空は晴れ模様となり体育祭の時期となっていた。
結城リトは想い人である西連寺春菜に良い見せ場を見せようと、そして猿山ケンイチは想い人である夕崎梨子に良い見せ場を見せようと決意していたのだ。
そんな彼らの想いは気づくのだろうか?西連寺春菜は密かに結城リトの見せ場を見ようとは思っているが、夕崎梨子の方はどうなのだろうか?
その夕崎梨子はいつも通りに満面に笑みを浮かべていて、その他の感情が出ないかと心配してしまうけど他に思い当たる感情と言えば黒い笑顔だったので、夕崎梨子のその他の感情を見る事をどこか彼女を知る者達は諦めていた。
一方、夕崎梨子の心境はというと・・・
(ふふふ、今日の弁当はママが張り切って作ったって言ったからなぁ~。今日の体育祭で精一杯動いて思い切りお腹を空かせるとしよう。うん、それがいい)
料理が出来ない訳では無いが、母親の手料理には勝てずにいて母親の手で作られた弁当を非常に楽しみにしていた。
ちなみに、夕崎梨子は母親の事をママと父親の事をパパと呼ぶという両親への溺愛の気持ちを持っていた事は友人には内緒だという。
(ママは来れないけどパパはカメラで撮影するんだって興奮してたし、パパ・・パパが撮ってくれるボクの姿をママに・・ボクの活躍を見せなければならない、という事になるだろう)
夕崎梨子は笑みを浮かべた。
その笑顔はいつもの笑みとは違い、まるで純粋無垢かつ無邪気で向日葵のような笑顔であった。そんな彼女は猿山ケンイチと一緒に登校していたのでその笑顔を彼は目撃してしまった。
「うおっ!?リコちゃん!?すっげー楽しみにしてるんだな!」
「ああ♪こんなに心躍るのは久方ぶりだ♪」
「っっ!!?」
猿山ケンイチはときめいた。
夕崎梨子が純粋無垢の笑みで声は甘えん坊の子供のようで艶(なま)めかしい声色であった。
(可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い好き好き好き)
猿山ケンイチは顔を真っ赤にさせ夕崎梨子にメロメロとなった。いつもの小難しい夕崎梨子の口調とのギャップに萌えを感じ、彼女に恋い焦がれてしまった猿山ケンイチは好きよりも大好きという気持ちへと変化していた。
「ん、んんっ!すまないね、ボクとした事が随分と、はしゃぎすぎたようだね」
夕崎梨子は恥ずかしさを誤魔化すように咳払いをして通常の夕崎梨子へと戻った。そんな彼女の変貌に、勿体ないと猿山ケンイチは感じていたけど、それでも普段の夕崎梨子が好みであった。
(さっきのもリコちゃんでこのリコちゃんもリコちゃん・・やっぱ俺、リコちゃんが好きなんだぁ)
ウットリとした目で夕崎梨子を見つめるけど、その彼女は首を傾げ疑問を抱く様子で猿山ケンイチを見ていた。
この猿山ケンイチは何を考えているのだろうか、と彼の気持ちを読み取る事は出来ず学校へと歩を進めていくのであった。
時は更に進み体育祭開始となり、生徒達はグラウンドに集まって入場していき、生徒達の数多くの保護者はテントで我が子達を応援し見守っている様子だ。そして体育祭開催宣言が天上院紗姫によって宣言された。
『宣言!この天上院紗姫他モブ生徒一同は美しく妖艶に華麗で優雅で愛に強く、そして!リコとララ!あなた達には絶対に負けないと宣言いたしますわ!』
数多くの生徒の保護者がいるのにも関わらずグラウンドにある朝礼台に立たれ勝負宣言をいい放たれる空気にその場に居た生徒達や保護者は驚きを隠せず、特に夕崎梨子は恥ずかしそうに俯いていた。
(さ、紗姫ちゃんっ!パパが入場からずっとカメラ回しているのにそんな堂々とっ!は、は、恥ずかしーじゃないかい!)
ララはララで無邪気に楽しそうだと、はしゃいでいて天上院紗姫の勝負を承ったのだが、夕崎梨子はそれどころではなく、ただ恥ずかしかった。それはそうと宣言が終了し、次は準備体操の時間により、準備体操考案の校長は朝礼台に上がった。
『校長の校長による校長の為の校長ラジオ体操ー!』
放送係となっていた猿山ケンイチの進行の声のもと、ラジオ体操の時に流れる音楽が始まり、準備体操が始まった。まずは腰をくの時に折り曲げ、両腕を真っ直ぐ大きく手前に振り、お尻は突き出しては引っ込める体操をしていた。
(くっ!な、なるほどっ!これはなかなか堪えるっ!肩や腕と腹と腰付近を同時に動かすなんて!やるな校長先生!)
夕崎梨子は運動の手応えを感じ、良い感じに身体をほぐしていた。次の運動は寝転がって両脚を真上に突き出し、両脚を左右に大きく開いたり閉じたりする運動だ。
(っ!なるほど!腹筋やあんまり動かさない股関節辺りがよくほぐされる!ただ者じゃないな!あの校長先生!)
夕崎梨子は真面目に体操していたが他女子生徒達は困惑していたのだ。まさかあの校長先生はエロい格好をさせたいのではないのかと疑問を抱いていて、次の運動の内容に女子生徒達は確信になったのだ。
両脇腹から手を押しつけ、上に上にと移動し両脇まで到達したらその両脇をグリンと両手で円を描く運動、つまりは自分の胸を揉みしだけと暗に言ったのだ。それに怒った女子生徒達は激怒し、近くにあった物を校長先生に投げつけ校長先生を無力化にしたのだが、二人の女子生徒がそれをやって遂げていた。
「く!やるな!校長先生!脇腹から脇まで解しつつ肩も解されるという訳か!」
「わ!リコの言う通りだ!すごく気持ちいいよ!」
真面目な夕崎梨子と純粋無垢のララであった。近くに居た西連寺春菜は彼女らの行動を中止させた。
「な、なんでそんな事をするのー!?こんな所で!」
西連寺春菜の言葉は尤もであった。
男子生徒は顔を赤くして自分の胸を揉みしだく彼女らの行動を見ていたのだからそれを止めさせるのは至極当然の事であった。ララは素直にごめんと謝るけど、夕崎梨子だけは反論していた。
「いやいや、あの校長先生の準備体操は運動さる事ながら、スタイルの向上にもいいんだよ。いやぁ、本当に何者なんだろうね?あの校長先生」
「っっっ!?だ、だからって!~っっっ知らない!」
西連寺春菜はスタイルに自信がなかった。
胸は高校生になっても育たず、クビレやお尻も大人のように変わらない事を嘆いていた。
(スタイルが良くなるって事はリコちゃんみたいになるって事かな?帰ったらやってみようかな)
西連寺春菜は夕崎梨子の身体をマジマジと観察した。胸は恐らく80前後の大きさでクビレも約50センチ前後程でお尻も胸と近いくらい大きかった。
(ーーっ!!?や、やっぱり!すんごいスタイルだー!本当に同い年なのー!?)
女の子なんだけど惹かれてしまうその素晴らしいスタイルは本当に羨ましい。
(んー・・・ホントに何を食べたらこうなるんだろう?気になるなぁ・・でもこんなスタイル持っているのにあんな勿体ない口調なんだもんなぁ・・ま、まさか小さい頃からスタイルが良くてそれを気にしてあの口調になるとしたら・・・ってあれ?腕や手で隠れてる?はっ!)
夕崎梨子の身体をじっくりと観察した集中力は夕崎梨子の身体に巻かれた自身の両腕の存在に気づき、恐る恐る夕崎梨子の顔を見たら、はにかむような様子で恥ずかしがっていた。
「・・・春菜ちゃんって、けっこうスケベなのかい?」
「ち、ち、違うよ!た、ただリコちゃんのスタイルがいいなぁと思っただけで!はわわわっ、ごめんなさいッ」
「まぁ、いいけどね、時と場所を考えて行動しないといけないよ?春菜ちゃん」
夕崎梨子の冷静な説教に頭が下がる西連寺春菜は、しゅんと小さく落ち込んでいた。
そんなこんなで開催式は終了し、第一種目である借り物競走は奇妙であった。普通の借り物競走ならば身近に用意出来る物でなければならないが、この彩南高校流体育祭の借り物競走はとんでもなかったのだ。
例えば、どこかにある伝説の聖剣エクスカリバーとか、初恋の想い人とか、脱ぎたての女子限定体操服とか、心の壁などなど無理な借り物競走であった。
当然、リタイア続出であり、ゴールした生徒はほんの僅かしかいなかったのだ。
そして夕崎梨子が出る次の種目である障害物競走も一風変わったものであり、ハードルや平均台などの障害物ではなく、夫とその愛人と出来た子との障害や夫が何かの犯罪で数十年待たなければ釈放されない障害などという本当の意味での障害物競走となっていった。
もちろんリタイア続出であり、唯一生き残りの者は夕崎梨子のみとなりその前に立ちはだかる障害物として出てきたのは茶道教室においてイケメンの先生が夕崎梨子を想いそれを許せないとするその茶道教室に通う女達との障害であった。
夕崎梨子は顎に手を添えてしばらく思考し、「・・・ふむ、なるほど。策を思いついた」と呟き、夕崎梨子流茶道を開始していた。
グラウンドに畳がおいてあり、まず茶室に入る展開からと夕崎梨子は「うおおおりゃああー!」と大きな声を出しながら茶室の襖をマウンテンバイクに乗ってぶち壊しながら入っていき、イケメン先生にマウンテンバイクに跨がったまま「お茶をくれ!間に合わなくなったらどうしてくれるんだー!」と満面に笑みでイケメン先生を脅した。
「は、は、は、はいっ!た、ただいま!」
イケメン先生は茶道の一つ一つの作業をソワソワと落ち着かない様子を見せ、挙げ句の果てには「ボクがやる!見ていられない!」とイケメン先生による茶道を邪魔し占領した。そして夕崎梨子は茶道のなんたるかを知らないのか「あーしてこーして・・・分からん!」と叫びながら茶道の道具をひっくり返し、懐を探ってある物を取り出し、それをイケメン先生に差し出した。
「粗茶ですが、どうぞ」
インスタントの味噌汁であった。
茶ではないし、飲み物としても微妙な物であったので、イケメン先生は「キミは非常識だし、嫌いだ」と泣き叫びながらその場から消え去り、障害がなくなったのだった。
「ふふふ、ボクが嫌われれば他の女の子達は彼に告白でもなんでも好きに出来る、と思ってああいう行動をしたんだよ」
そんなこんなで波乱な体育祭は終了し、結城リトが所属するクラスが優勝とし、あっけなく天上院紗姫が所属するクラスは敗北となり幕を閉じたのであった。
次は金色の闇です!自分でもどう書くか楽しみです。