それから夕崎梨子の見た目は原作に登場した結城リトが性別を変えた姿の夕崎梨子まんまを想像していただければ幸いです。
あと、原作にもボクっ娘が登場しないのかなぁ?と思いを馳せ、やはり登場しないのを落ち込んでいます。
みんなはボクっ娘のために、ボクっ娘はみんなのために一つになればいいのに(切実)
古手川唯の独裁国家のような風紀チェックが執行され数日後のある日だった。
その日も風紀チェックするべく校舎近くを散策していると三人程の男子生徒が煙草を吸っていた。
早速注意しようと駆け寄って怒ったら突然その男子生徒らは逆ギレのように何の悪びれようもなくこちらを叱った。
「な、なによ!未成年の喫煙は御法度よ!警察に連れて行くわ!」
こちらの常套手段として警察を持ち出すのだが、男子生徒らはニヤニヤと笑っていた。
「確かに俺らが吸ったのをお前が見たから証人になるけどよ。それを無かった事にしたらいい」
「ど、どういう事よ」
男子生徒らはニヤニヤと笑いつつ古手川唯に詰め寄っていく。
こちらは三人で相手はか弱い女一人で勝つ事は確定的でその勝機を持ち合わせているので古手川唯なんてたいした事はないだろう。
「つまりお前を口封じしたら俺らは無実ってな訳だ」
「そ、そんな!」
ジリジリと詰め寄ってくる男子生徒らに恐怖のあまり立ち尽くしてしまう古手川唯。
怖い、恐ろしい、助けての三つの言葉が脳内にいくつもの数が渦巻いていた。そして微かに自分が嫌いな夕崎梨子の姿が過ぎっていたり自分に警告だと言い聞かせた言葉を思い出した。
『もしキミ自身が自分を正義だと主張するならば、キミがそれ以上悪に関わるならば碌な事にはならないと宣言しておくよ』
あの顔を思い出すだけで、あの声を聞くだけ本当に腹立たしいあの夕崎梨子の言う事をあの時ちゃんと聞くべきだったと、なぜ夕崎梨子をあれだけ嫌いになったんだろう?ほんの些細な口喧嘩でなんで嫌いになったんだろうと後悔していたのだが、今更後悔しても本当に遅い。
「助けてっ!誰か助けてっ!」
ただ必死に懇願するしかなかった。
だけど、思いもしれない人物が目の前に現れた。
「やぁ、通りすがりのただの女子高生が助けに来たよ」
夕崎梨子だった。
自分も相手もお互い嫌いなはずで助ける道理も義理もないのに現れてくれた夕崎梨子が輝いて見えた。
「先生呼んできたから早く逃げたら?ほらすぐそこだよ?」
「なに!?マジかよヅラかるぜ!」
夕崎梨子の言葉で男子生徒らは一目散に消え去り、その場には古手川唯と夕崎梨子のみとなった。
男子生徒らの恐怖から解放されたからか古手川唯は腰を落とし、涙を浮かべていた。
「な、なんで、なんで、なんで助けたのよ!あなた!」
助けてくれたのはありがたい。だけど嫌いな相手に素直に感謝の意を表したくない。だからせめて理由くらいだけは聞きたい。
「唯ちゃんの大好きな校則には書いてなかったんだよ。『嫌いな友人を助けてはいけない』ってね」
「はぁ!?なによそれ!」
理解不能だった。
古手川唯は校則が全てで風紀が一切乱れず、生徒が規則正しい生活を送る事が当たり前だと。
しかし、それらを一切無視ーー否、校則の穴を見つけ、いけしゃあしゃあとそれをやってとげる夕崎梨子の行動が理解不能であった。
「ふふふ。ボクの行動を校則如きで防げると思っているのかい?片腹痛いねぇ~。どんな校則があろうとも何事もなく行動するだけなのさ」
「あなた非常識だわ」
「校則やこの世の掟を常に守って普通に生きてるのが退屈なだけなのさ」
「まさかその喋り方も退屈なだけに生まれたものなの?」
「さぁ?気づいたらこうなったんだ。理屈じゃないさ」
「・・要するにあなたはバカってことね」
「オイオイ、何がどうなってそうなるのさ?これだから頭が堅い優等生は嫌いなんだ」
「私だって何を考えているのか分からないバカは嫌いなのよ」
こうして正面きって憎まれ口を叩き合う友人はいなかった・・いや、友人ではなく知人・・でもなく赤の他人がどうしているのだろうか?不思議で不愉快でもあるけど古手川唯にとっては、なんだか心地よい時間だった。
「お礼なんか言わないわよ。私、あなたの事が嫌いなんだから」
「ふふふ。そんなもの受けとったら気持ち悪くて三日三晩寝込む自信があるよ」
「ならなんか適当に渡そうかしら?うふふ」
「キミ、何気にヒドいね」
夕崎梨子と古手川唯の嫌い同士の奇妙な友情が芽生え、お互いに満面の笑みを浮かべてその場を離れていった。
古手川唯は周りを見回し誰も居ない事を確認し深くため息を吐いた。
「私、一人で勝手に突っ走っているだけの自己中心的なヤな奴なのかな?あの子以外に相談してみようかな?」
彼女の脳裏に嫌いな人物が過ぎり腹立たしいと同時に勇気をくれる不思議な気持ちにしてくる・・これが彼女の存在があってこそのものだろうか?
「全く、私としたことがとんだ悪い子と知り合いになったものね」
今まで知り合いになった誰よりも話が通らなく、誰よりも理解出来なく、誰よりも自分によく反発してくる人物はこれからも彼女だけなのだろう。
「あんなとんでもないあの子を誰が更正出来るのかしら?結城くんや猿山くんがかまっているようだけど、よくもまぁ話通じるわね。みんな非常識だわ」
真面目で常識人として、夕崎梨子を筆頭とした非常識をいつか更正させる為に彼女は戦い続けていく。
「風紀委員古手川唯の名にかけて頑張るわ!」
ーーーーーーーーーー
古手川唯による鬼の風紀チェックは密かに終わり、通常通りの校則へと戻っていき、学校もいつも通りでただの変哲もない普通の高校へとなっていた。
それを不思議に思った夕崎梨子は古手川唯に尋ねていた。
「おやおや唯ちゃん。その辺に落ちてた変なものでも食べたのかい?病院に連れて行こうか?」
「ご忠告どうも夕崎さん。私は至って元気なのよ?それよりも腕がいい精神科の病院を知ってるけど紹介しましょうか?」
「ふふふ、あぁ前向きに検討するけど、神の手を施す医者がいてもボクはボクのままになるのだろう。だからお金と時間の無駄になるよ」
二人は満面の笑みで毒舌を交わすのを見て唖然とする結城リトと猿山ケンイチらは互いの顔を見合わせ驚愕の表情を浮かべていた。
「な、なぁリコ?古手川となんかあったのか?」
未だに満面の笑みを浮かべる夕崎梨子に怯えながらも尋ねて、彼女はこれまで起こった事をサラリと教えた。
自分勝手に校則を増やす古手川唯とそんな彼女に個性をバカにされ怒った夕崎梨子は口喧嘩して余計に関係がこじれたとの事だ。
「ならリコちゃんは古手川となんでそんなに仲良さげなんだ?」
猿山ケンイチの質問も尤もだ。
喧嘩しているのならばいちいち突っかかる事もないのだろう。
そんな猿山ケンイチの言葉を聞き、ふふふと含み笑いをこぼし満面の笑みで夕崎梨子はこう答えた。
「ボクと唯ちゃんは犬猿の仲という訳でお互いの事が嫌いなんだけど、どちらかが上の立場だと分からせる必要があるからなんだよサルくん。ま、もちろんボクが上なんだがね」
彼女が冗談でもハッキリと毒舌を言うタイプではなかった。
いつも誰にでも優しく不思議なその口調で夕崎梨子が作り出す世界観に引き込ませ、次々と知り合いを増やすのが常識だった。
「あらあら夕崎さんってば何かを勘違いをしているようだけれどいつから私に勝った気になったのかしらね?」
古手川唯は古手川唯で夕崎梨子に敵対するかのように毒舌を交わしていた。そんな彼女らの奇妙な関係に納得しかないようだった。
そんな彼女らを心配した正義の心を持った西連寺春菜は駆け寄り、仲直りを促そうと試みた。
「あ、あの、喧嘩はダメだから仲直りして?リコちゃんに古手川さん」
「それはダメだよ」「嫌よ。それじゃあね」
だけど二人はその一言で言い放った。
古手川唯は輪から逃げるようにその場から消えていった。
その場にポツンと四人だけが取り残され、無言の時間が続き、西連寺春菜はどこか落ち着かないようにオロオロと慌てていた様子だ。
「え、えっと理由を聞いてもいいかな?仲直りしない理由」
「うん、ただ気に入らなくてどうしてでも貫きたい事があるからだよ春菜ちゃん」
「どういう事だ?リコ」
「ボクにはボクであると証明を示すという事さ」
「リコちゃんがリコちゃんであるって当たり前だろ?」
「その通りだよサルくん。言葉なんかじゃ説明が出来ないと言うのに、あの唯ちゃんは何でもかんでも理屈をつけないといけないらしいね・・全く困ったものだよ」
夕崎梨子の理由と古手川唯の理由もほとんど同じなのだろう。
互いが気に入らないからとただそれだけの理由で仲直りしない・・否、出来ないのだろう。なぜならばーー
「ボクにはボクの正義があり唯ちゃんには唯ちゃんの正義があるからだろう。だからこそ生じてしまう争いが起こったんだろうね」
彼女らは対峙し続けるのだからーー
古手川唯と夕崎梨子の嫌いは良い意味の嫌いにしたかった今回の話、いかがでしょうか?
イヤよイヤよも好きのうち、と言うことなのです(哲学)