廃校舎の幽霊騒ぎは次のような理由があって騒がれたというのだ。
宇宙から訪問したのはいいのだが、行く当ても無く廃校舎に住みついて宇宙人とバレないように廃校舎に入ってくる人間共を脅かせ続け、いつしか例の幽霊騒ぎの発端となったのだと幽霊のお静がそう語った。
宇宙人の存在を知らない西連寺春菜や猿山ケンイチにララやヤミが宇宙人である事も教えつつ、戸惑いながらも信じて話を聞いて驚いた様子だった。
この廃校舎に存在する数々の宇宙人達は人間に居場所がバレた以上またどこかに移動しなければならず、途方に暮れた宇宙人達はどうする事も出来なかったが、そんな宇宙人達を助けるべく、どこからか美女が現れた。
「ならいい所を教えるわよ」
御門涼子という彼女は彩南高校の養護教諭であり、スタイルが地球人離れに整っていて九十センチはあろうその巨乳をもち、キュッと細いクビレをもち、胸と同サイズ近くある大きなお尻が男どもを魅了していくほどだ。
そんな御門涼子も宇宙人らしく、特徴として耳が尖っている他トップクラスの医療をもっているので他の宇宙人にたまにちょっかいを受けるらしい事が悩みだそうだ。
そんな彼女は幽霊騒ぎになった宇宙人達を知り合いの仕事場へと紹介し宇宙人達は宇宙船に乗り廃校舎から飛び立っていくのを確認し、やれやれといった表情を浮かべヤミを見てビックリした様子だ。
「あら?金色の闇じゃない?プリンセスが居るのは知っていたけど驚きね」
御門涼子は金色の闇を知っていてその彼女の仕事も当然知っていた。
金色の闇は殺し屋であり、標的になった者はただでは済まない事も知っていた・・なのに、どうして彼らを守るように立ち尽くしているのか分からなかった。
「私は契約のもと、この地球に留まり任務を全うしているので」
「お仕事って訳ね?だけど誰なの?殺し屋金色の闇と契約した、その末恐ろしい契約者は」
「あの夕崎梨子という彼女です。私は彼女をリコと呼んでいますが」
ヤミは夕崎梨子に指を指し、御門涼子は目を見開き非常に驚いた表情を浮かべた。
夕崎梨子は完全に地球人であるはずなのに、なぜこうも金色の闇を上手く動かせる事が出来るのだろうか?
殺しの報酬として莫大なお金がかかるはずなのに、地球の文明や地球人がそんなに報酬を用意出来るはずがないのだ。
「ちなみにどんな契約なの?」
ヤミはかつて夕崎梨子から受けた契約を一言一句確かめるように伝えたが、その契約内容に御門涼子は非常に度肝を抜いてしまった。
ただ一つの契約だけだった。なのにいくつもの誓約が入ってはいるが金色の闇自身の行動を損なわないようにかつ報酬を無理の無い範囲で渡す誓約も契約の一つとして入れているのだから。
「あなた・・何者なの?」
聞かずにはいられなかった。
地球人で間違いないはずの夕崎梨子の正体を聞かずにはいられなかったのだ。
不思議な雰囲気をもつ夕崎梨子はふふふと笑って肩をすくめながら
「改めましてボクは夕崎梨子だよ。気軽にリコちゃんと呼んで欲しいな涼子先生」
ただそうとしか言わない彼女にそれもそうよねと半ば諦めるように、半ば納得するように理解するしかなかったのだ。
「ふぅ、先生をファーストネームで言うのはダメなんだけど、許してあげるわリコちゃん」
「ふふふ、ありがとう涼子先生。ボクは誰にでも親しみをこめてファーストネームで呼ぶのさ。サルくんは除いて」
「あら、意外と人懐っこい性格なのかしら?」
「ボクは口下手で人に勘違いされやすいからその影響下にあるのだろう」
「どこが口下手なのかしら?金色の闇相手にあんな滅茶苦茶な契約を結んでおいて?どう考えても口達者だわ」
「いやいや、ケースバイケースでそうなってしまうだけであって基本的に口下手なのさ」
口下手だと豪語する夕崎梨子は満面の笑みを浮かべスラスラと解説するように言い負かされる御門涼子は少しため息を吐いた。
(今も普通に口達者じゃないの?だけど、なんだか自分に自信が無いような口ぶりだし、褒められても素直に喜べないような性格みたい・・まさか相手にそう思われる事がリコちゃんの口下手な理由なのかしら?)
夕崎梨子の弱点はまさにそうだった。
人に親しみをこめるけど、いざ自分自身に褒められる事があれば喜びたいけど恥ずかしいので言い訳するように嫌な印象を相手に押しつけるその性格。
自分の正しいと思う事を言えず、相手の正しさを同調しそれを解説して親しみを込めようとするけどそれが失敗してしまう時もあるのだ。
「うふふ、リコちゃんのその性格は私でもどうにでも出来ないわ」
宇宙一である名医と言われる御門涼子でもお手上げであった。その性格を治す事も、その性格を変える事もいかなる医療をもってしても夕崎梨子は夕崎梨子となるのだ。
「ボクは正しくはないが、決して悪いという訳じゃないんだよ?涼子先生」
「はいはい、子供みたいな言い訳しないの」
この子供のようで無邪気で素直になれない患者である夕崎梨子とそれを看て匙を投げた名医は互いに微笑みあい、彼女らは奇妙な友情が芽生え始めるのを感じた。
夕崎梨子と友情を育んだ御門涼子は近くをキョロキョロと見渡し、白装束を着た奇妙な美少女の幽霊である『お静』という存在に気づいた。
どうやらその『お静』という幽霊は、先程の宇宙人らが長く居座った事により、なかなか自由になれずにいて困っていたようだ。
しかしその事件は終了とし、ようやく自由になれたという事で成仏を試みるが、それは果たせなかった。
『お静』は浮遊霊の一種であり、何かを達成しないと成仏出来ないという事なのだが、『お静』は成仏するきっかけと理由を忘れてしまったようで、そんな『お静』を御門涼子の医療の助手として引き取るようにした。
『よろしくお願いしますね?御門先生』
お静は深々とお辞儀し御門涼子と生活すると決めたのだった。
そのお静は結城リトらにも自己紹介をしていき深々と頭を下げていたが、幽霊が未だに怖い西連寺春菜と夕崎梨子は震えていた。
「おばけだおばけだおばけだおばけ」
「ふふふふふ、なぜこうも人の魂が視えるのだろうね?ボクとしては人の心が視えた方がーー」
二人は壊れてしまいそんな彼女らを面白可笑しく観察し、いつしか顔に笑みを浮かべていた。
彼女らといる事への楽しさが成仏へと続く道とならば、幽霊として進まずにはいられないのだろう
(私、これからの人生が楽しみだなぁ・・あ、すでに私死んでいますけど)
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幽霊騒ぎが落ち着いたその後日、古手川唯と夕崎梨子は互いを睨み合うように立ち尽くしていていた。
「あらあら夕崎さん、あなたしぶといのね?幽霊ぐらいじゃなんともなかったのかしら?」
古手川唯は満面の笑みを浮かべ、嫌いな夕崎梨子に毒舌を浴びせ、その嫌いな夕崎梨子も満面の笑みで古手川唯に突っかかりそうな雰囲気の様子なのである。
「ふふふ、確かに幽霊には驚いたけどなんともなかったみたいだね?意外にもボクの精神力は強いようだ」
「そうなの?だったら宇宙人にでも改造させてもらおうかしら?そう、そうしましょう?ね?夕崎さん」
「いやいや、もしそうなったら改造人間になって変な黒タイツの人達や怪人と戦う運命を背負ってしまうんだよ」
「別にいいんじゃないかしら?ほら、ヒーローになれるチャンスじゃないの?地球の平和を守る女の子はモテモテになるに違いないわ」
いつもの口喧嘩だった。
だけど、どこか心安まるような気がする二人で今更仲良くなっても気持ち悪いだけで、ずっとこのままの関係が彼女らにとっては一番いいのだろう。
「ボクは戦隊ヒーローや仮面を被ったヒーローよりも魔法少女の方が好みなんだよ。だから男の子向けのヒーローは向いていないと思うよ」
「へぇ?あなた、意外ね?だったら魔法少女みたいに女の子女の子らしく可愛く呪文を唱えなさいよ、ほら」
「魔法少女は戦い以外では決して人前で魔法を使わないんだよ?だから今は魔法を使えないんだよ」
「ああ言えばこう言うのね?ホントに子供ね夕崎さん」
彼女らの関係はクラスどころか学校中でも知っていて、彼女らが口喧嘩しているとまたやっているのかと生徒達は放っておいていた。
そんな彼女らを唯一心配している西連寺春菜はどうにかして仲直りさせようと何度も説得を試みるが、やはり失敗となっていた。
「あのね西連寺さん、夕崎さんが悪いのよ?先に謝るのは夕崎さんなのが筋なの。私から謝るなんて嫌だわ」
「そ、そんな、学級委員長として見過ごす訳にもいかないし」
「だけどね、結局私が謝って万が一仲良くなったとしてもすぐに喧嘩になるのでしょうね」
「そ、そうかもしれないけど、リコちゃんは口下手だし本当は古手川さんと仲良くなりたいんじゃ・・?」
西連寺春菜の言葉に古手川唯は高らかに笑い腹を押さえてながら目に涙がたまるほど苦しい腹筋がピクピクと動いていた。
本当に片腹痛くあの夕崎梨子と仲良くなるなんて想像も出来ないし、したくもないのだ。
「あはははっ!あの夕崎さんが改心してそうなったとしても気持ち悪いだけだわ!」
「改心も何も、リコちゃんは本当は優しくて・・」
「優しい?あの夕崎さんが優しいだなんてとんだ誤解よ。私は絶対に騙されないわ」
「うぅ、やっぱり人の話を聞かない・・」
彼女らの関係はどうあがいてもどうする事も出来ず、いつもこんな展開で友人になろうとはしなかったのである。