ハイスクール右手は×ゴッドハンド   作:S4nobu

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 お久し振りです。

 こっそり投稿、13話目になります。




あの子の神器は聖母の微笑4

 

 

「よかった、ここに居たのねジン。探す手間が省けたわ」

 

 学校の昼休みが終わろうというころ、オリヴィアと共に教室へ帰ろうとしていた仁の足を聞き慣れた声が止めた。思い思いに教室へ戻る生徒達が、一種の羨望と嫉妬を持って見ていることに仁は気付き、その人気振りを改めて実感する。

 陽光浴びてその艶を示す真紅の髪を優雅に靡かせ、たわわな果実ふたつをたゆんと揺らすオカルト研究部部長リアス・グレモリーは生徒の波を割り歩いて行くと、その手に持っていた小さな包みを仁に渡した。仁の手には包み越しに小さな瓶が入っている感触が伝わってくる。

 

「これ、イッセーの為に使おうと思っていたのだけど、いろいろあって必要が無くなってしまったの。これから予定してる大仕事があるから、人間の貴方にこそ必要と思ってね」

 

 仁の耳元でひそひそと話し掛ける姿は他の生徒達から黄色い悲鳴と怨嗟の呻きをあげさせる。

 どうしてそうなるのか無自覚なリアスは当然気付かず、仁はといえば「あ、先輩からいい匂いがふわぁってきた。ふわぁって」とかリアスに見えない角度でちょっとにやけていた。オリヴィアはそんないやらしい仁の顔を見て引いている。

 ともかく、渡すだけ渡してリアスは授業に遅れるからと退散した。取り残された仁は回りを見てようやく嫉妬から来る呪詛に気付き、オリヴィアを連れて逃走開始。この仁とリアスのやりとりを偶然見てしまっていた駒王学園の三馬鹿が一、元浜の手によって怒りの噂流布「神薙仁は尻マニア」というレッテルが増えるのであった。

 

「何をもらったの?」

「ん、これ、フェニックスの涙だな……。さすが悪魔の貴族。こういう高級品を手にする日が来るとか思ってもみなかったぜ」

「……売ったらいくらになるかなぁ」

「お前賭け事とかのためにこれ売ろうとか考えるなよ?」

 

 

◆◆◆

 

 

 フェニックスの涙。

 それを使えば、傷という傷をたちどころに癒すアイテムである。

 本来ならば、幻の町で対峙したエルヴィスなる悪魔との戦いで、一誠が負った傷を癒す為に用意されたものだ。

 

 その一誠、なんと一夜にして一切の怪我の痕跡無く学校に登校してきた。

 リアスが一誠のご両親に後ろめたさを感じながら嘘の言い訳をしたというのに、突然の完治にはちょっとだけ彼女の頬を膨らませることになった。何はともあれ、一誠の痛ましい怪我が癒えていたことは喜ばしいことである。ばれてないと思ったか、彼女の口角が僅かに吊り上がっていたことは部員全員の秘密だ。

 

 いったい一誠の身に何があったのかと言えば、それは幻の町から続く縁で彼の友達となったある人物のおかげである。

 

 アーシア・アルジェント。

 

 かつて聖女と崇められ、今は魔女と叫ばれる、しかし信仰心を無くさない敬虔な少女。

 彼女は生まれながら癒やしの力を持っていた。

 聖母の微笑。

 そう呼ばれる神器が、彼女宿っているからである。

 かつて聖女と崇められたのは、その力を振るい、多くの人々を癒してきたからだ。

 今は魔女と叫ばれるのは、その力が悪魔さえも癒してしまったからだ。

 

 二つの呼び名は人々の勝手な都合だ。心優しい彼女は挫けなかったが、寂しさと悲しみを与えるだけ与えて迫害、放逐したのだから、当時属していた教会の身勝手さに仁は呆れてものが言えなかった。

 

「それでも私は確かにしあわせでしたから」

 

 そう笑う少女の微笑みは、確かに聖女と呼ばれそうな清らかさのある可憐なものだった。

 

 

 

 

 仁とオリヴィア。

 学校からの帰宅途中「フェニックスの涙の件で兵藤先輩をねちねち口撃しようぜ!」なんてひどい企てをした二人は、帰路につくのではなく一誠の後を付けていったら、アーシアと仲良く遊ぶ一誠に遭遇した。

 当初の目的通り「部長の親切心を無碍にしたー。いけないんだー」と指を指しつつ、二人はアーシアとも仲良くなっていた。

 

「これが、フェニックスの涙」

 

 初めて見たものに、ぱぁぁ、と花が咲くような笑顔を浮かべるアーシアの姿は見るものを和ませる。フェニックスの涙を見てはぁはぁ息を荒げなから目を$マークにするオリヴィアとは天と地ほど違う。

 一応オリヴィアの名誉のために言うが、彼女は黙ってれば美少女である。ほんのちょっとだけ残念なだけなのだ。

 

 そんなことはともかく、一誠、アーシア、仁、オリヴィアは、結局みんなで遊び呆けることになった。

 その結果、夕方まで娯楽施設を練り歩き、公園のベンチで休んでいる。仁がアーシアにフェニックスの涙を見せたのは、やっぱりねちねち口撃するためだ。

 …………その口撃も、目を輝かせたアーシアを見て毒気が抜かれた仁とオリヴィアは大人しく口をつぐむことにしたが。

 一誠の傷が癒えたのは、アーシアの善意、お礼であったから、言えるはずがなかった。むしろ先輩を治してくれたので感謝の言葉が滑る滑る。

 アーシアの事情をついさっき知った二人の心からのお礼。照れるアーシアの姿に三人はほっこり。

 

 そんな楽しい一時も、彼女の現在の身の置き場所を聞けば影が差す。

 

「……なぁジン。俺の記憶違いじゃなけりゃ、アーシアのいる教会って堕天使が根城にしてるんじゃ」

「たぶんその『教会』っす。このままじゃ、俺達悪もんっすね」

 

 アーシアが身を寄せているところ。それは駒王町の治安を乱している堕天使レイナーレが率いる『教会』だった。

 レイナーレの優しさを説いているアーシアには悪いが、一誠からすれば一度命を奪った相手だ。顔には出さずとも気分は良くないだろう。

 それとなく『教会』から離して保護してしまおうかとか仁は考えるが、追放されてもスタンスは悪魔とは反対の祈りを捧げる信徒。リアスが縦に首を振ってくれそうにないのが容易に見える。一誠もオリヴィアも似たようなことを考えたのか、少しだけ表情が硬かった。

 

 しかしこのままでは悪魔と堕天使の争いに彼女を巻き込みかねない。どうしたものか、三人が首を傾げそうになるその時だった。

 

「帰りが遅いと思ったらこんな所にいたかアーシア・アルジェント」

 

 子供のような、ちょっと裏声染みた高い声。

 声に釣られて顔を上げた四人が見たのは、昨今その数を減らしてきているジャングルジム。五人の人影が、夕日をバックに見下ろしていた。

 隠そうともしない気配は、人ならざるもの。

 どちらかと言えば、一誠達悪魔のものだが、何かが違う気配だった。

 反射的に一誠と仁がアーシアを守るように立ち上がり、オリヴィアが小柄な身体で抱きしめて守ろうとする。

 

「あ、あの貴方達はいったい?」

 

 向こうはアーシアを知っている様子だが、彼女自身はどうやら初対面らしい。

 飛び上がる五人の影。

 纏っていた漆黒の外套を置き去りにし、四人の前に降り立つ。

 遠目ではわからなかったが、彼らは子供と変わらない背丈の存在だったようで、小猫よりも低いかも知れない小ささにオカ研の面々は目を見開く。

 しかしそれよりもやはり目を引くのはその出で立ちだろう。

 赤、青、緑、黄、桃。

 主に日曜日の朝に放映されるスーパー戦隊を彷彿とさせるスーツを纏っていたのだ。

 

「アーシア・アルジェント。雇い主の命により迎えにきたぞ!」

「だがこれはどういう事だ? 何故悪魔と共にいる?」

「しかもこいつは確かグレモリーの眷属じゃないか」

「まさか裏切ったというのか?」

「なんて奴だ。また己が立場を弁えず悪魔と通じるのか?」

 

 紡がれる言葉は、アーシアの心を傷つける一方で彼女はえっ?と混乱した。

 

「イッセーさん、悪魔、なんですか?」

「アーシア、黙っててごめん」

 

 目が泳ぐ一誠。どうやら何者であるかまでは告げていなかったのだと仁とオリヴィアは察する。

 と、仁は妙な熱視線を感じて戦隊コスプレ軍団に向き直った。

 

「なるほど、それがゴッドハンドだなぁ? 今の我々は雇われの身、だがここでゴッドハンドを奪うのも一興か」

 

 怪しい様子を見せる戦隊コスプレ軍団に激突は免れないと仁は察する。

 

「いったい何者なんだお前らは!」

 

 一誠が神滅具を顕現させながら叫ぶと、よくぞ聞いてくれましたとばかりに十の瞳が不気味に輝く。

 あ、これ面倒くさい奴や、と一誠が地雷を踏んだことに勘付くも時既に遅し、戦隊コスプレ軍団は高らかに名乗りを上げる。

 

「チョイ悪のジョーカー!」

 

「1Dayコンタクトのダイヤ!」

 

「ゴールド免許のクローバー!」

 

「風呂無しのスペード!」

 

「痛風のハート!」

 

「我ら、五人揃って!!」

 

「「「「「ミニミニファイブ!!」」」」」

 

 ドバーン、と音が聞こえそうな輝く虹のV。

 夕日を浴びながら、ミニミニファイブなる小人達がその場で寝転び、股を見せ付けるように広げ描いたVの字であった。

 あまりにもあんまりな衝撃に固まる四人。

 暫くの沈黙、空を飛ぶ烏の鳴き声が空しくこだまする。

 何か言いたいことはいろいろ、それはもうたくさんあるのだが、口にしないで秘めた方が良いのかなと、いや絶句するしかなかった。例えばさっきからぷるぷるしてる痛風のハートは病院行ってこいとか。お前実はリーダーなりたいんだろ?とそわそわしてる風呂無しのスペードとか。

 

 ただ、沈黙を破るように、ポツリとオリヴィアが口を開く。これだけは絶対に言わなくてはならないと、万感の想いを込めて。

 

 

「カッコ悪……」

 

 

 本来ならタブーなのかも知れないが、まあ、こいつら相手なら別に良いんじゃない?と。

 

「カッコ悪い、ですか? 私にはちょっと可愛く見えます」

「え!? マジで!? あんなのが!?」

「アーシア、こういう時は、あんまり可愛いって褒め言葉に聞こえないんだぞ?」

 

 アーシアの言葉に反応してしまった仁と一誠。

 いつの間にか立ち上がっていたリーダー格の赤、ジョーカーが漫画的なでかい鼻水を垂らして号泣し出す。

 

「ぶわぁぁ~~!! クールでスタイリッシュに決めたはずが、可愛いとかぜんぜん違う評価しかもらえんかったぁ~~っ!!」

「ジョーカーが泣かされたぞ! ざまぁ!」

「おのれアーシア・アルジェント! 無傷で連れ帰れとは言われたが、これは仕置きせねばなるまい!」

「じゃああれだ! おパンティー! おパンティーください!」

「お前いきなり何を言ってるんだダイヤ!?」

 

 

「これマジメに戦わないとダメ?」

「ダメだと思うな。あ、逃げたらダメだからなジン」

 

 アーシアとゴッドハンドを巡る戦いがぐだぐだと火蓋が切られたのだった。

 

 






 そんなわけで、ミニミニファイブが突然の登場。
 こいつらとの戦闘BGMけっこう好きです。

 次話の投稿はまただいぶ時間を置くことになります。
 申し訳ありません。

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