話のストック聖母の微笑5話分まで溜めてましたが、一通り読み直したら面白くなかったのでまるまる書き直し中。
予定してた内容は大分変更。
特にある人物の扱いがメチャクチャになります。なりました。
駒王町の一角に現れた時代錯誤な町。
それは一夜の夢のごとく姿を消し、元の住宅街に戻っていた。本来の住民の営みは変わらず、まるで何事も無かったかのように。
謎の悪魔エルヴィス。
彼がグレモリー眷属とゴッドハンドを倒さぬまま自ら行方を眩ましたからなのか、それとも彼の言う目的が終わり、用済みとなったからなのか。
しかし悪事の証拠までが消えたわけではない。
不動産の紹介リスト通りの姿に戻った屋敷に隣接する裏山は、何かを掘り起こした巨大な穴が確認された。十中八九悪霊の掘り起こしであろう。穴の数も規模も大きく、十や二十そこらではない、何百という数の悪霊が顕現した可能性が高かった。駒王町に出現しだした悪霊はたまたま逃げ出した個体なのだろう。依然として膨大な数の悪霊の行方は判明していない。
洗い出した行方不明者を数えれば、何人かは帰らぬ人となってしまっていた。奴隷として拉致した数が多かったのは、あの町に蔓延るチンピラ悪魔達が娯楽と称して時折やっちゃったりするから補充していたのだろう。毒チワワの一件がいい例だ。それはもう様々なトラウマが残るのは想像に難くない。解放した人間のメンタルケアや、必要となった記憶操作も相当な数だ。
完全な余談だが、亡くなっていた人間達はそれはもう手厚く葬られていた。変なところで人間くさい所業である。
リアスと学園の生徒会長、支取蒼那或いはソーナ・シトリーは互いに頭を抱える事になった。
彼女達の想定していた以上に闇が深かったのだ。
いろいろと領土の監督責任を問われる羽目になるのは免れないだろう。
それぞれ身内の魔王から雷が落ちるのではと戦々恐々していたのだが。
『今、エルヴィスと言ったのかい?』
「え、ええ、そうだけど」
『まさか、あり得るのか? だとしたらこれは……。そうか、報告ありがとう。今回の件についてだが、恐らくそこまでの沙汰は下りないよ』
「そんな、私、事件解決に踏み出すのが遅かったせいで多くの人間が犠牲に……」
『いいかいリアス。この件のことは忘れなさい。エルヴィスという名前もだ。ゴッドハンドの子にも深入りはしないよう釘を刺しておくように。後は町に潜伏している『教会』の排除に注力していなさい。分かったね?』
「は、はい」
『あと、毒チワワをこっそり飼おうとしたようだけど、ダメだからね? 愛玩目的による絶滅危惧種の飼育は認められていないのだから』
「……………………………………………………はい」
魔王としての威厳を持って無理矢理封じ込める物言いにリアスは萎縮しながら返事をするしか出来なかった。
ソーナの方もそうだ。
妹のことに対して人目も憚らず甘やかす姉がエルヴィスの件を聞くと人が変わってしまったかのと錯覚した。
ルシファー、レヴィアタンは念を押すように口にする。
『エルヴィスという悪魔に関わることを禁ずる』
そして後日通告されたペナルティーは、本当に本来のものより軽いものだった。シスコンが暴走、ではなくもっと大きなところの力が働いた結果である。
今まで微塵も見せたことの無い姿を曝した家族、悪魔社会に走った謎の動きの不気味さに恐怖したリアスとソーナの二人は、言葉にし難い嫌な予感が頭の片隅に埋もれること無く刻まれてしまったのだった。
◆◆◆
木場祐斗と兵藤一誠と神薙仁が怪我をした。
そんなに驚くべき事でも無さそうな、しかし木場に関して一部女子から悲鳴が上がりそうな情報があっという間に学園を駆け巡っていった。
なんでも出素戸炉井高校の不良に絡まれる祐斗を一誠と仁が助けに入りボコボコに返り討ちにしたとかなんとか。この一件を気に三人の友情は始まったのだとか。
しかし、祐斗との親交を深めようとする一誠に仁が嫉妬の炎を燃やし、暗い感情に気付いた祐斗が仁のことを意識するようになる哀しい三角関係に変じようとしていたのだった。
「いや待ってどういう事だよ……。なんでそんな急に腐ってるのその噂……」
旧校舎の中にある部室にて仁は読んでいた本『Sの細道』から顔を上げた。
怪我をしたことは事実なのでいつもより大きなガーゼが貼られていた。ついでに左目側を大きく腫らして瞬きし辛そうにしている。謎の悪魔エルヴィスと繰り広げた戦いの名残であった。
怪我はともかく、困惑する仁を余所に怪しい噂を語ったのは、神薙家の一員同然である少女オリヴィア。鼻息荒く変に嬉しそうに興奮する姿に若干仁は引いていた。
「ちなみにこの後、ある日三人が仲良く揃って帰る途中部活の疲れからか、不幸にも黒塗りの高級車にもがっ」
「その先はやめろください」
仁の脳裏に浮かびそうになった展開は、脳内ゴッドインパクトで粉砕しつつ、オリヴィアの口を手で塞ぐ。
オリヴィア本人は分かってるのか分かってないのか、なんで噂を最後まで語らせないのか不思議そうにしていた。
「そもそも一日だけでなんなんだその噂。いったいどこで聞いたんだ」
「松田先輩と元浜先輩が流して、桐生先輩が面白おかしく脚色してたよ?」
「お前傍にいたなら止めろよ?」
えー、どうしよっかなーみたいな表情でどこ吹く風なオリヴィア。カチンときた仁が首根っこを捕まえようと手を伸ばすも、オリヴィアは転げ落ちるようにソファーから降りて逃げていく。彼女はそのまま部室の一角に積まれた金の箱の山を手当たり次第に空けだした。
これらは刀剣マニアを筆頭に解放した奴隷達がくれたお礼の品である。余りにも多いのでリアスらが魔法陣でホイホイ部室送りにしたらうずたかく積まれてしまったのだ。お留守番するオリヴィアのことを考えなかったので昨夜彼女は箱の海に溺れていたりするのは余談である。
箱から出て来るのは銅貨、銀貨、金貨、チェリー、オレンジ、バナナ、イチゴ、髑髏のカードにセクシーなブロマイド、たまに武術が記された巻物。
最初はともかく、ドルマークを宿していたオリヴィアの目が死んでいく。
こんなに若くして金目の持つ魅力に溺れていた少女。
仁は彼女の将来に不安を覚える。
「……入ってる物の内容はともかく、幻の町に囚われてた人達お礼の品持ちすぎじゃない?」
「あのチンピラ悪魔共は手荷物検査とかした方が良かったろうな。人攫いすれば金持ちになれそうだ」
「でもフルーツ率高すぎよぉ……。まあ、何はともあれお金がジャラジャラいっぱい。ふへへ、これでちょっと裏カジノに……」
「お前ギャンブルにまでハマりだしたのか!? 見ず知らずの天国にいるオリヴィアのご両親に顔向けできねぇ。どこで教育間違えた? ともかく今度家族会議しねぇとダメだこれ」
「待たせたわね、今日も元気に悪魔稼業に励むわよ。ってどうしたの?」
部室にようやく帰ってきた本来の主は、眉間を押さえ唸る仁、こっそり金貨ばっかりくすねようとしていたオリヴィアを見て首を傾げていた。
一緒にいた朱乃はあらあらと微笑むばかり。
というかオリヴィアを捕まえて可愛がり。
何が彼女の琴線に触れたのか、そっちの方が一番の謎かも知れない。くすねた金貨もしっかりと取り返してた所はやはり副部長、しっかり者である。
続けて木場、小猫と部室に入り、一人を除いて部活動の準備が整う。
「今日の活動にイッセーは来ないわ。一番傷を負っていたし、帰宅させて療養してもらうことにしたわ」
思い出されるのは包帯だらけの新入部員。
大事をとってのことだ。彼の為にリアスは私費を出してフェニックスの涙を取り寄せようとしてるとのこと。
まだ始まりだしたばかりの主と下僕の関係でも、グレモリー特有の愛が感じられる。
そんな兵藤一誠、現在とあるシスターとお近付きになっている、そして不幸な事故が起きた事を皆はまだ知らない。
「駒王町に潜む堕天使の集団。早く排除して通常営業に戻りたい所なのだけれど、緊急で片付けなくてはならないことが出来たわ。町の外から次々にはぐれエクソシストが集結してるの。これらが堕天使と合流する前に殲滅するわよ」
◆◆◆
はぐれと言えば、下僕悪魔が力に溺れて主を殺め逃げ出したお尋ね者達を思い浮かべやすいが、何もはぐれとはそれだけのことではない。
例えば、悪魔の魔力を解析し人間の業として生みだす魔導の探求者達、魔法使いはそれぞれの居場所たる協会に所属しているが、どの協会にも属さず破壊活動に愉悦を見出したはぐれ魔法使いがいる。
教会ならばどうだろうか。
天使や聖書の神の祝福を受ける者達。彼等も何らかの理由や思惑、欲望で定めた道を外れる輩がいるのだ。
かつての信仰心溢れる姿はなく、冒涜こそを是とする。
特に悪魔を祓う使命を帯びた存在、エクソシスト。
はぐれと化した彼らがよくある主張はとにかく悪魔を屠りたかったから。
祓うことが快楽に成り代わり、欲求を満たせるならなんでもしでかすだろう。邪魔をするなら味方さえ手にかけれる。中には悪魔と関連するならば見境のない殺戮を生みだす、エクソシストの矜持は明後日の空にぶん投げたような破綻者もいる。
『教会』ははぐれエクソシストを多く、しかも頭のイカレ具合なら粒揃いを多く擁している。
にもかかわらず、未だ世界各地よりはぐれエクソシストを招こうとしていた。
フリード・セルゼンもその一人だ。
彼が『教会』に与すると決めたのは、もちろん悪魔をぶっ殺せる為。後、夜のオカズのために雇い主の面を拝むという下品な理由も隠してたり。
彼は現在、頗る不機嫌であった。ついでに顔は青く、大量の冷や汗が顔中を伝っていく。微妙に泣いてさえもいるが、問い質そうとすればゴミが目に入ったの一点張りするだけだろう。
不機嫌の理由は、悪魔と契約する薄汚い人間共を玩具にすべく散歩していたときのこと。
よりによって『教会』に所属する元聖女様が手負いの悪魔とイチャイチャしていたのを見てしまったからだ。しかしそれだけで普段の軽薄さが吹き飛ぶほどの状態にならない。問題はそのあと。
『そんなに仲良くしたいなら一緒に地獄に送ってやるぜクソビッチよぉ! でも折角だから死なす前に一発やっとくネ!』
と、フリードなりの善意100%で懐から抜き放った光剣を構えルパンダイブ、本来ならそのままサクッと殺害するはずだった。
なのに悲しいかな、結果は内股で股間を抑えながら逃げ出している。
「いたい、いたいよぉ。うぅ、あのクソザコ悪魔、神滅具なんてチート使いやがってぇ……。しかもこの俺様のゴールデンボールにあんな恐ろしいことしやがってぇ……」
フリードの脳裏に思い出されるのは、悪魔の意図しなかったろう赤い拳が、股間を穿つ瞬間。
『イィッタイ、ゴォォォルデンボォォォルガー!!』
『うわ、悪い! そこを攻撃するつもりはなかったんだ!! 大丈夫か!?』
人の苦悶する様を見て謝る姿はフリードの堪忍袋を爆裂させるのに充分だ。どうせ心の内でガッツポーズを決めてるに違いないと彼は悪魔に憎しみを募らせた。
実際はフリードを通り魔的な暴漢と勘違いした手負いの悪魔、兵藤一誠が少女を守るべく返り討ちにしようとしただけである。足下の小石に躓きもつれ込み、偶々振り上がった赤龍帝の裏拳がフリードの股間を強打しただけのことだった。
ぶっちゃけ、不幸な事故だしそもそもフリードがエクソシストとかも知る由もない。
しかし実際に苦しむ彼からすればそんなことはどうでも良い。急所を戸惑いなく殴り付けてあまつさえ救急車を呼ぼうとかまさに許されざる悪行。悪魔は血も涙もない畜生以下、やはり皆殺しにせねばと強く決意を固める。
「ぐぎぃぃ、この胸のモヤモヤをぉ、どうやって晴らしてくれようかんん。花火にでもして空高く打ち上げてやらないとボクチン耐えられないよぉ……。あ、そうだ本当に花火打ち上げようそうしよう。あらやだ、フリードくん天才っ! …………うわあいたたた、はしゃいだらまた痛みがぁぁ」
「ママー、あのお兄さんなんで苦しんでるのー?」
「んー、なんでだろうねー? そうそう、今日の晩御飯、おかずはハンバーグよ」
「ハンバーグぼく大好き!」
親子連れに指を差されるフリードは無償にハンバーグが食べたいなと思いつつ、駒王町の闇に紛れていく。
彼はまだ知らない。
この駒王町に来てしまったばっかりにとびっきりの受難に見舞われることを。
具体的にどんな受難かというと性別が変わってしまうレベルの。
折角だからフリードをメチャクチャにしようぜ!
ソリッドブックみたいに!ソリッドブックみたいに!
前書き通り、5話分まで溜めたものを全部まるまる書き直し中です。
次話の更新は未定となっております。
完成までどれだけ時間がかかるか分かりませんが、さっそく失踪してるわけじゃないので安心してください。
フリードは設定がかなりゴッドハンド色に染まります。強くなるかどうかは分かりませんが。