いきなりだが幽霊の存在を信じるだろうか?
ここ彩南高校の怪談にある、校舎から離れた廃校舎に幽霊が現れるという噂が流れていた。
その噂は学校中に流れ、もはや知らぬ生徒は居ない程になり、最近の会話は幽霊の話でもちきりであった。
「あ!リコちゃん!おはよー!幽霊の噂知っていているよな?」
猿山ケンイチは近くに居た夕崎梨子に話しかけ、例の幽霊話を聞くようにしていた。
そんな猿山ケンイチの思惑では噂の廃校舎へと夕崎梨子と一緒に行って幽霊を怖がるであろう夕崎梨子を颯爽と助けて彼女はメロメロという手段を考えていたが、彼女が幽霊が怖い前提の話なのでメロメロにするのは難しい事が気づいていた・・けどやるしかなかったのだ。
「ああそうだね、ポルターガイストとかラップ音がするという幽霊の常套手段によってボクたちを驚かせる事なのだろう?まったく困った存在なのだろうね。その辺はどう思うかい?サルくん?ええ?サルくん」
夕崎梨子の様子がおかしい。
いつと通りの満面に笑みの表情だったけど、どこか早口で震える声だったのだ。
「ふふふふふ。ボクはね、幽霊を一切信じてはいないのだが、同時に信じたいと思う訳があるのだよサルくん。だって人は霊を信じるからこそ墓参りとかするのだろう?サルくん。だから大事な人が死んだとしても会いたいという訳だよサルくん」
「え、えっと、リコちゃん?」
「だからその大事な人が浮遊霊だろうが地縛霊だろうが悪霊だろうが妖怪になろうが会いたいと思うのは当たり前だと思うのだよサルくん。だからこそ人というのはーーー」
夕崎梨子はペラペラと話し続けていた。
猿山ケンイチの狙いが当たっていた事に気づいてしまった・・そう、あの夕崎梨子は幽霊が苦手らしい。
(ひょっとしてチャンスか?)
そう思う猿山ケンイチにうっすらと一筋の勝機の光が見えてきた。
だけどもし万が一に彼女が怪我をしてはいけないので周りにいた結城リトたちを巻き込もうとしていた。
「よぉ、リト。肝試しに興味はないか?」
「例の廃校舎に行くのか?危なくないのか?」
「危ないけど俺の運命がかかっているんだ。協力してくれるな?あの約束忘れた訳じゃないよな?よし、決定と」
「うぅ、滅茶苦茶だ」
半ば強引に結城リトを引き出せた。
結城リトが来るならばとララも参加の意を表し、四人で廃校舎へと向かう事に決めてしまう。
そんな彼らを心配する西連寺春菜は不安な表情を浮かべ、彼らを止めようとするが、逆に来ないかと誘われてしまった。
「え、えっと、学級委員的にダメかなぁ、て思うなぁ」
「いいじゃんよー西連寺。リトやリコちゃんにララちゃんも行くって言うしさぁ」
「そうだよ春菜!すごく面白そうじゃないっ!」
「そ、そんなぁ、ゆ、許してぇ~ララさぁん」
西連寺春菜も幽霊が大の苦手であった。
特に幼い時は夜のトイレに行く時には必ず母か姉を連れ添わなければ行けない程の恐がりで、その状態が小学生低学年まで続いたのだ。
そんな恐がりな彼女は嫌々だが、本当に嫌々だが仕方なく行かなければならない状態となった。
そんな彼女を天の助けなのか古手川唯が颯爽と現れてくれた。
古手川唯ならば絶対的に止めるだろう。
あの校則や風紀にうるさい古手川唯ならば確定的に止めるのだろう。
だけどそんな古手川唯から古手川唯らしからぬ思わない発言が西連寺春菜の耳に届いてしまった。
「あらいいじゃないの?夕崎さんが怖がっているし、本物の幽霊でも見たらその変な性格が変わるでしょう?許可します・・いいえ、行きなさい?命令よ」
まさかの公認だった。
(そ、そうだった!古手川さんはリコさんの事が嫌いだったんだ!)
西連寺春菜の目の前で二人が口喧嘩していたのを見ていた様子を思い出していた。
彼女らは嫌い同士で仲直りする事もせず、それをしようとすらしない彼女らに深く溜息を吐くしかない。
だけど、自分の事は嫌いな訳ではないだろうと古手川唯におずおずとした様子で西連寺春菜はどうにか助けて貰おうとするのだが
「いいえ、西連寺さんは夕崎さん一派の方なのでしょう?なので連帯責任で行ってもらいます」
「え、ええ!?リコちゃんの一派だなんてそんな事・・」
「はいダウト。夕崎さんの事をファーストネームで呼ぶ事というのは彼女と深い知り合いな訳でしょ?なので夕崎一派なのです」
「だ、だって、リコちゃんはリコちゃんって気軽に呼んでって言ったから・・」
「それはなんの拘束力もない言葉に過ぎないです。契約書とか書いた訳でもないのにそれを守る必要もないでしょ?」
何を言っても聞いてくれなくて肝試しに強制参加しなければならなくなってしまった西連寺春菜はガックリと肩を落とし落ち込んでしまう。
だけど、西連寺春菜は目に涙を溜めつつ古手川唯にこれだけは聞きたいと必死な表情を浮かべ
「古手川さん、私の事が嫌いなの?」
震える声で聞いてしまった。
その言葉を聞いた古手川唯はニッコリと笑っていて、いかにも好きだと言うような反応だった・・のだが
「嫌いじゃないのよ?西連寺さんだけの事は。だけど、夕崎さんと仲が良い西連寺さんは嫌いではないけど好きでもないわ」
悪魔の一言だった。
口下手な夕崎梨子がただ人に勘違いされやすいタイプなのにどうしてその彼女を分かろうとしないのだろう?
夕崎梨子も古手川唯と仲直くなろうと努力しないのだろうと思っていたのだが、夕崎梨子はかつて自分たちは犬猿の仲だと言い張ったのを思い出した西連寺春菜は誰にも悟られず深くため息を吐くしかなかったのだ。
「本当にこれからどうなるの~・・」
その言葉に対する答えは誰にも分からなかった。
ーーーーーーー
放課後、結城リトら一行は幽霊が出るという廃校舎へと向かっていった。
その廃校舎は暗くそこら中はボロボロでまともに歩ける所が少なく、たまにコウモリやネズミがちらほらと現れては大きく悲鳴をあげる西連寺春菜と、かすかに聞こえる妙な声のような音をペラペラと解説する夕崎梨子は恐怖を覚えていた。
結城リトや猿山ケンイチは二人ほどではないが怯えつつ歩を進め女子たちを守るように陣営を囲んでいた。
そんな彼らの警戒さを唯一持ち合わせていないララは恐怖の感情が一切無いらしい。
「幽霊さ~ん、いらっしゃいますかぁ?」
「ここですか~?あれ~?違うなぁ~?ここですか~」
ララはあちらこちらの部屋の扉を開き幽霊を探し続けていた。
そんなララは片っ端から扉を開き大きな声で「あー!」と大きく叫んだので皆驚いてしまった。
西連寺春菜の反応は涙を大量に流し怯えきり
夕崎梨子は早口を通り過ぎてまるでテープを早送りしたような早さで解説し
結城リトと猿山ケンイチもその場で伏せて怯えていた
そんな彼らの反応をよそに嬉しそうな表情をしたララは部屋の中に入り、見覚えのある人物を彼らの前へと現してくれた。
「なぜプリンセスとリコが居るのでしょうか?あとついでに結城リトも」
ヤミだった。
ヤミが言うにはこの廃校舎にある書物に興味を抱き、今の今まで書物を読み漁っていたのだというのだ。
そんなヤミに肝試しの概要を伝え、怪談の話に興味があるようでくい気味で話を聞いていたようだった。
「なるほど理解しました。だからさっきから妙な気配がするのですね?それも多数の気配が」
ヤミの言葉に耳を疑う結城リト一行。
まさか、まさか本当に幽霊がいるとは思わなかったので辺りをキョロキョロと見渡すが幽霊の姿が見えないでいた。
「そこではなくそこの下にいますよ。他は遠くにいるようですが」
ヤミの言葉と同時にボロボロの床から巨大なイカが現れた。
そのイカは地球のイカの数十倍の大きさがあり、巨大な目がギラリと光っていた。
「きゃあぁぁぁー!」
「ふふふふふふふ、あのイカを食するとするならば何人掛かりで済むのだろうね?もし一人分のイカの量をーーー」
そんな巨大イカを見た西連寺春菜は悲鳴をあげ、いつの間にか気絶し、夕崎梨子も思考回路がショートし挙げ句の果てには気絶したのだ。
「西連寺!!」「リコちゃん!!」
そんな気絶した西連寺春菜を結城リトが、夕崎梨子を猿山ケンイチが身を挺して守るようにした。
今の戦力としてはララとヤミのみとなり、その二人に望むしかないのだが、それでも結城リトは諦めたくなかった。
「ヤミ!リコの契約が発動したはずだ!今こそ俺の周りにいる人を守れ!」
人任せになってしまう自分が恥ずかしい。
だけど、そうするしかなかったのだ。
結城リト自身だって何かが出来ればそれをするべきだと。
でも今は西連寺春菜や夕崎梨子を守る事が最優先であり、彼女らから離れるともしかしたら他の幽霊が彼女らを傷つける可能性だってあるのだから彼の行動は正しかった。
「言われなくても分かっています結城リト」
「私も手伝うよ!ヤミちゃん!」
ヤミとララは巨大イカに突入し、攻撃を試みるもイカのニョロニョロとした動きが読めないのか攻撃が当たらなく、いつしか彼女らは巨大イカの触手に捕まってしまった。
「うぅ、ヌルヌルしたのはダメです・・助けてください」
「いやぁぁ、尻尾掴んだらダメぇ!尻尾が弱点なのぉ」
助けを求める震えた声のヤミとなぜか弱点を教えるララも情けない表情を浮かべていた。
そんな彼女らが戦闘不能になった今、正直絶対絶命の危機になっているこの状況に奇跡が起こった。
「「・・・」」
気絶していた西連寺春菜と夕崎梨子は無言で立ち上がり、巨大イカを今一度見て、西連寺春菜は結城リトの腕を掴み、夕崎梨子は猿山ケンイチの腕を掴み彼らを武器とした。
「きゃあぁぁぁ!」
西連寺春菜の武器は巨大イカの右半分をメッタメタに攻撃
「イカはイカらしくボクらの胃の中に入ればいいのだよぉぉ!」
夕崎梨子の武器は巨大イカの左半分をボコボコに攻撃し、二つの武器による攻撃の速さは増し続け、威力も高まり、ついには巨大イカは意識を失い戦闘不能となったのだ。
巨大イカを倒した後しばらくすると彼女らは正気に戻り、武器となったボロボロの二人の姿を心配し手厚く治療を施していた。
「お、おい!リト!サルくん!一体誰にやられたんだい!?このボクが倒してやる!」
夕崎梨子の問いに結城リトは西連寺春菜を指を指し、猿山ケンイチは夕崎梨子を指を指して犯人を示してした。
「証拠隠滅!」
被害者となっていた結城リトと猿山ケンイチの首筋をチョップし、結城リトと猿山ケンイチは意識を失った。
「くっ!許せない!よくもリトやサルくんを!」
「えぇ~・・今結城くんや猿山くんに手を出したのリコちゃんでしょ?」
夕崎梨子のボケに西連寺春菜は軽くツッコミをいれるそんな会話している二人は互いにクスリと笑みをこぼし、いつしか大笑いして気絶から覚めた猿山ケンイチもその声に便乗し、高らかに笑っていた。
一方、結城リトは未だに目を回して寝ていた事を夕崎梨子は見て見ぬフリをした事は内緒だ。
「あはははっ、もうリコちゃんったらダメでしょ?結城くんと猿山くんにトドメさしたら~あははは」
「おっとこれはウッカリだったね?ボクとしたことが、ふふふ」
「リコちゃんは本当に面白い子だからなぁ、あはは。あれ?リトのやつまだノビてるのか?キレイにいいもの入ったんだな」
その場には肝試しによる恐怖はなく、ただ楽しいという気持ちしかなかったのだ。
初めて見せた夕崎梨子のあの慌てぶりに意外な可愛い反応に笑うしかなく、西連寺春菜は夕崎梨子が口下手で素直にならないという性格を再確認出来てそんな友人に深く知り合えた事を嬉しく思っていた。
夕崎梨子の方も西連寺春菜の事をツッコミもなかなかいけるクチだと確認してこれから一体どんなボケをするべきかを思案していく内にしょうもないボケが次々と出てくるので自分がボケ役に適さない事を嘆いていた。
そしてようやく結城リトが目を覚まし、夕崎梨子に怒っていたがすぐに仲直りして、その顔に笑顔が絶えなかった。
「やはり甘い人ばかりですね。さっきまでここが戦場だったのに」
「それがこの地球のいい所だよヤミちゃん。本当に楽しいでしょ?」
いつも戦場に居たヤミはそこにある笑顔を見て自分も心の底のどこかに楽しいという気持ちが芽生え、それに戸惑いを感じながらもすぐに受け止められた自分に驚きを隠せず、ヤミ自身もその甘い人に感化されてしまった。
だけどヤミはその感情を大切にするようにと優しく撫でるように心にしまった。
「はい、リコやその周りの地球人は変人ばかりですけど、地球はいい所ですね」
いつしかヤミの無感情の顔には笑みが絶えず、夕崎梨子をはじめとした彼らとの体験はララやヤミにとって何よりの宝物になったのだからこの関係は続くのだろう。
『おーい、もしもーし、聞こえてますか~?幽霊のお静ですよ~?もしもーし』
先程から幽霊の村雨静の問いかけに気づくのは数分後になった事はまた次に語るとしよう。