ララの人気が急上昇し、いつの間にか学校のマドンナとなっていた。
天真爛漫な可愛い美少女がいるというだけで学校中に広まるのに時間はかからなかった。
結城リトとの婚約騒ぎがあったので、彼女を恋人にする事は出来ないからとせめてもの足掻きで遠目で見ている事にしていた。
一方その頃、結城リトらの上級生の二年生である天条院紗姫は憤怒していた。
彼女は縦ロールの髪型と、「〜なんですの?」という口癖が特徴的な美少女で正真正銘のお嬢様であり目立ちだかり屋なのだ。
ララと名乗る人物が現れる前までは学校のマドンナは天条院紗姫であるという事が常識であったのだが、今では誰もがララの追っかけをしているのだというのだ。
「許せませんわ!私より美しいだなんて認めませんわ!」
美への執着と人気者になり続ける執着が彼女を後押ししていく。
そんな彼女の付き人である丸めがねをかけたいまいちぱっとしない藤崎綾と侍のような気高い雰囲気を持つ凜とした九条凜は相槌をうつかのようにうんうんと頷く。
「ところで紗姫様、ララと呼ばれる生徒や紗姫様よりは人気がある訳ではありませんが、一部の生徒に人気がある生徒もいるようです」
「その方はどうでもいいですが一応気になりますわね?どなたですの?綾」
「夕崎梨子、ララと同じ一年生の女子だそうですが・・」
「へぇ、それで?」
「なんでもその方は、紗姫様ほど美しくはないでしょうが美しいのに奇妙で特徴的な口調で話しているとのことです」
「それはどのような口調でありますの?凜」
「男口調ではありますが、でもどこか男口調でもないような、という曖昧な口調だそうです紗姫様」
天条院紗姫は二人の報告を受け腹が立った。
絶大的な人気があるララはともかく夕崎梨子に非常に不愉快な気持ちを抱いてしまう。
思春期真っ盛りの男子は可愛いさ重視で女を選ぶはずなのに性格や口調で自分の美しさより目立つなんて許せなかった。
「では、彼女らのクラスに突入いたしましょう。綾、凜」
「「はいっ!」」
これは戦争だ。美の頂点に君臨するはずの自分に対する彼女らの挑戦状だと思い込むようになり、彼女らは一目散に目の敵にしているララと夕崎梨子がいる教室へと向かっていった。
「ちょっとよろしくて!?」
教室の扉を力強く開け、ポカンとする一年生らを放ってララと夕崎梨子のもとへとかけよってきた。
「勝負よ!ララ!夕崎梨子!」
その一言を力強く、凜々しく、優雅に叫んだ。
自分の負けず嫌いは言葉の通りに負けるのが本当に嫌で許される行為ではないのだから当然なのだろう。
そんな負けず嫌いの宣戦布告に夕崎梨子はポカンとしていたが、ララは無邪気な笑みをこぼしていた。
「うんっ、いいよ!さぁ、かかってこい!」
ララは両腕を真上に真っ直ぐ伸ばし右脚を曲げ伸ばす謎のファイティングポーズをとっていた。
そのララの姿をじっくり観察した夕崎梨子は笑みをこぼして天条院紗姫をジロリと見つめた。
「あぁ、そういう事かい。ならばボクも相応の対応をとらなければならないということなのだろう」
首を傾げ両肘を折り曲げ手を開き、まさにやれやれと言いたそうなポーズをとっていた・・そんな彼女らの反応にムカついた。
勝負=喧嘩の発想している彼女らはなんて下品で野蛮なのだろう?なぜそんな下品で野蛮で貧相な彼女らに人気が集まるのだろう?
「ちょっと勘違いをなさっているようですけどこれは喧嘩ではありませんわ!」
「へ?そうなの?」
ララは謎のファイティングを直し普通に立っていたが、夕崎梨子は未だにやれやれと言いたそうなポーズをとっていた。
「オイオイ、今さっきキミが勝負だと宣言したじゃないのかい?だがボクらは、か弱い女の子に過ぎないがそれでも勝負したいのだろう?だから戦う覚悟を決めた人の挑戦は是が非でも受けないとね」
「勝負=喧嘩ではありませんのよ!」
「ふふふ、確かにそうだが同じでもあり同時に同じではないがそれに近いもの・・つまりは勝負≒喧嘩なんだよ。その辺はお分かりかい?」
「私達は今!数学の授業をやってないわ!勝負だと言っているのですわ!関係ないですわ」
「おっと、ついウッカリだ。ボクはなんてこうも口下手なのだろう?伝達力や相手への理解力が足りていない証拠だ」
「もういいですわ!もうあなた達とは関わりたくありません!さよならですわ!」
不愉快、不愉快、不愉快、なんて不愉快なのだろう?
阿呆なララはともかくあの不愉快な夕崎梨子はなぜこうも人を苛立てようとするのだろう?
早く帰って美を磨いて人気を取り戻さなければ・・
あの夕崎梨子をいつかぎゃふんと言わしてやらなければ・・
いつか、いつか、いつか学校一の美女となるべき為に、今はあの二人にはかまってはいられない。
だから今はまだ彼女らに挑戦をするにはまだ早かったのだ。
天条院紗姫が消え、夕崎梨子は満面の笑みを浮かべ肩を落としガッカリとした様子で落ち込んだ。
「また嫌われたのかな?ふふふ、ボクはなんでこうも嫌われ者になりやすいのだろうね?」
落ち込む夕崎梨子に古手川唯も笑みをこぼしつつ、近寄り古手川唯なりの励ましの言葉を贈った。
「当然ね夕崎さん。今のは私にもムカッとしたわ」
この言葉は夕崎梨子にトドメがさされた。
少しでも更正するようにと優しい言葉であり、夕崎梨子が少しでも女の子らしくなるようにと正しい言葉であった。
「ふふふ、まさか唯ちゃんにもあの言葉に嫌気が指したのかい?それでどうだい?流れ弾に当たった戦国武将の気持ちは?」
「誰が蜂屋貞次よ?まったく・・三河吉田城攻めには本当に苦労しちゃうわ」
「オイオイ、ボク如きがそんな大層な器じゃないよ?日本の城と言われては最大級の褒め言葉だろう」
「確かにね。だけど歴史や運命がそうなるとしても私は諦めたくないわ。孤立無援で絶体絶命だったとしても戦い続けるわ」
「へぇ、運命と戦い続けるタイプだったのかい?なかなか熱いね唯ちゃんは」
「当然よ、だって私が・・古手川唯が正しいんだから」
「ならばボクも・・夕崎梨子は悪くはないと宣言しておこう」
互いが互いの正をぶつけあう関係はそう滅多にない・・嫌いだからという理由だけでは本気でぶつかり合う事なんてないのだから。
「もしもあなたが女の子らしく振る舞っていたらこうならなくて済むはずだったのにね」
「もしもキミが正しくあろうと努力しなければボクたちの関係は変わっていたはずだったのに」
「私はあなたことが」
「ボクは唯ちゃんのことが」
「嫌いよ」「嫌いだよ」
互いな気持ちが重なる・・嫌いという気持ちが。
だけどその二人は満面の笑みだ。
もともと壊れていたその友情が更に壊れていくような気がする二人だけど、彼女らは決して混ざり合わない二人だけど
彼女らは唯一無二の悪友になれた
そんな悪友を放ってはおけない。放っておいたら何かをしでかすかもしれないし、あの口下手の夕崎梨子はまた敵を作ってしまうかもしれない。
夕崎梨子も古手川唯が正義を執行する前に警告を促さないとまた敵を作ってしまうかもしれないと互いが互いを心配していた。
嫌いなんだけど、それでもこれだけは胸を張って言えるのだから。
「仕方ないけど助けてあげなきゃ」
本当に仕方ないがない事。
口で言っても分かってくれないから行動で分からせる必要があるのだから。
彼女らの奇妙な関係はこれからもずっと続くのだろう。
しばらくしたらまた天上院紗姫は登場します!ファンの方!今しばらくお待ちを!