籾岡理沙は退屈していた。
彼女はウェーブがかったセミロングの茶髪をしていてネクタイをしない、胸元を留めない、シャツをスカートに入れない、ブレザーの前を留めないなどほぼ常に制服を着崩しており、がさつな言動が多いし、不良のような風体だった。
そんなある日の退屈な放課後の事だった。
(退屈だ!本当に退屈なんじゃーい!里央は風邪で休みみたいだし、春菜っちは部活があるって言うし、ララっちは結城とどっかに行ったし、古手川は風紀委員の仕事があるって言うしつまんなーい!)
その退屈な彼女は自分の席に座り、机に身体をベタリと預けていた。
そのままの格好で視線を泳がせ、目に映るのは帰る準備をしている男子生徒数人だった。しかし、彼らに特には用は無く、なんだかガッカリする気持ちになった。
次に女子生徒へと視線を泳がせ、とある女子に目がロックオンした。
実は籾岡理沙は、女の子に対して挨拶と称し胸やお尻を揉みしだく趣味を持ち合わせていた。
自分自身はスタイルがいいのにも関わらず、他の女子のスタイルが気になり確かめずにはいられなかったのだ。
そんな籾岡理沙はロックオンした女子生徒にソロリソロリと後ろから近づき、やがては思いっきり籾岡流挨拶を交えた。
「隙ありー!」
籾岡理沙がロックオンした女子生徒の名は夕崎梨子であり、猿山ケンイチと何やら話し込んでいた隙に夕崎梨子の胸やクビレやお尻を揉みしだいていた。
「ふふ、んぅわひゃあ!」
いきなり後ろから襲われた夕崎梨子は可愛く恥ずかしそうな喘ぎ声をあげ、猿山ケンイチは彼女らの突然の行動と声に興奮した。
(おおっ!これが噂に聞く百合か!いいっ!スゴクイイ!そしてリコちゃんは意外と女の子らしい所もあるのもスゴクイイ!)
猿山ケンイチはその光景をしっかりと目に焼きつけていた。夕崎梨子に籾岡流挨拶を交わした籾岡理沙は、ニヤリと黒い笑みを浮かべ、夕崎梨子のスタイルを再び確認出来ていた。
「ミスコン前でやったけど、やっぱスタイルいいわー!着やせするタイプで隠れ巨乳なんだね?ララ程じゃないけど!」
「くっ!や、やめ、んぅわひゃあぁん!」
籾岡理沙の言葉を聞いた猿山ケンイチは顔を真っ赤にさせ興奮した。あの夕崎梨子が、スタイルも良いという事は彼女は彼にとって完璧に好みへと変貌した。
「ついでだからスタイル測っちゃおうか?猿山!メジャー!メジャー持ってるー!?」
「くっ!無い!こんな時にっ!」
「なら私がじっくり・・・確かめてやるー!」
籾岡流挨拶は更にエスカレートしていた。
胸を揉む動作を大きくそして早く、両胸を円を描くように揉みしだき、そしてクビレを左右の脇腹から上下に擦り、お尻は胸と同様臀部を円を描くように揉みしだく行動を三セットじっくりと時間をかけて挨拶していた。
そんな挨拶を受けた夕崎梨子はーーーー果てた。
果てた夕崎梨子の様子は乱れた制服姿で床に寝転び、ビクンビクンと身体を震わせ顔は赤らめ、大きくはぁっはぁっと苦しそうに吐息を吐き、目はトロンと虚ろとなっていた・・籾岡理沙はそれを見て堪能したのか、教室から出ていた。
「だ、だ、大丈夫か?リコちゃん。俺、女に手をあげるの苦手で助ける事が無理だったんだ。だから・・」
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、ふぅ~・・いいんだよサルくん。キミならばそうすると思っていたからね」
夕崎梨子は足腰を震わせながらもなんとか立ち上がり、机に寄り掛かり乱れた制服を直しながら腰を掛けた。
「一度ならず二度までもあんな挨拶されるだなんてね。いつからボクらは友達になれたんだろうね?」
「何!?さっきのは二度目だって!?くっ!(羨ましいーっ)」
「ふふふ、あれが友達の証というならばボクにもそれ相応の対応をとらなければならない、という事になるだろうね?サルくん」
夕崎梨子は黒い笑みをニタァと浮かべ、猿山ケンイチはそれを見てゾッと背筋が凍るような恐怖を覚えた。
(こ、こ、この黒い笑みは!リコちゃんが悪い事を考えて何が何でもそれを成功させようとする黒い笑みだ!)
黒い笑みがすぅと消え去ると同時にいつもの満面の笑みとなった夕崎梨子に更なる恐怖を覚える。
(そしていつも通りのリコちゃんになる、という事はもうリコちゃんは籾岡に何かするんだ・・絶対に)
ゴクリと喉を鳴らし恐怖を感じ続ける猿山ケンイチは籾岡理沙に起こる何かを心配しながら応援していたのだった。
(籾岡・・気をつけろよ・・)
翌日の昼休み、夕崎梨子は籾岡里沙に食事の約束をして、彼女らの教室へと呼び出し、籾岡理沙はその教室へと向かっていた。
そこには夕崎梨子はもちろん西蓮寺春菜や沢田里央が机を並べ籾岡理沙を待っていたようだった。
「やっほー!お待ちー!」
籾岡理沙の到着により食事を始めようと弁当箱を机に置いた瞬間、夕崎梨子は突然立ち上がり、籾岡理沙の後ろへと素早く移動し、そこから襲いかかり籾岡理沙の胸やお尻に夕崎流挨拶をした。
「こ~んにちわ~」
「うわぁひゃあぁあ!?」
思いもしれない挨拶に驚きを隠せないでいた。
その挨拶は優しく、時には激しく、時には焦れったく、時には耳にも息を吹きかける挨拶に籾岡理沙は驚いた。
「り、リコちゃん!?」と西蓮寺春菜のみ声を出した。
その場にいた生徒達は夕崎梨子らしからぬ行動に目を見開き、時には顔を赤らめて恥ずかしがって彼女らの行動を呆然と見ていた。
「おやおや、なんでビックリしてるのかい?だって理沙ちゃんが友達同士でやる挨拶なんだろう?ならばそうする権利もボクにあるんだよ」
「そ、そんなのっ、んぁっ、ひゃっんぅぅ」
夕崎梨子は籾岡理沙に挨拶しながら話を続けている。
「会話にならないから続けるけど、まさか自分には挨拶されないとは思わなかったのかい?それはダメだよ、だってボクらは友達なのだから」
「わ、わ、わかっ、うひゃぅん、た、たすけひぇっん」
「友達だから挨拶するのは当たり前であり、挨拶されないのは友達として見過ごされない、という訳だよ」
「あぁうぅ、ひゃぁあ、ああぁっ!」
「だから口下手なボクはこうしてスキンシップする事によって、お互いが友達だという事を証明し、安心してね信頼してねというような気持ちを込めるしかないのさ」
「っっ!ぅあぁぁっ、わ、わか、わか、たからぁぁん」
「止めて欲しい、だって?違うよね?理沙ちゃんだって挨拶交わしながら会話してたじゃないかい?だからこれ含め『挨拶』なのだろう?」
「っっ!ぁぁん!お、お、お願い!っっんぅぅ!」
「だからこそボクはーーーー」
夕崎梨子の『挨拶』は5分以上続いた後『挨拶』はようやく終わり、果てた籾岡理沙を席に座らせ、夕崎梨子も席へと座って手を合わせていた。
「すまないね、『挨拶』で遅くなった。それでは、いただきます」
夕崎梨子は、あっけらかんとした表情で弁当箱を開けて、『わぁお、今日は唐揚げだね?ラッキー』などと軽い言葉を言い放ち、唐揚げを頬張っていた。
そんな彼女の反応に困った様子で西蓮寺春菜らは身動きとれなかったのだった。
「んぅ?食べないのかい?ほら、食べなよ」
夕崎梨子はもぐもぐと租借しながら西蓮寺春菜らに言い放ち、時が流れたように生徒らも食事を始めていた。
だけど、一人だけ未だに食事がとれない生徒ーー籾岡理沙は顔を真っ赤にしたまま吐息が荒かった。
「おや?理沙ちゃんどうしたんだい?もしかして食事の際にやる『挨拶』もあるのかい?ならば、ボクも手伝ってやろうか?」
満面に笑みの夕崎梨子にゾクリと背筋が凍る感じがし、いそいそと弁当箱を広げ、ちまちまと食事を進め、強く心の底からこう思っていた。
(もうリコには『挨拶』出来ない!ていうかしないし!)
夕崎梨子に関わる事で籾岡理沙はもう退屈出来なかったのであった。