戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない   作:imuka

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賢者の石終わりです。

ではどうぞ。


賢者の石と1年の終わり

 夜、イーニアはこそこそと部屋を出ると談話室を抜けて例の部屋へと向かう。すると談話室でハリーとロンが待ち構えていた。

 

「2人ともこんな時間にどうしたの?」

 

「それはこっちの台詞だよ、イーニア。こんな時間にどこに行くつもりだい?」

 

「えーっと、散歩?」

 

「イーニアは嘘が下手だね。あの部屋を見に行くんだろ?」

 

 イーニアが困った顔をしているとハーマイオニーも降りて来る。

 

「ハーマイオニー。寝てたんじゃないの?」

 

「狸寝入り得意なの。」

 

 クスッと笑うハーマイオニー。

 

「心配しないで。別にイーニアを止めに来たわけじゃないの。私も一緒にいくわ。」

 

「もちろん、ぼくたちも。」

 

 イーニアは困った顔から驚いた顔になる。

 

「あら?そんなに意外だった?」

 

「ハーマイオニーには止められると思った。」

 

「事情を知ってるのに止めるはずないでしょ。」

 

 4人が談話室から出ようとしたとき、ネビルがやってくる。

 

「どこへ行くの?」

 

「ネビル。」

 

「せっかくグリフィンドールがトップなのに、見つかったりしたら大変なことになる!」

 

「これは大事なことなの――って事情のわからないネビルにいっても仕方ないよね。止めたければ力ずくでも止めて。私たちは力ずくでも行く。」

 

 イーニアの気迫に少し気圧されたネビルだったが怖気づくことなく構えを取った。

 

「この1年でだいぶ変わったね。ネビルは。」

 

 初めて会った時のおどおどした感じはどこにもない、しっかりとした彼の態度にイーニアたちは喜びを感じた。

 しかし今は引き下がっていい時ではない。イーニアは杖を取り出すと素早くネビルに失神呪文をかけた。失神したネビルをハリーとロンにベットに運んでもらい談話室を後にした。

 

 部屋に着くとフラフィーが眠っていた。

 

「誰かが侵入している可能性が十分に出てきたね。」

 

「行こう。」

 

 ハリーの言葉に3人は肯くとそのまま地下へと歩を進めた。下に降りると何か柔らかいモノの上に足をつける。暗がりであまり見えなかったのでイーニアは明かりを灯した。

 

ルーモス・フォス(強い光よ)――ん?」

 

 部屋全体を照らす明かりを灯すと足に近づこうとしていた植物が離れて行った。

 

「これ『悪魔の罠』ね。イーニアが明かりを点けたから逃げたんだわ。」

 

「これだけ暗ければ誰でも明かりを点けると思うけど…。罠としてどうなのよ、これ。」

 

 イーニアのそのセリフに思わず3人も苦笑いした。

 次の部屋に着くと鍵が空を飛んでいた。先の部屋への扉には鍵がかかっている。

 

「扉自体にも魔法が掛かってて鍵使わないと開かない感じかな?」

 

 鍵開けの魔法を唱えてみたが反応がないことにイーニアは"壊すことできないかな"などと物騒なことを考えたが箒もあったのでハリーに頼むことにした。

 

「ハリー。その箒で片っ端から鍵取ってもらえる?」

 

「わかったよ。」

 

 ハリーは肯くと颯爽と箒に跨り上へあがる。イーニアも浮遊魔法を唱え、手に持てるだけ鍵を取りロンに渡して一つ一つ確かめる。飛んでいる鍵の半部くらいを試したあたりでロンが"開いた!"と声を上げたのでハリーとイーニアは下り、次の部屋へと進んだ。

 

 そこには駒が人間サイズのチェスが置かれていた。

 

「大きなチェス盤。まさかこれで勝てってことかな?」

 

「そのまさかみたいだね。――3人ともここはぼくに任せてくれる?」

 

 ロンが張り切った声で言ったので3人は反論せず従った。このチェスは本物の戦場さながら駒を取ると攻撃し壊す仕組みになっていた。それでもロンは順調に駒を進め、4対3と優勢に持ち込んだ。

 

「これであえてナイトがやられれば勝ちだ。」

 

「え!?それだとロンが!」

 

「そうよ!」

 

「進むにはこれしかないんだ!」

 

 ロンはそう言い押し切ると自身であるナイトを取らせる。イーニアはナイトを取りに来たクイーンがナイトに攻撃をしようとした瞬間、ロンの身体を少し浮かせ怪我をしないように守る。ハリーがビショップを取りチェックメイトするとロンに駆け寄る。幸い怪我はなく気絶しているだけの様だった。ロンは部屋の隅で横にさせると3人はそのまま次の部屋へと向かった。

 部屋に入ると3体のトロールが待ち構えていた。

 

「げ。」

 

 思わず声を上げるイーニア。ハリーとハーマイオニーも後ずさりする。

 

「私が引きつけるから2人は先へ!」

 

「でも!」

 

「私は大丈夫だから!!」

 

 イーニアは強化魔法をかけトロールの気を引くため3体の周りを素早く動く。ハリーとハーマイオニーは少し悩んだがトロールたちがイーニアに興味を持ち始めると扉の方へと駆けて行った。

 

「棍棒持ってないからリーチが短くて――とと、危ない。」

 

 掴もうとする手を躱し距離を取り、杖を構えニコッと笑うイーニア。

 

「1体ずつ確実に沈めてあげる。」

 

 その笑顔の意味を察したのかトロールたちは少し怯える。がすぐに2体がイーニアに襲い掛かった。浮遊魔法をかけトロールの頭を飛び越えると後ろから失神呪文を2体にかける。

 

ステューピファイ!(麻痺せよ)

 

 魔法を受けた2体のトロールは倒れ動かなくなった。

 

「1体ずつって言ったのに2体同時にやっちゃった。ま、どうでもいっか。――さて、最後だ。」

 

 イーニアは振り向き最後のトロールと向き合う。トロールは先ほどの2体とは比べものにならないくらい俊敏な動きでイーニアを襲った。

 

「ッ!特別ってこと!?」

 

 攻撃をスレスレで避けたイーニアは失神呪文をかけた。しかし赤い閃光はトロールにあたると弾けて消えた。

 

「え?――と、危ない危ない。」

 

 弾かれたことに驚き一瞬固まってしまったがすぐに立て直す。再び失神呪文をかけても弾かれる。それどころか他の魔法も弾かれてしまった。

 

「えー!!護りの魔法でもかかってるの!?」

 

 一つも魔法が通らないことに慌てつつもしっかりと攻撃を避けるイーニア。武器生成魔法で槍を作り投げる。しかしそれも弾かれ足を掴まれてしまう。

 

「やばい!!」

 

 捕まえられたイーニアは振り回されるが何とか手にしがみつく。壁や床にあたるのを何とか避け、先ほど生成した槍を拾いトロールの手に刺す。するとトロールは痛がりイーニアを放した。

 

「効いた!?――痛ッ!」

 

 急に離されたイーニアは床にお尻を打つ。結構痛かったがすぐに距離をとり考える。

 

「飛んでくるものに対して護りが働いているのかな?」

 

 考えを確かめるため接近し足に槍を刺す。攻撃を受けたトロールは再び痛がった。

 

「やっぱり!――でもこれじゃジリ貧だなー。」

 

 痛がりはするもののほとんど傷を負っていないトロール。このままでは体力が尽きたら負けである。

 

「どう考えても向こうの方が体力あるよね。」

 

 思わず口に出しながら苦笑いしながらも攻撃を避ける。ふと、あることを思いついたイーニアは少し太めの棍棒を生成した。浮遊魔法、そして物体加速魔法を自分にかけるとトロール目がけて突っ込む。狙いは顎。

 

「脳が揺れれば気絶するでしょ!」

 

ゴキッ!

 トロールの顎に棍棒が当たると、すごい音がした。続けて対角線上に2撃目を打つ。2撃目が当たると同時にトロールの右腕がイーニアを捉え自分サイズのビンタを受ける。しかしイーニアは冷静に受け身を取り着地した。

 

「いててて…。こないだからどうも運がないな。」

 

 骨は折れてはいないが強い打撃を受けたので痣にはなるだろう。イーニアがトロールを見ると頭をくらくらさせながら仰向けに倒れたところだった。少し休憩しようと思ったがハリーたちが心配になり休まず先に進むことにした。

 先に進むとハーマイオニーが先に向かったハリーを追いかけてほしいと瓶を渡してくる。どうやら先に進むには専用の魔法薬を飲む必要があるらしい。

 

「わかった。ハーマイオニーは一旦戻ってロンのところへ。一応、失神呪文で寝てるけどトロールが起きたところにロンが入っちゃったら大変だから。」

 

 ハーマイオニーは戻るための薬を飲むと部屋を出て行った。イーニアも薬を飲み先に進む。

 

 部屋に入るとクィレルが蹲っているハリーに魔法をかけようとしているところだった。とっさに物体加速魔法をかけ、クィレルの腹に蹴りを入れる。蹴りを受けたクィレルはゴロゴロと転がっていく。

 

「ハリー!!大丈夫!?」

 

「イー…ニア…。ありがとう。助かったよ。」

 

 少し咳き込みながら立ち上がるハリーに手を貸す。

 

「げほっ!げほっ!…ごほっ!」

 

「嘘ー、もう立ち上がれるの?結構強く蹴ったはずなんだけど。」

 

「……受ける瞬間に護りの魔法をかけたからな。」

 

 立ち上がったクィレルに驚くイーニア。しかし杖を構え戦う準備をする。

 

『いつまで時間をかけているのだ。』

 

 突然声が聞こえさらに警戒するイーニア。するとハリーが叫んだ。

 

「ヴォルデモートだ!クィレルの頭にヴォルデモートがいるんだ!」

 

 クィレルをよく見るといつもしていたターバンをしておらず頭が露出している。

 

『俺様が話す。』

 

 クィレルは体を後ろに向け後頭部を見せる。するとそこには顔があった。

 

「気持ち悪ッ!!!」

 

 それを見た瞬間思わず大声で叫ぶイーニア。

 

「あ、ぼくは思ってたの言わなかったのに。」

 

「いや、あれは叫んで言っちゃうよ!?」

 

 突然緊張感のない会話を始める2人にクィレルはヒステリックに叫ぶ。

 

「御主人様を気持ち悪いなどいうな!!」

 

『いや、今の俺様は気持ち悪い…。』

 

 少し落ち込んだ風に言うヴォルデモートに少し笑いそうになるイーニア。しかし笑うことはせず、杖を構えたまま真面目な顔をし、ヴォルデモートに問う。

 

「ところでヴォルデモートっていうけど本当にそうなの?私には名前を言ってはいけないあの人とか言われてるだけで写真とかも何も見たことないから、そうだと言えばそうなるし、違うと言えば違うよね?」

 

「御主人様は本物だ!!」

 

「そう思いたいだけじゃない?確かにそんな状態になっても生きていることは感服するけどね。」

 

『確かに一理あるな。』

 

「御主人様!?」

 

『やはりあの時といい、小娘。貴様は度胸がある。』

 

「これでもかなり緊張してはいるよ。――あの時、とは?初対面なはず…ああ、禁じられた森でユニコーンを襲ったのは貴方ね。」

 

『いかにも。逃げから転じて反撃に出る。――普通ならできない行動だ。』

 

「グリフィンドールの名に恥じないようにしてるだけよ。」

 

『くっくっ。ま、いい。お喋りはここまでだ。――やれ。』

 

 クィレルが杖を構え仕掛けようとした瞬間、イーニアは一気に接近しクィレルを投げた。

 

「がはぁ!!?」

 

 イーニアはそのまま掴んだ手を捻り関節を決める。杖を手から放させ遠くへ投げる。さらに立ち上がらせると2撃、掌底を食らわせ気絶させた。

 

「すごい。」

 

「ハリーも鍛えればできるようになるよ。――あ、やっぱり逃げられた。」

 

 クィレルの後頭部を確認するとそこにはすでにヴォルデモートの顔はなく普通の頭になっていた。

 イーニアは気絶しているクィレルを縛ると振り向き声をかけた。

 

「ダンブルドア校長、出てきていいですよ?」

 

「ほっほっほ、いつから気づいておったんじゃ?」

 

「ついさっきです。結構前から見ていたんじゃないですか?」

 

「もしもに備えて最初から見させてもらっておったよ。」

 

「食えない人ですね。」

 

 イーニアが眉間にしわを寄せているとハリーはダンブルドアに近づきポケットから赤い石を出し渡した。

 

「ああ、これかの。欲しければあげよう。」

 

「「え?」」

 

「これは賢者の石なんかではないよ。本物はほれ、儂のポケットに入っとる。」

 

 ダンブルドアはポケットに手を入れるとハリーが持っているものよりも赤く美しい石を取り出した。

 

「つまりここ自体が釣り餌だったわけですね。」

 

 イーニアはため息を吐くと床に座り込んだ。

 

「もう…。トロールとかかなりギリギリだったのに…。」

 

「あれはまずかったの。手を出すところじゃった。」

 

「笑って言わないでください。」

 

「すまんすまん。――さて、戻ろうか。話は明日、校長室に来るといい。」

 

 部屋を出た3人は目を覚ましたロンとそこにいたハーマイオニーを連れて寮に戻りそのままベットへダイブした。

 

 次の日、4人は校長室を訪れ話を聞いた。

 まず、手を出さなかったのはなぜかと聞くとイーニアたちの成長を見るためと返答された。確かにあそこはトロール以外はちゃんと勉強していれば攻略できるものばかりで罠の割には優しかった。

 次にトロールにかかっていた魔法、あれは護りの魔法、プロテゴ・ウォレ(飛ぶものから護れ)という飛んでくるものをすべて弾く魔法というもの。対象物の前に盾を作るのではなく対象物自体に弾く性質を持たせる。トロールという力の強い種族が得るのにもってこいの魔法だった。

 賢者の石とクィレルの所在を聞くと賢者の石は破壊、クィレルはアズカバンに連れて行かれた。イーニアは賢者の石を触ってみて少しでいいから研究したかったというとダンブルドアに苦笑いされた。

 

* * *

 

 そしてさらに月日が流れ、学年度末パーティーの日。

 

「また1年が過ぎた!ご馳走にかぶりつく前に、老いぼれのたわごとをお聞き願おう。まずは、寮対抗杯の表彰じゃ。4位 ハッフルパフ 352点 3位 レイブンクロー 426点 2位 スリザリン 543点 そして…1位 グリフィンドール 569点。おめでとう!グリフィンドールの諸君!よくやった!」

 

 グリフィンドールのテーブルで歓声が上がる。イーニアもガッツポーズをとり、ハリーやロン、ハーマイオニーたちと抱き合ったりしていた。さらに試験の結果が発表され、ハーマイオニーがぶっちぎりの1位。イーニアは5位、ハリーは12位でロンが14位、ちなみにドラコは8位だった。

 

 パーティの熱気も醒めはじめ、イーニアたちも寮に戻ろうとするとドラコが話しかけてきた。

 

「寮対抗杯、1位おめでとう。グレンジャー、学年1位おめでとう。」

 

「ありがとう。――前から思ってたけどハーマイオニーでいいわよ?それなら私もドラコって呼ぶわ。」

 

「ならぼくもロンでいいさ。ウィーズリーはたくさんいるからね。」

 

 突然の提案に少し取り乱しそうになったドラコだったが"わかった"としっかり返事をした。そんなどこか微笑ましい光景をニヤニヤとしながらイーニアとハリーは見ていた。

 

「ぼくの時もこんな感じだったのかな?」

 

「そうだね。あの時もこんな感じだったよ。」

 

 ひそひそと話す2人に首を傾げる3人。

 

「何を話しているんだ?―――イーニア、今回は負けたが来年は寮対抗杯も試験も勝たせてもらうぞ。」

 

「寮対抗杯はわからないけど試験は負ける気ないから。」

 

 その言葉にドラコはフッと笑うとイーニアとは拳を重ね、ハリーとロンにはハグ、ハーマイオニーとは握手を交わし寮へと戻っていった。ドラコが去った後、イーニアはドラコがハグするとき照れてたっと笑っていた。

 

 帰省の日が訪れ、皆はホグワーツ特急にのりこんだ。やがてキングズ・クロスに到着。

 

「ハリー、ハーマイオニー、ロン。またね。」

 

 同じコンパートメントにいた3人に挨拶を済まし、帰るため歩く。途中ドラコが見えたので軽く手を振り、返されたの確認すると目の前にアリシスがいた。いないはずの人物がおり驚くイーニア。

 

「え?迎えに来れないんじゃなかったっけ?」

 

「埋め合わせはちゃんとするって言ったでしょ?」

 

 イーニアはその言葉に満面の笑顔を見せ、アリシスに抱きついた。

 

「ただいま!」

 

「おかえりなさい。」

 

 こうしてイーニアの1年は幕を閉じた。




ひとまず第1章である賢者の石が終わりました。
どうだったでしょうか?最後の最後でイーニアがまともに格闘させられてよかったと思います。


照らす魔法、ルーモス・フォス。
ルーモスより明るいってだけです。
護りの魔法、プロテゴ・ウォレ。
内容は本文の通りです。トロールとかドラゴンとかに付与させると、とても面倒になります。
原作とは異なりクィレルは死亡せず、生存しました。またどこかで登場すると思います。


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