【ロキ・ファミリア】の拠点、黄昏の館。明日からは遠征のため、全員が全員準備をしていた。
………一人を除いて。
「おいコラ、ユノ。テメェ明日遠征だぞ。さっさと準備しやがれ」
ベート・ローガの妹、ユノ・ローガはソファーでゴロゴロと寝転がっていた。
「うんー、後でするよー」
「そう言っていつもしねぇんだろうが。……ったく、仕方ねえな。鞄はいつものリュックでいいのか?」
「お、用意してくれるの?ラッキー♪」
「次からは自分でしろよ」
「わーかってるってぇー。リュックはいつものでいいよー」
「着替えとかは?」
「ん、いつものー」
「下着は?」
「あーそれは自分でやるよー。というか勝手に触ったら兄貴でもビンタするからねー」
「なんだお前。前回の遠征んときは気にしてなかったろうが」
「いやー、そういうの良くないってレフィーヤちゃんに怒られちゃったからさー」
「ふぅん、そうかよ。なら、下着はテメェでやれ。武器は?」
「うーん、あの緑色のダブルセイバーでいいよ。振ったら残光が出るヤツ」
「あとはなんかあるか?」
「うーん、あと髪留め」
「えーっと、髪留めは……机の上の三段目の棚、だったか?」
「え?二段目じゃなかった?」
「いや、三段目にあったぞ。これだろ?」
「そーう、それそれ。それだけでいいや」
「ちゃんと忘れずに下着入れろよ」
「わーかってるって。ありがとね、兄貴」
「じゃ、俺は自分の準備に戻るからな」
「あーい」
ベートはユノの部屋を出て、一息ついた。
「ったく……いつまで経ってもグータラなヤツだ」
「お前の所為だろォォォォ‼︎」
突然、後ろからフィンのライダーキックがベートの後頭部に直撃した。
ズシャアァァアッと前に転がるベート。
「何やってんのお前⁉︎妹自立させるどころか完全に世話焼きお母さんじゃん‼︎何で妹の下着まで用意してんだよ‼︎何で部屋の主より部屋の事詳しくなってんだよ‼︎」
「………や、いつまでも自立しねぇからあいつが……。俺、あいつのことホッとけなくて……」
「気持ち悪いほどシスコンだなお前!思春期の娘を持つパパか‼︎」
「最近、視線がヤケにウザがられてると思ったらそゆことか」
「自覚はあったのかよ‼︎ていうか、僕のところに良く愚痴りに来るぞ‼︎『兄貴が過保護過ぎてウザい』って」
「うるせぇ‼︎いい加減にしろ‼︎」
(え?僕今怒られた?なんで怒られたの?)
「別に俺ァ、過保護なんかじゃねぇよ‼︎あんなバカ妹がどうなろうが知ったこっちゃねぇが、ただあんなバカでも俺は死んでほしくないだけだ」
「お、おう……。つまり、どこでどうにかなったら困るって事だな」
「ただあんなバカな妹でも、俺は嫌いになれないだけだ」
「おい、シスコン度増してる。ていうかなんで言い直した?」
「あんなバカな妹でも、俺は愛してるだけだ」
「おい、それ妹としてだよな?そう言えよ、そう言ってくれ頼むから」
「あんなバカな妹でも、俺は一人の女性として」
言いかけた直後、後ろの扉が開いた。それがベートに直撃し、思いっきりぶっ飛ばされた。
「………バカバカ五月蝿いんだけど」
虫を見る目でそう言った後、ユノは自分の部屋にあくび交じりに引き返した。
どうしようか迷ったものの、一応フィンはベートに声を掛けた。
「………大丈夫か?」
「…………悪くねぇ」
「手遅れか…………」
手遅れだった。