軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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七十二話『だれかが』

 

 

 

 

 

 

悠里「…これも、ここに置いていいですか?」

 

未奈「うん!食料は全部そこでいいよ~。生活用品だけ、あっちの方に置いてくれるかな?」

 

悠里「はい、わかりました!」

 

屋敷内の部屋の一つ…。未奈が倉庫代わりに使っている段ボールだらけの部屋に、先ほどスーパーから持ち帰った物資を集めて保管していた。最初は未奈が一人でそれをやろうとしていたが、悠里が彼女一人では大変だと気を使い、手伝う事となった。

 

 

 

未奈「けっこう持ち帰ってこれたね~?今回持ち帰ってきてくれただけでもかなりのものだよ」

 

悠里「役に立てたなら良かったですけど…、元からけっこう余分に物資はありましたね…」

 

部屋に積まれた段ボールの山…悠里はその内の一つをそっと開く。中には沢山の保存食がびっしりと詰まっており、周りにはそれと同じ大きさの段ボールが十数個置かれている。恐らくその全てが、今開けた段ボールのように大量の物資を詰めているのだろう。

 

未奈はそれらを見ながら、ノートに何かを記す。

恐らく、物資の細かな内容を記録しているのだろう。

 

 

 

未奈「うん…やっぱりそう思うよね…。最近は私もこれ以上集めて来なくていいよって言ってるんだけど、ゲン君は『余分にあった方がいい』って言って聞かないの」

 

悠里「へぇ…ゲンジさんって、けっこう心配性なんですか?」

 

未奈「ん~、そうかもね。この山と積まれた段ボール…悠里ちゃん達と一緒にならともかく、私達三人じゃいつまでたってもなくならそうだよ…。」

 

悠里「あはは、良いんじゃないですか?物資は多いに越したことはないですから」

 

未奈「う~ん…そうだね。でも、やっぱり少し多すぎる気が……悠里ちゃん達、これいくつかいる?」

 

悠里「いえいえ、悪いから良いですよ。私たちも、物資には特別困ってはいませんから」

 

未奈「そっか~、まぁ私達の家にいる間は遠慮しないでこの食料食べてっていいからね?…というか、ずっと家にいる?…うん♪そうしなよ!」

 

ニッコリと楽しそうに微笑みながらそう言って、未奈は部屋の奥の段ボールをチェックする。一方で悠里はと言うと、ずっとこの家に…未奈達に世話になるべきか、それを決めかねていた。

 

 

 

悠里「…えっと、そう…ですね。未奈さんの方から、いても良いと言ってくれるのはありがたいです…」

 

未奈「みんながいればヒメちゃんも喜ぶし、私も嬉しい!もちろん、ゲン君も喜ぶと思うよ~♪」

 

辺りに置かれた段ボールを一つずつ開け、その中身をチェックしながら悠里へと告げる未奈…。『確かにここなら安全だし、それぞれの部屋もある。それに、彼女達もとても良い人だ…』そう思った悠里は少しずつ、この場所にいたいと思い始めた。

 

 

 

悠里「まだみんなと話して決めてないので、私一人では何とも言えないです。でも…たぶん、みんなもここにいたいと思う…。だからもし、そうなった時は…ここに…未奈さん達と一緒に暮らしても――」

 

未奈「…えっ!?まただ!!」

 

悠里が話をしている中…一つの段ボールを開けた未奈が突如驚きの声をあげる。それに驚いた悠里は彼女の元に歩み寄り、その段ボールの中を覗き見た。その段ボールには沢山の保存食が詰まっていたが…先ほど見たのとは微妙に様子が違う。僅かだが、所々抜き取られたように隙間が空いているのだ。

 

 

 

悠里「…これは」

 

未奈「この箱にもびっしりと詰めたから、隙間なんか空いてるはずないんだけど…。えっと……12番か」

 

段ボールの側面にマジックで書かれた『12』という数字を確認すると、未奈は手に持っていたノートを開き、あるページを凝視した。

 

 

未奈「悠里ちゃん、ごめん。今からこれの中身が減ってないかチェックするから、手伝ってくれるかな?」

 

悠里「ええ、良いですよ。私はどうしたら良いですか?」

 

未奈「この段ボールに入ってる食料を一つずつ取り出して、私に見せてくれればいいよ。そしたら私がノートにチェック入れてって、確認していくから」

 

悠里「わかりました。じゃあ…まずは――」

 

悠里は段ボールの中に手を伸ばし、一つの食料をとって未奈へと見せる。未奈はすぐにそれを確認するとノートにチェックを入れ、また悠里に次を頼む。その作業を一つずつ、丁寧に繰り返していった。いくら減っている気がするといっても元々が大きな段ボールだった為、チェックを終えるのには中々の時間を費やした。

 

 

 

 

 

 

悠里「……これで最後です」

 

未奈「…ありがとう。…えっと、どれどれ…」

 

全てのチェックを終え、未奈はノートを見て確認する。だが、その表情はだんだんと雲っていった…。

 

 

 

未奈「うぅ…インスタント食品に缶詰め、レトルト食品まで…全部で14個無くなってる…」

 

悠里「14!?それってかなり無くなってるじゃないですか!」

 

未奈「おっかしーなぁ…。食べ物を持っていく時はしっかりこのノートにチェックしてるし、何よりこの段ボールは予備の分だから、まだしばらく手をつけない予定だったんだけど…」

 

悠里「じゃあ…誰かが盗ってるんでしょうか?」

 

未奈「でも、ゲン君もヒメちゃんもここから物取る時は私にちゃんと教えてくれるんだよ?」

 

悠里「私たちの中にも、そんな事する人はいないと思うし…」

 

未奈「あ!悠里ちゃん達じゃないとは思ってるから大丈夫だよ?みんなが来る前から、ちょくちょくこういう事あったから…」

 

悠里「こういう事って、物資が減る事…ですか?」

 

未奈「うん。といっても、確信を持って減ってるって言えるようになったのはつい最近…、記録をつけ始めてからだけどね。その前まではノートに記録とかしてなかったから…『もしかしたら減ってるかなぁ』って感覚だったけど…」

 

悠里「記録をつけていなかったからわからないだけで、かなり前から定期的に物資を抜き取られていた可能性があるって事ですか…」

 

未奈「うん……そだね…」

 

未奈はノートと段ボールを交互に見ると、その場に腰を落として暗い表情をする。白雪か弦次…そのどちらかが、自分に隠れて物資を持ち出している可能性があるからだ。

 

 

 

未奈「前…ゲン君にこの事を言ったら、『俺じゃない、白雪じゃないか?』って言ってた…」

 

未奈「だから私、ヒメちゃんにも確認したんだけど…ヒメちゃんも知らないって言ってた…」

 

未奈「どっちも嘘なんてついてないと思いたいんだけどなぁ…。」

 

そう呟きながら静かに頭を抱える未奈…。その際にノートは彼女の手から離れ、パサッと音をたてながら床に落ちる。落ちた拍子に開いたページ…そこに書かれた文章を、そばに立つ悠里はじっと見つめた。

 

 

 

 

 

 

『どんな世界でも元気に、しあわせに生きていく!!』

 

 

『大好きなヒメちゃんとゲンくんと…ずっとずっといつまでも!』

 

 

 

 

 

 

悠里「………」

 

未奈「あっ…このノートね、最初は日記代わりに使ってたものなの。まぁこのページに書いたこれは、ただ自分を元気にする為に書いたおまじないみたいなものなんだけど…」

 

悠里「日記ですか…、いいですね」

 

悠里は床に落ちたノートを屈んで拾い、未奈へと手渡す。未奈はそれを微笑みながら受け取ると、後から気まずそうな顔をした。

 

 

 

未奈「えへへ…実はね、最近は日記書くのサボってたの…。昨日は色んな事があったから、久しぶりに書いたけどね♪」

 

悠里「…見てもいいですか?」

 

未奈「だっ、だめだよ!?人に日記見られるのはなんか恥ずかしいし…、それに、最初の方はだいぶ暗いことばかり書いてたから…」

 

悠里「そうですか…残念」

 

少しだけ意地悪な笑みを浮かべる悠里。未奈はそんな彼女の表情を見てニッコリと笑うと、ノートをまた落としたりしないよう、大切そうに両手で抱きしめた。

 

 

 

未奈「もしかしたら、ヒメちゃんが持ち出してるのかな…。ほら、よくあるでしょ?子どもが親に内緒で猫とか飼ってて、その子に餌を持っていってあげる、みたいなやつ…」

 

未奈「でも、それにしては食料持ってきすぎだよね…。前には生活用品が消える事もあったし…やっぱり、内緒のペット説はないかなぁ…」

 

悠里「とりあえず、今回無くなっていたのは食料だけですか?」

 

未奈「うん、他の段ボール箱の中身は減ってなさそうだった。それに、無くなる時はだいたい一つの物に集中してるみたい。今回は飲料水が…次は生活用品が…そのまた次は食料が…っていう感じで、一つずつ無くなってくの」

 

悠里「…そうなんですか」

 

未奈「無くなった分を差し引いてもまだまだ余裕があるから良いけど…、かといってほっとけないよね…」

 

部屋を見回して困った顔をする未奈…。白雪も弦次も知らないと言うが、どちらかが嘘をついているのだろうか?それとも、ひょっとしたら……

 

 

 

悠里(もしかして……)

 

 

悠里は白雪か弦次のどちらかが犯人という事以外の可能性を見いだし、それを未奈に告げる事にした。かなり少ない確率だとは思うが、決してあり得なくもないその可能性を…

 

 

 

 

悠里「…あの」

 

未奈「ん?なにかな?」

 

悠里「もしかしたら、この家の中に誰かが忍び込んでる…ってことはないですか?」

 

未奈「え…っ?誰かって…」

 

悠里「ほんとに全く知らない人が…この家にこっそりと忍び込み、定期的に物資を持ち出す…。ほら、この家広いですし、未奈さんが全く使っていない部屋もいくつもあるでしょ?だから…もしかしたら…」

 

未奈「こっ、怖いこと言わないでよっ!!」

 

悠里「す、すいません…」

 

 

 

未奈「………」

 

 

 

悠里「………」

 

少しの間二人は無言で見つめ合い、冷や汗を垂らす。

もしかしたら、この家には彼女達以外の人間が…?そう考えると、だんだんと怖くなってきた。

 

 

 

未奈「ありえなくは…ない、よね…。」

 

悠里「本当…ほんの少しの可能性の話ですけどね…」

 

未奈「私達が使ってない部屋はたくさんある…。誰かさんはそのどこかに隠れながら定期的に物資を持ち出して、またそこに隠れる…。うわぁ…ホラーだよぉ…」

 

見知らぬ人間がそうやってこの家で暮らしている光景を想像し、未奈は体を震わせながら目をうるうるとさせる。悠里はそんな彼女を見て、なんだか余計な事を言ってしまったと思った。

 

 

 

未奈「悠里ちゃん、どうしよう!!?私、もう落ちついて眠ることもできないよっ!!」

 

悠里「そこまで気にしなくても大丈夫ですよ…。ほんとに少し、あるか無いかくらいの確率でしょうから…」

 

未奈「でも少しはあるんでしょ!?この家に誰かが隠れてる可能性がっ!」

 

未奈「だめだぁ…!怖くてもう一人で寝れないよぉ!!」

 

 

 

悠里「えっと…えっと…じゃ、じゃあ!こうしましょう!!」

 

 

 

悠里「これから―――――するというのは?」

 

未奈「お、おぉっ!!それ良いね!!」

 

悠里は未奈に一つのアイデアを提案する…。それを聞いた未奈は顔をパアッと明るくすると、すぐ悠里と共に部屋を出て、それを実行に移す準備を始めた。

 

部屋を飛び出した彼女達はまず自室で休んでいた彼を捕まえ、その計画の内容を告げてから協力を頼む事に…。もちろん、彼はあっさりとそれに了承してくれた。

 

 

 

 

それから30分後…

 

悠里達は何も知らぬ他のメンバーを広間に集め、その計画を始動させる…。

 

 

 

 

 




密かに物資を取っているのは誰なのか?
りーさんが未奈を落ち着かせる為に計画したその作戦とは…?
というところで次回に続きます!
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