いつの間にかララと婚約してしまった結城リトは深くため息を吐いていた。ララの護衛であるというザスティンは結城リトのもとへと訪ね、正式に結城リトとララが婚約したことを報告していた。
「リト殿・・いえ婿殿これからは大変な事となりましょう。あ、おかわりお願いします」
ザスティンは美柑が作った料理を美味しい美味しいと言いながら結城リトとこれからことを考えていく事にしていた。
「ララ様はデビルーク星・・いえ全宇宙中に名を知られララ様を奪おうと企む輩達がこの地球に来るはず・・いえ、来るのでしょう」
「な、なんで?」
「ララ様を手中に収められればこの地球はおろか銀河系の全てを簡単に手中に納める事が出来ます」
「そ、そんな事が・・」
「私達も常に目を光らせ警護や張り込みをしますが、彼らは地球人のフリが出来るのでその全てを我々は把握出来ないでしょう」
「ならどうやってララを守るんだ?」
「はい。それからは我らが主が答えられます」
ザスティンは懐から綺麗な水晶玉のような玉を取り出し、その水晶玉から光が神々しく光り、奇妙な黒影を保ちつつ現れた。
『よぉ、テメェが結城リトか?』
その声は荒々しく恐怖を感じさせるものだった。
結城リトは緊張する自分をなんとか落ち着かせようと何度か深呼吸し、ザスティンの主と対話する事にした。
『ケッ。オレの娘・・ララが好きな奴がいるなんて驚きでよぉ。まぁララが気に入ったならいいけどなぁ?ララを守りきらないと・・ララを連れ戻したあとで地球を破壊するぞ』
「え、ええ!?」
ザスティンの主・・ギド・ルシオン・デビルークは宇宙で最強の座に就いており、その気になれば惑星一つくらい造作もないくらいに強かった。そんな彼の脅迫に何が何でも応えるしかない結城リトは冷や汗を垂らしながら緊張した表情を浮かべ、ギドの要求を呑まずにはいられない。
『じゃ、それだけだから』
話を一方的に進められ対話が潰えた。たかだか地球人如きが得体の知れない宇宙人を撃退する方法などないのだから。
「婿殿!我々も全力でフォロー致しますので、そう落ち込まずにいてください。我々だってララ様をお守りする立場なのですから」
「そ、そうか・・本当に頼むぞザスティン」
「はい。その代わりというか大変恐縮ではありますが、時折食事をご一緒させてくださるとありがたいです」
「それくらいいいよ。その時にまた色んな話聞きたいな」
「ええ、助かります。では後ほど」
ザスティンを見送った後、頭を悩ませながらリビングへと向かっていき不安そうな表情を浮かべている結城美柑がいた。それもそのはず、兄があれよあれよとSFのような世界観に引き込まれたのだから驚きよりも困惑に近いのだろう。
「本当にララさんって宇宙人だったんだね」
「あぁ、夢なら覚めてくれるといいんだけど・・はぁ」
「どうするの?このままじゃ宇宙戦争とか何とか巻き込まれるんじゃないの?」
「うぅ、本当に困った・・」
「なんだったらリコねぇに相談する?リコねぇならなんとか出来る・・のかな?」
「相手は宇宙だぜ?リコならともかくララに相談したほうがいいんじゃないかな?」
「とにかく色んな人に協力してもらいましょうよ」
ララに関する事案に次々と不安がのしかかる結城リトらはこれからの生活が一辺してしまう・・否、もう運命が変わったのだろう。たかだか娘一人を守るのに宇宙の全てを敵に回すなどとゾッとする。
結城リトは特別な力とか能力とかまるでなく、漫画のように覚醒する訳でもないし、映画のように都合良くハッピーエンドを迎えられる主人公になる器でもないただの一般の男子高校生なのだから。
「もうどうとでもなれー!」
ただひたすらに何処かにいるであろう神に祈るしかないのだから・・
ーーーーーーーーーーーーーー
翌日のとある登校日。結城リトらが通う彩南高校の正門前に凜とした女子高生が居た。
彼女の名は高校一年生の古手川唯である。
彼女は風紀や秩序に厳しく、非常識な騒動が横行している高校の現状を憂慮し、秩序を保つために風紀活動に取り組んでいるが、妥協を許さない姿勢から向こう見ずな行動を行う真面目な女の子である。
そんな古手川唯は今日、抜き打ちで持ち物チェックや制服チェックを施していた。
「ダメ!学校に関係のない物を持ってはいけません!没収です!それもこれもぜーんぶです!」
「ちょっと!あなたスカート短いわ!ちゃんと膝が隠れるまでスカートを下げなさい!」
「髪を染めてはいけません!黒に戻しなさい!」
まるで生活指導部の顧問のような鬼チェックで次々と生徒に指導していた。そんな彼女にまたも不真面目な生徒達が目についた。
「ちょっと!結城くん!ララさん!イチャイチャしてはいけません!不純性行為よ!それと!夕崎さんと猿山くんも近寄りすぎよ!」
結城リトとララがくっついて登校している姿を。そして、夕崎梨子と猿山ケンイチはくっついてはいないが微笑みながら談笑している姿を注意していた。
「オイオイ、リトたちを注意するのは分かるが、ボクたちはただ雑談しているだけなんだが?」
「そうだぜ!なんの他愛のない世間話してただけだ!」
夕崎梨子らの証言は尤もなのだが、だかしかし彼らの言い訳なんてこれまでも聞いた事があるのだ。自分なら許されるだろう、アイツはいいのに自分だけはダメなのか?などただの自己中心的な考えで不真面目な生徒なのだと古手川唯にはそれだけの理由で彼らを見下していた。
「異議ありよ!男の子と女の子が友達関係なんて結べるはずがないですもの!どうせ下心丸出しで近づいてきたのでしょう!」
彼女の証言も真面目な生徒としてならば正解に近いのだろうが、夕崎梨子はやれやれと肩を竦めながらため息を吐いた。
「オイオイ、それは一般論なだけであって必ずしも全員が全員そうであるとは限らないと思うけど、それはどう解釈するのかい?唯ちゃん」
「ちょ、ちょっと親しげにしないでよ!あなたなんかちっとも好きではないわ!」
「ふふふ。フラれちゃったなぁ、もう」
「いーい!?所詮は男と女なのよ!だからそうなる運命になりやすいの!分かった!?」
「はいはい。唯ちゃんが正しいね。ボクにはそれが正解だとは思わないけどね」
「なんで分からないの?あとそれとあなたは女の子らしくしなさい!なによボクだなんてキャラ作って」
古手川唯の発言に眉間にピクッと動かして少々イラつきを覚える夕崎梨子。最初は男女がくっついてあーだこーだと難癖つけていたのに自分の個性まで否定されなければいけないのだろうかと腹が立ってしまう。
「・・オイオイ、ボクはボクなんだよ?ボクが夕崎梨子であるから、という理由だけでは不服かい?決してキャラ作りでもなんでもない・・これが素なんだよ」
「ふんっ!口ではそう言えるわ!もうあなた達と構っていられない」
「ふふふ。こちらとしても願ったり叶ったりだ」
「なによ!」「なにかな?」
夕崎梨子と古手川唯は目でバチバチと火花を散らしていた。どうにもこの夕崎梨子や結城リトの事が本当に気に入らない。どうしてもぎゃふんと言わせたいこの夕崎梨子という女子をーー風紀委員として粛清してみせると心に誓ってその心に静かに燃え上がる闘志が沸いて出た。
それに対する夕崎梨子もなんとしてでも古手川唯に勝つという根気を見いだしていた。
一方、蚊帳の外の結城リトと猿山ケンイチはというと
「お、おいリト・・女同士の喧嘩って怖いな」
「あ、あぁ、すげーこえー」
女同士の勝負に怖じ気づいて身を震わせたのであった。
いかがでしたか?古手川唯と夕崎梨子の対決はオソロシイ!彼女たちの対決はずっと続きます!