アンチョビの弟がお姉ちゃんの為にタンカスロンを手伝う話   作:木曾のポン酢

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タンカスロンはルール無用!


前編

「すいません姐さん!前哨2輌ヤラれちゃいました!」

 

CV33に搭載された無線機から流れる報告を聞き、アンツィオ高校戦車道部隊隊長の安斎千代美こと統帥アンチョビは、地団駄を踏んで空へと叫んだ。

 

「ったく!なにやってんのよ!」

 

その怒りの矛先は、彼女の後輩達に対するものである。相手は1輌だからといって、安易に攻め込むなと事前のブリーフィングであれ程言ったのに……。心の中で溜息を吐く。やはり、飲食しながらのブリーフィングはやめた方が良いのだろうか。誰も彼も、私の話す内容よりもピッツァの具の配分の方に集中している気がする。

 

「相手をなめてつっかかったらいけないとあれほど……」

 

そうだ、そもそもBC自由学園との試合の話を聞いて、やりたいと言い始めたのはあの子らなのに……。どうしてこうも突っ走るのか……。

 

ブツブツと頭の中で呟いていると、横の方からエンジン音が響いてくる。

 

「アンチョビ姐さん!」

 

声をかけてきたのは、副隊長のペパロニだ。ノリと勢いのアンツィオ高校の精神を人型に成形したようなこの戦車乗りは、前哨がやられたというのに楽しそうにしている。

 

「ペパロニ…」

 

「ウチら出ていいっすか?」

 

因みに、これはペパロニ語で「麾下の部隊引き連れて突っ込んで来ます!」という意味である。ハナからダメという言葉が来るなんて思ってもいない。その証拠に、許可を出す前にペパロニ車は走り出した。

 

確かに、そろそろ本格的な攻勢をかけるべき時だし、アンツィオの皆はやる気が漲ってる時に突っ込ませる方がいいのだが……

 

あー!もう!

 

「簡単にやっつけるなよ!今回はあくまで次の戦車道大会に向けた練習と資金稼ぎなんだからな」

 

そうだ。今回私たちがタンカスロンをやってるのは、P40の修理代と……あわよくば、もう一台のP40を購入する為の資金を募る為の広告代わりと、アンツィオ戦車道の技術を確固たるものにする為だ。だから、少しでも観客へのアピールになる戦い方をすべきだし、全員が力をつける為には短期戦は好ましくない。好ましくないのだが……

 

「わかったますて姐さん!」

 

そう言ってペパロニ他4輌は下っていく。あれは、絶対にわかってない。

 

アンチョビは、アンツィオ高校に来てから増えた溜息を我慢しつつ、口の中で呟いた。

 

「まぁ、下にはアイツもいるし……。何とかなるとは思うが……」

 

そして彼女は、自分のCV33へと戻る。

 

相方の乗っていない、CV33に

 

 

 

「うーん、おい、ミリオタA!」

 

「どうした、ミリオタB」

 

「戦車の駆動音が聞こえるからって来てみたが、なんでこんな森ん中で戦車道の試合なんてやってるんだ?観客の避難もしてないし。それに、なんでアンツィオはCV33ばっかなんだ?確か、セモベンテとか持ってたよな。」

 

「知らんよ、修理中なんじゃねぇの?」

 

「……お若いの、タンカスロンは初めてかい?」

 

「へ?タンカスロン?」

 

「なんですか、それは。というか、貴方は?」

 

「あぁ、失敬。私の名前はタンカスロンおじさんと言う。」

 

「はぁ、はじめまして。ミリオタAって言います」

 

「俺はミリオタBです。で、そのタンカスロンってのは?」

 

「タンカスロン……それは、戦車乗りたちが独自に繰り広げる野良試合!」

 

「え!?これ野良試合なんですか?」

 

「あぁ、だから審判などは存在しない。参加規定はただひとつ『10トン以下』の戦車であること!」

 

「そ、それだけなんですか?」

 

「そうだ、それだけだ!あとは何をやっても良い。対戦車ライフルなどの携行火器の持ち込みだけじゃない、乱入、裏切り、なんでもありの戦いだ」

 

「なるほど、だからアンツィオは中戦車を持ってきていないのか」

 

「いまだ知る人ぞ知る競技だが年々人気は高まっている。やはり見所といえば……その迫力だな。おぉっと!!」

 

「うぉ!CV33が真ん前を通って行きやがった!」

 

「すげぇぇぇ!!かっけぇぇぇぇ!!!」

 

「この通り、危険ではあるが、戦車の魅力を存分に味わえることだ!間近で戦車が吹き飛んだ時など、心が昂るぞ!」

 

「ですが、それって危険なんじゃ?」

 

「確かに危険ではある。ギャラリーはみな野次馬、怪我しても自己責任だ。だが、そんなリスク以上に、この興奮は何ものにも代え難いものなのだよ!」

 

「なるほど……わかりました!タンカスロンおじさん!おい、ミリオタB!一緒に観戦しようぜ!」

 

「ったく、危険なのを承知でかよ。ま、わかったよ。俺も、興味あるしな」

 

「ふふふ、また前途ある若者が二人。タンカスロンの魅力に気が付いてしまったか。それにしても君達は運が良い。基本的に、タンカスロンをやるのは全国大会に出場出来ないような所か、出ても一回戦負けの弱小の高校や草戦車チームばかりなんだが。今回はあのアンチョビ率いるアンツィオ高校と、楯無高校のムカデさんチームの戦いだ。これは、間違いなく熱い」

 

「アンツィオ高校は知ってます。俺、プラウダの次に好きっすから」

 

「俺は聖グロや大洗よりも好きだぜ!やっぱ戦車道は電撃戦だよな!……だけど、楯無高校ってのは知らんなぁ」

 

「ふ、こいつぁ、タンカスロンマニアの中でも極一部しか知らんのだが。……こいつら、なんとBC自由学園の戦車部隊相手にたった1輌で勝っちまってるんだ」

 

「BC自由学園……あぁ、あの最近ゴタゴタしてる。」

 

「だけど、軽戦車はそこそこの数揃ってるぜ。それを1輌でなんとかするなんて……島田流クラスのワンマンアーミーなのか?」

 

「いや、どちらかと言うと、あの隊長の神算鬼謀によるものだな……まぁ、見てるといい。絶対に、楽しめるだろうよ」

 

 

 

「きた…!アンツィオ高本隊…」

 

操縦席から顔を出し、周囲の確認を行っていた松風鈴は、丘の向こうから駆け下りてくる豆戦車達を見て言った。ここまで聞こえてくる声でわかる、あの先頭を駆けるのは、アンツィオの特攻隊長ペパロニさんだ。間違い無く、アンツィオ一の精鋭部隊。アヒルさんチームを苦しめた、速攻のCV33たち。

 

と、唐突に背中からゾクリとくる妙な快感がのぼってきた。しずか姫からの、前身の合図。赤備えに身を包んだテケ車は、その軽さに見合った速度で走り出す。

 

「もう!私お馬さんとかじゃないんだからね!インカムあるんだから使ってよ!」

 

そんな私からの苦情など一切無視して、しずか姫は戦場を見る。前方より来るは風の如くに疾るイタリア製の鉄騎馬部隊。一輌で、相手するにはちと分が悪い。ならば如何するか。そう思考していると、視界の端に物見の者共が映った。

 

姫は笑う。よろしい、策は決まった。では、いざ参らん。

 

手早く、彼女は主砲を装填する。そして次の瞬間、三十七粍戦車砲は前方のCV33に対し砲撃を行った。

 

吹き飛ぶカルロ・ヴェローチェ。だが、ペパロニはそれに眼もくれずに叫んだ。

 

「今だ!」

 

彼女の勝負勘が、勝機を告げていた。この隙に、テケ車を粉砕する。

 

「もらったぁ!」

 

彼女の叫びと共に、8ミリ機関銃が火を噴く。

松風はそれをかわすと、スピードを落として……

 

ドン。肩に、衝撃

 

「え!?全速前進!?」

 

目の前にあるものを見ながら、信じられないとばかりに松風は反論した。しかし、彼女の主は馬の嘶きなど気にもとめず、もう一度彼女を蹴る

 

「あーもう!」

 

どうなっても知らないんだから!と、松風は速度を上げた。

 

前方には、野次馬たち。

 

「へ!?」

 

その行動に、ペパロニは思わず声に出して驚愕する。

 

そして、すぐに気がついた。その行動の理由に。

 

「あ…あぶないなぁ!」

 

「ギャラリーひき殺す気!?」

 

やられた!奴ら!ギャラリーを盾にしやがった!

 

『なにしてるペパロニ早く撃て!』

 

統帥の声が無線から響く。撃てって、そんな事したら当たっちまいますよ?

 

「ペパロニ姐さん!人が邪魔で追えねぇ!」

 

操縦手の悲鳴に似た声。

 

「キャー!!どいてどいてー!!踏み潰しちゃう!!」

 

あっちの操縦手からはもっと悲痛な声が聞こえてくるが、まぁ、そっちは気のせいだろう。やっといて何を言うという話だ。

 

 

 

この様子を遠くから見ていた少女は、彼女の最も信頼する部下と共にその様子を嘲笑っていた。

 

「無様ね。見てらんないわ」

 

少女は踵を返す。あの温室育ち共に、本当の戦場を教育する為に。

 

 

 

しかし、それは早計だった。彼女は、少なくともあも数分はこのムカデさんチームの作戦を見守るべきだった。

 

 

 

「あ…あの赤いの統帥のところへ行くつもりだ」

 

操縦手の声を聞きながら、ペパロニは笑う。

 

「ペパロニ姐さん!?」

 

なるほど、アンチョビ姐さん。貴女は、奴らがこんな事をするのも最初からお見通しだったってことか。だから、あいつを試合が始まってすぐに降ろしてたんですね。

 

ペパロニは無線機を握った。今頃、このあたりで野次馬に紛れているであろうメンバーに対し、命令を送る為に。

 

「いけ!お前の出番だ!統帥の弟の力!見せて来い!」

 

ほんと、流石姐さんっす。おつむの出来が違いますね

 

 

 

最初、それに気が付いたのは。運転している松風だった。

 

「あぶなぁぁぁい!!!」

 

目の前に、野次馬がいる。男の人だ、軍服を着ている。疾るテケ車の進行方向上で、動かず此方を凝視するその姿は不気味であったが。松風は人を轢くかもしれないという事に対してパニック状態に陥っていた。

 

その危険性に気づいたのは、しずか姫こと戦車長の鶴姫しすか。彼女の鋭い双眸は、目の前にいる者の危険性に気付いた。

 

松風を蹴る。更に速度を上げろ。更に速度を上げるんだ!

 

「そんな!?」

 

本能的にブレーキをかけそうになった松風は、戦車長の正気を疑う。いくら勝ちたいからって、人が死ぬのも良しとするの?そう反論しようとした時だった。

 

彼女は、自分の正気を疑う事となる。

 

目の前にいた男が、消えたのだ

 

「は?」

 

松風が驚きの声をあげる。しかし、身体を乗り出して全体を見ることが出来ていた鶴姫は、すぐに男が何処にいるかに気が付いた。

 

「上だ!」

 

「はぁ!?」

 

開かれた操縦席のハッチ。反射的に見てしまったそこには、なるほど確かに先程の男性が見えた。

 

何がなんだかわからなかった。だが、とりあえずスピードを落とさなかったのが良かったらしい。そう、この私の茫然自失お陰で、私たちは負けずにすんだのだ。

 

次の瞬間、地響きが世界を支配した。

 

そこで、何があったのかを確認したのは、数名のギャラリーと鶴姫しずかだけであった。ギャラリー達はそれを見て騒ぎ始め。しずか姫は息を飲む。

 

男が着地した場所。そこには、先程まで存在しなかった巨大なクレーターが出来ていた。

 

「ねぇ!?なに、なにがあったの!?」

 

松風の声は聞こえない。ただただ呆然と、姫は男を眺めていた。

そして、ポツリ、とつぶやく。

 

「弥助……?」

 

クレーターの真ん中に立つのは、分厚い筋肉の鎧に守られた、黒人男性だった。

 

 

 

「おいおいおいおいなんだありゃ?いつからここはコミックの世界になったんだ?」

 

「あの男、地面をぶん殴る瞬間に一瞬消えたように見えたぞ。なぁタンカスロンおじさん。何かわかるかい?」

 

「いや、すまない。私はタンカスロン以外の事は何も知らないんだ。いったい……あれは……」

 

「ふっふっふ……まぁ、知らないのもしょうがない。あれは、アンツィオと一部の関係者しか知らない事だからなぁ」

 

「ん?だ、だれだこのおっさん!?アンツィオの校章のTシャツなんか着て……」

 

「ま、まさか……」

 

「知ってるのか!?タンカスロンおじさん!?」

 

「お前は……アンツィオおじさん!!」

 

「「アンツィオおじさん!?」」

 

「ふふふ……いかにも……」

 

「なんなんだ、そのアンツィオおじさんってのは!?」

 

「アンツィオおじさん……アンツィオ高校の戦車乙女に病的なまでに愛するおじさん……。戦車道履修者の名前やニックネームは愚か、身長、スリーサイズ、家族構成、好きな戦車、果ては趣味や日課までも把握するという伝説のおじさんだ……」

 

「ストーカーかな?」

 

「おい、だれか110番を」

 

「職業は、確かアンツィオ高校学園艦の駐在さんだ」

 

「まじかよ警察かよ」

 

「日本終わってるなおい」

 

「週に三日ほどはパトロールとしてアンツィオ高校の中に入っている……」

 

「おいこいつどんどんと自分の罪状自白していってるぞ」

 

「これで下着とか無くなってたら間違いなくこいつが犯人だな」

 

「で、アンツィオおじさん。あれはいったいなんなんだ?」

 

「…………アンチョビの弟。という言葉に聞き覚えは」

 

「普通そんなの知らねぇよ」

 

「いやまてミリオタB。……聞いた事がある。」

 

「まじかよミリオタA」

 

「アンツィオ高校の統帥アンチョビには歳の近い弟がいるという所在不明の噂……。多くの戦車道おじさんは、その弟とアンチョビとのおねショタ妄想でもって自らの穢れを放出つという」

 

「マジかよ業深すぎるだろ」

 

「もちろん、俺もその一人だ」

 

「タンカスロンおじさん……」

 

「ダメな大人しかいねぇのかここは」

 

「で、でも!なんでいきなりアンチョビの弟の話を!?アンチョビの弟は顔付きは姉に良く似ており、背は少し小さい。髪型はショートで、家の中ではいっつもTシャツに短パン姿。最近身体にメリハリがついてきたのに自分の身体の魅力を一切自覚せず、弟がいるのに平気で下着姿でいるアンチョビに対して顔を赤くし眼をそらしつつも、その実横目でしっかりとその姿を焼き付けており、毎晩それを思い浮かべながら自らの溢れるパッションの処理をしており。しかしある日ノックもせずに部屋に入ってき姉にその様子を見られてしまいそのままなし崩し的に保健体育の授業が……」

 

「おいまてミリオタA。お前もなのかミリオタA」

 

「そんな多くの人間が抱くアンチョビの弟像の中に、一つの異物が紛れ込んでいた事に気がつかなかったかい?」

 

「ま、まさか……!いや、しかし、あれは……」

 

「だが……ああ、そうだ、古来よりそう言うではないか。火のないところに煙は立たぬと……」

 

「おいおい、二人だけで会話してちゃあ俺にも説明を…………」

 

「…………………」

 

「…………………」

 

「な、なんだよそのシリアスな顔は。まるでこの世の終わりみたいな顔してるぜ二人とも」

 

「「…………ア」」

 

「あ?」

 

 

 

 

「「アンチョビの屈強な黒人の弟………!!」」

 

 

 

 

「…………アンチョビの屈強な黒人の弟?」

 

「アンチョビの屈強な黒人の弟。俺のようなクソみたいな戦車道ファンの間にまことしやかに語られていた馬鹿馬鹿しい噂」

 

「馬鹿馬鹿しい噂?」

 

「そう、黒森峰の逸見エリカは隊長大好きワンコだとか、実は大洗に行った西住みほを今でも想ってるとか、実はその同級生の秋山とくっついてるだとか、ハンバーグばっか食ってるだとか、淫語音声で自慰行為を行ってるとか、ペットはワニだとかいう有象無象の下らない噂の一つだと思っていた、しかし……」

 

「逸見エリカを玩具にしすぎだろ。お前は女子高生に何を背負わせようとしてるんだ」

 

「だが!?どうして!?なんでアンチョビの弟が!?そもそも人種が……」

 

「アンチョビ……千代美ちゃんの母親は、元々身体が弱くてな。彼女を産んですぐに亡くなられてしまったんだ」

 

「そ、そうだったんですか……」

 

「その後、千代美ちゃんの父親は再婚した。相手はアフリカ系のアメリカ人で、もともと会社の同僚だったらしい。その間で産まれたのが、あのアンチョビの屈強な黒人の弟だ。」

 

「じゃ、じゃあ。本当の姉弟なのか!?」

 

「あぁ、腹違いではあるが。正真正銘の姉弟だ。」

 

「なんてこった……おねショタじゃなくて、弟の黒人デカ○○○でガンイk」

 

「ブチ殴るぞテメェ」

 

「……それはそれでいいのでは?」

 

「……なるほど」

 

「なるほどじゃねぇよ。お前らの頭はポルノ塗れか」

 

「アンチョビの屈強な黒人の弟は、それはそれはやんちゃなガキでなぁ。小坊の頃から酒にタバコにドラッグ。暴走行為からコンビニ強盗まで殺人以外の悪い事はなんでもやってた。俺も良く注意したよ、その度に、千代美ちゃんは交番まで来て謝りに来てたよ」

 

「あぁ、だから唐突にアンツィオおじさんはアンチョビの事を親しげに呼び始めたのか」

 

「よかった、面識ないのに頭の中で妄想を続けるうちに親せきの娘かなんかと勘違いしちゃったのかと恐怖しちまってたぜ……」

 

「だが、奴は家族に対しては優しかった。特に、姉とは仲が良い。千代美が料理上手なのは、あの弟相手にずっと料理を振る舞っていたからだ」

 

「衝撃の事実だ……。くそう、あのプロ級の料理の腕にはそういうカラクリが……」

 

「俺もアンチョビの弟になりてぇ」

 

「今から戦車の前に突き飛ばして輪廻の渦の中に入れてやろうか?」

 

「だが、ある日アンチョビの屈強な黒人の弟は捕まってしまう。原因は隣町の暴走族と喧嘩して、相手を半殺しにしちまったんだ。」

 

「むしろ今まで捕まってなかったのか」

 

「運が悪い事に、その時は千代美ちゃんの高校受験シーズンだった。……なんでも、黒森峰からのスカウトが白紙になったらしい」

 

「な、なんだって!?アンチョビに黒森峰からのスカウトが来てたのか!?」

 

「初耳だ……流石はアンツィオおじさん。どこまでアンツィオの事に精通してるんだ……」

 

「明らかに精通しては行けないところまでしてるのはいいんですかねぇ」

 

「姉は構わないと言っていたが、アンチョビの屈強な黒人の弟は自分を責め続けた。そして、奴は保釈された次の日、姿を消した」

 

「す、姿を消した……!?どうしたんですか!?」

 

「アンチョビの屈強な黒人の弟、13歳、冬。己の粗暴さについて悩みに悩みぬいた結果。彼がたどり着いた結果は」

 

「……結果は?」

 

 

 

 

 

 

「感謝だった」

 

 

 

 

 

 

「……………ん?」

 

「自分自身を育ててくれた姉への限りなく大きな恩、アンチョビの屈強な黒人の弟が自分なりに少しでも返そうと思い立ったのが」

 

「え、いや、おい、まて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一 日 一 万 回

感 謝 の 正 拳 突 き」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいおい、いつからここはHUNTER×HUNTERの世界になったんだ?」

 

「なんてこった。冨樫は続きを書かなかったわけじゃないんだ……俺たちが冨樫の書く続きだったんだ……」

 

「念能力を駆使したタンカスロン……うむ、それもまた一興」

 

「衝撃的情報に対する適応がはやすぎるだろ」

 

「息を整え、拝み、祈り、構えて、突く。一連の動作を一回こなすのに当初は5~6秒。 一万回突き終えるのに、初日は18時間以上を費やした。」

 

「まんま会長じゃねぇか」

 

「突き終えれば倒れるように眠る。起きてまた突くを繰り返す日々。……一月を過ぎた頃、異変に気付く」

 

「まさか……」

 

「一万回突き終えても、日が暮れていない」

 

「覚醒はやすぎやしませんか?」

 

「齢13を越えて、完全に羽化するアンチョビの屈強な黒人の弟」

 

「まだ成長期では?」

 

「一週間後、感謝の正拳突き一万回1時間を切る‼︎」

 

「だから覚醒がはやすぎるだろ!!」

 

「かわりに祈る時間が増えた。……山を下りた時、アンチョビの屈強な黒人の弟の拳は、音を置き去りにした」

 

「そうか……そんな修行をしたからアンチョビの屈強な黒人の弟は一撃で大地を抉る程の力を得たのか……」

 

「だ、だけど。あんなのルールとして許されるのか?」

 

「無論、許容される。先程も言っただろう?タンカスロンはルール無用……とな」

 

「ま、マジか……」

 

「だ、だけど。じゃあなんで他の奴らはこんな風に単独行動させないんですか?皆にパンツァーファウストを持たせたらあるいは……」

 

「決まっとる。人間は、戦車に勝てないからだ。それに、外に出て戦車と対峙するというのは、命の危険にも繋がる。いくらタンカスロンを嗜む猛者共も、そんなリスクは容易にとれん。だが、ふむ、これは盲点だったな」

 

「あぁ、そうだ、盲点だろうとも。我々アンツィオファン以外にとっては盲点だったろうさ。よもや、戦車を超越した人間がいるなど」

 

「そりゃ盲点でしょうねぇ」

 

「……あ、あれ?アンチョビの屈強な黒人の弟がいつの間にか消えてるぞ?」

 

「姉の元に戻ったんだろう。あいつは力が強いが、その分燃費が重戦車クラスに悪い。燃料補給を挟まんとすぐにエンストだ。」

 

「な、なるほど……」

 

「しかし、圧倒的な武によって鉄の猛獣すら討つ戦士か。まるで、三国志の武将のようだなぁ」

 

「ミリオタAくん、ミリオタBくん。こいつは更に目を離せない戦いになったな。ムカデさんチームの頭脳と策略が勝つか。それとも、アンツィオの数と力が勝つか。うむ、楽しみだ」

 

「マジかよ興奮するな!運が良かったな!ミリオタB!」

 

「あ、あぁ……」

 

 




タンカスロンはパワー!
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