ToLOVEる~変わりゆく運命と恋~   作:叶夢望

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金色の闇回オリジナル話です。


第十九話

金色の闇ことヤミは空腹だった。

ヤミは結城リトを攻撃しようとする宇宙人の刺客を次々と無力化し、金色の闇の仕事が終了したので夕崎梨子から報酬を貰う事にした。

その報酬内容として近場のケーキバイキングの店への同行したいという事で夕崎梨子と結城美柑と三人で向かい、ケーキバイキングの店へと入店し、三人は席へと座った。

 

「あそこにあるのぜーんぶ食べられる物は食べてもいいんだよ?ヤミさん」

 

ヤミはケーキバイキングの何たるかが分からないので、結城美柑からの説明を受け、数々のケーキやスイーツに目移りしていた。

 

「本当にあれ全部が一定の料金のみで食べられるのですか?結城美柑」

「うんっ!あと、私の事は美柑って呼んでね」

「はい、分かりました美柑」

 

ヤミは数々のケーキを見るがどれがいいのか分からず、結城美柑と同じ物を選び、席を確保している夕崎梨子のもとへとケーキを持ってやって来た。

 

「おやおや、そんな多くのケーキを確保出来たのかい?見るだけで胃がもたれそうだけど、ボクも頑張って食べるとするよ」

 

夕崎梨子は優雅にコーヒーを啜り、結城美柑が持ってきた大量のケーキから一つ小皿にとってフォークを差し小さな口で食べる。

 

「・・うんっ、いい味だ。このショートケーキはごく普通に見えるが、クリームが甘すぎず、かといっても甘いようでもある。スポンジの間にあるイチゴも新鮮であり、ほど良い酸味をきかせ、ケーキのなんたるかを教えてくるようだ」

 

まるでグルメリポーターのように饒舌に感想を言っているのを聞き、結城美柑とヤミも同様にケーキを食べて目を丸くしていた。

 

「お、おいしーっ!ね?ヤミさん」

「はい、おいしいです。リコが言っていた感想をスラスラと言えませんけど・・」

「あれはいいのよヤミさん。あのリコねぇがあそこまで感想を言っているって事はね、ものっすっごく!はしゃいで嬉しそうにしているの!」

「・・私にはいつも通りのリコにしか見えませんが、美柑がそう言うならそうなんですね。私にはまだリコの事が分かりません」

 

ヤミはいつもの通りの夕崎梨子と今の夕崎梨子とのギャップを観察するように顔の表情や声の抑揚などを確認するが、やはりいつも通りの夕崎梨子にしか見えなかった。

 

(やはりリコは変人、という事ですね)

 

ヤミはそう思うと理解し、夕崎梨子を見て鼻で笑い、ケーキを食べていた。

鼻で笑われた夕崎梨子はヤミがバカにしていると感じ、ヤミの両頬を左右に伸ばした。

 

「・・ふぁふぃふぉふぅんふぅえふふぁ?(なにをするのですか?)」

「今、ボクに対して何を思ったのかい?返答次第ではこの頬がどうなるか分からないよ?」

 

ヤミの両頬は夕崎梨子による拘束から解放され、ヒリヒリする両頬を擦りながら正直に答えた・・夕崎梨子は変人であると。

 

「そうか、ならばいい。けど、変人だからってバカにするのは少しばかり許せないな」

「・・すみませんリコ。リコは変人ですけど・・」

「え~?なんだって~?」

「変人ですけど、いい人ですから。そのいい人とこうやって食事する事が初めてで楽しくて思わず笑ってしまいました」

「・・それはすまなかったね。ならばやり返してもいいよ?ヤミちゃん」

「いいです、気にしないでください」

 

ヤミはとっさに出た理由が出た事に内心ホッとし、ケーキを口にする。

そのケーキの細かい味は分からないけど、美味しいとは思うこの気持ちと密かに感じる楽しいと思う感情は大切な宝物になるのだろう。

 

しばらくケーキを食べていると、西蓮寺春菜と古手川唯の二人が夕崎梨子達の前に現れ、古手川唯と夕崎梨子がバッチリと目を合わせてしまった事を西蓮寺春菜は非常に嫌な予感がしていた。

 

(わわわっー!古手川さんに誘われてこの店に行ったらリコさんが居たー!)

 

オロオロと慌てる西蓮寺春菜をよそに、夕崎梨子と古手川唯は微動だにせずに睨み合う様子をヤミと結城美柑は彼女らの反応に戸惑っていた。

 

「あらあら夕崎さん奇遇ね?こんな小洒落てて女の子が好きそうなお店に居るなんてね?まさか、そこまで乙女だなんて思ってもなかったわ」

「ふふふ、奇遇だね唯ちゃん?ボクは正真正銘の女であり乙女でもあるから仕方無い事だよ」

 

夕崎梨子と古手川唯との口喧嘩を始めて目の当たりにした結城美柑は驚きを隠せず、ヤミは我関せずとケーキを黙々と食べ、西蓮寺春菜は涙目になりながらオロオロとしていた。

 

古手川唯は夕崎梨子の席に目を移し、彼女の物であろうコーヒーカップの近くに数多くのコーヒーシロップやコーヒーシュガーの使用済み容器が拡散されているのを見て黒い笑みを浮かべていた。

 

「へぇ?夕崎さんって、かなりの甘党なのね?やっぱり女の子で・・子供なのねぇ?」

 

古手川唯の毒舌に結城美柑は戦慄した。

夕崎梨子はいつもの笑顔なんだけど、その顔の中に黒い感情が渦巻いている様子を感じ取った。

 

(ひぃぃーっ!リコねぇ怒ってるー!逃げてー!そこの人ー!)

 

結城美柑は心の底から古手川唯の事を心配していた。

かつて結城美柑は夕崎梨子を子供扱いしてバカにしてしまった事でお仕置きをくらった恐怖を思い出していた。

あのままではお仕置きされる、と思っていたけど特に手を出さなかった。

 

「ボクはまだまだ子供だよ?だけどね、甘党だから女らしいだなんてこじつけでしかないんだよ。逆に辛党なら男らしいと言うつもりでもあるのかい?」

「まぁね、言うつもりよ。だってその方が常識っぽいじゃない?」

「ふふふ、常識、常識ねぇ?唯ちゃんがそう思うのは勝手だけど、ボクの常識では唯ちゃんが非常識だという事が証明されるだろうね」

「なによ!」「なにかな?」

 

夕崎梨子と古手川唯は満面に笑みの同士で再び睨み合い、そんな彼女達の喧嘩に涙目になりながら身体を震えわせる西蓮寺春菜と結城美柑は同時に戦慄していた。

 

(古手川さんとリコさんってやっぱり似た者同士でワガママな子供みたいに、また喧嘩してるっ!)

 

(リコねぇもあの人も怖すぎるーっ!高校生になったら私もああなるのかなぁ?なりたくないなぁ・・)

 

四人が織り成す恐怖とそれに怯える空間は他の客や店員にも伝染し、我関せずと黙々と己の仕事に勤しんだ・・無視をするという仕事を。

 

一方、ヤミはすでに満腹となって、目を深く瞑り数々のケーキを食した事を堪能したので、強くこう思っていた。

 

(・・今度は静かな所で食べたいですね・・ここは賑やか過ぎですので、次は美柑だけとどこかで食事したいです)

 

ヤミはお腹を擦りながら静かに店から出て行ったのであった。

 

「・・・けっぷ。少々食べ過ぎましたね」

 

 

金色の闇ことヤミは夕崎梨子の報酬として胃袋と心が満たされていくのである。

 

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