ハイスクール右手は×ゴッドハンド   作:S4nobu

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俺の左手はロンギヌス5

 

 

「水色おぱんつ、最後にいい物が見れたぜ……、がくっ」

「最後まで最低でした……」

 

 蜘蛛の巣状にひび割れた壁。多量の鼻血を出しながら満足そうな表情を浮かべた男がずるずると崩れ落ちる。

 スカートの中身が見えるのも構わず白い足が伸ばされたが故の結果だ。ゆっくりと足を下ろしてく少女、小猫は周りを見渡してまだ敵が居ないか確認する。

 彼女の回りには、十七人の悪魔が倒れていた。誰も彼も幸せそうな微笑みを浮かべて気を失ってるのは、可愛らしい少女に倒されたのがご褒美だとでも思っているのか。

 

「此処の悪魔は変態しか居ないのでしょうか」

 

 困ったような呟きを否定してくれる者は誰一人としていなかった。

 小猫は奴隷小屋と呼ばれた建物の最奥にて女性五人を保護する。彼女から見て性的な暴行を受けた様子は無いが、多少の衰弱が見られる。悪霊掘りがよほどの激務なのか。

 譫言のように「クイズは嫌」「オカマ怖い」とか言うのは何があったか小猫は聞かないことにした。

 

 扉を開けて外に出ればそこは小屋よりも酷い、死屍累々。

 男達がビクンビクン痙攣しながら煙を上げて倒れている。呻き声を上げている辺り誰一人として死んではいないようだった。犯人の副部長なら消し炭にしそうなものだが、肉体の消滅に伴い顕現する悪霊の警戒があったのかもしれない。あったと小猫は信じたい。

 でもいつもよりスッキリ微笑む朱乃の顔を見た小猫は信じるのをあっさりやめた。

 

「お帰り小猫。その人達で最後ね?」

「はい、後は小屋の中身は全部敵だけです」

 

 出迎えたリアスは小猫を撫でてねぎらうと女性達に簡単な暗示をかけつつ、幻の町からの脱出を促した。

 後日トラウマが残るようなら奴隷扱いされた人達は記憶を封じられることになるだろう。非日常の記憶に向き合えず苦しむくらいなら、という裏の者達のケアである。もちろん知って尚も操作する必要なく、自ら墓場まで秘してくれる事の方が一番後腐れないのだが。

 

「これでこの町にいる奴隷は恐らく全部ね。さっき屋敷の方からも解放された人達が逃げ出して来るのを朱乃が確認したわ」

「それじゃあ後は」

「ええ、この倒れてるのと小屋の男達を冥界に強制送還したら私達も急いで屋敷に向かうわよ」

 

 朱乃と共に大きな魔法陣を形成するリアス。

 倒れる男達は彼女達よりも恐ろしい悪魔達にアレコレされる事になるのだ。悪いことは悪魔だってしてはいけないのである。

 

 と、その時だった。

 地面から何かが響く重苦しい音と共にある方向から一本の赤い柱が立ち上ったのは。

 柱の正体は最近眷属になった少年、兵藤一誠の魔力だと直ぐさま察知する。

 しかし、あの一誠があそこまでの大きな魔力を持っていただろうか。彼は悪魔になってまだ日が浅く、いずれ伸びる余地があっても本人の魔力総量は少ない筈。神器を使ってもあそこまでにはならないはずなのだ。

 

「急ぎましょうリアス」

 

 朱乃に促されたリアスは手早く悪魔達を冥界送りにすると、二人を伴って屋敷に急ぐのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

 時は少し遡る。

 

 屋敷攻略チームが最後に訪れた部屋。

 そこには案の定、屋敷どころか駒王町の一角を勝手に占拠していた悪魔が出迎えた。

 巨大自画像を背負ってるような大きな椅子に座る悪魔、エルヴィス。

 彼が葉巻を旨そうに吸う度、腕を通る金の輪が擦れ音を鳴らす。

 

「まさかお前らのようなヒョロっこい小僧共が侵入者じゃとはな」

「侵入者、それはこっちのセリフだぜおっさん!」

「ここがグレモリーの領土と知りながらの狼藉かい? 大人しく出るとこに出て貰うよ」

「がはは、問答無用か。分かりやすくてわしは好きだぞ、その思い切りは。ふんっ!」

 

 両手で吹き飛ばされるデスク。悪魔エルヴィスが立ち上がる。

 体格の大きさは同じ悪魔なのか、それとも人からの転生ではない純血の悪魔だからなのか。金と銀より大きいにしても程度があるんじゃないのかと、転生悪魔歴一ヶ月未満の一誠は気圧される。ついでに腹も大きい。ノースリーブ型の白いスーツがはち切れそうになってる。ネックレスの代わりなのか、何故か数珠を首にかけていた。

 煙を吐き、葉巻を落とすエルヴィス。

 火を足で踏み消す仕草に三人は構えるも、巨漢は「あ~~やってしまった……」なんて言いながら慌てて葉巻を拾い上げだした。

 余裕の表れ、ではなくそういう気質の男らしい。

 

「おっさんデカい図体の割にシケてんな」

「小僧、わしはさっき言った通り腹が空きそう……てか、小腹が空いておる。言葉に気を付けるんじゃな」

「ちっとは腹じゃなくて髪の毛にも栄養回したらどうなんだ?」

 

 仁の挑発的な言葉を受けたエルヴィスは豪快に嗤うだけだ。咥え直した葉巻がひとりでに火がつく。

 

 ちなみにいつも仁の右腕できらりと輝く拘束具の名前はゴッドハンド・ギプスという。これを外すとゴッドハンドのパワーを解放できるぞ。すごい。

 

「口だけは一人前のようだが、その右腕はどうじゃろうな? 折角のいい機会じゃ、このわし自ら貴様ら現在の悪魔共がどの程度やれるのか見定めてやろう。期待に応えられぬようなら死ぬことになるがな!」

 

 振られる両腕、片足をあげて構えるエルヴィスの姿は微妙にふらついているが、その実金と銀の比較にならない巨大な魔力が部屋を満たしていく。いつの間にか張られたのか、結界の存在に祐斗は驚き、部長達の援軍を呼び込めない事に内心舌を打った。

 エルヴィスの私室は、三人を逃さぬ檻となったのだ。脱するには目の前の男を倒すしかないと、仁と一誠も理解する。

 しかしそれがなんだと言うんだ。彼ら三人は初めからエルヴィスを倒しに来ている。むしろ望むところだろう。

 

「へっ! 別におっさんに期待されてもこっちはぜんぜん燃えねぇんだよ!」

 

 倍加を果たした一誠が啖呵を切ると、いの一番に飛びかかった。続くように仁が、その二人を追い抜くように祐斗がエルヴィスの背後に一瞬にして回り込む。

 

「ははは! 挟み撃ちか! 騎士の駒も、中々速いのう」

 

 一斉に振られる拳と斬撃。全てが空振り、三人はいつの間に巨漢が居なくなったこと、遥か頭上より声が聞こえることに目を見開いた。

 顔を上げた仁が見たのはシャンデリアよりも高く飛び上がっていたエルヴィスの姿。

 そのまま隕石の如く、いろんな法則を無視した速度落下する。

 

「がっ!?」

 

 爆弾の炸裂に巻き込まれたように吹き飛ぶ三人。

 受け身をとった仁はさらに視界がぐるりと左に向く。

 禍々しい魔力の炎を纏った正拳突きが仁の顔を殴り付けていた。ゴッドハンドの恩恵で頑丈になってなければ首が吹き飛んでいただろう。

 それでも倒れまいと踏ん張れるのは、それほどの痛みさえ既に受けなれてしまったからこその根性。

 

 エルヴィスは、ほうと感嘆し、背後に向けて葉巻の煙を吹き出す。魔力を伴い増幅された煙は即席の煙幕に変わる。諸に受けたのは祐斗だ。何も見えない灰色の世界。大振りに振られた腕の一撃が来ていることに気付かず、衝突事故にあったような勢いで壁に激突する。追撃しようとしたエルヴィスだが、あと一歩というところでその足を止める。

 エルヴィスが立とうとした場所から生える魔剣。予兆を掴み辛い足元の魔剣創造を勘と経験だけで回避してみせた。

 

「くっそ! 木場から離れろ!!」

 

 一誠は部屋の隅にあった壺を持ち上げるとエルヴィスに向かってぶん投げた。エルヴィスは避けもせず受けるがびくともしない。

 

「あの攻撃で一番近くに居たのによく頑張るのう。大した小僧だわい」

 

 エルヴィスの目算では一番弱い筈の存在が気合いで立ち上がるのだ。一誠の目の奥に宿る不屈の炎を見抜いたエルヴィスはそういう手合いは早めに潰すに限ると知っている。俗に言う鶴の構えを再びとったかと思えば、全身に炎を纏い、床を蹴りだした。

 頭から突っ込む形になるエルヴィスはまさに一発の砲弾。

 部屋の端から端まで往復すれば、まとめて跳ね飛ばされた一誠、祐斗、仁が床に叩きつけられる。

 

「ぐ、は、げほっごほっ……」

 

 吐血。

 床にぶちまけられる血以外に一誠の視界が上から赤く染まる。額か頭か、どこか裂けてしまったのか。いつの間に血溜まりに沈んでいた身体を起こした一誠が見たのは、祐斗の雷纏う魔剣を素手で握り止めるエルヴィスの姿。ミシミシと音を立て、そのまま潰すように折ってしまう。得物を無くした祐斗は、技と身体の力を抜いてアッパーを避けた。

 しかし祐斗ができるのはそれだけで、そのまま身体足で踏み付けられる。今度は、祐斗自身が魔剣と同じ目に遭わされてしまうのか、見たことないくらい顔を歪ませて声にならない悲鳴を上げていた。

 

「離れろおっさん……!」

「ぐおっ!?」

 

 拘束具を外した仁が右腕を突き出す形で突撃する。

 突進ならぬ突神はエルヴィスの腹を強かに打ち付けて吹き飛ばす。続け様に仁は戻ってきた拘束具を吹き飛ばすように外すとエルヴィスに殴りかかっていく。金と銀の時に見せたゴッドハンド解放の勢いを乗せてエルヴィスを殴り続けるが、一誠から見てもその時間は酷く短かった。散々殴られていたエルヴィスは着いていた膝を立ち上がらせるとまだまだピンピンしているのが分かる。倒すにはまるで遠いダメージ。

 

「ダメだ、時間が……」

「ゴッドハンドの力は本物。じゃがわしの門番にちと力を使いすぎたな? はぁっ!!」

「うがっ!?」

 

 拘束具が仁の意思を無視して右腕を縛り付ける。ゴッドハンドの力が封じられてしまった。

 ゴッドハンドの力が乗らないストレートが、エルヴィスの太い右腕に阻まれ逆に殴り返す。今度こそ倒れる仁。受け身を取れない代わりに足をカポエラのように振り回してエルヴィスの続け様の攻撃を弾くが、苦しい展開なのだろう。顔には焦りが見てとれる。

 

「ちょ、ちょっとだけ時間くれない? 次の解放で倒してやるからさ」

「お前主人公じゃろ、これくらいの窮地なんとかせんかい」

「じ、ジン、お前って奴は……」

 

 引きつる笑顔でタンマとか言い出す後輩に思わずツッコみそうになった一誠は悪くない。

 しかし、状況は依然として悪い。

 戦線復帰した祐斗は、執拗に攻撃を仕掛けられる仁をフォローする立ち回りに変わった。隙あらば刃を突き立てたいところだろうが、騎士の速さに対応してくるエルヴィスに隙は無い。

 仁は只管回避のほうに専念していた。仁の左腕にある龍の手が右腕の回復を倍加で加速させているが、エルヴィスの猛攻をいつまでも避けていられるものなのか。

 仁より洗練された拳法を持って迫るエルヴィスの一撃を受ければ彼は死んでしまうかも知れない。

 状況を覆すための一手は、仁も祐斗も無かった。

 

 ならばと、死に体に活を入れて一誠は立ち上がる。

 このまま倒れていられない。自身の回復だって待ってられない。

 力が、力が欲しい。今すぐに。

 龍の手という力だけでは物足りない。

 仲間を守りたい、もっともっと巨大な力。

 龍の手を顕現したときリアスは言っていた。神器は想いによって強くなるのだと。

 いつもより早く、倍加の声が聞こえる。

 

「倍になるだけじゃダメだ……。さらに、さらに倍になれよ……」

 

 一誠は渇望する。

 二倍がなんだ。だったらさらに倍になってみせろよ。

 龍なんて大層な名前が付いてるなら、応えてみせろよ。

 

『Boost!』

 

 それは本来無い筈の二度目の声。

 聞こえたことに彼はなんにも疑問を持たない。

 

「そうだ……! それでいい……! だがまだ足りねえ! もっとだ! もっと!!」

 

「ぬ!?」

 

 最初に異変に気付いたのはエルヴィスだった。

 ばっと首を向けた先にいるのは、今にも死にそうな一誠の姿。仁と祐斗に劣らない血化粧で染まった少年が、存在が大きくなった。

 瞳は濁り、微かな光しか灯ってないが、それでも真っ直ぐエルヴィスをにらみつけている。

 ぶつぶつと呟く声は、やがて意味ある言葉へと部屋に響く。

 

「今は、これでいい!!」

 

『explosion!!』

 

「その声は、まさか!?」

 

 掲げる左手。それは肘までを包む大きな籠手へと変わり果てる。

 苦しそうに歯を食いしばるのは、一誠自身その力に耐えうる器ではないからだろう。

 

「なんだありゃ、兵藤先輩、龍の手じゃなかったのか?」

「まるで別人のようだ……」

 

 惚ける仁と祐斗。

 隙だらけの彼等を余所にエルヴィスは一誠に向かっていく。

 

「がはは! 信じられんな!! お前のような小僧がまさか 神滅具(ロンギヌス) 赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の持ち主だとはなぁ!」

 

 掴み掛かるエルヴィスの両腕を一誠は迎え撃つように押さえ込む。互いにド付き合う形になる頭。星でも出たんじゃないかと、身体の芯を衝撃が走るが一誠は折れない。めり込んだ足が、がりがりと床のタイルを捲るように壊して押し込まれるが、それは僅かな距離。

 有り得ないはずなのにエルヴィスの怪力を真っ向から留めてみせていた。押し返すとまではいかないが、それでも一誠は確実に拮抗してみせている。

 

「くら、え!」

 

 そのまま一誠が頭突きをお返しとばかりに打ち込む。

 自分の頭蓋が砕けそうなものなのに。

 

「ぬごぉぉ!?」

「いっ……てぇぇぇ!? おっさん石頭過ぎるだろ!!」

 

 鐘でも叩いたのかと耳に残りそうな音をあげた頭突きは、互いに悶絶し痛み分けてみせる。遙かに強大な悪魔相手にあの一誠がだ。

 

「だけど、これで!!」

 

 急激に霧散し始める一誠の力。それを拙い操作で出来るだけ左手に集めた一誠は、痛みに屈むエルヴィスの顔目掛けて掬い上げるように拳を繰り出した。

 それは天を貫く赤い光となり結界をぶち破る。

 細く、煌々とした赤が儚く途切れていく、しかし夜闇を照らしてみせた力強さが確かにあったのだ。

 それでも結界全てが解れ砕けないのは、それだけ高度な結界だからだろう。ただそのおかげか、エルヴィスは部屋中を縦横無尽にバウンドする羽目になった。

 思わぬ痛手、さらに戦闘を支配していた強者の晒す隙を残る二人が逃がすわけがない。

 

「ここだ!」

「ぎゃぁぁ!! 剣、剣が刺さっとるぅ!!」

 

 タイミングを見て突き立てられた魔剣。

 振り絞るように、宿せるだけ宿した属性の魔剣が突き破るように壁から生え、エルヴィスの背に刺さって折れていく。腕の長さ的に届かないのか何本か抜けないようだ。

 力を出し尽くして両手を付いた一誠は痛そうだと目を瞑る。

 

「一発、一発だけだから!」

「待て待て、ちょっと背中のこれだけ抜いてからにして! よりによって光属性って、焼けて痛いんじゃ!」

「問答無用! 食らいやがれぇ!」

 

 ゴッドハンドのパワーを足に向けた仁が飛び上がる。

 宙で横倒しのような姿勢になる仁は、まるでドロップキックのよう。しかし一発だけと言いながら、神の炎を宿した足で何度も蹴り付けていくのは如何なものか。

 

「一発じゃないじゃないかぁぁ!!」

 

 龍穿脚なる技、最後の一撃で巨漢を蹴り飛ばす仁。

 何やら着地時にポーズでも決めたかったようだが、ダメージが大きすぎるのか、そのまま床にべしゃっと落ちていった。

 

「はぁ、はぁ、どうだオラ。これだやっただろ……」

 

 荒くなる息、仁が口元を拭えば袖にべったりと赤が付く。彼からすれば久し振りに見た己の血。自身もまだまだだなと彼は反省する。

 

「ふう、全く、ひよっこかと思えば、なかなかどうしてやりおる」

「な、に」

 

 ようやく身体を起こせた祐斗は、強烈な蹴りを食らっても尚も立ち上がるエルヴィスの姿を見てしまった。

 ふん、と力が込められ、背中の剣が抜け落ちていく。背中の傷は、見当たらない。

 

「どうやらこのわしを本気にさせてしまったようだな小僧共!」

 

 エルヴィスの全身が燃え上がる。

 それはこの悪魔には余力があるということ。

 さらにエルヴィスの魔力が高まる事に三人は顔が青ざめる。これ以上、自身達の手に負えなかった。

 仁は、もう左手で緊急のパワー回復は出来ない。

 祐斗は、さっきの魔剣創造で力を振り絞りきった。

 一誠は、覚醒したばかりの力が抜けた反動で動けない。

 

 絶対絶命。このままでは殺される。

 それぞれが息を飲んだ、その時だった。

 

「エルヴィス、変し……!?」

 

 すとーん、という言葉がよく似合う勢いでエルヴィスの頭身が一気に低くなる。まさかこれがエルヴィスという悪魔の本気なのか。

 否、エルヴィスのいる床が抜け落ち、彼の巨体がそこにハマってしまったのだ。

 

 荒れ果てた部屋が痛いほどの沈黙に包まれる。

 

「く、くぬっ、くそ、なんじゃこれ、嘘じゃろ!? まさかここの結界だけが脆くなってたのか!? んん~~ッ!! ハマって、抜けんッ!!」

 

 ジタバタと暴れるエルヴィス。必死に身体を浮かそうとするも出られそうにない。思わず顔を見合わせる三人。

 

「おい、そこの! ゴッドハンド、お前主人公じゃろ!!」

「あ、俺?」

「正々堂々助けんかい! ほらはやく、はやく!!」

 

 エルヴィスの懇願に自身を指差してた仁は、ニヤリと一気に悪い笑みを浮かべた。

 一誠と祐斗は、仁がこれから何をするか分かってしまったのか「うわぁ」と言いたげななんとも表現し難い表情を浮かべる。

 エルヴィスに言われるまま近付いた仁は、悪魔の手を取ることなく片足を大きく振り上げていた。

 踵には心なしかゴッドハンドの力が集まっているように見えるのは、気のせいでもないし見間違いでもない。

 

「お、おい小僧なにやっとるんじゃ!?」

「なにって正々堂々助けようとしてるんだよ。こいつはツケだぜおっさん」

「待て待て待て待て助けるならここから引き抜いてって!! エルヴィスの本気そしたら出せるから! だから、ああ、いやだ!!」

 

 現実は非情かな、一度引き絞られた矢は放たれるもの。仁の踵は、エルヴィスのハゲ頭を直撃。あっという間に下に落下していった。

 ヨロヨロと近寄る一誠と祐斗は仁と一緒になって大きな穴が空いた床を覗き込む。

 見えたのは屋敷の玄関口。

 丁度良くあのエルヴィスの像があった。

 あのまま落下したなら像を壊して倒れてそうなものだが、本人の姿形は見当たらない。

 が、像からずるりとエルヴィス本人が現れたことに三人はギョッとする。

 

「ふん、ここいらが潮時か。目的は既に達成しておる。わしはこれで大人しく帰るとしよう。それに噂のゴッドハンドはどうやら本物のようだのう。しかもこんな地で赤龍帝の籠手ときた。がははは、こいつは楽しくなりそうじゃわい」

 

 殆ど三人がやられていたが、戦った時に被った汚れが見られないエルヴィスは何事もなかったように葉巻を吹かしてそのまま屋敷の外へと出て行ってしまった。

 両手でドアノブ掴み、腰を屈めながらそーーっと丁寧に戸締まりして。

 

「遊んでやがったな、あのおっさん……」

「そうだね。手を抜かれた上でこの結果じゃ殆ど負けたようなものだ。だけど……」

 

 緊張の糸が切れたのか、どさりと横になる一誠。

 痛みに顔を顰めているが、そのまま気を失うように彼は眠ってしまう。

 

「神滅具、赤龍帝の籠手か……」

 

 キラリと、夜空に見える月光に反射する翠の宝玉。

 龍の手と思われた一誠の左手、最強の可能性は夢幻ではなく確かにそこにあった。

 

 






 ここに来ていきなりの一誠、赤龍帝に目覚めるでした。展開下手ですねぇ。
 これも全部、乾巧って奴の仕業に違いありませんぞタケル殿。絶対に許さねえユグドラシル。この世界もディケイドに破壊されてしまった!
 何?今やってるのはエグゼイドじゃと?
 そんなことよりユルセンぺろぺろさせろ。

 それはそうと、この後に続く僧侶ゲットだぜ!するVS『教会』の話がオカルト研究部のワンサイドゲームになるのでは?と思ってる人が多いかも知れません。
 安心してください。ドーナシークは死にます(非情)。
 彼のビジュアル大好きなんですけどね。

 そうじゃなくて、ちゃんと教会は教会でパワーアップしてます。戦力的な意味で。夕麻ちゃんが強くなるとは言ってない。ドーナシークは死にます。大事なことなので二度言いました。きっと人理修復の旅先で拾った聖杯使っても変えられない運命です。

 教会は四話くらい使うかなぁと思ったけど、教会の戦力アップしたら話が延びてしまいました。最悪六話か多くて八話か。
 正直短くしたいんですけどね。一話一話長すぎるとどうしても読みにくくなりそうで……。

 エルヴィスに関しては一度これでお休み。
 皆ボコボコにされてたけど、実際ゴッドハンドやるとだいたい同じ目に遭うのである意味原作再現、になるのかなぁ。どうやって昔ノーダメージ撃破したのか思い出せません。サイコクラッシャー怖い。


 一誠の赤龍帝の籠手は原作よりもまだまだ弱っちい覚醒だったりします。この話は作中でちょちょっと表現してさっさと畳む予定です。

 今回の話はこれまでですかね。
 次話にてまたお会い?しましょう。



 小猫ちゃんのおしり叩きたい。

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