遠征開始。【ロキ・ファミリア】は二手に分かれて18階層まで進行することになった。
「おっはよーう!ユノさ〜ん」
後ろからガバッとティオナが飛びついて来た。
「おー、遠征初日だというのに元気だねー。ても重たいから降りてくれやしませんか?」
「しませーん。んふふー♪」
ほとんどおんぶさせられてる状態で歩くユノと、その上のティオナ。【ロキ・ファミリア】に入りたての頃、同じ系統の武器を使うということもあって、ティオナはユノに剣を教わっていたから、すごく懐いていた。
「うん、ホント重いから離れてくれない?」
「やーだー」
「ねぇ、あたしそっちの気はないし。ノーマルだからさ」
が、まるで話を聞かずに頬をスリスリするティオナ。ユノはティオネを睨んだ。こいつ、どうにかしろ的な。
「……あー、ティオナ。ユノさん困ってるから放してあげなさい」
「やーだよー。今日はこのまま18階層まで行くんだもん」
「あたしを殺す気?重くて18階層まで保たないんだけど」
「そうユノさんも言ってるんだから降りなさい」
「やだー」
そんなやりとりしてると、ベートが後ろから声を掛けた。
「オイ、人の妹オモチャにしてんじゃねぇよ。離れろバカども」
「はぁ?ベートは関係ないじゃん」
「ていうか、私は止めようとしてるんだけどベート」
「つーかテメェら、そこのバカは『さん』付けでなんで兄の俺は呼び捨てなんだよ」
「そりゃあ、尊敬してるから?」
「師匠だから!」
「ていうか、好かれ方が違うのよそもそも」
「私、ベートにさん付けするくらいなら【ロキ・ファミリア】辞めるなー」
「テメェらブッ殺すぞ‼︎」
「喧しいわ!遠征中じゃ、静かにせんか馬鹿者共‼︎」
ガレスに怒鳴られ、3人はおとなしくなった。
ちなみにユノはいつの間にかアイズの隣で大人しく歩いていた。
*
遠征を開始し、数週間が過ぎた。【ロキ・ファミリア】の皆様は50階層に到達していた。
「盾、構え‼︎」
フィンの声で、盾持ちの冒険者達は盾を構えた。
「前衛、密集陣形を崩すな!後衛組は攻撃を続行‼︎」
その声を聞きながら、全員が全員動き始めた。
モンスターを切り刻む獣人、ヒューマン、アマゾネスに、後ろから魔法を詠唱するエルフ。
もはや戦場と化してる50階層。最前列のメンバーは盾を構えて、フォモールの群れを支えていた。最後列の魔導師の詠唱が終わるまで、持ち堪えるのだ。
『オォオオオオオオオオオ‼︎』
そのうちの一ヶ所のフォモールが盾を押しのけて突破した。
すぐにフィンから指示が飛ぶ。
「ベート、穴を埋めろ‼︎」
「チッ‼︎何やってやがる‼︎」
援護に向かうベートだが、間に合わない。フォモールは前衛を突破し、後衛の魔導士部隊に襲い掛かった。
その内の一人の魔導士、レフィーヤが吹き飛ばされた。直撃は避けたものの、地面を粉砕する一撃の衝撃波で、体は大きく後ろに飛ばされた。
「………ぁ」
そのレフィーヤに黒い影が被さる。
フォモールの中でも特大サイズ、それが目の前で自分を見下ろしていた。
「あっ……あっ……」
自分のメイン武器は杖、50階層クラスの相手に苦手な近接戦闘で戦うには勝ち目が無かった。
フォモールは、んなこと知らねえよ、とでも言わんばかりに鈍器を振り上げた。
振り下ろされ、自分に迫ってくる鈍器から目を逸らし、キュッと目を瞑った直後、ボグッと鈍い音がした。自分に攻撃は当たっていない。恐る恐る目を開けると、ユノが鈍器を片手で防いで支えていた。
「大丈夫〜?」
「ゆ、ユノさん……!」
「いや〜、驚いたよー。ぼんやりしてたらレフィーヤがピンチなんだもん」
「や、それより前を……!」
「やっぱり戦闘中に立ったまま寝るのは良くないねー。でも、どうしてもお昼寝したくなっちゃうんだよなー」
「あのっ、モンスターが……!」
「ねぇ、どうしたらいいと思う?」
「知りません!ていうか前!」
「ああ、ちょっと待ってねー」
言うと、ユノは鈍器を握り潰した。
『ブォッ⁉︎』
「五月蝿いよ」
直後、バゴッと、バゴッと生き物から出るとは思えない音と共に、フォモールは後方へ大きくぶっ飛ばされた。
「ほっ」
タンッとユノは軽くジャンプし、ぶっ飛ばしたフォモールの真上へ。上から首を掴むと、地面に思いっきり首から叩きつけた。
真下にいたフォモールもろとも叩き潰し、デッカいクレーターを作った。
「…………うわあ」
ドン引きするレフィーヤだが、そうボヤボヤもしていられない。また襲い掛かってくるモンスターを相手にした。
*
リヴェリアの超特大魔法によって、フォモールの群れを一掃した。
その跡を見ながら、ユノは口笛を吹いた。
「ヒュー……すごいなぁ、相変わらずリヴェリアの魔法」
巨大な地面の抉られた跡、その中のより深い場所、つまり途中で自分が作ったクレーターの所まで歩き、ビニールシートを敷き、その上に枕を置いて寝転がった。
「………うん、ここならフィンに見つからないよねー」
「あ、あのっ、ユノさんっ」
「おおう……見つかるの早っ……」
自分の隠れるセンスのなさに驚愕しつつ、声のした方向を見た。レフィーヤがクレーターの淵で自分を見ていた。
「んあー?」
「た、助けていただいてありがとうございましたっ」
「………?」
助けたっけ?と、割と本気で忘れてるユノだった。
「………助けたっけ?」
「は、はいっ!助けてもらいました!」
「………………?」
「ほ、ホントに忘れてるんですか?」
「………あ、うん?覚えてるよ?」
「なんで疑問系?」
実際、欠片も覚えてないのは言うまでもない。
「それより降りておいでよー。気持ち良いよー」
「あの、いいんですか?団長が呼んでいましたけど……」
「いいのいいのー。どーせお説教だし」
お説教、というのは戦闘の途中まで立ったまま寝ていたことだろう。レフィーヤとの会話が聞こえていたようで、ほぼほぼ間違いなく怒られる。
それはごめんだったので、話を逸らした。
「それより一緒に寝よう」
「ふ、ふえ⁉︎」
「………何顔赤くしてんの?そういう意味じゃないんだけど。このムッツリ」
「ち、違います‼︎」
「いや、ムッツリでしょ。レフィーヤえろい〜」
「お、怒りますよ⁉︎」
「怒ればいいじゃん。レフィーヤが怒ったって怖くないし」
「団長に言付けますよ⁉︎」
「ごめんなさい」
団長には弱かった。コホン、と咳払いすると、
「とにかくおいでよレフィーヤ。そこにいつまでもいられるとフィンにバレちゃ……」
「僕が何だって?」
「あっ」
言い付けるまでもなかった。
「さ、こっちへ来ようか」
「…………はぁ」