り越えます。(門が固くて開けるのがめんどくさいからです)


本当にかなり大雑把ですが、とりあえず解説を終わりますm(__)m



六十七話『ねがお』

 

 

 

胡桃「…はぁ」

 

 

美紀の部屋から出た直後…。胡桃は彼の部屋の前に立ち、ため息をつく。

彼に会いに行く理由はただ一つ。あの時、怒鳴ってしまった事を謝る為だ。恐らく…彼はあの事を気にしてはいない。わざわざ謝る必要も無いかも知れない。それでも彼に謝りに来たのは、胡桃自身が気にしていたからだった…。

 

 

 

胡桃(起きてるかなぁ…)

ガチャッ…

 

ドアノブをひねり、扉を開ける。彼が眠っているなら、恐らく室内は暗くなっているハズだが、電気ランプの明かりは未だについており、室内をほんのり照らしていた。

 

 

 

胡桃(おっ?起きてるっぽい)

 

その明りを見た胡桃は少しだけ微笑み、ベッドの上で横になる彼の元に歩みよる。そしてそばに歩み寄ったところで顔を覗き込み…彼女はようやく彼が既に眠っている事に気がついた。

 

 

 

胡桃(…なんだ、もう寝てたか。)

 

胡桃(布団もかけてない…。おまけに明かりはつけっぱなし…まったく、しっかりしろっての…。)

 

 

 

 

 

「Zzz…」

 

胡桃(ま、それだけ疲れてたんだろうな…。)

 

風邪でもひいたら大変だ。そう思った胡桃は両手で布団を引っ張り、それをそっと彼の体にかける…。ずいぶんと気持ち良さそうな寝顔だ。よほど疲れていたのか、それとも…

 

 

 

胡桃(いつも椅子で寝てるからな。久し振りのベッドがすごく楽なのかも…。)

 

胡桃(あまり疲れるようならベッド貸してやるっていってんのに、一度も借りにきたことないよな、こいつ。遠慮してんのかなぁ…?)

 

 

「Zzz…」

 

 

胡桃(気持ち良さそうに寝てるな~…。仕方ない、自分の部屋に戻るか…。)

 

ぐっすりと寝ているのに、いちいち起こすのはかわいそうだ。彼に謝るのは明日に持ち越す事に決め、胡桃はこの部屋のランプを消そうと歩き出す。

 

 

 

胡桃「………」

 

…だが、胡桃はその歩みをすぐに止め、改めて彼の寝顔を見つめた。

思い返せば、ここまでハッキリと彼の寝顔を見たのは初めてかも知れない。それに気づいた瞬間、なんだか不思議な気分になり…ベッドのそばにかがんで真横から彼の寝顔を凝視する。

 

 

 

胡桃(こうして見ると…わりと整った顔してる…)

 

胡桃(肌綺麗だし…まつ毛も長い。鼻もそこそこ高いよな?)

 

 

胡桃(鼻……鼻……鼻?)

 

 

 

胡桃「………」

 

 

 

 

胡桃(…鼻塞いだら、苦しくて起きるかな…)

 

なんとなくそんな事を考えてしまい、思わず手が出そうになる。

だが、今は我慢だ。今日は本当に疲れたハズ…。そんな彼を下らない冗談なんかで起こしたら、さすがに罪悪感がヒドイだろう。

 

 

 

 

胡桃(我慢我慢…と。)

 

ウズウズする手を気持ちで抑え、立ち上がろうとする胡桃だったが…最後にもう一度だけ、彼の顔を近くから見つめたくなる。

なんとなく興味がわいただけ…。だから、今よりももっと近くで…。どうせ起きてはいないのだから…。

 

 

胡桃「………」

 

胡桃は彼が起きないよう、そっとベッドの上に乗る。だがどんなに慎重に、ゆっくりと乗っても多少の音はしてしまうようで、胡桃が体を動かす度に『ギッ…』という小さな音が鳴った…。

しかし、疲れている彼はその程度では起きる事なく、相変わらずぐっすりと眠っていた。

 

 

 

胡桃(な、なんでこんな事してんだろ…。もし起きちゃったら、あたしがおかしい奴になるじゃん…)

 

ベッドの上に乗った後、冷静になった胡桃は一人顔を赤く染めた。

このままそっとベッドを降り、つけっぱなしの明かりだけ消してあげてから部屋を去ればいい。頭ではそう考えているのに、無意識の内に体が動き…自身の顔を彼の顔へと寄せていってしまう。

 

 

もう、二人の顔の距離は20cm程度しか離れていないだろう。胡桃は縛っている髪が彼の顔に当たらぬよう、それを自身の肩にかけておく。

 

 

 

胡桃(全然…起きないな。)

 

「Zzz…」

 

 

 

胡桃(ま、今起きられたらあたしがすごく困るから…起きなくていいけどさ…)

 

「Zzz…」

 

 

 

寝息をたてて眠る彼の顔を上から静かに見つめていると、不意に目が潤んできた…。何故だろう?いつも面倒をかけてしまっているからだろうか…。それとも、今日…怒鳴ってしまったからだろうか…。

理由は分からないが、何だか胸が痛い。

 

 

 

胡桃「………」

 

胡桃(そういえばあたし…いつもこいつにキツく当たってる気がするな…)

 

 

胡桃(今日なんか、あたしの事を思って止めてくれたのに怒鳴っちゃったし…)

 

 

胡桃(文句一つ言わずにあたし達を守ってくれてんのに…。あたしってやつは…)

 

明日、絶対彼に謝る。でも、それよりも先に…眠っていてもいいから…、とりあえず一度謝っておこう。そうでもしないと、胸が痛くて潰れそうになる。

 

 

 

胡桃「今日は…ごめん…」

 

 

 

 

胡桃「いつも…ありがとう。…お休み」

 

耳をよくすまさないと聞こえないほど小さな声で胡桃は囁き、そっとその場を去ろうとする。

だが…

 

 

胡桃「……っ!」パサッ

 

動いた拍子に肩にかけていた髪がスルッとベッドの方へと流れ、眠る彼の顔を直撃した。

 

 

 

胡桃(ヤバっ!?髪どかさないと…!!)

 

慌てて髪を肩にかけなおす胡桃だが、既に手遅れ…

彼の目はパチッと開き、目の前の胡桃を眠そうな目で見つめていた。

 

 

 

 

胡桃「あ…あぅ///そ、そのっ…///あたしは…///」

 

彼が目を覚ました事に気づいた胡桃は顔を真っ赤にして慌て始め、両手をパタパタと振りながら一生懸命にこの状況を切り抜けられる言い訳を考えた。

 

 

 




目覚める彼…視界に入るのは自分の眠るベッドにいつの間にか乗っている胡桃ちゃん。

彼女がどう言い訳してここを切り抜けようとするのか…そもそも切り抜けられるのか…その答えは次回明らかになります(笑)
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