お待たせして申し訳ないです!
今回、りーさんの心境を混ぜながら話を進めていきますが、相変わらず多少見辛い知れません(-_-;)
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彼と一緒に暮らすと決めた時、正直不安を感じていた。
だって今までは女の子しかいない空間だったのに、そこに一人の男の子が増えるんだもの。優しそうな人だけど、もしそれが勘違いだったらとか…色々な心配があった…。
みんなとは上手くやれるかしら?ちゃんと会話に交ざれるかしら?
本当に色々考えていたけれど、それはいらない心配だとすぐに気付いた。彼と話す由紀ちゃんや胡桃…美紀さんも、とても楽しそうに笑っていたから…。
そして私も…彼と話すのは嫌ではなかった。
彼は明るくて、優しくて、そして時には頼もしくもある。
たまに暴走して、私達を相手にいやらしい事を企てる日もあった。
そういった時は毎回彼が私か胡桃に説教されて終わるのだけど…彼は中々懲りたりしなくて、呆れたりもした。
呆れたりもしたんだけど…それでも楽しかった…。
彼やみんなとふざけあっていると時間があっという間に過ぎていって、その間はまるで普通の世界での日常を送っているかのように思えた。
でも、それはあくまで一時だけ…。この世界は、やっぱり普通じゃない…。
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「……すいません」
ゆっくりと、一歩ずつ彼の元へと歩み寄っていく悠里。彼女はすぐに彼の前へとたどり着き、そっとその顔を見つめる。彼はそんな悠里の顔を見るやいなや、一言謝罪の言葉を告げ、悠里の口を塞ぐテープを剥がそうと手を伸ばす。すると後方からそれを見ていた境野がピクッと反応した。
境野「ダメだ、剥がすな。お前はただ、そいつにナイフを突き刺すだけでいい」
「っ………分かった」
境野は彼を徹底的に追いつめる為、悠里と最後の会話をする事さえも許してはくれない…。彼は伸ばしかけた手を残念そうに引っ込め、ただじっと悠里を見つめた。
由紀「んんっ~!!!うぅ~~っ!!!」
境野に押さえられながらも、由紀は必死に暴れた。このままでは…彼が悠里を殺してしまう。そう思ったらいてもたってもいられず、由紀は大粒の涙を流しながら暴れたが、由紀は元々大して力が無い上に、今は手を縛られている。彼女がどれ程暴れようと、境野はいとも容易くそれを押さえていた。
由紀「んぅ~~っ!!ん~っっ!!!」
口をテープで塞がれている由紀の声は叫び声にも、泣き声にも似たもので、聞いているだけでも胸が苦しくなってくる…。そんな声を聞いた悠里は彼女から目を逸らしながら体を震わせ、ポロポロと涙を流し始めた。
悠里「っ!っ…!ぅぅっ…!!」
彼は目の前で涙を流す悠里を見つめながら、自分の無力さを実感する…。自分は彼女の涙を止める事が出来ないどころか、そんな彼女を…今から殺さねばならないのだ。
由紀「うぅっ!!んんっ!!」
境野「ちっ!よく暴れるヤツだな…。おい宮野!コイツ押さえとけ」
宮野「…わかりました」
暴れる由紀を押さえるのがとうとう面倒になったらしく、境野はその役を側にいた宮野へと任せる。宮野はすぐに由紀…そしてついでに未奈の腕を掴み、二人を隅の方へと無理やりに引っ張っていった。もちろん由紀はそれに抵抗したが…やはり簡単に押さえられる。一方、未奈は大した抵抗もせず、ただ宮野の腕に引かれていく…。周りで起きている事があまりにショックで、身体に力が入らないようだ。もう、今の由紀達には、彼と悠里をただ見ている事しか出来なかった…。
境野「さて…出来るだけ早い方がいいな。今から一分…それまでに
由紀を押さえていた手が空くと、境野はまたしても時間を指定して彼を追いつめる。"あと一分"…その僅かな時間が過ぎるまでに悠里を殺さねば、由紀も殺されてしまう…。彼はそっとナイフを右手に持ち、目の前ですすり泣く悠里を見つめた。
悠里「っぐ…!!ひぐっ…!!」
「………」
悠里の体はガタガタと震え、目からは涙が溢れている…。先程の選択で彼が由紀を選ばずに悠里を選んだのは、悠里自身がそれを望んでいると思ったからだった。悠里は目の前で由紀を失うくらいなら、自らが犠牲になる事を望むと…そう思ったから。けれど今、目の前で震えながら涙を流す彼女を見ていると、それが間違いだった気がしてならない…。
(僕は…失敗したのか…。りーさんではなく、由紀ちゃんを選べばよかったのか…?)
彼が悠里を選んだ理由は結局、悠里自身がそれを望んでいるという予想をしたから。しかしそれは、根拠のない思い込みでしかない…。だとすれば悠里は今、彼女を指名した自分を恨んでいるのかも知れない…。彼がそう思いかけたその時、悠里の表情が少しだけ変化する。
彼女は涙をポロポロと流しながらも…必死に微笑もうとしていた…。
(どうして今、そんな顔をするんだ…。僕は、今からあなたを殺そうとしてるのに。恨まれて当然の…最低な人間なのに……)
悠里は相変わらず震え、涙を流していた。死の恐怖を前にしてしまったら、こればかりは中々止められない。しかしそんな状況の中でも…悠里は笑った。こうやって笑顔を見せれば、彼が少しは楽になれると思ったからだ。
(りーさん…あなたは、こんな時でも僕の事を気づかってくれるのか…。あなたを守れなかった僕を…恨んでくれていいのに。僕なんかの為に…無理して笑う必要なんてないのに…)
胸をギュッと締め付けられるような感覚に襲われ、彼の視界が狭くなる。狭くなった彼の視界には悠里しか映っていなくて…由紀の叫ぶような声もとても遠くの物に思えた。
境野「あと三十秒…」
カウントダウンする境野の声が彼の耳へと入る。出来れば聞きたくないのに、何故かこれはハッキリと聞こえてしまう…。残された三十秒という時間の中、彼は時間を巻き戻せたらという、決して起こることの無い出来事を想像して現実逃避した…。
(昨日に戻れたらどんなにいいだろう。いや、今朝でもいい…。頼むから…戻ってくれないか…。そうしたら、僕はまた…みんなと一緒に……)
悠里と由紀、そして美紀や胡桃と過ごす風景を思い浮かべる。それはとても楽しく、幸せな風景だ。しかし、彼は不意に思う…。時間を巻き戻せるとするならば今朝や昨日ではなく、もっとふさわしい時があるのではと…。
(…ああ、そうか。どうせ戻れるなら、彼女達と初めて会ったあの日に戻ろう。そして、今度は彼女達の仲間にならずにあの日を終える…。そうすれば、こんな
この状況を招いたのは全て自分のせいだ…。彼はそう思い、彼女達の仲間になった事を後悔した。自分が仲間なってさえいなければ、彼女達はきっと違う未来を歩んでいただろう…。少なくとも、境野達に捕まる事はなかったハズだ。彼はそんな後悔の念を抱きながら、ナイフを悠里へと向ける。残された時間が、遂に十秒を切ったからだ…。
「悠里さん…本当に…ごめんなさい」
彼は悠里の事をいつものように『りーさん』とは呼ばず『悠里さん』と、どこか他人行儀にその名を呼ぶ。今の無力な自分には、彼女を馴れ馴れしく呼ぶ資格など無いと思ったからだ…。
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よかった。由紀ちゃんじゃなく、私を選んでくれて…。
もし由紀ちゃんを選んで、そのまま殺したら、私はきっと彼を恨んでしまっていたと思う…。彼に非はないと分かっていても…仕方のない事だと分かっていても…きっと恨んでしまう…。だって…私にとって由紀ちゃんは本当に大切な
彼は、私のそんな思いに気づいてくれたみたい…。
本当に…本当によかった。死ぬのはとても怖いけれど、由紀ちゃんを失わないで済むのなら、私はどうなってもいい…。
彼ならいつか、由紀ちゃんを助けてくれる。
今は無理でも…いつか…きっと…。
私は…そう信じてる。
だから、最期まで笑っていよう…。
彼の罪悪感を、少しでも無くせるように…笑っていよう…。
でも…出来る事なら……
最期にもう一度…"りーさん"って呼んでほしかったなぁ…。
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由紀ちゃんかりーさん…そのどちらかを失うだけでも辛いのに、選んだ方は自分の手で殺さなくてはいけない…。こういった所で境野の趣味の悪さがうかがえますね(-_-;)
彼はもう、完全に諦めモードに入っていますが、はたして逆転のチャンスは来るのか来ないのか…次回、ご注目いただけたら嬉しいですm(__)m