この事件の後、中学の時の旦那様のあだ名が『変態紳士』だったと知り頭を抱えることになった。
「旦那様、時間ですよ」
「んぅ・・・」
「起きてください、旦那様」
「ダメですよぉ・・・麗さん・・・そこはぁ」
「・・・・・・」
「でへへ・・・凄い・・・です・・・」
「・・・」
「ここですかぁ・・・ここがいいんでゲボォア!!!!」
「おはようございます、旦那様」
なんだ!?腹に凄まじい激痛がッ!!
「れ、麗さん、おはよう・・・すんごくお腹が痛いんだけどなんでか知らない?」
「知りません」
「麗さ」
「知りません」
「・・・」
今日は高校の通常授業が始まる日で、なんとか第一志望に受かった僕は、1年間だけの麗さんと通える日々を大事にしようと思うわけだけど。なぜか麗さんが口を聞いてくれない。
「ねぇねぇ、麗さん」
「・・・なんでしょうか」
「あー、なんかしちゃったかな、僕」
「なにか、とは?」
「怒らせるようなこと」
「いえ、別に。特には」
「・・・麗さん、ヨーグルトあげるよ。好きでしょ?」
「いりません」
「・・・」
さて、麗さんは意外と怒りっぽかったりする。僕が連絡なしに遅く帰ったり、僕がエロ本を買ったり、僕が夜更かししたり、僕が麗さんのヨーグルトも食べちゃったりした時も怒ったりする。だけど今回は本当にわからない。昨日の夜までは普通だったから、あるとすれば夢に出てきたいかがわしい麗さんを見られたりすることくらい。ありえないんだけども。
「食べ終わったら支度を急いでください。遅刻は許しませんよ」
「はい・・・」
というわけで登校。さて、今日も今日とてなんとか麗さんを口説き落としたい。好かれてはいるんだろうけども、どうしても弟的な枠に入れられてるきがしてならない。やっぱり本当の意味での旦那様を目指さなければ。まずその第1歩・・・手を繋ぐッ!
・・・くっ、難しい、すぐさま手を取ればいいのか、声をかけるべきか・・・。
「いやー麗さん、いい陽気だね」
「そうですね」
「こんな日はピクニックでもしたくなるよね」
「そうですね」
「・・・麗さん、今日も綺麗だね」
「そうですね」
ダメだ!塩対応どころじゃない!無!無味乾燥しすぎているッ・・・!ええい攻めろ僕!手を繋ぐんだ!
「・・・えいっ」
「ひゃぁああ!」
「えっ」
すんごい逃げられた。顔真っ赤にしてる。ひょっとしてやってしまった?
「ん、んん!なんでしょうか」
「あー、いや、せっかくだし、手でも繋ぎたいなぁ、と」
「・・・子供じゃないんですから、やめましょう。これからの貴方の学校生活にも響くかもしれません」
「いやいや、僕に悪い虫がつかないのはいいことじゃない?」
「いえ、それは大丈夫です。多少の恋愛経験は必要だと思います」
「むぅ・・・、麗さんに悪い虫がつかないように!」
「私は生涯貴方に付き従う者です。他の男性に現を抜かすことなど絶対に有り得ません」
「はうっ!」
ズキューンと心臓を撃ち抜かれた。なんという圧倒的な正妻的メイド力・・・!わかっておられる、主人が欲する言葉をッ!
「・・・時に」
「はい?」
「時に、その・・・性欲発散の為の本などを買うことを禁じていますよね」
「え?そうだね、突然なに?」
「・・・その、やはりそういったものは溜まってしまいますか?」
「溜まるって・・・」
ゴクリ。なんだこの流れは・・・
「やはり、溜まっているから・・・いかがわしい夢を見てしまうんですよね」
「なんでバレてるんだッ!」
「いえ、その、寝言で・・・」
「なんてことだ・・・僕が麗さんを縄で縛ったり手錠をかけたり目隠ししたりしたいということがバレてるのか・・・」
「え」
「え?」
「・・・もう一度おねがいします。私に何をしたいと?」
「縄で縛って手錠をして目隠ししたりしたい」
「・・・」
「あれ?麗さん!待ってよ!ごめんって!」
超スピードで麗さんが歩いていってしまう。てか早すぎる!走ってんのに追いつかない!その後三日間ほど口を聞いてもらえなくなってしまった。