ペルソナ3 暁の破壊者   作:時価ネットこみなと

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プロローグ

暁色に輝く満月。

摩訶不思議な光景を目の辺りにした朝霧海斗は、幾年振りか夜空を眺めた。

禁止区域の風景も様変わりし、先程まで隣を着いて来ていた杏子は棺桶に取り替わっていた。

 

「なんだ……何が起きている?」

 

海斗は棺桶をコンコンッとノックをする。

ざわ、ざわ。

不審な気配を海斗は察知した。

それに気付いた海斗はファインティングポーズをとり、相手がどこから出てきても対処できるようにする。

瓦礫の山から不審な気配の一つが出て来た。

そこには人の手の形をした未確認生物?が人差し指と中指と薬指でステップを踏んでいた。

海斗と目が合った未確認生物は、指パッチンのような動作をする。

それと同時に、海斗が立っている場所が急激に温度が上昇した。温度が不自然に上がった事に逸早く勘付いた海斗は横っ飛びをした。

海斗が避ける直前、巨大な火柱が出現。避けるタイミングは良かったが、海斗は右足を負傷した。避けきれず炎で火傷したのだ。

 

「――チッ! なんだアイツ! 何をしやがった!!」

 

海斗は焼かれた場所を見ていると、また未確認生物は指パッチンをした。

 

「なめんじゃねえぞ!!」

 

右足の火傷が無かったかのような身の熟しで、火柱を難無く躱した海斗は一気に未確認生物と差を詰めた。

そのまま足払いをして未確認生物を倒すと、馬乗りになって殴りまくった。

ぐにゅ、と人の分厚い肉を殴る感触が海斗の腕に伝わる。この生物には骨らしい物は無く、肉の塊のようなモノだった。

暫く殴り続けていると、未確認生物は黒い霧を発生させて、その場から消えた。

 

海斗は夢を見ている気分で汗を拭った。

パチンッ

咄嗟の判断で海斗はその場から離れた。

今度は一筋の稲妻が落ちた。放電された微量の電気が海斗を襲うが、そんなものは気にせず、次の戦闘に入った。

 

 

 

 

一時間後、海斗は何匹もの未確認生物を一人で倒し、暁色の満月が黄金の満月へと戻った。

体中の彼方此方が裂傷擦傷火傷でボロボロだった。常人なら痛みで気絶する傷の中、海斗は最後まで戦い抜いた。

海斗は何事も無かったかのように杏子と家へ帰ろうとしたが、杏子は海斗が突然傷だらけになったのを心配した。

説明を面倒臭がった海斗は、杏子の心配を気にせず足を運んだ。

 

 

 

 

 

 

海斗はまだ知らなかった。

この夜の出来事が、とある人物に見られていた事を。

そして、

この世の地獄と言われる禁止区域から出られる事を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は、待たない。

  すべてを等しく、終わりへと運んでゆく。

 

 

 限りある未来の輝きを、守らんとする者よ。

 

 

  1年間――

   その与えられた時を往くがいい。

 

 

 己の心の信ずるまま、

  穏やかなる日々にも、揺るぎなく進むのだ――

 

 

 

港区のターミナル駅はすっかりと日も暮れ、街灯や駅前に出店している店の明かりが輝いていた。

駅前は、帰宅途中のサラリーマンや学生、あるいは家族などの人々が行き交い、賑わっていた。

 

一方、騒がしい駅前に比べて静まり返っている誰かの部屋。

部屋の主と思われる学校指定の制服の上に、ピンクのカーディガンを着た少女が息を荒くして、頭を押さえていた。

 

「ハア……ハア……。額に……当てて……引き金を引くだけ……。やらなきゃ……」

 

少女は震えながら両手で銃を持ち、自らの額に当てる。

引き金を親指で引こうとするが――

 

「ダメ……できない……!」

 

引き金を引く事なく、銃を放り投げた。

投げられた銃はベッドの下に潜り込み、そのまま少女の視界から消えた。

 

 

 

港区の新都市交通“あねはづる”の車内に、

紅色に染まった瞳、下ろしたら腰近くまでありそうなブラウン色の髪を上に向ける様に留めている女性が一人佇(たたず)んでいた。

 

『本日は、ポイント故障のためダイヤが大幅に乱れ……、

 お急ぎのお客様には、大変ご迷惑をおかけ致しました。

 次は~、巌戸台~……』

 

女性の目的地が近づいたのか、耳に掛けていた赤いイヤホンを外し、入り口付近まで移動した。

 

『巌戸台、巌戸台です。

 この電車、辰巳ポートアイランド行き、本日の最終電車となっております。

 お乗り忘れの無いようご注意ください』

 

女性は改札口を通り、少し急ぎ足で駅を出る。

到着時間が大幅に遅れ、今の時刻は0時。遅れると連絡した寮の管理人も、この女性が来るまで待っていてくれると言われたため、自然と足が速くなった。

 

駅に取り付けてある時計の針が3つ重なった。

 

「……なに、これ?」

 

周囲の異変に気付いたのか、周りをキョロキョロと見渡す。

しかし、女性はどんな異変が起きたのか分からず、取り敢えず寮へ向かう事を先決した。

駅を出ると、そこは人気が全くないゴーストタウンだった。

街の道路には棺桶と思われるオブジェが不規則に並んでいた。

女性が見上げた月も、不気味なほど巨大で、黄金に輝いていた。

 

 “月光館学園 巌戸台分寮”

ここが女性の入学案内に書かれていた寮だ。

今日から女性は、この寮で高校卒業まで過ごす事となる。

 

「ようこそ」

 

寮の扉を開けると、そこには白黒ストライプの囚人みたいな服を着た、青い瞳の不思議な雰囲気を漂わす少年が出迎えてくれた。

 

「遅かったね。長い間、君を待っていたよ」

 

少年は、1枚の紙を女性に差し出した。

 

「この先へ進むなら、ここに署名をして。一応、“契約”だからね。

 怖がらなくていいよ。

 ここからは、自分の決めた事に責任を取ってもらうってだけだから」

 

差し出されたカードにはメッセージが書かれている。

 

『我、自ら選び取りし、

 いかなる結末も受け入れん』

 

そして、署名の欄が一つある。

女性は羽根ペンを取り、自分の名前をカードに書き込んだ。

 

『有里 公子』

 

公子は名前を書いたカードを少年に渡した。

すると少年はニコッと笑い、

 

「……確かに」

 

と受け取った。

 

「時は、誰にでも結末を運んでくるよ。たとえ、耳と目を塞いでいてもね。

 ……さあ、始まるよ」

 

少年は公子の前から闇に消えるように消え去った。

公子が吃驚するのも束の間、寮の奥から女性の声が上がる。

 

「……誰!?」

 

視線を声のする方へやると、ハート形のチョーカーにピンクのカーディガンを着た少女が一人いた。

 

「この時間に……どうして……、まさか!」

 

少女は、銃のような物を手にしていた。

おもむろに銃を構えようとするが――――

 

「待て!」

 

背後から現れた女性が、少女を制止させる。

赤毛にウェーブが掛かった長い髪でピンヒールを履いており、とてもじゃないが高校生に見えない美人系の女性だ。

すると突然薄暗かった寮の明かりが点いた。

 

 

 

場所をちょっと移動して寮一階のソファに三人で座る。

 

「到着が遅れたようだね。私は、桐条美鶴。この寮に住んでいる者だ」

「……誰ですか?」

 

カーディガンを着た女性が、美鶴に質問をする。

それに対して美鶴は丁寧に答えた。

 

「彼女は転入生だ。ここへの入寮が急に決まってね……。

 いずれ、一般寮への割り当てが、正式にされるだろう」

 

そう。

公子がここへ来たのは、一般寮が足りて無く、偶然ここが空いていたのだ。

しかし、それも一般寮の空きが来るまでの短い間だ。

 

「……いいんですか?」

「……さあな」

 

公子に聞こえぬくらいの声で、美鶴と少女は話した。

 

「彼女は、岳羽ゆかり。この春から二年生だから、君と同じだな」

「……岳羽です」

「よろしくね、岳羽さん」

「あ、うん……」

 

ゆかりは、公子の明るい笑顔に対して、ちょっと戸惑った。

さっきの銃や景色を見て、まるで気にしていないかのような笑み。

 

「こちらこそ、よろしく……」

「今日はもう遅い。部屋は3階に用意してある。荷物も届いているはずだ。すぐに休むといい」

「はい。ご親切にありがとうございます!」

「あ、じゃ、案内するんで、ついて来てください」

 

 

 

ゆかりに案内された公子が到着したのは、寮の3階廊下の一番奥の扉だった。

 

「この部屋だね。一番奥だから、覚えやすいでしょ?」

「そうだね。覚えやすくて助かるよ」

「えっと、何か訊きたいことある?」

 

公子はさっきいた少年を思い出した。

 

「あの子供も寮生なの?」

「……誰のこと? ちょっとやめてよ、そういうの……」

 

どうやらゆかりは何も知らないようだ。

しかし公子は署名までして鮮明に覚えている、あの子はなんだったんだろうと頭を悩ます。

 

「あの……ちょっと訊きたいんだけど」

「なに?」

「……駅からここまで来る間、ずっと平気だったの……?」

「平気だった」

「そっか……ならいいんだ。ごめん、気にしないで」

「わかった。じゃ、おやすみ~」

「うん、おやすみ……」

 

何か腑に落ちないゆかりは、そのまま公子の前から居なくなった。

部屋に入った公子は持って来た手荷物を部屋の隅に放り捨て、ベッドへ身を投げた。

今日は何だか疲れた公子は、着替えもしないでそのまま瞼を降ろした。

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