未奈、悠里、彼の三人によって広間に呼び出された胡桃・美紀・由紀・白雪・弦次…。
彼女達は大きなテーブルの前に座りながら、これから何をするのかも知らず、ただテーブル横にたちつくしている悠里達三人を見ていた。
胡桃「……」
美紀「胡桃先輩、これはなんの集まりですか?」
胡桃「さぁ?なんかここに来るようにって、りーさんに言われたから来たんだけど…」
美紀「りーさんにですか?私と由紀先輩は、__さんに呼ばれてここに…」
胡桃「ってことは、あっちの二人は……ミナに呼ばれたのか」
そっとテーブルを挟んだ向かいの席、そこに座る弦次と白雪を覗き見る。胡桃達同様、二人もまた何をするのか知らないようで、そわそわと落ちつかないような雰囲気をしていた。
「りーさん、未奈さん。全員集まったようです…」
未奈「ですね…」
悠里「じゃあ__くん、みんなに事情を説明してあげてくれる?」
「はっ!了解しました!!」
彼は悠里の言葉に軍人のような返事を返すと、席についている胡桃達に向けて語りだす。その口調もまた、先ほどと同じく軍人風だった…。
「よく聞けっ!以前からこの屋敷では、保管している物資が無くなるという事件が度々起きている!!今回貴様らを呼び出したのは他でもない!その事件を解決させる為だ!!」
白雪「………」
美紀「なんですかその喋り方…」
弦次「内容が全然頭に入ってこなかった…」
胡桃「急に変な事やりだすからな、こいつ…」
由紀「あれ?そういえば前に胡桃ちゃんも似たような喋り方してたよね?ほら、プールの時…」
胡桃「あ、あれはちょっとテンションが上がっただけだっ!///こいつと一緒にすんなっ!」
胡桃は顔を真っ赤にして大声で由紀に答える。それを見ていた彼はそばにあった手頃な紙を手に取ると、丸めて筒状にしてから胡桃の背後に立ち……
バシンッ!!
それで彼女の頭を叩いた。
突然叩かれた胡桃は驚いてすぐに振り返り、叩かれた頭を片手で押さえながら背後に立つ彼を見上げた。
胡桃「なっ!なにすんだっ!?」
「ツインテール!私語は慎めッ!!」
胡桃「つっ、ついんて…?…はぁっ!?何をえらそうに!」
バシンッ!!
胡桃「うっ!?てめっ、怒るぞっ!!?」
由紀「胡桃ちゃん、もう怒ってるよぉ…」ボソッ
短時間で二度も叩かれた胡桃はとうとう席から立ち上がり、顔を真っ赤にして彼を睨み付ける。だが軍人モードの彼はそれに動じはせず、冷静にその目を睨み返した。
「上官に対する口の聞き方がなってないな?今度舐めた態度をとったら、罰としてそのツインテールをほどいてやるからな!?」
胡桃「……はぁ?」
美紀(それは罰に入るんですか?…とか言ったら私も絡まれそうだから黙っておこう)
目の前の彼を見てそんな事を思う美紀…。他の者はというと、皆冷ややかな目で彼を見つめていた。あの白雪や、由紀すらもだ…。
「因みに、私はお前の髪をほどいた姿は中々好きだぞ?あれはかなりドキドキするものが――」
そこまで言いかけた軍人さんだったが、胡桃の顔がますます赤くなっているのに気がついたので、そっと口を閉じるのだった…。
「…ごほんっ!さぁ、もういい。席につけ…」
胡桃「…う、うん///」
胡桃を席につけた後に彼は足早に弦次の元へと駆け寄り、その肩をつんつんと叩く。それを受けた弦次がゆっくりと振り返ると、彼は恐る恐る尋ねた。
「あのさ…普段髪結んでる娘が髪おろしてるのとか見ると、なんかドキドキしたりしない?…しますよね?男なら――」
弦次「変態軍曹殿…はやく作戦の方を…」
弦次は彼とすぐに目を逸らし、正面を見つめ直しながら呟く。
今の彼に絡まれるのは、いくらか面倒だと思ったからだ。
「あっ…そ、そうだな…。では…」
彼は弦次の席から離れてテーブル横に移動すると、全員の顔を見回す。それぞれが微妙に冷たい目をしている気がするが…たぶん気のせいだ。頭の中でそう結論付けてから、本題に戻る。
「先ほど言ったように、この屋敷内では以前から物資が無くなるという事件が起きている。ミナさんが最初に疑ったのはゲンジくんかシラユキちゃんのどちらかが持ち出しているという可能性だったが、それは本人達が否定している…」
「一応、改めて確認しよう…。ゲンジくん、君は物資を持ち出したりしていないか?」
弦次の顔をじっと見つめ、問いつめる…。だが弦次は当然だと言わんばかりに首を横にふり、それを否定した。
弦次「そんな事はしていない。必要な物がある時はお嬢に必ず伝えるし、お嬢もそれにあっさりと答えてくれる。わざわざ内緒で持ち出す必要がないだろう?」
未奈「…だよねぇ」
「ふむ、おっしゃるとおりだ。わざわざ内緒にする必要はないな…。」
彼はそう呟いて弦次から目線を外すと、今度はそれを弦次の隣に座る白雪へと移す…。彼は白雪の目をじっと見つめて、先ほど弦次にしたのと同じように尋ねた。
「じゃあ、今度はシラユキちゃん。君は物資をミナさんに内緒で――」
白雪「持ちだしたりしてません。」
「…ほんとに?」
白雪「ほんとです。お菓子はミナがたくさんくれるし、食べものにも困ってないですもん…」
「みんなに内緒でネコとか――」
白雪「飼ってません」
「…嘘ついてない?」
白雪「ついてないです」
「…そうか」
彼はまだ今一つ納得していなかったが、これ以上問いつめると白雪に嫌われそうな気配がしたので、ひとまず断念する事にした。だが断念したのが少し遅れたのか…白雪は正面に座る美紀へと小さな声で、彼に聞こえぬように囁いた。
白雪「わたし…あのお兄ちゃん苦手…」
美紀「あは…は…。まぁ、今はあんなだけど、普段はいい人なんだよ?」
白雪「…ふぅん」
白雪の彼に対する好感度が10下がった!!
「まぁそんなわけで、二人の仕業ではないらしい。…とすれば、考えられる答えは一つ…」
白雪の好感度が下がった事など知るよしもなく、彼は話を進める。弦次や白雪ではないなら、誰の仕業なのか…それを皆に伝え、そして解決する為に…。
「この屋敷内に私達以外の人間がいて、その人間が物資を盗んでいる可能性があるっ!!」
胡桃「なっ!?」
由紀「ええっ!?」
美紀「えっ?」
弦次「……」
白雪「んん?」
その言葉に驚いたのは胡桃と由紀のみ…。あとの全員は、揃いも揃って『なにを言ってるんだ、こいつは…』というような表情をしていた。
「…一応言っとくけど、これを言い出したのは私じゃないぞ?りーさんだからな?」
皆の冷たい目線に耐えきれず、彼は責任を悠里に擦り付ける。まぁ悠里が言い出したというのは事実なのだが…。
美紀「…どうしてそう思ったんですか?」
悠里「ゲンジさんもシラユキちゃんも取ってない…。だとしたら、可能性はそれくらいしかないでしょう?」
美紀「そう…でしょうか?」
悠里「この屋敷はかなり広いし、それに誰も使っていない部屋がいくつもある。だからそのどこかに誰かが隠れているとしても、おかしくはないんじゃないかしら?」
悠里「もちろん、それはごく僅かな可能性でしょうけどね」
言葉の最後に『ごく僅かな可能性』と付け足したのは、悠里自身がこの説はほぼあり得ないと思っていたから…。
にも関わらず、美紀達の力を借りようとしていたのは何故か…、その理由は、ただ一つ…未奈が不安で寝付けなくなりそうだと、悠里に泣きついてきたからだ。
悠里(私が言い出したことだから、どうにかしてあげなきゃね…。みんなで一通り探して隠れてる人なんかいないって分かれば、ミナさんも安心できるでしょう…)
「…そういうわけで、我々はこれよりチームを結成し、その人物の捜索にあたる!!」
由紀「チーム?」
「ああ、この屋敷は広い…一人二人で探していたら日が暮れてしまう。なので、諸君ら全員の力を借り、二人一組のチームを四つ作る事とした!」
由紀「二人一組…。それって、誰と組んでもいいの?」
「………」
「………りーさん?」ボソッ
悠里「組み合わせはもう決めてあるって伝えてくれる?」ボソッ
「了解です…」ボソッ
「…組み合わせは既にこちらの方で決めてある!変更は不可だ!!」
さりげなく振り返り、小声で悠里に尋ねてその答えを聞いてから彼は声を張り上げる。恐らく、彼自身もその辺についてはあまり知らなかったのだろう…。
胡桃(もう、りーさんが説明すりゃいいのに…。なんでこいつにやらせてんだろ…)
由紀「決めちゃってあるのかぁ~、わたし、ヒメちゃんと組みたかったな~…」
弦次「…で、その組み合わせっていうのは?」
「………」
彼は弦次の問いに対し、沈黙を返す…。この時点で、胡桃たちは気づいた。『彼はただノリで進行役をしているだけで、細かい内容は知らないんだろう』という事実に…。
そしてそれは見事に的中したようで、彼は皆に聞こえないほど小さな声で悠里に耳打ちし、組み合わせについて尋ねていた。
「…組み合わせってどうなってますか?」ボソッ
悠里「えっとね……」ボソッ
美紀「……」
胡桃「……」
美紀と胡桃は冷たい視線でそれを見つめる…。
悠里から組み合わせを聞いた彼はあたかも元から知っていたかのように堂々とその組み合わせを全員に告げた。
「では発表するっ!一度しか言わないからよく聞いておけよ!!」
由紀「は~い!」
美紀「……」
返事は由紀しか返さなかった…。
だが彼は特にそれを気にしたりはせず、話を続ける。
「まず…りーさん、シラユキ組!」
「そして次…胡桃、ミナ組!」
「その次が……」
「…………」
「…なんでしたっけ?」ボソッ
悠里「由紀ちゃんとゲンジさん…あと、あなたと美紀さん」ボソッ
胡桃「一度しか言わないっていってた本人が忘れたのかよ…話になんねぇな…」
「うぐっ…!」
組み合わせを忘れてしまい、悠里に聞き直す彼を見た胡桃は呆れ、頭を抱える。それに気づいた彼は先ほどのように胡桃を叩いてやろうかと思ったが、今のはさすがに自分の非しかないという事に気づいたため、思いとどまった。
その後、彼女達は彼が告げたその組み合わせのペアをそれぞれ組み…"もしかしかたいるかも知れない侵入者"を探すこととなった。捜索範囲は彼と美紀のみが庭の担当であり、残りのメンバーは屋敷内を念入りに調べる事に…。
彼は準備を終えてから美紀と共に屋敷の外に広がる庭へと出て、二人でのんびりと歩きながら辺りを調べ始めた。
美紀「__さんはいると思いますか?隠れてる人」
「…どうでしょうね、なんとも言えないです」
美紀「あれ、あの軍人キャラはやめたんですか?」
いつも通りの口調で話す彼に尋ねる。
それに対して彼は頬を微かに赤くし、照れながら…気はずかしそうに答えた。
「あれね…、意外と疲れるんですよ…」
美紀「じゃあなんでやったんですか…」
「…おもしろいかと思って…」
美紀「そ、そうですか…」
「…………」
美紀「……ところで、この組み合わせはりーさんが考えたんですか?」
「えっ?あ、あぁ…そうですよ。ミナさんと相談しながら決めていました」
美紀「そうですか…。なんで、私と__さんの組み合わせなんでしょうね?」
深い意味はなく、ただ疑問に思ったからという理由で美紀はそう呟いた。
「…い、嫌でしたか?僕と組むのは…」
美紀「そんなわけ無いに決まってるじゃないですか。ただなんとなく、何でだろって思っただけですよ」
あっさりと、一切の恥じらいも見せずに『そんなわけ無い』と答える美紀…。
彼は彼女のそんな何気ない発言が嬉しくて、にっこりと微笑んだ。
「美紀さんって…意外と優しいですよね」
美紀「意外と…っていうのは余計です」
「へへ…すいません」
そんな会話を交わして、二人は庭を探索する。
木の裏や茂みの奥…さすがにこんな場所には誰も潜んでいないだろうと思いつつも、念入りに周囲に目を配っていた。
「…いませんよね。薄々気づいてましたけど…」
美紀「そうですね。やっぱり、隠れてる人なんていないんですよ」
「…まぁ、一応最後まで探しておきましょ。そうしないとミナさんが安心できないみたいなので…」
美紀「わかりました…。手早く済ませましょうか」
彼は美紀の発言にうなずき、その直後に奥にある一つの小屋のような建物をじっと見つめた…。未奈に聞いた話では、あれは庭の手入れ用の用具などかしまってある倉庫らしい。
「庭の探索を任された僕らの最大の難所は、あそこにある倉庫でしょうね…。」
美紀「…ですね。中は物で散らかったままで、ほとんど放置しているとか言ってましたし…やだなぁ」
「…もし庭のどこかに身を潜めている人間がいるとしたら、間違いなくあそこですよね」
美紀「万が一という可能性もあります。一応、警戒しましょう…」
二人は倉庫の前に立ち、そっとその扉を開いた…。
次回はみーくんと彼がペアとなり、倉庫内を探索するお話です。
二人は果たして、侵入者(存在は疑惑)を見つける事が出来るのか…。
はたまた、別の何かを見つけるのか?
お楽しみに!