結城リトは絶望していた。
何故ならば、定期テストまであと数日と迫っていたのに全然勉強出来ていなく、なかなか学力が向上しない事を嘆いていた。もともと学力が低いのに高校へと進学した事により、授業の難易度が高まっていくので、追いつく事すらままならなかった。
(や、やっべぇぞ!こ、このままじゃ補習授業に参加しないといけなくなる!)
テストを受け、ある一定の点数以下になると赤点と呼ばれ、その赤点を採れば採るほどその補習授業が長引くので、結城リトは何とか阻止したかった。
そんなある日の授業日、最も不安な国語や数学の授業となり必死に勉学をしようと試みたのだがその担任教師達が一身上の都合により休みとなって自習となっていた。
(な、な、なんでこんな時にぃー!!)
結城リトは不運を感じ、やるせない気持ちに陥り、机にうな垂れるように身体をべちゃっと寝かせて、その姿勢のまま視線を泳がせると生徒達は机を並べ、一緒にテスト対策を図り、密かな想い人西連寺春菜はララや古手川唯や籾岡理沙それに沢田未央と机をくっつかせ勉強していた。
(くっ!あの中に混ぜて~、だなんて言えたもんじゃない!恥ずかしいし!)
女の子に免疫が無い結城リトはすぐに顔を真っ赤にし、彼女達から目線を反らし、更に視線を泳がせると夕崎梨子と猿山ケンイチが机をくっつけ勉強している様子を目にした。
(猿山は俺と同じぐらいの成績だし頼りにならないかもしれないけど、リコならスゴく頼りになるかもな)
結城リトは机を持ち上げ、夕崎梨子と猿山ケンイチのもとへと歩みだし、なんとか勉強の輪に入れてもらう。
「よぉ、リト!お前もリコちゃんにご教授お願いしたいのか?いいぜ、入れ入れ!」
「わ、悪いな?リコ。俺、ちょっと・・いやだいぶお世話になるけど、いいかな?」
「ああいいとも。ボクとしても復習も兼ねて勉強出来るからね」
心優しい夕崎梨子に感謝しつつ、結城リトは分からない所を全部教えて貰おうと試みた。するとどうだろう、まさか中学三年生が勉強する所から始められる事に自分の知識の乏しさに嫌気が差していた。
「ーーーと、なればこの作者はそういう気持ちになっていると言えるだろうね。今回のテスト範囲で覚える漢字は今教えた範囲でかまわないと思うよ?あと熟語もね」
「っ!な、なるほど~!すっげースッキリした!」
「さすがリコちゃん!よ!説明大臣!」
「よしてくれよ二人とも。照れるじゃないか」
(・・・今のは褒め言葉なのか?リコ気づけよ)と結城リトは微笑みを浮かべてそう思った。
夕崎梨子は恥ずかしそうに頬を赤らめその頬を手で隠し、笑みをこぼしていた。そして国語の勉強が終わった事によって次は数学の勉強だと数学用の教科書やノートを取り出しペンを走らせたが、結城リトと猿山ケンイチは一瞬で止まらせた。
「リコー!助けてー!」「俺も助けてー!リコちゃん」
彼らは必死な表情を浮かべ、夕崎梨子に詰め寄り、分からない所を全部教えてもらう事にした。彼らは数字や図形に弱いのか今まで習った事がほとんど分からないのだそうだ。
「一体なんなんだよ!因数分解とか二次関数とかよー!訳分かんねーよ!」と猿山ケンイチは吠えて、結城リトはそれに大きく頷いて賛同している様子を夕崎梨子は呆れた表情で小さくため息を吐いた。
「まぁ、確かにね?一体いつこんなグラフとかxやyとかルートとか使うんだろう?とは思うけど・・・」
「「だろ?」」と声を揃える結城リトと猿山ケンイチ。
「だけど、だからって投げ出すだなんてボクは感心しないな」
夕崎梨子の説教は二人の心にグサリと刺され、深く反省を示し、彼らのその行動をクスリと笑って許す夕崎梨子の優しさに感謝していた。そんなこんなで数学を一から叩き込まれ、ゆっくりゆっくりと時間を掛け、数学を少しずつ少しずつ二人は理解しつつ、やがてはテスト範囲の勉強へとさしかかっていき、夕崎梨子による解説はよほど丁寧で分かりやすいのか、他の生徒が身を乗り出して聞き耳を立てていた。
「ーーであり、この場合はこの公式を使うと解けやすくなるし、グラフもこのように山なりとなり・・・おや?」
夕崎梨子は周りに居た生徒達に気がつき、彼女の解説が止まった事を不思議に思った二人も周りに居た生徒達に気がついた。
「あ、あの、混ぜてくれる?助けて欲しいんだけど」
生徒の一人が夕崎梨子に頼み、他の生徒も混ぜて混ぜてと言ってくるので、それを了承し夕崎梨子は結城リトや猿山ケンイチに先程の復習と称し、またゆっくりと時間を掛けて教えていた。
「ーーーとなり、この集合はAでかつBではないと言えるだろう。次にこの集合の場合はーー」
夕崎梨子の説明にどんどんと生徒は集まり、やがては見えない聞こえないとワイワイ騒ぎ始める始末であったので、夕崎梨子は仕方なく黒板を用いることにした。
「はい、これで見えるし大丈夫だろう?」
黒板には丸っこく女の子らしい可愛い字がビッシリと並び、所々「ここだいじだよ」と書いてあり星マークも記されていて、古手川唯はそれを見て思わず吹き出して笑っていた。
「字が可愛いっー!スゴいわあの字っ!それに星マーク!うふふふっ」
古手川唯も丸い字で女の子らしいけど、それ以上に夕崎梨子の字は楽しいや嬉しいの感情を感じるほどの可愛い字であった。西連寺春菜もその字に戸惑いを隠せず、自分の字を見比べ「いいなぁ、あの字」と呟き羨ましそうに見つめていた。
籾岡理沙と沢田未央も夕崎梨子の字を見て「可愛いーなぁ、どうやって書いたんだろう」とその字を見て書くも、夕崎梨子の字にはならず諦めていた。
一方、夕崎梨子は解説するのが楽しくなったか、英語や社会や理科のテスト範囲の解説を交えながら黒板に字を書き綴り、またも可愛い文字で黒板が何度も何度も埋め尽くされていくのであった。
「ーーーで、ありーーであると予測されーーであると言えるだろうね。次に大切なポイントとしてはーー」
いつしか夕崎梨子はその日ずっと解説し続け、クラスの学力はグン、と上がり定期テスト当日となり、夕崎梨子の解説を受けた生徒達は答案用紙をほとんど埋められたと喜んでいて、夕崎梨子にお礼を言い渡し、その彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめて照れていた。
「いいんだよ?ボクはみんなと勉強出来て楽しかったし、また定期テストの前にでも勉強会をやろうよ」
夕崎梨子のその言葉に嬉しさを感じた女子生徒達は、彼女に抱きつき、どさくさにボディタッチを交わしつつ、喜びを感じていたのである。
「ふふふ、んんぅ!だ、誰だい!ぼ、ボクの胸を触った人は!ゆ、許せないよ!ぁぁ!また!もう!」
「はーい、私らです」「柔らかいなぁ」「でかっ!」
「このー!」
女子生徒達はお互いにボディタッチを交わしつつ、百合百合しい雰囲気に男子生徒達は顔を真っ赤にして興奮していた。
「リコちゃんホントヤバいスタイルよね」
「そうよそうよ!ちょっとくらい分けてよー!」
「わ、分けれないよ!っっ!あ!また胸とお尻を!」
まだまだボディタッチを交わす女子生徒達に恥ずかしい気持ちを抱きながらも、賑やかなこの雰囲気は嫌いではないと夕崎梨子は強く思っていた。
「はー!堪能した堪能したー!ホントに何を食べればそんなに育つの?ていうか、私達とホントに同い年なの?詐欺してるんじゃないの?」
籾岡理沙は怪訝そうな表情を浮かべ、夕崎梨子をじっくりと観察し、とんでもないナイスバディの彼女の姿に疑問を抱いていた。その80センチ前後の大きな胸とキュッと細い約50センチ前後のクビレに胸と同サイズ近くあるそのけしからん体型に男子生徒はもちろん女子生徒にも目が引くというものだ。
「ぅぅぅうるさいね、そ、そ、そんなの知らないよ!し、し、知らない内に、こ、こうなっていたんだから」
夕崎梨子は顔を真っ赤に染め上げ、自分の身体を両腕で覆い隠すけど、右腕に隠されているつもりであろう巨乳が制服越しでもバレバレであり、左腕で隠されているつもりであろうお尻付近も隠しきれないのである。
そんな格好を見た男子生徒は顔を更に真っ赤に染め上げ、女子生徒は羨ましそうに見つめ続けているのであった。
そんなこんなでテスト返却日となり、結城リト達のクラス平均点はグンッと上がっていてしかも、学年一位の秀才も出るという快挙を達成させた。その人物の名は古手川唯並び同率一位の夕崎梨子だったというのである。
「お手柄ね?夕崎さん。あなたのおかげでみんなの学力が上がったわ。ほんのちょっぴり見直したわ」
古手川唯は素直には褒めず、わざとらしく貶すように振る舞った。風紀委員としてクラスが一丸となって勉学に励むのはいい事であったが、それがライバルである夕崎梨子によって行われたとなると、少しばかり対抗心が燃えてしまうのだ。
「いやいや、ボクはほんのちょっとだけ彼らの背中をポンッと押しただけであってね?ほら、よく言うだろ?獅子は我が子を千尋の谷に落とすってね。まさにそれと同じなのさ」
「何よそれ?要するに勉強教えてあげたからもう知らなーいって突き飛ばすって事なの?他人事だと思っているね」
「そうさ。あとは彼らの努力次第という事になり、学力向上は彼らのおかげという事になるのさ」
「・・・優しいのね?あなた」
「ふふふ、我が子を谷底に突き落とす親が優しいだなんて唯ちゃんはそう思うのかい?ボクはやり過ぎだと思うけどね」
「まーたあんたは人の挙げ足をとって・・・やっぱり夕崎さんの事は苦手だわ」
古手川唯の苦手という事に反応した夕崎梨子は「ボクも唯ちゃんが苦手だ」と微笑みながら言ってくるので、それに笑みを返しつつ古手川唯は仕方ないなと言いたい様子を感じさせ踵を返し、夕崎梨子の前から姿を消していった。
「ふふふ、苦手、か・・・嫌いよりはマシなのかな?」
嫌いより苦手の方が関係がいいのかを考えながら夕崎梨子は学校から出て我が家へと帰っていくのであった。
次は文化祭です。少々お待ちを