第五話
目を開けるとそこは!そこは!自室だった!知っている天井だ!
「いやいやいや、目覚めるの早すぎでしょ。私の予想ではもう半日は起きないと思ってたのに」
「む…」
思わず戦闘態勢を取り、声の方向へと振り返るとそこには絶世の美女が立っていたのだ。
「よし、求めていたリアクションどうもありがとう」
「…サーヴァントか」
「そうだね。君とも顔を合わせるのは初めてかな?私はレオナルド・ダ・ヴィンチ、カルデアの協力者だ」
「そうか…女性かあ…モナリザそっくりだよ…」
なんかもう歴史の人物が女体化しても驚かなくなったよね。アーサー王に牛若丸…感覚狂ったなあ。
「経歴から見るとその臨戦態勢は身に染みついたものだね。異端者狩りのスーパールーキーの名は伊達じゃないようだ」
「そのあだ名はやめろ」
マジで恥ずかしい。黒歴史に匹敵するほどの恥部だ。
「他は?」
「マシュはロマンが検査しているね。大樹君は部屋で療養させているよ」
「所長は?」
「所長か…あれは天才の私でも手に余るものだね」
どういうことだろうか?聖杯との適合が失敗していれば聖杯だけは残るだろうが。
「マシュに近くになっている。決して同じものではないのだけれども」
「デミ・サーヴァントに酷似した何かか?」
「うーん、マシュは英霊の力に耐えられる器であり、ベースは単独で存在できる人間だ。だが、所長は…人間の霊基を恐らく聖杯の力でサーヴァントの霊基まで格上げ・強化されている。こう説明すると全く違う存在になっているね。ただ…」
「ただ…?」
「オルガマリー・アニムスフィアは英霊になれる器ではないし、素質もない。彼女自身をただ強化するだけでは消滅するのがオチだろう。そこで聖杯は穴埋めに何かを接合・融合させた…と思われる。暫くは目を覚まさないだろうし、最悪その何かに自我を飲み込まれる危険性がある」
「そうか」
「そっけない返事だね」
「運命に抗うのが今回のミッションだろう?」
人類史が
「確かに。何者かが仕組んだ七つの特異点を
「ああ、もとよりそういう仕事だ」
「今日はゆっくり休みたまえ。疲れはまだ取れてないだろうからね」
ダ・ヴィンチに促されたまま、瞼を閉じて睡眠に入った。ああ…微睡に落ちていく…。
*
彼が寝入ったのを見て、私は彼の部屋を出る。
「ふむ…」
彼が目覚めるまでに色々と見直してみた。素性に趣味、好き嫌い…改めて見るとどこかずれている。
「うーん…彼は一体何者なんだろうねえ。魔術刻印を受け取れない地位であるにもかかわらず時計塔に入学するも、聖堂教会に転籍して代行者に身を費やす。そしてカルデアに出向して今に至る」
彼自身は魔術だけを見ると冷凍保存されたマスター候補達に劣るだろう。それならカルデアに魔術師枠として入れるわけがない。だが、ここにいる。ここに来るための出来事は箔をつける為の作為的なものに感じる。それを仕向けたのは…、
「あーやめやめ。現代は神でもとっくに干渉できない時代だ」
それよりこれからの事を考えないとね。もう一人のマスターとマシュ君…問題はまだまだ多い。
*
再び目が覚めると
「おはようございます主殿。快眠のご様子でしたが」
「現状が悪夢だからな」
「成る程」
人類の未来は二人の手に託された。前でも今でもお断りな案件だ。FFやDQに出てくる勇者達が勝手に英雄譚を作り出すのが理想なのに。ああ面倒だ。
「それで俺のそばにいるということは何かあったのか?」
「いえ、私は今や雇われの武将。四六時中主殿の傍にて身を守るのが当たり前でしょう」
「そうか」
やはり価値観が違う。彼女の言い様も尤もであるが、違和感をぬぐえない。睡眠も食事も必要ないとはいえ、一日中張り付かせるのは精神上よろしくはない。俺のサーヴァントが複数いれば交代制にでもするが、彼女みたいに忠誠心に篤い者が都合よく来るわけでもないだろう。ならば…、
「ありがとう」
「っ!い、いえ!それほどでも…」
こういう人間は素直に感謝の意を示すに限る。義経は兄・頼朝に邪険にされた人間だ。必要な存在だと伝えればコミュニケーションとしてはいいだろう。それと小動物系なら頭でも撫でればいいってばっちゃが言ってた。本人も喜んでいるようなのでばっちゃの進言に感謝しておく。
「それじゃ食堂に行くぞ」
「お供します」
季節感を感じられない建物の廊下を巡りながら食堂へと急いだ。
*
一方、その頃所長は…、
「こんにちはー!みんな元気にしてるかなー?タイガー道場が始まるよー!」
「何よここは…」
ピーヒャラピーヒャラとBGMが鳴り響く。和風の道場でオルガマリーは立っていた。
「ここは哀れにも死に瀕した子羊を導くお助けコーナー・タイガー道場inカルデアでーす!」
「誰が子羊よ!」
「さて…早速だがこのコーナーの趣旨を問おうと思う。答えよ、弟子一号!」
「押忍!このコーナーは人理滅却した世界を救おうとする人物を導く、言うなれば『カルデア』を支える大黒柱なのでありまーす!言わばここが『カルデア』そのものだと言っても過言ではないのでしょーかー!」
「ここが私の『カルデア』!?」
「マーヴェラス!ベラボー!おおベラボー!」
「ちょっと五月蠅いわよ!?」
頭が痛くなってきたとばかりに額に手を添える所長。哀れである。
「さて、今回のオルガマリーさんは…あっちゃー、魔力の塊をぶつけられて意識を失っちゃったかー。このようなことをするのはさぞ自暴自棄で
「問題ありませーん!私のマスターは目がちょっと死んでるけど結構優しい人物なのだー!」
「マ・ス・ター!?ちょっと弟子一号!!私の許可なく『カルデア』に召喚されるとはどういう了見だー!?」
「ししょーはもう行き遅れだから是非もないよネ!」
「にゃんだとー!このロリータがー!
「中途半端こそがいけないんですよししょー!分かりにくい伏線なんて誰も覚えちゃいなんですよー!」
所長そっちのけで言い争う。幼女と言い争う大人、シュールである。
「あらやだ!オルガマリーさんのこと忘れてたわ!性急で悪いけど今回の失敗の原因は何でしょうか!はい、弟子一号!」
「信頼する人間を間違えたことでーす!あんなギザギザを信頼するなんてよっぽど周りに心を許してなかった証拠!」
「その通り!何の不審も抱かず、盲目的に信じるなんて扱いやすい駒だって言ってると同義よ。人を見る目を養うようにしなくちゃね」
「うっ…」
「まあでも?一応Q&Aコーナーを兼ねているので悩みにはお答えしよう。弟子一号、今回の対策は?」
「押忍、積極的にコミュニケーションをとることでありますっ!他人と付き合うなら根気よく接し、どういう人物か確認してからするよーに!」
「はい、よくできました」
所長は心当たりがありすぎた。レフしか信じてなかったのだ。レフだけを重用してきたのだ。レフしか見てなかったのだ。一人だけ贔屓するトップなぞ誰がついていくか。これでは誰からも信用してもらえない。
「あれししょー。このコーナーもそろそろ終わりらしいですよ?」
「何だとー!?私の出番これだけ!?」
「そうですねししょー。大人しくそこで
「うがー!!!」
悩まし顔で思案する所長をほっといて喧嘩する二人。しかし、事態を重く見てすぐに喧嘩をやめる。
「時間ないんでちゃっちゃとおわらせましょー!」
「確かに時間は有限なり!それじゃオルガマリーさん後ろを見てください!」
「…えっ?」
「アンタが俺を継ぐものか?」
所長の後ろに立っていたものの正体とは!?
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