HUNTER LORD   作:なかじめ

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早くエ・ランテルまで話を進めたい…


5話 とっとこ… 

リュラリュースと別れ南方に進みしばらく歩いていると、段々と木々の影から明かりが漏れてきた。

 

「夜明けか…、しかしこの体は疲れたりしないのか?もう半日以上歩いたと思うんだが。…いや、しかし疲れはしないが、腹が減ったな…」

 

不思議な感覚だった。ずっと休憩もしないで歩いて来たが、足が痛くなったり、息があがったりは全く無かった。にもかかわらず腹は減る。

 

「流石に見たことも無い、野草やキノコなんて食う気はしないしな…」

 

最初はのどかな森、見たことも無い草花、目を楽しませる自然が多くウキウキしながら歩いていたのだがいまはもう若干ウンザリしてきた。何故ならずーっと同じ森、森、森。景色も変わらず、変化も無い。流石にもう半日同じ景色だ、無理もない。

 

「まあ、『青い秘薬』を飲みながらだから、雑魚に絡まれなくなったのが救いか…」

 

青い秘薬は狩人の体を透明にし、敵の目を欺く効果のある薬だ。実験の為に使ったが、自分では余り透明になったという実感がなく、失敗かと思ったが、先程から遠目にゴブリンや虫型の気持ち悪いモンスターを見かけたものの此方に寄ってくる事は無かった。恐らく成功だろう。

そんな事を考えながらあるいていると、

ガサガサッ

と何やら少し先の草むらをデカい何かが横切っていく。 

 

「…ん?何だ今のは?もしかして例の賢王か?」

念のために、懐中時計で時間を確認する。

「…よし、丁度いい。そろそろ薬の切れる頃だ。ご尊顔を拝見するとしようか!」

 

ルドウイークは、静かに先程のデカい物体が入っていった草むらに駆け出す。

 

「ム!何者でござる!?某の狩り場、某の縄張りに土足で踏み入る愚か者は?」

 

(某?ござる?…随分と歴史を感じる物言いだな…永く生きてきたと言うことか?)

 

「俺はルドウイーク!君が森の賢王か?」

 

「…確かにかつてこの地に踏み入った人間が某の事をそう呼んでいたでござるな!で?某に何か用でござるか?」

 

未だに影になって良くは見えないが、どうやらかなりデカい。

(…これは、多少本気を出さないとマズいかもな。こりゃ、グやリュラリュースじゃどうにもならない訳だ…)

 

「用という訳でも無いんだが、俺は獣を狩る事を生業としていてね、凄い魔獣がいると聞いて、後学の為に一度その姿を拝見させて貰おうと思っただけさ。」

 

「獣狩りでこざるか…。ならばお主は某の…」

 

そこで言葉を切る賢王。そして…

 

「敵でござるなあっ!!!」

 

その言葉と同時に賢王と呼ばれた知性を感じさせた動物の気配から、大魔獣と呼ばれるに相応しい気配に変化した。

 

前景姿勢になった賢王の背後から『ビュンッ!!』という音とともに鋭い突きが飛んでくる。

 

「尻尾か!」

すぐさまそう判断しまずは右にステップを踏む、

「甘いでござるっ!」

その言葉と共に今度は尻尾をそのまま横薙に払ってくる。

 

「そっちがな!」

 

その薙払いを前にダッキングの要領でステップし潜り込んでかわすルドウイーク。

 

そのままダッシュで賢王の元に走り右手の未強化鋸鉈を鉈モードで叩きつける。

…が予想していた手応えと全く違った。

ガキンっ!という音で鉈がはじき返される。

 

「ちぃっ!堅い!一旦離脱っ!」

 

ルドウイークは珍しくバックステップを踏み距離を取る。

武器を毛皮で弾けると分かった賢王が、強引に突っ込んでくるのを警戒したからだ。

 

(…?来ないな…)

 

来なかった。

 

良く見てみると賢王は何やら小さい手で頭を必死にさすっていた。

 

「…?賢王?」

 

「…頭が、頭が痛いでござるよ…。」

 

一瞬何を言われたのか分からずキョトンとするルドウイーク。

しばらくしてやっと脳に言われたことの意味が染み込んできた。ルドウイークは左手で頭を抱えながら一応聞いてみる。

 

「……はぁ?んー…?はぁ…、一応、見てやろうか?」

 

「申し訳ないでござるよ…」

 

のそのそと此方に歩いてくる賢王。

 

(…こいつ…本当に見てもらう気かよ…)

 

しかしやっとその全体像が見えてきた。その第一印象は…

 

「嘘だろ…コレが魔獣って…、どう見ても愛玩動物だろう…。」

 

とても丸くて可愛く見えた。

 

「ここにその武器の角が当たったのでござるよ…しかしお主はとても力が強いのでござるな。」

 

見てみると確かにデカいタンコブが出来ていた。

 

「コブになってるな。命に別状は無いと思うぞ…。」

 

「そうでござるか!ありがとうでござるよ!……ではっ!続きを始めるでござるよ!」

 

「……え?…いや…?…えっ?…この流れでまだ戦うの?」

 

「当然でござるよ!まだ白黒付いて無いでござるからなー。」

 

「…はぁ。」

もうやる気なんて欠片も無かった。この獣の全てがやる気を奪っていく。丸っこくて可愛いフォルムに、脳天気(ちょい馬鹿)な性格。

 

(これが白銀の大魔獣だと?森の賢王だと?バカな……仕方無い、別のアプローチで屈服させるか。)

 

ルドウイークは黙って一つの秘技用のアイテムを取り出す。

 

「む?何でござるかそれは?もしかして食べ物でござるか?」

 

「ぐふっ!…ぷっ!…くっそ!笑わせるな!一応戦闘中なんだろうが!?」

 

(戦闘中敵の目の前で食いもの出す馬鹿がどこにいる!確かに腹減ってるけどさぁ…。いや…こいつならやりそうだなぁ…。)

 

「…ふぅ。はぁ、これで終いだ。来い!」

 

「行くでござる!」

 

その言葉と共に賢王が爪を振り上げて吶喊してくる。ルドウイークはと言えば、その秘技用のアイテムを持ち待ち構える。

(射程圏だな…行くぞ!)

 

 

『ぐあおおおおおおおおおっ!!!』

 

 

獣の咆哮、その名前そのままの効果が炸裂し賢王は吹き飛び、辺りの木々もまるで台風の風を浴びたかのように大きく揺れる。

 

「ひええええええ!い、今のは、お、お主の声でござるのか?」

 

「ああ、そうだ。どうする?信じられないならもう一度やってみようか?」

 

「参ったでござる!某の負けでござるよー!」

 

腹を見せてひっくり返る森の賢王。

 

「くくっ!ふふふ、ははは!」

 

突然笑い出したルドウイークにビクッと震える賢王。

 

「あんなに、全身の毛が逆立つようなすごい咆哮は始めて聞いたでござるよ!お願いでござる、忠誠を誓うので命だけは見逃して欲しいでござるよ!」

 

(成功だな。やはり賢いとは言え野生動物。それに…こいつは血に酔ってはいないようだしな。)

 

「…一応聞くがお前は人間の事をどう思っている?」

 

「人間でござるか?…某はずっとこの森で一人で暮らして来た故、余り人間とは関わっていないでござるよ…。余りに執拗に命を狙われた時は撃退していたでござるよ。殿!お願いでござるよ。」

 

「殿?まぁいいか。しかし…」

 

琴線に触れる単語が出てきた事で少し考え込むルドウイーク。

 

(この森で一人ぼっちか…いや俺も人の事は言えないか。俺も身よりなんていないんだしな。)

 

「…もともと、最初に言った通り今日はお前の姿を見にきただけだ。命等穫りはしないさ!ところでこの先に人間の集落が有るらしいんだが知っているか?」

 

「某の縄張りの外に確か人がいっぱい住んでいる場所が有ったでござるよ。そこでござるか?」

 

「そうだ。そこに案内してくれるか?」

 

「勿論でござるよ!某は自分より強い者が出てきたら忠誠を誓おうと決めていたのでこざる!某は今日より、殿の家臣でござる!」

 

「…まあいいか。狩人の猟犬…っぽくは全く無いな。…いやペットだな。うんペットだ。宜しくな!賢王!」

 

「宜しくでござる!では某の上に乗るでござるよ!」

 

「え?いいのか?」

 

「はいでござるよ!」

 

若干、ペットに乗るという罪悪感を感じたが、本人が鼻息荒く進めてくるので飛び乗ってみる。

 

「…まあ、多少不格好だがまあ乗り心地は悪くはない。」

 

「では出発進行でござる!」

 

(あっ、やべっ!これ人に見られたら恥ずかしいかも…)

 

そんなルドウイークの考えを余所に、賢王と呼ばれた大魔獣はノリノリだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エンリ・エモットは妹のネム・エモットの手を引いてひたすら走る。

いきなり村に乗り込んできた大勢の騎士逹。それに早く気付けたのは幸運だった。

というのも朝起きてから毎朝恒例の水汲みに出掛けようとしたところどこからか巨大な獣と思われる、とても大きな咆哮が聞こえたのだ。

両親と妹と窓から外を見てみると、獣の姿は見え無かったが、変わりに村の入り口に大勢の見知らぬ騎士逹が立っていた。その騎士逹を見た途端に両親が、

 

「ネムを連れて逃げろ!」

 

とエンリ逹を家から突き飛ばすように逃がしたのだ。

 

しかし

 

少しばかり早く気づこうと、相手は訓練を受けた騎士、此方は幼い妹と一緒の只の村娘。

 

先程から3人の騎士が私たちに追いすがってきている。

 

そのうちにネムが転び、騎士に追いつかれる。ネムをとっさに庇うと同時に

 

ザクッ

 

という音と共に背中に痛みと熱が走る。

「てこずらせやがって!」

「もったいねぇ、可愛い子なのにな~。」

「いいから早くやっちまえ!…へぇ確かに可愛いな!」

 

そんなゲスな声を聞きながらエンリはネムを抱きしめる。

 

「お姉ちゃん!」

「ネム!」

 

もうダメだ。そう思ったその時

 

ゴチュン!

 

そういう音が背中の後ろ、騎士の頭の辺りから聞こえた。

 

エンリは恐る恐る、後ろを見てみる。

そこには剣を振り上げている騎士がいた。先程まで、私逹を追ってきていた騎士逹だ。間違いない。

しかし唯一違う所があった。

それは騎士の兜の顔が覗いている部分。そこに、拳大の石が騎士の顔面にめり込むようにつき刺さっていた。

 

「え?」

 

その石が飛んで来た方向に顔を向けると、羽を象った帽子を被り、全身を上等な装束で身を固め、右手には剣をもった、背の高い男の人が、巨大な魔獣を付き従えて立っていた。

その男の人が、口を開く、ニコリと爽やかな顔で

 

「大丈夫かな?お嬢さん方。」

 

「えっ?は、はい。」

 

「そうか、それなら良かった。君らは正しく、そして幸運だった。つまり……」

 

そこで言葉を区切り

 

「もう君たちは大丈夫だよ!後は俺に任せておけっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やあああっとエンリが出せたああ。
何度賢王をハム助と書き間違えたか、分かるか?ハム助。この苦労が。

そして書き上げ、投稿と同時にエビテンからのオバロ11巻発送メール!!

やはり私と君は運命の赤い糸で結ばれていた!
この気持ち、まさしく愛だっ!!

とテンションがあがりました。それだけです。はい。スミマセン…
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