それを見ていたジョーが、ポケットから財布を取り出して二、三枚のお札をウズメに差し出した。
「ウズメねえさん。これでコイツの服買ってきてやってくれないか。俺には女の子の服なんて全然分からん」
「いいわよ…じゃぁ、サイズ合わせに連れて行くわね」
ウズメは、ジョーに少女の買い物を頼まれた事がよほどうれしいようだった。
「あぁ、頼むよ」
「私もいくわ」沙羅が、突然そう言い出した。
「私も~」ヒナまでが一緒に付いて行くと言う。
「おぃおぃ、何だよ…急にみんな」ジョーは買い物に乗り気な女性たちを見回した。
「まぁまぁ、いいじゃないの…私たちに任せて」沙羅がニコニコしながら言った。
「女って何で子供の世話を焼きたがるかなぁ…ボルテのヤツもだけど」ジョーは少々呆れ顔で言った。
「ま、女は女ですさかいな~ソルジャー…ここは黙って任せといた方がえぇんちゃいまっか」
「そうだな。俺らがいっても何の役にも立たん」
ヒジリとツクモにそう言われてジョーも黙ってしまった。
そうしている間に、女性たちは早々に身支度を整えていそいそとウィルを連れて玄関の方に行った。
「じゃ、行って来る…お留守番は頼んだわね」
沙羅は一旦ドアの前で立ち止まって、男たちにそう声を掛けてから出ていった。
「あぁ」とツクモが言った。
「行ってらっしゃ~ぃ」シュンは手を振って見送った。
「さてっと…それじゃ、報告書でも書きまっか?」ヒジリはそう言って椅子から立ち上がった。
「そうだな」ジョーも同意した。
そして、ジョーとシュンとヒジリは会議室に入って行った。
ウィルを連れて出ていった沙羅たちが帰って来たのは、すっかり陽が暮れてからの事だった。
「遅かったじゃぁないか…ネトゲとハッカーは待ちくたびれて帰っちまったぞ」出迎えたツクモが言った。
「ごめん、ごめん」沙羅は笑いながらツクモに謝った。
「どこほっつき歩いてたんだよ~?」
「え~っとね…買い物して、サウナ入って、美容院に行って、それからみんなでお食事してたの」
ヒナがあっけらかんと言うのを聞いてツクモは呆れた顔をした。
「何だぁそりゃぁ?…フルコースじゃねぇか」
「まぁまぁ、いいじゃないの…たまの女同士の息抜きくらい」ウズメが笑いながら言った。
一方会議室で横になって寝ていたジョーは、起きてきて事務所のドアを開けるなり固まってしまった。
~続く~
<「ビーストハンター」背景>
「ビーストハンター」は現代社会の諸々の問題が、何ら解決されずに未来に持ち越された世界を想定して描いています。
そこでは、依然、人種・民族・国家間の抗争が繰り返され、温暖化による異常気象や沿岸経済都市の水没が起きています。
世界の経済は大きく後退し、治安が悪化してゆく中で、各国は自国を守る為に保守化し、超右寄りの政策を取っています。
国連は、この混迷した世界を何とかする為の努力をしますが、各国の思惑が入り乱れてどうにもならない状況に陥ってます。
現代社会が積み残した負の遺産を引き摺りながら、それでも近未来の人々は、そんな世界で生きて行かなければなりません。
一介の素人小説が未来まで残るとは思えませんが、我々の子孫がこの小説を読んだらどんな感想を述べるでしょうか?
「こうなる事が分かってたんなら、何とかしてくれればよかったのに~!」と子孫に怒られるかも知れませんね(笑)