という事で少し書き足しました。
「まだやるか?」
ルドウイークは一人になってしまった奴、確かベリュースだったか?等と思いながら問いかける。
「当たり前だ!お、俺はこんな所で死んでいい人間じゃない!!は、早くこいつを殺せ!誰でもいい!500金貨、いや600金貨でもいい!早く!」
「お前の部下は一人もいないんだが…?誰に頼んでいるんだ?」
「そこの村人達、命は助けてやる!早くこいつを殺せ!一人100金貨まで出すぞ!」
流石に頭を抱えるルドウイーク。
「はぁ…」
村人達から帰ってくるのは、殺意と憤怒しかない。
「…もういい、終わりだ。剣を捨てて鎧を脱げ。命は直ぐには取りはしない。」
村人達が、ザワリと反応が帰ってくる。
(…ん?…恐らく俺が金に目が眩んで寝返るかと思ったか…?流石にそれは無いって…)
「そいつは色々聞きたい事が有るので拘束して生かしておきます。他意は無いので安心して下さい。…それとエモット姉妹の御両親はいらっしゃいますか?」
「私達です!娘は娘達は無事なんですか!?」
「無事でしたか…良かった…エンリもネムも無事ですよ。森の近くで襲われて居たところを助けました。あと皆さんはエモット姉妹に後でお礼を言っておいて下さい。彼女達が私にこの村を救ってくれと嘆願してきたので、私はここに来たのです。立派なお嬢さん方だ。本当に。」
見るからに安堵している村人達。彼女達は村の人気者だったんだろう。
そんな話をしながら横目でベリュース隊長を見ていると何やら地面をキョロキョロ見回している。
「ベリュース隊長?何かお探しかな?」
ビクッとなり此方に振り向くベリュース
「い、あいや、な、何でもないのだ、剣をすて、鎧をぬぐ!これでいいのだな?」
「ああ。その通り。後は拘束させてもらうぞ?」
そう言いながらベリュースの腕と足を革紐で堅く縛りあげる。皮がさけ、血が滲むほどに。
「ぎぃっ!痛い!頼む、許してくれ!ぎぃやあああ!」
「…お前達はそう言って命ごいしてきた村人を一人でも見逃したのか?それといい加減身分を弁えたらどうなんだ?生殺与奪の権利はこちら側だぞ?」
「悪かっ…、ご免なさい。!願いします!申し訳ありませんでしたあおおおお!」
「それと探していたのはこれだろ?伏兵を呼ぶための笛か?伏兵はどこに伏せて有るんだ?」
「教えます!だから紐を緩めて下さい!」
(…こいつマジか…なんでこんなのが隊長なんだ…)
「……ああ、ちゃんと教えてくれたら考えてやる。早くしろ。」
呆れながら答えるとあっさり白状する、ベリュース。
村の村長だと言う人に、ベリュースを閉じ込めて置ける倉庫のような物が無いか聞いたところ、納屋が有るというのでそこにベリュースを放り込む。勿論、紐は緩めずに。
「では皆さんはそこの村長さんのお宅で身を隠して置いて下さい。私は伏兵を片付けてきますから。その後に私の部下に守らせている、エモット姉妹を呼びますので。」
「はい!お願いします!」
エンリとネムは巨大な魔獣と置いてけぼりにされ最初は震えていたが、どうやらこの魔獣はさっきのルドウイークという人の言うことをちゃんと聞いて私達を守ってくれているらしい。
「…あ、あの?あなたは一体なんの魔獣なんですか?」
そう恐る恐る聞いてみるエンリ。
「某でござるか?某は、名前は無いでござるよ。でも昔から森の賢王と、お主等人間には呼ばれているでござる!」
(…森の、賢王?そんなの私でも知ってる超恐ろしい魔獣じゃないの?なんで私達を守ってくれているの?え?私は話しかけて良かったの?)
「すっごーい!!森の賢王様、トブの大森林の魔獣ですよね!始めて見たー!!」
(ぎゃーー!!!ネムーーーー!!!!)
心の中で可愛い妹に絶叫するエンリ。
「お、嬉しいでござるなー。某の事を知ってるのでござるか?」
「うん!知ってる!すごい強い大魔獣だってパパが言ってた!!ん?でもなんでそんなに強い賢王様があのルドウイークっていう人の言うことを聞いているの?」
「答は簡単でござる!殿が某より強いのでござるよ!」
「…え!?」
姉妹揃って驚愕の表情をしているエモット姉妹。
「某も驚いたでござるよ。殿は某と闘った時も全然本気じゃ無かったでござる。だから忠誠を誓い、命を助けて貰ったでござる。」
「あの人ってそんなに凄い人なんだ…」
「すっごーい!!!ルドウイーク様すっごーい!!」
「そうでござるなぁ!殿は凄いでござるよ!お主達はなかなか話しが分かる人間でござるな!気に入ったでござるよ!確か…大きい方がエンリ殿で、小さい方がネム殿だったでござるな?今後とも、よろしくでござるよ!」
エンリは自分の妹の事をとても末恐ろしい子だと思った。
(もしかしたらこの子は骸骨の、アンデッドの王様とかにも好かれるかもしれない…いやきっと好かれる…)
そんなあり得たかも知れない別の世界線の事を考えていると、
ピーーーー!
という笛の音が聞こえてきた。
「きっとこれが合図でござるな。じゃあ、お二方、某に乗るでござるよ。」
「えっ?乗っていいんですか?それにもう終わったの?騎士は20人以上いたのに…まだ1時間も経ってないんじゃ。」
「殿に掛かればその程度、ものの数では無いでござるよ。この騎士達はちょっと弱すぎでござるからなぁ…ささ、乗ったでござる!」
「っわーい!!お姉ちゃんはやく!」
「はい…お願いします!」
妹はノリノリで姉はビクビクと賢王に乗り込む。
「では凱旋でござるよ!」
「あ!エンリー!ネムー!」
村に着くなり向こうからダッシュで近づいてくる両親、だが、
「げぇ!なんだあの魔獣は!?ル、ルドウイーク様!!」
「あぁ、心配しないで下さい、既に屈伏させて有りますので。賢王、ご苦労たった!」
「殿ー!こっちにはあの後何も無かったでござるよ!」
ドタドタ走ってくる賢王に顔をひきつらせる村人達。
(…え?もしかして怖がってるのか!?あれを?)
「んー、えっと、皆さんあれは森の賢王なんですが、可愛いと思いませんか?」
「可愛い????!!!!」
(ハモった!!)
と動揺していると村長さんがこっちに近づいてきて
「…流石ですなぁ!あれを可愛いなどと。我々弱者ではとても、とても可愛いなどとは言えません。そして森の賢王といえばこの辺りでは伝説の魔獣!それを屈伏させたとは…もう言葉も有りません!」
「…はぁ。有り難う、ございます。」
賢王の方を見てみるとエンリとネムを下ろし、ドヤ顔している。
その前では両親と泣きながらエンリとネムが抱き合っていた。
(…良かった、本当に。助けられて良かったよ。)
「ルドウイーク様。この村をお救い頂き本当に有り難うございます!」
「いえいえ。とんでもない。困った時はお互い様ですから。それより、亡くなった方や、私が殺した兵士の死体の片付けを先にやりましょう。子ども達には余り見せたく有りませんし。」
「そうですな。…え?いえ!あなた様にそこまでやってもらうわけには!!」
「気にしないで下さい。さぁ、ちゃっちゃとやりましょう。」
騎士の死体は森の中に荷車で何往復かして捨ててきた。個人的には死者は丁重に弔ってやりたかったが、流石に村の墓場には一緒に入れたくないと言われ、それは仕方ないと割り切り森の少し奥に賢王に穴を掘って貰い、そこに埋めてきた。一応手を合わせ、黙祷はしたのでそれで我慢してもらおう。
ちなみに奴らの伏兵の場所に向かうとやたらめったら矢を撃って来たので『加速』を使い瞬殺した。馬も一緒にいたが、馬には罪は無く、軍馬という事であの村で役立つだろうと思い、連れて帰った所、とても喜ばれた。
その後あらかた片付けて、色々村長さんに話しを聞いていると、ここはリエスティーゼ王国の領内で、恐らく襲って来た騎士は盾の紋章からしてバハルス帝国の騎士達だろう、という事だった。
(しかし、戦争中とはいえ、戦力を全く置いていない只の村人の虐殺にワザワザ自分の国の紋章をデカデカと付けて来るか…?露見した場合、どう考えてもリエスティーゼ以外の国からも反感を買うだけなのに…)
「…帝国の皇帝とやらは、暗愚なのですか?」
「いえ、歴代最高の皇帝という噂を聞いた事が有りますな。」
「ほう。なる程。」
(…ブラフの可能性が高いな。後であの『バカ』に良く聞いてみるか。)
村長さんに話を聞き終え、是非ともという話で、(そもそも報酬に自分が頼んだのだった)エモット宅で昼食をごちそうになっていると、狩人として研ぎ澄まされた聴覚で拾える音が有った。
「…ん?」
「どうされました?ルドウイーク様?」
「エンリ、この村に大勢馬で帰ってくる予定の有る人達はいるか?」
「え?そんな人達はいませんよ?…まさか…!?」
「…君はやっぱりとても優秀だな。今ので何の話か分かるとは。」
「…どういう事だ?エンリ?」
訝しげな顔で聞いてくるエモット父。
「…この村に大勢の馬で向かって来る人達がいる。そしてそんな人達が来る予定はこの村には無い。もしかしたらまた…って事ですよね?ルドウイーク様?」
「ああ、まだ距離があるが確実に近づいて来てるな。エモットさん、この村の皆さんをまた村長宅に。村長と2人で出迎えます。」
「畏まりました。しかしなぜ村長も?」
チラッとエンリをみるルドウイーク
「…もしかしたらホントにお客様かも知れないし、そうだったらルドウイーク様じゃ分からない。村長さんに判断してもらう。って事ですよね?」
「ああ。その通り。」
「お姉ちゃんすっごーい!!」
「エンリに言い含められる時がくるとはなぁ」
(仲の良い家族だ。…ずっと一緒にいられる訳でもないし、無責任かも知れないけど…一緒にいる内は守ってやろう…絶対。)
そうして村長と一緒に村の出入り口に立つルドウイーク。
「来ましたね。」
「…大丈夫なんでしょうか?」
「…まぁ何とかなりそうですね。」
見たところさっきの騎士と違い装備もバラバラでどちらかというと騎士というより傭兵のような感じに見える。
「私はリエスティーゼ王国、ガゼフ・ストロノーフ!!王国戦士長である!!この辺りの村が襲われているという連絡を受け、見回りしている者達だ!そちらは村長とお見受けした。…そちらは一体どなたかな?」
村長をチラッと見ると
「確か、王国の御前試合で優勝したとか。」
「本人ですか?」
「いえ、流石に顔までは見たことはございませんので…」
仕方ないか…と気持ちを切り替え、
「…自分の紹介くらいは自分でやろう。俺はルドウイーク、獣狩りを生業としている。この辺りには最近来たばかりでね。丁度その森から出てきた時にこの村が襲われていたので助けた者だ。」
「…なんと!本当に、本当に有り難う。我々では間に合わなかっただろう。何度でも言わせてくれ、本当に有り難う!」
ガゼフと言う男は馬から下り、ルドウイークの手を取り、礼を言ってくる。
(この男は…とても凄いな。自分の身分をかなぐり捨てて俺のような、よそ者に頭を下げて礼を言うとは。好感が持てる良いヤツだ。)
「いえ、こちらも一応、食事目当てで既に頂いてますから。それに困った時はお互い様ですよ!ストロノーフ殿。」
「食事に自らの命を掛けるとは…いや、腹が減っている者には明日の大金より今日の食事か。ははは!」
さっき自分が言った事をいわれ少し恥ずかしいと同時に、この男はやはり良いヤツだな。という思いを強くした。
「ふふふ、…その通りだ、ストロノーフ殿。襲撃者達は、捕虜を一名捉えて、後は皆殺しにした。数が多く、こちらに戦える人は俺だけだったからな。捕虜は一応、本当に一応、隊長格で、既に心はへし折ってある。何でも素直に答えると思う。あそこの納屋の中だ。」
そう言い切り納屋の方を向くルドウイーク、しかしその前に村の門の前に有る、とんでもない物が目に入った。
「了解した、おい誰「ああああー!!!灯りがあったーーーーー!!!!!」
門の前に、ポツンと灯りが、狩人の工房に帰る為の灯りが、とても不自然に生えていた。
タイトルに反して戦士長出番少なめ。
ひぇ
エモット夫妻が助かったのはエンリとネムを先に逃がし、ベリュース(バカ)がエモット父に反抗されなかった為、助かったという感じです。つまり獣の咆哮に驚いて外を見た為助かったという事です。ベリュースはエンリの顔をチラッとだけみて可愛かったので追っ手を出したのですが、ロンデスさんがせめてもの反抗で殺すように部下に命令しました。捕まっても碌な事にならないですしね。